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2016.03.22
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テーマ: 徒然日記(25404)
カテゴリ: 音楽全般
■Grumpy old rock star
リックの2冊目の自伝は、“Say Yes”のその後ではなく、昔語りのうち、前著に入れられなかったこぼれ話集…と思っていたらかなり重複している。その話は知ってるよ、というエピソードが多かった(サルバドール・ダリをけり落とした話とか)。ああもう年寄りが同じ話を何度も繰り返す状態なのかも。
1節が短いし、口語体でやさしいのですらすら読めるけど(知らない単語は無視して読んでも、前後関係でわかる)、リックの記憶力のすごさに舌を巻く。確か前著にも、はいはいしていた時期(1歳頃)に、前に進めず後ろに進んだ記憶があると書いていた。リックの変幻自在なアレンジ力と延々とピアノを弾き続けられる能力は、記憶力の良さによるところも多いのかも。

日本人の礼儀正しいメンタリティと酒浸りの自分たちのデタラメさの対比とか、日本以上に未知の国、ブラジルでの怖い体験(ジャンボジェットに2人きり)とか、世界中を旅している中でのエピソードが多い。少なくともビビり度は限りなく低そうな体の大きいアーリア系がビビっているのは、「未知の国」がキーワードっぽい。
もはや伝説の部類になっているカレーの話に1節割いてたのも笑った。カレーじゃなくてインド料理のフルコースだったわ(笑)。そしてジョンも持ってったことはもっと知られていい。

家族写真なんかも多くて、リックのママとリックの5人の子供たち、みたいな写真があって、離婚後は前妻が子どもを引き取っていたと思うんだけど、定期的にこうして全員で会する機会をもっていたとしたら、なかなかの家族博愛主義者なんだな。おばあちゃんが孫のコンサートに招待されてきて、ピーター・セラーズに席を譲らなかった話とか、ほのぼのしていいわ~。地底探検のナレーションをしたデビッドへミングスが使った藤製のイス(エマニュエル夫人のあれ)に振り袖を羽織って座っている70年代中ごろの写真もあった。カラーでないのが残念だけど、これクリスと一
緒に73年に日本で買ったんじゃないのか?

で、この本はもうじき読み終わるので、昨日、ファミレスでごはん食べながらビルの自伝にとりかかった。
…なんか、とりあえずイエス周りを拾い読みしているけど、難しいというよりわかりにくいなあ。大まかな流れはわかるんだけど、単語の使い方も独特だし、形式主語構文でだらだら続くと混乱する。彼の考えや感情を表現する単語にひねりを加えているので、読み取るのは大変。誤解したまま読み込みそう。リックの本が小学生向け(内容は18禁)だとしたら、ビルの本は大学生向けだ。英語圏の読者がインテリジェンスを感じるような本は、私にはハードルが高いわ。


クープラン時代の様式による追悼曲(と最近はいうらしい。通称「クープランの墓」)を弾いていたら、ギミックだらけであることに驚いた。この曲は「ソナチネ」の延長上にある曲で、もっと拡大された組曲形式になっているけど、プレリュード、メヌエット、トッカータは曲調もとてもソナチネに似ている。
ソナチネは弾いたことがあって、最後のトッカータはグルーヴできるし、2楽章の長7とか未知の和音はおもしろかったし、楽しいかった。だからクープランも楽しく弾きたいものだけど、こっちのトッカータは全く弾ける気がしない。指がつりそう。自分の中で弾きたいテンポは決まっているので、その速さであの同音連打を軽く同じタッチで弾きとおすのはほぼ不可能だ。シューマンにもそうやってあきらめた曲が数曲ある。理想と現実のはざまでアマチュアはいろいろと大変なんである。いやでもトッカータ、プロでも本番で弾くのは怖いだろう。絶対。

プレリュード、弾いていて楽しい。これも無窮動的な曲だからバッハ同様グルーヴできる。その前に暗譜しないと途中で止まるけど。形になってきたのはフォルラーヌとメヌエットだけど、この簡単な曲の中にさえ、左右の拍子感が違う、左右の調性も違う箇所があったり、途中からいつのまにか拍が変わっている、主題を解決しないまま次のテーマに入る、主題Aが全く性格の違う主題Bに突然かぶさってくるetc・・・とかあって忙しい。様式は古いし、技法的には別に目新しいことではなくて、バッハにもこの要素は全部あるんだけど、短い曲の中に全部詰め込まれている。こんな凝った曲だったっけ?

アコースティックイエスの冒頭で、リックが弾くThe meetingの序奏のアルペジオ、三連符で降りて来るところとか、プレリュードに似ていると思う。あとフォルラーヌ、メヌエットとも装飾音だらけんなんだけど、リックの手癖とラヴェルのそれと激似だ。バッハにもあるけど、よりラヴェルに似ていると思う。間の200年はどうした!

