PR
Calendar
Keyword Search
Comments
ボックスアート
ゲームボード
デザイナーはBill Eberle、Jack Kittredge、Peter Olotkaの3人。70年代からおおむねこの3人で一緒に活動してるようで、代表作は「デューン」「コズミック・エンカウンター」「クァークス」など。近年再評価されてるのか(それとも別の理由があるのか)、これらの古い作品が再版されている(「デューン」は「レックス:帝国最後の日」となって「トワイライト・インペリウム」世界に組み込まれた)。パブリッシャーはこれらの再販を行ったFantasy Flight Games。今作もそのようなゲームの1つで、1982年に発売された「Borderlands」のリメイク。旧版は架空の大陸を舞台とした中世風の設定だったが、今作では最近の流行り(だと思うが)であるスチームパンク風世界観を取り入れ、いくつかの追加要素が付加されている。
昔々、地上には石炭と歯車ベースの超大型機械があふれかえり、文明は繁栄していた。しかし、やがて大気汚染が深刻となり、一部の人々は雲の上に飛行都市を造ってそこに避難。逆に地面を掘り進んで地下世界に逃げた人々もいた。割を食うのはいつだって行動を起こさない連中で、地上(ここが“ボーダーランド”と呼ばれるようになる)に残った人々は文明崩壊後の世界で動かなくなった機械から屑鉄を集め、頭上の飛行都市から投下される食べ残しの食料や乏しい必需品で生きながらえてた。
しかし飛行都市の連中(“スカイ・ピープル”と呼ばれる)も安泰ではなく、都市建造時に蓄えてた莫大なエネルギーがいよいよ底をつき始め、ケツに火がついた。知恵を絞って彼らが思いついた対策は「エネルギーがないなら地下から持ってくればいいじゃない」というもの。地下の炎(たぶんマグマとかのことだろう)からエネルギーを取りだして飛行都市まで運ぶシステム、その名も「スカイワーク」を作ることにしたのだ。とはいえ自分たちで作るのはダルいので、「お前らこれ作れよ。そしたら俺たちスカイワークの近くに集まって、そこから食料とか投下してやるからさあ、俺たちによし、お前たちによしでWIN-WINじゃん?」という感じでボーダーランド人に設計図だけ与えることにした。まさに上から目線w しかしスカイ・ピープルのいう通り、ボーダーランド人としては自分たちの頭上にスカイ・ピープルが集まってくれるならありがたい限りなので、競ってスカイワークの建造に乗り出したのだ。
……てな感じの背景設定で始まるのだが、ゲーム自体はいたって普通な陣取り&生産/建設&殴り合いゲーム。地域を支配して、その地域が生産するものを得て、それを他プレイヤーと交易したり、他の地域に輸送したりして、さまざまなものを建設する。地域の支配は殴り合いによって奪ったり奪われたりする。各ラウンド終了時にスカイワークを3基以上支配しているプレイヤーがいたらそのプレイヤーの勝ち(引き分けありかなしかはゲーム開始時に決めておき、なしならスカイワーク数が単独最多プレイヤーの勝ち)。
このゲームでは、ゲーム開始前に全プレイヤーが任意の地域に支配マーカー(プラスチック製フィギュア)を1個ずつ置いていく。なんとこの手順を“すべての地域”が埋まるまで繰り返す。つまり、このゲームに“空いている地域”というものは存在しないのだ。これは陣取り要素のあるゲームとしては珍しいんじゃないかな。デザイナーによる「これから皆さんに殺し合いをしてもらいます」という明確な意志が感じられるw
支配マーカーとして使うフィギュア。ボード上を動くことはないのでトークンで充分なのに、フィギュア。無駄に高いクオリティw
各ラウンドは製造フェイズから始まる。1ラウンド目は何も製造できないが、2ラウンド目以降は各地域にある資源を使って武器、スカイワーク、川舟、船、橋(まとめて“開発物”と呼ぶ)を作ることができる。武器は移動できないが、その地域(および隣接地域)での戦闘にボーナスがつく。川舟と船はそれぞれ川と海しか移動できないが、資源を輸送して隣接する陸地に運んだり、隣接地域での戦闘にボーナスを与えたりできる。橋は大陸と島をつなぎ、輸送路として使うことができる。スカイワークは勝利条件である上に、周辺地域での資源生産力を増す。
スカイワークの建造が最終目標なのは言うまでもないが、他の開発物を無視してゲームに勝つことはできないだろう。次の生産フェイズで生み出される資源はプレイヤーの手元ではなく、その資源を生み出した地域に置かれるので、製造したい地域に必要な資源を輸送する必要があるからだ。そしてもちろん、勝利を目前にしているプレイヤーのスカイワークは他プレイヤーの標的となる。充分に守りを固めなければ簡単にスカイワークを奪われ、勝つのは他プレイヤーということになるだろう。
