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2016.04.19
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テーマ: 徒然日記(25405)
カテゴリ: 音楽全般
■Rockumentary 
1970年代、リックが文芸3部作を発表し終え、ケン・ラッセルの「リストマニア」を準備していたころの人物密着ドキュメントを見た。6~8分もの×4本に分割されていたので、もとは30分番組だったと予想されるUK版情熱大陸w。画質は最悪だけど、あちこちロケをしていたり、当時のデヴォンの自宅(4ベッドルーム。日本の感覚だとかなりの大邸宅)でのロケが興味深い。イエスを脱退してソロでも成功し、リックが当時からミュージシャンとしてかなり注目されていたことがわかる。そしてイングリッシュ・ロック・アンサンブルの面々が、当時からみても古臭い感じのむさくるしいロックンローラー(スタッズ付きのベルボトムとか胸毛とかカーリーロングヘアとか)ばかりで笑った。リック自身が本当はこういうスタイルにあこがれていたんだろうか。ストローブスやイエスはちょっと上品すぎたかも。

当時のプライベートライフがこれだけ映っているのは貴重。おそろしいことにRoyal college of musicに通っていた当時の副科(クラリネット)の先生、チャイコフ教授まで登場していて爆笑した。入学時と入学後のクラリネットの爆笑試験については、リックの最初の自伝に書いてあった。私も俄然チャイコフ先生のファンだったw。
チャイコフ教授、どんなおじいさんかと思ったら、当時でも50歳くらいにしか見えなくて、リックが学校を辞めてからまだ5、6年しか経ってないんだなと思うと、本当にさっさと学校辞めて仕事始めたことは正しい選択だったと思うわ。卒業するまで待っていたらイエスに入っていなかったと思うし、プログレのピークからはずれてしまうもんね。そして、こんな真面目そうな紳士のところに、リックはベロンベロンに酔っ払って試験を受けにいったかと思うと…やっぱり行動そのものもexcessだったんだな。

幼少時のクラスの集合写真や音大時代の正装(蝶ネクタイ姿)の写真が紹介されていて、やっぱり頭一つ大きくて、髪が短いと10代とは思えないほどおっさん臭い。まあもともと老け顔だったから、逆に年をとってから相応に見えてよかったのかもしれない。
3歳くらいのオリヴァーと1歳未満のアダムがママと一緒に映っていたから、まさに1975年当時だろう。赤ん坊の頃は2人ともブロンドだったんだな。そうそう、番組はリックの赤ん坊の頃の写真から始まるんだけど、ナレーションで「生まれたときからロングベイビーだった」と言ってて、要するにでかかったことがわかる。4キロ超えだったかも。

若き日のリックを支えた当時の妻・ロザリンは写真では何度か観たことがあるけど、動画は初めて。ブルネットのショートヘアで美人という感じではないけど、しっかりもののお母さんという印象。他にナニーとロックテイスト(つまりむさくるしい)の30歳くらいの男性(秘書兼リックを起こす係)が一人いた。このナニーがまたプロポーション抜群の若い女性で、その後のリックの女性遍歴考えたらいやこれ問題あるでしょうと思った。

うわあ後半、広い敷地を一緒に散歩している男性はブライアン・レーンではないのかな。紹介はなかったけど、何度か写真で見たことがあるレーンとそっくりだ。ブライアン・レーンという名前はビジネス上の名前で、本名は全然違っていた。色黒でヒゲが濃くて、見た目、ちょっとアラブっぽいので、そっちの出自なのではと疑ってみる。

■Composer Wakeman

私は悲しいほど和音感覚がないので、耳コピで採譜するときはまず主旋律だけの音符を書いて、それから和音をつけていくんだけど、リックは12段くらいの総譜の全楽器のパートを小節ごとに縦に割って書いていた。欄外にクラシックで使う和音記号(VとかIとか)が書いてあって、ああリックはこっち使うんだなと思ったり。

最近、ジャズとかポップスの演奏に興味持って理論書みてるんだけど、使う用語がクラシックとあまりに違っていて(音階名も調性名も音程名も違う。おまけに日本でクラシックやるとドイツ読みと和名があって、さらにドレミはイタリア語…)、もう今更呼び方変えられないとか、コード覚えられないという挫折感にとらわれているんだけど、リックはそんなことなかっただろうか。

スコアは普通は上から木管・金管・打楽器・弦楽器だから、それぞれの楽器の音域と音をイメージしながら和音を分解して空でスコアを書けるって、芸大作曲科なら普通にいると思うけど、カレッジ中退にしてこの実力は10代半ばからアンサンブルで演奏していたおかげかな。あとはおそらくセッションマンのころに相当鍛えられたんだと思う。しかもリックの場合、いかにも苦労してますとかどや顔で自慢するでもなく、自分に期待されている仕事だからと、関係のないジョークを飛ばしながらも、裏仕事は割と淡々とこなしていったと予想される。そしてexcessな人だから人の倍仕事が速い。こういう地味な仕事をちゃんとやっているからこその、その後の成功だったんだろう。

