《櫻井ジャーナル》

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2014.04.24
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ジョー・バイデン米副大統領が4月22日にキエフを訪問、クーデター政権は反クーデター派の鎮圧作戦を再開した。これにあわせ、ネオ・ナチの一角を占める右派セクターは本部をキエフから東部の都市、ドニプロペトロフシクへ移動させたという。鎮圧作戦の第2幕でネオ・ナチの役割が大きくなることを暗示している。

 軍事作戦を始める口実として、東部や南部でロシア軍の特殊部隊が活動しているという話をクーデター政権やアメリカ政府は広めようとした。そうした主張を裏付ける 「証拠写真」なるものをニューヨーク・タイムズ紙は4月20日付けの紙面に掲載 したのだが、一見して怪しげな代物。シリアなどで「西側」の体制転覆を正当化するために偽情報を流していた BBCにまで批判されてしまった 。イラク開戦時のジュディス・ミラー記者を思い出すという人もいる。

 ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された写真は解像度が悪くて見にくいのだが、 鮮明な写真 も存在している。つまり、同紙に写真を提供した人物、あるいは組織は事実でない可能性が高いことをことを承知していた。ミスではなく、意図的だった。

 NHKよりマシとはいうものの、BBCも支配層の意に沿うような報道をする。他の国と同じように、1980年代から急速にそうした傾向は強まった。1970年代にアメリカの議会で情報機関の秘密工作が暴かれたことを「反省」し、組織内で情報統制を強化する一方、気骨あるジャーナリストを有力メディアから排除しはじめ、ロナルド・レーガン政権では「プロジェクト・デモクラシー」という思想戦を開始、その結果としてメディアは急速に堕落していった。

 その間、1979年にアメリカとイスラエルの情報機関につながる人脈がエルサレムに集まり、「国際テロリズム」に関する会議を開いている。アメリカ側からは参加したひとりのレイ・クライン元CIA副長官は、「テロ」の原因を抑圧された人々の怒りでなく、ソ連政府の政策、あるいはその陰謀にあると主張しているが、この論法はウクライナでも使われている。クーデター政府に東部や南部の住民が反旗を翻したのは彼らの意思ではなく、ロシア政府が送り込んだ特殊部隊のせいだというわけだ。

 今回はニューヨーク・タイムズ紙の報道を批判したBBCだが、過去を振り返ると似たようなことをしている。例えば、 シリアではアメリカのCNNと同じように、シリア政権を悪役に仕立て上げてNATOの直接的な軍事介入を正当化しようとしていた

 ところが、 「シリア軍の攻撃」をダニーや仲間が演出する様子を映した映像が流出 して「西側」のメディアは赤っ恥をかいた・・・はずだったが、その後も意に介さず、偽情報を流し続けている。要するに、メディアは「恥知らず」ということ。そのBBCから見ても20日付けのニューヨーク・タイムズ紙の報道はひどかったわけだ。

 そうした批判を無視できなくなり、 掲載の2日後にニューヨーク・タイムズ紙は詳しく調べると表明 せざるをえなくなる。つまり、詳しく調べず、政府から渡された写真を垂れ流してしまったということだ。

 勿論、今回の報道が特別だというわけではない。「西側」のメディアは支配層が望む政策、特に戦争を推進するために偽情報を流してきた。アメリカの有力メディアがどのような方針で報道しているのかを示す発言がある。ワシントン・ポスト紙のオーナーだったキャサリン・グラハムが1988年にCIAの新人を前にして次のように語ったというのだ:

 「我々は汚く危険な世界に生きている。一般大衆の知る必要がなく、知ってはならない情報がある。政府が合法的に秘密を維持することができ、新聞が知っている事実のうち何を報道するかを決めることができるとき、民主主義が花開くと私は信じている。」

 現在、問題になっているウクライナの東部や南部はロシア領だった地域で、ソ連時代に幹部の独断でウクライナへ併合させていた。そうした背景があるため、住民にはロシアへの親近感が強かったのだが、今回はキエフでオリガルヒ、つまり西側の「国境なき巨大資本」と結びつき、不公正な手段で短期間に巨万の富を築いた人びとがネオ・ナチと手を組んで実行したクーデターへの反発も無視できない。

 そうした「民意」を潰すため、4月9日にはアルセン・アバコフ内相が48時間以内に解決すると宣言した。力での解決を示唆したわけだが、通告の期限が過ぎてからも立てこもりは続く。ウクライナにはアルファと呼ばれる特殊部隊があり、 暫定政権はこのアルファへ突入を命じたようだが、現地の指揮官が拒否した とも伝えられている。

 そして4月12日、ジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問する。その直後、クーデター政権のアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行は「テロとの戦争」を宣言、軍の部隊をウクライナの東部や南部に派遣したが、住民の反発が強く、部隊の内部から離反者が出るという事態になった。

 軍や治安機関の内部の相当部分がクーデター政権に反発していることは予想されていたことで、クーデター政権も承知していたはず。そこでネオ・ナチのメンバーを中心とする6万人程度の「親衛隊」を設置、それ以外にアメリカの傭兵会社から戦闘員を雇い入れている。ただ、住民の反発や兵士の造反は予想以上だったようだ。





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最終更新日  2014.04.24 15:08:21


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