開発物トークン。左上から船、武器、橋、川舟、スカイワーク。数値は戦闘時の戦力ボーナス。スカイワークの建造には屑鉄1、鉄1、石炭1、金1のセットか金4が必要になる。各地域が生産する資源は最大で1種類なので、さまざまな地域から必要な資源を輸送してくる必要がある。
次は生産フェイズ。生産トークンがある地域は、対応した資源を生産する。さして難しいところはないが、すでに対応する資源が置かれている地域では生産できないので、おおむね毎ラウンドごとに輸送したり、消費したりしないと効率が悪い.特別な資源である馬だけは別の地域に置くこともできるが、詳細は割愛。
生産トークンと資源トークン。上の炭鉱、金鉱山、馬牧場、鉄鉱山、屑鉄置き場トークンが置かれている地域は、それぞれ石炭、金、馬、鉄、屑鉄を生産する。生産トークンはゲーム開始時にボード上にランダムに置かれるので、ゲームごとに各地域の地理的価値が異なるようになっている。
続いて交易フェイズ。支配地域が1カ所でも接していれば、プレイヤー同士でボード上にあるすべての資源をやりとりすることができる。受け取った資源は任意の支配地域に置けるため、同じ資源を交換して必要な地域に置くことで輸送の手間を省くこともできる。
そのあと輸送フェイズ。徒歩だと隣接してる支配地域にしか資源を輸送できないが、馬、川舟、船を使えばかなり遠くまで輸送可。さらに、馬がある地域を連続して支配していれば、それを“補給路”と見なしてかなりトリッキーな輸送をすることもできる。馬は資源の一種だが、1戦力にもなるし補給路も形成するので、他の資源とはちょっと使い道が違う感じかな。
最後に戦闘フェイズ。基本的にある地域から隣接する他プレイヤーの地域を攻撃する。その地域にある武器と馬、さらに隣接してる川舟、船、橋の戦力を合計して数値を比較して、攻撃側戦力が防御側戦力以上なら攻撃側の勝ちで支配権を奪える。防御側が勝ったら何もなし。
これだけじゃ盛り上がらないので、戦力を変更するルールが他に2つある。まずは同盟。攻撃された地域に隣接してる他プレイヤーは、攻撃側か防御側にその地域の戦力を貸すことができるのだ。勝敗の結果から直接利益を得ることはないが、もちろん交渉によって「そこの防衛に手を貸すから、次ラウンドの交易でちょっと色つけてくれよ」とか「お互い協力して攻撃して、そっちのスカイワークはお前のもの、こっちのスカイワークは俺のものでどうよ」とか取り決めることはできる……もちろん口約束だけどなw
さらに攻撃プレイヤーに限り、遠くにある馬、川舟、船を遠征軍として2つまで目標地域に持ってくることができる(移動のルールには従う)。こいつらに武器や馬を積んでくることもできるので、攻撃側が相当有利だ。ただし1エリアに置ける川舟/船の数には限りがあるし、戦闘終了時に1地域に複数の武器/馬があると1つを残して全部除去されてしまうので、ちゃんと考えて遠征させないと得るものより失うものの方が多くなるかもしれない。
さて、このゲーム最大の特徴は、「生産/交易/輸送フェイズは必ずしも発生するとは限らない」というところだ。各フェイズ開始時にスタートプレイヤーがダイスを振り、1~4が出れば通常通りプレイするのだが、5が出たらそのフェイズはまるまる省略となり、6が出たらスタートプレイヤーが発生するかどうかを決めるのだ。このため、他プレイヤーの動きに応じて防御を固めようとしてたのに生産フェイズが飛ばされたりとか、交易で得られる資源をあてにしてたのに交易フェイズが飛ばされ、さらに戦闘フェイズで隣接地域を他プレイヤーに奪われて交易できなくなったりといったハプニングが生まれるだろう。
これを繰り返し、スカイワークを3基以上支配したプレイヤーがいたらそのプレイヤーの勝ち。
テーマを流行りのものにして、遠征軍ルールで戦闘をちょっとダイナミックにした以外は昔のままだそうで、まあ古いタイプのマルチゲームだ。ルールブックに堂々と「全地域を失ったプレイヤーはゲームから脱落」って書かれてるくらいw なのでマルチ駄目な人は駄目だわな。テーマもかぶせてあるだけで、ゲーム的に大きな意味を持ってはいない。なにせスカイ・ピープルも地下世界に逃げた人たちも出てこないしw
そのへんに目をつぶれば、マルチの醍醐味が充分楽しめそうなゲームと言えるだろう。各種開発物の能力を利用して乏しい資源をやりくりし、全体のバランスを睨みながら、他プレイヤーよりほんのわずかだけ先んじて勝利する。そういうマルチ的ヒリヒリ感が好きな人にはお勧めだと思うよ。
【プレイ日記】友人宅ゲーム会 2024.11.09
【プレイ日記】チャリオッティア会 2024.10.29
【プレイ日記】友人宅ゲーム会 2024.10.26