リックのスタジオにはグランドピアノとエレクトロニックピアノ、シンセとミニモーグが4台くらいあった。ハモンドオルガンがあったかどうかは未確認。それで、同じバロック時代の舞曲風のフレーズを次々楽器を変えて弾き続けるシーンも印象的。縦2段ならわかるけど、右のグランドを体は左手側に向けたまま弾いていた。イエスのソロではたいてい逆(左のコードはソラで弾く)ので、音型が頭に入っているって強いなと思う。

あと、リックだけじゃなくロックキーボーディストのほとんどがそうだけど、なんで立って弾けるのか私には謎。リックはイエスのライブでペダル踏みながら遠くの鍵盤に手を伸ばすというアクロバティックな動きを見せることがあったけど(特に燃える朝焼け)、ペダルだって本来サスティンだけでなくいろいろ踏みたいはずだ。リックのピアノがきらびやかな音で鳴っている時はたいがい座っていて、あれは上半身全体使って弾いているからあれだけ鳴るんだろうけど、ライブでは鍵盤の高さもいろいろだし、自分の胸より高い位置にあるモーグとか速弾きしているときって、腕だけの力とか手首から先の力だけだよね。たしかにあのキーボード要塞で、ピアノ鍵盤は下に配置していたような気がする。少しでも上半身使って弾くためなのかも。そしてリックのあのキーボード積み、私には高すぎて手がとどかない鍵盤があるかもw。

リックは13歳頃、チャーチオルガンも習ったと言ってたな。オルガンといえばキャメロン・カーペンターが自分のための可動式パイプオルガン(5段鍵盤)を、片手で上下2段の鍵盤を同時に弾いている(親指で下段を弾き、残る4指は上段を弾く)シーンをみた。この人は足技だけじゃなくて手でも常識超えてるわと思ったんだけど、リックは足芸は無理でも、あの手の大きさなら上下二段弾きできそうだし、リックこういうの好きそうだw。ショウが盛り上がるからぜひやってほしい。

この番組見てたら、ウェルチの評伝でも紹介されていた、90年代終わりころのThis is your lifeの映像まで出てきた。おおお~お宝映像!イエスのメンバーもアメリカからビデオレターでメッセージを送っていて、ジョンの「ハイ、ウェイクアップ!」と懐かしいニックネームで呼びかけたり、クリスがまたぞろカレーのエピソードを持ち出したり、そしてスティーヴが「君のソロと僕のギターは最高のコンビ。また一緒にやりたいね」って言ってて、なんかうるうるした。クリスの隣にいたのはビリー・シャーウッドかな。やたら美形で女性かと思った。

それより、これ97年?98年? リックがすごく痩せているんだけど、例の病気の後だよね?司会者が肺炎とか腹膜炎のこと話していた。ウェルチの本とは時間軸がずれてる。うーんまた謎が・・・。

あー、最初のGrumpyに出てきた、注文された曲を1曲忘れてて即興で作曲して1テイクで上がったって、ホワイトロックの最後の曲か!結構いい曲だと思っていたのに、そんなやっつけ仕事だったのか。でもその後気に入って、自分のコンサートでも弾いているのを聞いたな。

■イギリスのワーキングクラスって
BBCの他のドキュメンタリーでもリックが主役の番組があって、ナレーターがはっきりと「ワーキングクラスの両親から生まれた」と言っていて、日本の感覚だとワーキングクラスはブルーカラーだけど、イギリスはかなり事情が違うからなあ。



イギリスだとワーキングクラスとミドルクラスがさらに細かく分かれているけど、ブリティッシュロックのミュージシャンのほとんどはこの両方のカテゴリーの出で、実は本当に貧しい層(アンダークラス)出身の者はほとんどいない、みたいなことを大昔、ロックを聞いていたころに読んだのを覚えている。まあみんな自主的に学校やめて、ちょっとだけ仕事してあとは失業保険で生活しながら、楽器買ったりできるんだから、食うに困っているわけではない。
クリスもハウも当時の20歳くらいの若者が買うには高額すぎる楽器を買っている。リックだって高額なピアノやクラリネットが家にあったわけだし、裕福とまでいかなくても貧しかったわけがない。

で、結局ワーキングクラスは成り上がるのが夢なんだよな。階級は超えられないならせめてリッチになって世の中に影響与えたい、みたいな。だって這い上がるしかないから、わかりやすい人生だ。ミドルクラスのほうが落ちてく恐怖があるから大変だと思うわ。
リックの英語は私は聞きやすいけど、時々、かすかにA=iになるよね。=ワーキングクラス認定。

成り上がりの常としてリックはロールスロイスが大好きだ。最初のロールスは2000ポンドの中古で、その時のやりとりも面白い。雑誌の広告で一目ぼれして、早速会計士に電話。「ねえ、車買いたいんだけど、いくらまでなら使える?」って聞いている。賢いわ。リックがFragile carriage companyを作ったのは20代前半だから、20台集めたところで始めちゃったんだろう。ちゃんとイエスのアルバム名とポンコツ車を掛けているところが面白い。ロールスはその後、ハウを除くイエスのメンバー(アラン、ジョン、クリス)も買った、とあって笑った。


