添乗員は見た![あんな事こんな事]

添乗員は見た![あんな事こんな事]

2010/07/01
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カテゴリ: カテゴリ未分類


帰りの車内は,静かなものだった。
ほとんどの人が遊び疲れて眠っている中で,本を読んでいる所長の姿を
見つけた。
私は,少し離れた前方のその席まで,忍者のような忍び足で近づいた。

「社長,先ほどはお気遣い頂きまして,ありがとうございました。」

社長はオシャレな老眼鏡から,上目遣いで私を見つけると,
「イヤイヤ・・・,迷惑をかけましたね。申し訳ない・・・。」
「いえいえ,大丈夫です。」
すると社長は,メガネを外して私の耳元へ近づいて来たので,私も自然
と顔を寄せて行った。そして小さい声で社長が言った。

「カニ・・・1つじゃ足りなかったネ!!」
「・・・,じゃぁもう1つ追加しますか?!」
と,私たちは顔を寄せたまま,冗談を言って笑いあった。

「これに懲りずに,またよろしくね!」

と,私は軽く会釈をして,顔を元の位置に戻した。

私たち話しは,あくまでも静かで,隣に座る人の安眠を妨げる事もない
“密談”だった。でもたった一人,私たちの会話に耳をダンボにし,
目を光らせている人がいることを,私だけは気づいていた。
それは,社長の斜め後方に座っていた,愛人と噂される事務員だった。


と,彼女はもう目を閉じていた。
もちろん私もすました顔で通り過ぎようとしたが,通路側の席に横
たわる妖怪2人が目に入って,吹き出した。

酒が抜けて正気に戻ってはいるものの,ますます人間界から
遠ざかってしまう谷ヤンと,美しくなるための化粧が
悲惨な表情を生んでしまう寝顔のアンジーが,折り重なって寝ている様は,
まるで魂をぬかれた妖怪のようにおぞましい・・・,が,笑える。

私は,落ちそうになっていたアンジーのスカーフを手に取り,2人の
顔に被せて・・・,手を合わせた。(南~無~~)
       つづく





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最終更新日  2010/07/01 01:57:12 PM
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