フォルラーヌ。和音進行がミラクル。この和音は絶対アナリーゼできないと思ったら、ちゃんと分析している人がいた(ジャズにも詳しい作曲の先生のようだ)。が、どれもが見たこともないようなヘンタイコードだった。
そもそもコードで和音を感じる訓練はされていないので、五線譜使って解説してくれるのはうれしい。
ラヴェルの属七和音の使い方は大好きなんだけど、それを左右違う調でやられると自分のソルフェージュ能力の限界を越える。感覚で弾ける曲なのにアナリーゼが難しいという罠(笑)。

フォルラーヌの属七和音はたまらなく不安定で美しいと思うんだけど、そう感じられるのは20世紀以降の人間だと思う。どうしてこんな和声を思いつくのか不思議でならない。教会音楽から発展して多少の西欧の民族舞曲なんかが混じったとしても、19世紀までは安定していた音楽に、ジャズとか新大陸のリズムや音形が入ってきた。それをロシア人がやるとプロコやストラヴィンスキーだけど、フランス人がやるとラヴェルでありドビュッシーになる。
バッハの構造美もいつも驚かされるけど(これは数学)、ラヴェルはもっと感覚的でエクスタシーがあるわ。

メヌエットも中盤、属七しか出てこない。これをちゃんと声部がわかるように弾き分けるのは私にはしんどい。でも美しい。一生弾いていたい。幼少時からこういう響きに慣れていれば、ジャズとか簡単なのかなあ。

クラシック漬けの生活だったのに、突然ロックに戻ってきたので、ちょっと整理。


高校になったら結局クラシックに戻って行って、20歳くらいまではオペラを必死になって聴いて(スコア取り寄せたり時代背景調べたり、かなり勉強した)、在京オケの定期会員を3つぐらいかけもちして聴きまくった。
その結果落ち着いた先が、オペラではなくリート、シンフォニーではなく室内楽だった。
音が少ないのと音が小さいのとは違うから、ピアノはペトルーシュカやコンチェルトも聴くけど、本当はカスキとかシベリウスとか音が少なすぎてラジオでかかってたら放送事故みたいな曲が好きだ。行間を聞く、みたいな音楽。
どうも少人数でやる音楽が好きなことも分かった。
リートも長い間嵌っていて、昔のロックの名曲以外にもシューベルトの3大歌曲集(白鳥、水車、冬の旅)やシューマンの愛三部作(詩人、女の生涯、リーダークライス)の中の多くも、今も歌える。リートで言えば、シュワルツコップフやフィッシャー=ディースカウを生で聴けなかったのは心残りだけど、ペーター・シュライアーの引退公演は最前 列で滂沱の涙とともに聴いた。バッハの面白さを教えてくれたのは、グールドは別として、宗教曲に開眼させてくれたのはフィッシャー=ディースカウでありシュライアーだった。


室内楽に限って言えば、その中では音が多い(饒舌)な曲が好きだ。メンデルスゾーン、シューベルト、シューマンとブラームスのピアノ付きは鉄板。一時、毎年のように行っていた京都・奈良では、メンデルスゾーンの 3重奏曲、7重奏曲が旅のお供だった。おかげでかなり細部まで口コピできる(笑)。周囲では流行っては消えていく音楽に満ちていた。そういうのについていくのがしんどかっただけなのかもしれない。

で、今年になって再びイエスに巡り合うまでは、寝室のCDプレーヤーには何年もの間、アルヴォ・ペルトの「鏡の中の鏡」がのっかっていて、寝しなに聴く音楽になっていた(彼が一昨年、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したと聴いても一緒に喜んでくれる友なんてもちろんいない)。音が少ないクラシックのなかでも格段に音が少なく、かつ音が小さい現代音楽。でもこれを聴いていて眠くなるかと思うと、あまりに音が小さくて聴きとろうとするあまり集中するので眠れなくなるのだった。そのまえはマイケル・ナイマンがやはり数年のっかったままだったから、ミニマリズムはそもそも性に合う。そんな寝室のCDプレーヤーには先週からリック・ウェイクマンの「ヘンリー八世と6人の妻」を飲み込んでいただいた。さぞやびっくりしていることだろう。

ジャック・ブルースのお誕生日コンサート、こないだは途中から、ながらで見たので、頭から見直したら、冒頭いきなりバッハの無伴奏チェロだった。すげーびっくりした。楽器がしょぼいので音は悪いけど、弾けちゃうわけね。すごいわ。すとれ~んじぶる~とかサイケなことをやっていた人が、チェロでバッハを弾いたりウッドベースでジャズを弾いたり、ピアノ弾き語りというのは、「なあ、俺こんなこともできんだぜ、すげーだろ」という感じなのかな。グランドピアノの弾き語りとか聞いていると、リックのピアノの音が際立ってきれいなのがわかるわね。

基礎にクラシックがあるジャズの人は往々にしてクラシックに戻っていくけど(ジャレットやコリアのバッハとか、山のようにあるよね。最近では小曽根真のフルオケとのガーシュインとか)、いまさらクラシックレーベルから出せるものを演奏しようとか思わず、リックみたいに自分流でアレンジしてくれたほうが、ファンとしてはうれしいかな。リックは手抜きのアレンジも多いけど、アコピの音もすごくきれいなのが最近わかってきた。もとからピアノで鍛えた人だから、コントロールできているのかもしれない。

どんよりだなあ。天気。夜は予定があるけど、なんかインドカレーを食べに行きたくなってきた。リック!





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Last updated  2016.03.26 12:13:02
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