常々感じていたことだけど、イエスメンバーで経済的に苦しい家庭で育ったのは本当にジョン・アンダーソンだけで、農場での乳搾りとか運送業とかアンダークラスの仕事をたくさんやっている。そして楽譜が読めない。でも音楽のアイデアだけはたくさんもっていた。本当の才能というのはこういう人のことをいうのかもしれない。リックは才能あふれた優等生だけど天才じゃないしね。

■口先男を見て連想した人
UK情熱大陸を見つけたら、次々、リックのテレビの仕事の映像が出て来た。スポーツ番組でフットボール選手にインタビューとか、パープルのイアン・ペイスへのインタビューとか、トークものに並々ならぬ才能を発揮していたことがわかる。80年代の苦境をこれで乗り切ったのかも。口から生まれてきたようなおしゃべりで、なおかつ音楽の才能(作曲も演奏も)もexcessな人って、絶対長生きしなさそう…とか思ってたら、不意にハネケンさんを思い出した。

ずっとアレンジャー&ピアニストとして活躍してきて、晩年(といっても40代以降)はテレビ番組で司会やったりバラエティに出たりしていたハネケンさんは、リックと立ち位置が似ている。前田憲夫さんもそうだけど、24調自由自在なアレンジできて指揮もできて自らのピアノの腕前もすごい人たち。ハネケンはクラシック出身(桐朋ピアノ科)だけど、憲夫さんは独学の人だったはず。日本人2人はスターミュージシャンではなかったけど、リックはセッションマン→ロックスター→タレントだったわけね。

リックはクラシックの素養の本領発揮して「異なるきれいなメロディーをうまくつなぐ」のが得意。ソロでアーサーやヘンリー八世からの抜粋をうまくミックスさせて弾いているのを聞くと、つくづくそう思う。調もリズムも違うフレーズを上手につなぐのはイエスの本骨頂だけど、リックも実は超得意。
普段はあんまり転調もせずにC- dur,G-dur,D-durあたりでお茶を濁しているけど、やる気になったら全調自在に展開できるだろうと思う。イエス参加時は、バンドの決めた調だから結構黒鍵が多くて、リックは黒鍵弾くとき指が伸びる(まあ速弾きの時は私も伸びる)からすぐわかる。
私がおおお~と思ったのは、アコースティックイエスでの余興の即興ジャズだった。リックはジャズは弾かないと思っていたから、普通にうまくて驚いた。あれリズムだけでなく、アクセントもうまくつけないとかっこよく聞こえないよね。

手癖こそいつものことだけど、延々アドリブでやっていながら、同じパターンがほとんど出ないのもすごいと思うんだよね。意図して入れてる場合もあるけど。海洋の1曲目、中間部で生ピアノの速弾きアドリブがあるんだけど、スタジオ録音時はモチベーションゼロでほとんどワンフレーズくらいしか弾いてないのに、ユニオンライブではすさまじいプレイを見せてくれている。ここ、実はすごく感動した。燃える朝焼けのイントロ部分をさりげなく入れながら疾走するピアノは実は他のメンバーとはなんら関係ない「装飾」として弾いている。なのにすごく印象に残る。

あとナーサリーライム協奏曲聞いていると、あれはアドリブじゃなくて細部まで作り込まれた曲だとわかる。
リックにとってラフマニノフ風だろうがモーツァルト風だろがショパン風だろうが、味付けなんてお手の物なんだけど、私が唯一見せてほしいと思って いるのが、左手の技。平均律やバッハのフーガはどれくらい弾いていただろうか。よもや革命弾けなきゃ笑ってやる。

リックは小さいころからコンクール(小規模なものだろうけど)に出慣れていて、1位をとるのが当たり前で(多分体が大きかった=手も大きかったから子どものコンクールでは有利だったとい思われる)、8歳でソナチネ終了(これは今ではすごいわけではない)だった神童は、このままでは慢心してしまうと考えた音楽教師のはからいで、上のクラスのコンクールに出されて3位に終わる。1位でなかったのがショックだったリックはまた猛然と練習に明け暮れる。でも13歳頃になるとフットボールとクリケットのほうが面白くなり、レッスンをさぼるようになる。先生は父親に進言する。「あなたの息子さんは私の時間とあなたのお金を無駄にしている」。で、お父さん、そのままリックにそれを伝える。そして「もうやめてもいいぞ」という。そこでまた音楽に目覚めるリック。いい大人に囲まれ、環境に恵まれたことが彼の才能を引き出したんだね。
リックが大学を辞めた理由として「音楽家を“生産”してなんになる?必死に勉強して出たって(クラシックの世界じゃ)仕事なんてないんだぜ」てなことをユニオンツアーのドキュメントで話していて、そりゃ才能ある人には学校必要ないけどさーとか思ったよ。









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Last updated  2016.04.20 07:56:03
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