
これは、5.4キロのノルウェーサーモン。もう鱗を落とした後なのでつやが無いが、鱗が付いていればもっと銀色に輝いている。これを卸して、、、

塩鮭でいえば甘塩程度に塩を当てて一晩置く。これは、サーモンのポワレの材料になる。鮭鱒類は、生に塩を振って焼くより、一塩あてておいて余分な水分を抜いてから焼くほうが断然美味い。刺身やマリネの時も一塩あてたほうが美味しくなる。昔ながらの塩鮭は実に理にかなっているのだ。もちろん保存性の意味もあるが、旨味が凝縮されて美味しくなるという意味合いが強いと思う。

そして、このラップに包まれたサーモンは、昆布〆。軽く塩を当て、昆布で挟んでラップに包むことで、昆布がサーモンの水分を取り、同時に昆布の旨味と香りがサーモンに浸みこむわけ。和食の伝統的技法ですね。これも水分が抜けるので、ただの刺身より美味しいし、保存性もよくなる。これを切りやすいようにルイベにして、、、つまり、北海道風に軽く凍らせて切る。

それから、これはサーモンのリエット。リエットというのは、本来豚肉や鴨 ウサギや鵞鳥などの肉で作る保存食で、それらの肉をまず塩漬けにしてから、低温のラードで煮込み、煮崩してからその煮汁や脂ごと練り上げて冷やし固めたもので、パンに塗って食べる伝統的なお惣菜のこと。80年代くらいから、それを魚で作ることも多くなってきた。魚の場合は、魚を白ワイン蒸しにしたり、クールブイヨンでゆでたりして火を通し、バターや生クリームなどを加えて練り上げて冷やし固めることが多い。身に脂がのっているサーモンやサバなどで作るのが普通だ。
このリエットも、白ワイン蒸しにしたサーモンをボールに入れて身をほぐし、ワイン蒸しの煮汁にバターとクリームを加えて煮詰めたものを魚に合わせ、ボールごと氷水にあてながら冷やしつつ練り上げる。フェンネルを少しと胡椒を少々塩とレモン汁で味を調えて仕上げる。カリッと焼いたバゲットにのせて食べると美味しい。

サーモンのリエットと昆布〆と中落ちで作ったタルタル仕立ての盛り合わせ。リエットはバゲットにのせ、昆布〆はスライスして、塩とレモン汁とゆず風味のオイルで仕上げてある。タルタルは、まな板でたたいたサーモンの中落ちに、緑のオリーヴの実とアンチョビやケーパーなどをミキサーにかけたタプナードと玉ねぎのみじん切りを合わせて青ネギを散らしたもの。

そして、これはサーモンのポワレ、赤ワインソース。フランス人も80年代くらいからやっとカリッと焼けた魚の皮の美味しさに気付いたようで、Saumon cuite en peau ソーモン・キュイ・タンポー といって皮を付けた鮭のポワレという表現をするようになった。獣肉なら耳から尻尾や内臓まで食べつくす術を知り尽くした欧米の食文化だが、魚に関しては我々日本人のほうが上だろう。カリッと焼けた皮の美味しさなんて日本人はとっくの昔に知ってますからね!
例えば、フランス人は、アンコウを食べるときに日本人が七つ道具と呼んでいる皮や肝やエラや胃袋などの美味しいところは全部捨てて、尻尾の身しか食べない。美食家で有名な魯山人はアンコウを買いに行くと、必ず「身はいらねーよ」と言っていたそうで、、、フランス人は魯山人からすれば一番まずい場所しか食べないというわけだ。魯山人から見れば魚の食べ方を知らないということになるだろう。そんなフランス人が考えた傑作サーモン料理がこれ。
一塩あてたサーモンは、皮をカリッと焼き上げ、身のほうはしっとりと余熱で火を通す。ブルゴーニュの赤ワインとエシャロットをよく煮詰め、バターでつないでソースにします。同じワインを少し冷やして合わせると美味しい。これは、サーモンを肉料理感覚で食べたいという感じで、魚にあえて赤ワインを使い、それで合わせるという料理ですね。
常連のお客様のサーモン尽しというリクエストにこたえた料理でした。
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