ちほの転び屋さん日記

ちほの転び屋さん日記

2007年05月17日
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教科書類ではぞんざいな扱いしか受けない普通の清算についてなんですが。一言かけば済むことじゃないですかシリーズ。

たとえば、「株主総会+取締役会+監査役」という機関構成の公開会社が清算手続に入った場合、取締役は478条1項1号により清算人になるわけですよね。じゃあ、477条4項で設置が強制されている監査役はどうやって選ぶんでしょうか。

結論的には、平常時監査役が自動的に清算時監査役になるみたいなんですが、普通に条文を見ているだけではその結論はでてきません。477条2項からすれば、「清算株式会社」になってはじめて、精算株式会社が定款で清算時監査役を設置できるみたいに読めるし。それに、同条5項では、委員会設置会社の場合は監査委員が監査役になると書かれていますが、それ以外の会社では誰が監査役になるか書かれていませんし。

「条文に特段何も書いてない以上、監査役は平常時のままだってことを476条から読み取れ」ってことなんですかね。これとあわせて「480条を見れば、そこでいう定款変更をしてはじめて退任する(んだからそれまでは従前の監査役のまま)ってことぐらいわかるでしょ」ということかもしれません。477条5項は、委員会設置会社に監査役がいないから書いておいただけだと。

「国民にわかりやすい」というのは、形式論理的にみて無駄なものは排除するとか、そういうことではないはずなんですけどね。あれとこれを組み合わせれば裏から読み取れる、なんてというのはある種の訓練を積んだ人じゃないと分かりませんし。というか、こういう条文作成法は会社法がはじめてじゃないですか。

なんか「新時代の」わかりにくい法律、という感じ。今までのわかりにくい法律とは種類の異なる分かりにくさ。素直な分かりにくさではないわけです。会社法本人は「分かりやすいでしょ」と思っているあたりにたちの悪さを感じます。

一言、平常時監査役がそのまま清算時監査役になる旨書いておいてくれれば、わかりやすくなるんですが。

例によって、条文引き写し系な教科書には、こういう問題は条文に書かれていないことなので、書いていないわけです。

立法担当者によって積極的にいろんな出版物がだされていますが、「内容」の解説本だけでなく、この算数的(?)条文作成技術そのものについても、一冊書いて欲しいですね。あるいは、本当の意味で分かりやすく書くとどういう条文になるか、という本もあればいいですね。


第476条(清算株式会社の能力)
 前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。

第477条
1 清算株式会社には、一人又は二人以上の清算人を置かなければならない。
2 清算株式会社は、定款の定めによって、清算人会、監査役又は監査役会を置くことができる。
3 監査役会を置く旨の定款の定めがある清算株式会社は、清算人会を置かなければならない。
4 第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった時において公開会社又は大会社であった清算株式会社は、監査役を置かなければならない。
5 第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった時において委員会設置会社であった清算株式会社であって、前項の規定の適用があるものにおいては、監査委員が監査役となる。
6 第四章第二節の規定は、清算株式会社については、適用しない。

第478条(清算人の就任)
1 次に掲げる者は、清算株式会社の清算人となる。

 二 定款で定める者
 三 株主総会の決議によって選任された者

第480条(監査役の退任)
1 清算株式会社の監査役は、当該清算株式会社が次に掲げる定款の変更をした場合には、当該定款の変更の効力が生じた時に退任する。
 一 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更

2 第三百三十六条の規定は、清算株式会社の監査役については、適用しない。





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最終更新日  2007年05月17日 17時19分33秒
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