《櫻井ジャーナル》

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2011.04.27
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 先日亡くなった田中好子さんが主演した映画、『黒い雨』は映画史に残る名作であり、田中さんの「矢須子」は屈指の名演技だと個人的には思っている。

 この作品では、放射能障害を疑われた矢須子の縁談はうまくいかないのだが、これを「差別」や「偏見」という言葉で片づけることには抵抗がある。勿論、矢須子や周辺の人々にとっては理不尽なことだろうが、相手の立場に立てばやむを得ないことである。

 縁談を断った人々を「差別」や「偏見」という言葉で非難するのは簡単だが、偽善ではないだろうか。原作者の井伏鱒二がどのように考えていたかは知らないが、矢須子に向けられた「偏見や差別」を単純に憤ってみても仕方がないと私は思う。

 矢須子をこうした不条理な世界に引きずり込んだ直接的な責任は原爆を投下したアメリカ政府にあるのだが、それだけでなく、原爆が投下されるような状況にしてしまった日本政府も責任を免れない。日本軍に侵略され、略奪と殺戮の犠牲になったアジアの人々から見るならば、原爆投下も日本人とは違って見えるだろう。

 原爆が投下された当時、日本政府が最も関心を持っていたことは「国体護持」。天皇制官僚国家を維持したいということである。そして、この望みは叶えられた。天皇制は形を変えて生き残り、特高/内務官僚を含めて戦前の支配層は戦後、復活していく。「東京裁判」は本当の「戦犯」たちを免責するためのセレモニーにすぎなかった。





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最終更新日  2011.04.27 18:55:42


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