《櫻井ジャーナル》

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2014.05.08
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 昨年8月21日にダマスカスの近くでシリア政府軍がサリンが使ったと「西側」の政府やメディアは主張、シリアへNATO軍が直接介入する動きを見せていた。「サリン攻撃」の直後、この主張を否定する報告が相次いだが、国連のシリア化学兵器問題真相調査団で団長を務めたアケ・セルストロームは治療状況の調査から被害者数に疑問を持ったと語っている。( PDF

 セルストロームによると、調査団は攻撃の生き残りとされる80名のうち40名から聞き取り調査を実施した。そのうち36名がサリンを大量に浴びたと証言しているのだが、症状や治療の状況を調べると、31名は神経ガスを浴びた場合の特徴だと言われる瞳孔の縮小が見られない。この症状は1立方メートルあたり4ミリグラムのサリンの中に2分間、あるいは1ミリグラムで3分間いると現れるという。つまり、サリンを浴びていないか、浴びていても微量にすぎないということになる。

 サリンを浴びたという31名の血液サンプルを検査した結果はサリンの痕跡を示したとされているのだが、これはごく微量でも検出できる方法を使ったためだと見られている。国連の調査団はサリンを大量に浴びたと主張する人のうち6名の血液からサリンを浴びた痕跡を見つけることができなかったともいう。治療態勢からみても、被害者総数は多すぎる。

 おそらく、最も早く「西側」の主張に反論したのはロシア政府だ。シリアの体制転覆を目指す勢力がシリア政府のサリン使用を主張する中、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使はアメリカ側の主張を否定する情報を国連で示し、報告書も提出した。

 ロシアが示した資料の中には、 反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、毒ガス攻撃を受けたとされるゴータで着弾していることを示す文書や衛星写真 が含まれていたという。

 ミサイル発射から間もなくして、化学兵器をサウジアラビアを結びつける記事が ミントプレスに掲載 された。デイル・ガブラクとヤフヤ・アバブネの名前で書かれたもので、後にガブラクは記事との関係を否定する声明を出すのだが、編集長のムナル・ムハウェシュはその声明を否定する。

サウジアラビアが反政府軍に化学兵器を提供し、それを反政府軍の戦闘員が誤って爆発させたと説明 したという。一連の遣り取りを裏付ける電子メールが残っているともしている。その後、カブラクからの再反論はないようだ。

 昨年10月に入ると 「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話 が流れた。アフガニスタンの反政府軍支配地域で「第三国」がアル・ヌスラなどシリアの反政府軍に対し、化学兵器の使い方を訓練しているとする報告があるとロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は語る。

 12月に 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表 している。反政府軍がサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるというのだ。 国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授 は、化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。

 NATO軍の攻撃予定日が迫る中、ロシアの軍情報機関がゴータでサンプルを採取して分析し、イギリスの軍情報機関へもサンプルを送り、イギリスで分析が行われた。サンプルはシリア軍が保有するサリンとは一致しなかった。この結果はアメリカの統合参謀本部へ知らされたという。

 そもそも、「西側」でもシリア軍が化学兵器を使ったという話に懐疑的な人は少なくなかった。戦闘は政府軍が優勢で、使えばNATO軍の直接的な介入を招く可能性が高く、使う理由がなかったのである。

 結局、アメリカ政府はシリアをNATOで攻撃することを断念、ロシア政府と歩調を合わせるかのように見えた。こうした動きをネオコン(親イスラエル派/シオニスト)は激怒する。そうした中、ウクライナ情勢が急速に悪化し、現在、混乱から戦乱へ移行しつつある。ウクライナで軍事的な緊張を煽ってきたのもネオコンだ。ウクライナはバラク・オバマ米大統領の「師」でもあるズビグネフ・ブレジンスキーが重要視、制圧を主張してきた地域でもある。





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最終更新日  2014.05.08 15:51:43


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