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・9、1、日
読み進める「坂の上の雲」では、今ようやく203高地を陥落させたところである。
203高地を取り合って、日本とロシアの陸軍が死闘を展開し、それは世界でも類を見ない悲惨さを呈したというのは有名な話だが、読んでみるともちろん203高地を巡っての戦いも悲惨ではあるが、その前の旅順要塞攻撃の方が呆れるほどの地獄である。
これらはすべて乃木将軍と伊地知参謀コンビの無能さから、日本人の指揮官が日本人の兵隊を大量に殺略するという悲劇となったと書いてある。
これには乃木将軍崇拝説と無能説の相反する研究結果があるようだが、司馬氏は無能説を唱えている。
彼ら指揮官はただ「突撃!」と命令を下し、若い男たちを意味のない死に追い詰めた。
一度やってだめなら、ネズミでも違う方法を考える。
しかしこの野木・伊地知コンビはただただ兵に銃剣だけを持たせて、敵の大砲と地雷に何度でも向かって突撃させた。
命令を受けて突撃する若い男たちも、確実に死ぬと分かっていて向かわねばならないところに地獄がある。

しかしその乃木希典が何故現在では英雄とされているのか。
陸軍総司令官の児玉源太郎が見るに見かねて旅順に出向き、乃木に替わって指揮を取り、何ヶ月も掛かって夥しい兵士を死なせるだけであった戦いを、何と2時間足らずで勝利へと持って行った。
なぜ児玉源太郎が乃木の窮地を救ったことは歴史から黙殺されてしまったのか。
もちろん児玉自身が乃木の名誉のために自分の功績を自ら消したようだが。
司馬氏の記述が本当だとすると、伝えられる歴史とはかなり危ういものだ。

さて我々がここから学べることは、組織という団体の中で何時の間にか育つ「システム」というものである。
これがいつも村上春樹が危惧する「硬直したシステム」というものだ。
僕なりに要約すると、こういうことだろうと思う。

誰かが道のない荒地に苦労して道を切り開く。
最初に道を切り開いた者は誰からも尊敬される。
後進の者は皆何処に向かうのかもはっきりは分からないまま、その道を歩いて進む。

そして後進の者たちのために、自分たちの迷路の苦労を繰り返さなくてもいいようにマニュアルを残す。
後進の者はそのマニュアルを熟知することに心血を注ぐ。
そして先輩たちが残したマニュアル通りに進めば間違いはないと思い込んでしまう。
そのうちマニュアルが神となり、それを少しでも破るものは罪人とまで罵る。
しかしもちろん状況は刻々と変化し、その変化を敏感に察知してそれに対応して行くことが求められるのだが、後進のものは切り開く苦労も喜びも知らぬまま、何を求めているのかも見失い、今持っているものを守ることだけを主眼にして進もうとする。

ここに「硬直したシステム」が生じる。
国でも、軍隊でも、会社でも、その他どんな組織でも年月が経てばこの腐敗に陥る。
だから国を初め何にでも「誕生、繁栄、衰退、滅亡」が存在する。
「日露戦争で、日本がロシアに勝ったのは、いわば両国が四つに組む中で、ロシアが自分から膝を着いて倒れたのだ」と司馬氏は序文で述べている。
それは長い年月の中で、人々の心に優越感に満ちた官僚的な硬直したシステムと、自己の出世欲だけが蔓延し、それが組織として化石するからだろう。
太平洋戦争のころの日本が丁度これに当たる。





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最終更新日  2013.09.01 22:31:01
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