《櫻井ジャーナル》

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2016.03.22
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ベルギーの首都ブリュッセルの地下鉄と空港で爆発があり、30名以上が死亡したと伝えられている。詳細は不明だが、これまでの流れを考えると驚きではない。西側諸国、ペルシャ湾岸産油国、イスラエルなどが中東/北アフリカやウクライナを戦乱で破壊し始めた時からこうした展開は予想され、警告されていた。

 戦乱は難民を生み出し、EUへ流れ込むことは必然だった。そうした難民の中にアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)など軍事訓練を受けた相当数の戦闘員が紛れ込んでいることも知られていた。つまり、今回のような爆破事件が引き起こされることは「想定内」だった。事件後、ベルギーでは原発への攻撃を懸念する声が高まっているが、これも予想されていた。「隣国から攻められる」と主張しながら原発にのめり込む国があるとするならば、そこの主権者は正気でない。

 中東/北アフリカの自立した政権を倒す計画はネオコン/シオニストのもの。1991年に国防次官だった ポール・ウォルフォウィッツはイラク、イラン、シリアを5年以内に殲滅すると口に し、その翌年には国防総省の内部でウォルフォウィッツたち はDPGの草案 という形で世界制覇のプランを作成している。旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジアなどの潜在的なライバルを潰し、膨大な資源を抱える西南アジアを支配しようという計画。EUや日本も自立することは許さないということだ。

 昨年4月に ECIPS(情報政策安全保障欧州センター)は違法難民の問題について警鐘 を鳴らしていたが、西側の政府やメディアはそれを無視していた。トルコに留まっていた難民をトルコ政府がEUへ送り出して「危機」を演出したと言われているが、それに西側の政府やメディアも関係していた可能性がある。

 西側メディアが難民の問題を大きく取り上げたのは昨年9月上旬。 トルコの海岸に横たわる3歳の子どもの遺体 を撮した写真が「悲劇」の象徴として使われるが、その父親は難民の密航を助ける仕事をしていた。



 イタリアで活動してきた秘密部隊はグラディオ。社会不安を煽り、左翼にダメージを与え、治安体制を強化(ファシズム化の促進)しようとしたのだ。アメリカ支配層がヨーロッパを属国化させる計画とも言える。イタリア政府は1990年にグラディオの存在を公式に認めざるをえなくなるが、全体としてこのプロジェクトは成功だった。

 現在、アメリカの支配層は巨大資本が国を支配するシステム、ファシズム体制を世界に広げようとしている。彼らはEUを屈服させるために不安定化を図るだろうと言われていたが、少なくとも結果として、そうした流れになっている。中東/北アフリカを戦乱で破壊する目的のひとつがEUの不安定化だった可能性はある。

 ところで、アメリカ支配層が仕組んだ戦乱で破壊された国のひとつがシリア。2011年3月に戦闘が始まった当時から「内戦」でも「革命」でもなく、外国勢力に雇われた傭兵による侵略だと指摘されていた。シリアを属国化するためにバシャール・アル・アサド政権を倒そうと計画、その口実として西側の政府やメディアはアサドを「独裁者」として描き、自分たちは「民主化」を求める「穏健派」を支援しているかの如く宣伝してきた。

 しかし、そうした「穏健派」が存在しないことはアメリカ軍の情報機関DIAがバラク・オバマ大統領へ報告している。 2012年8月にDIAが作成した文書 によると、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIで、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けていると説明しているのだ。

 ムスリム同胞団は統一された組織でなく運動だというが、その一部が1954年10月にエジプトでガマール・アブデル・ナセルの暗殺を試みて失敗、その後に同胞団は非合法化されている。多くのメンバーはサウジアラビアへ逃れ、そこでワッハーブ派の強い影響を受けたという。アル・カイダ系武装集団に加わっている戦闘員の多くもワッハーブ派だ。

 つまり、どのようなタグが付けられていようと、シリア政府軍と戦う主力メンバーは「過激派」とされるワッハーブ派。DIAの警告を無視してオバマ政権はワッハーブ派を支援してきたのである。そこで、2012年の報告書が作成された当時にDIA局長だったマイケル・フリン陸軍中将は AQI/アル・ヌスラやダーイッシュの勢力拡大をアメリカ政府の決定が原因だと言う わけだ。

 本ブログでは何度も書いていることだが、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュを作りあげ、訓練し、武器/兵器を供給、食糧などの物資を提供してきたのは西側諸国、ペルシャ湾岸産油国、イスラエルなど。

 この構図は1970年代の終盤、ジミー・カーター政権で大統領補佐官を務めていたズビグネフ・ブレジンスキーが考えた作戦に始まる。ソ連軍をアフガニスタンへ誘い込み、そこでサラフ主義者(ワッハーブ派)を中心とした武装集団と戦わせようとしたのだ。そのためにCIAなどは軍事訓練を行い、対空ミサイルを含む武器/兵器を提供していた。

 1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックによると、こうした 軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルがアル・カイダ

 ジョージ・W・ブッシュ政権は「テロとの戦争」を正当化するためにアル・カイダ系の傭兵集団を「悪役」として利用、リビアのムアンマル・アル・カダフィを倒すときには空からNATO軍、地上では アル・カイダ系のLIFG が連携して戦った。その後、LIFGの幹部たちはダーイッシュのメンバーとして戦っているようだ。

 現在のEUは、アメリカの支配層に従うと自分たちの国がどうなるかを示している。





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最終更新日  2016.03.23 14:26:29


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