東京琉球館で2月19日午後6時から「行き詰まった米国の恫喝戦術」というテーマで話します。予約制とのことですので興味のある方は事前に下記まで連絡してください。
東京琉球館
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アメリカのジョー・バイデン政権はロシアや中国を恫喝、軍事的な緊張を高めています。ロシアとの関係を悪化させる政策を打ち出していたバラク・オバマ政権で副大統領を務めていたバイデンなら不思議ではありませんが、ロシアや中国は恫喝に屈しません。そこで恫喝がエスカレートすることになります。
それに対し、ロシアや中国は受けて立つという姿勢です。通常兵器での戦闘ならば、アメリカはロシアや中国には勝てません。アメリカは経済戦争を仕掛けていますが、一線を超えて本格的な衝突になれば、生産を放棄したアメリカに勝機はないでしょう。
戦争になった場合、ヨーロッパや日本を含む東アジアは戦場になります。アメリカでは政府や有力メディアがロシアのウクライナへの軍事侵攻が近いと宣伝する一方、そのウクライナへ部隊を派遣し、武器/兵器を持ち込むだけでなく、アメリカ南部でウクライナの特殊部隊を訓練しています。
しかし、ヨーロッパの雰囲気は違うようです。例えば、クロアチアの大統領は全面戦争へ向かって動き出したならNATO軍へ派遣している自国軍を撤退させると発言、またウクライナの国防省は危機が差し迫っているとする話を否定しました。1月18日にはドイツのアンナレーナ・ベアボック外相はモスクワでロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談しています。
ウクライナをNATOへ加盟させたり、ウクライナ東部のドンバス(ドネツクやルガンスク)を制圧することも核戦争で脅せばロシアは黙認するとでも思っていたのかもしれませんが、見通しは外れたようです。ロシア政府はアメリカ政府に対し、交渉を再開する理由が見つからないと言われました。
ウラジミル・プーチン露大統領は「戦争を望まないが、戦争したいなら受けて立つ」という姿勢です。「戦争が不可避なら先手を打つ」と考えているとも言われています。ロシアは本気でしょう。アメリカの恫喝は限界に達しました。
ロシアが復活したことを世界は2008年8月に知ります。それまでアメリカの私的権力はロシアと中国を先制第一撃で殲滅できると信じていました。北京で夏季オリンピックが開幕するタイミングでジョージア軍が南オセチアを奇襲攻撃したのですが、ロシア軍の反撃で惨敗したのです。この攻撃にはイスラエルとアメリカが深く関係、両国の衝撃は大きかったでしょう。
イスラエルは2001年からジョージア軍へ兵器を含む軍事物資を供給、軍事訓練も行なっていました。訓練していたのはイスラエル軍のガル・ヒルシュ准将(予備役)が経営する「防衛の盾」で、予備役の将校2名の指揮下、数百名の元兵士が教官としてジョージアに入っていたと伝えられています。
供給された物資の中には、無人飛行機、暗視装置、防空システム、砲弾、ロケット、電子システムが含まれ、イスラエル軍の機密文書が使われていたとする証言もあり、作戦を立てたのはイスラエルだとも言われています。しかもジョージア政府にはヘブライ語を流暢に話す閣僚がふたりいました。
そのほか、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズが元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣して軍事訓練を実施、7月にアメリカのコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問します。そして8月の奇襲攻撃。
つまり、2008年のジョージア軍による南オセチアへの奇襲攻撃はイスラエルとアメリカが黒幕。通常兵器による局地戦で両国はロシアに勝てないことを南オセチアでの戦争は示唆しています。
そこでオバマ政権は2010年に戦術を切り替え、正規軍による軍事侵攻からムスリム同胞団を中心とするジハード傭兵による攻撃を始めたのでしょう。この方法はオバマの師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に始めたものです。
アメリカはカザフスタンでもジハード傭兵を使ったようですが、中国の新疆ウイグル自治区でも使おうと画策してきました。ウクライナにもジハード傭兵は入りましたが、あくまでも主力はネオ・ナチ。
現在、ウクライナの周辺ではアメリカ/NATOが軍事的な挑発を繰り返していますが、それと連動してネオ・ナチを含むグループがウクライナ東部で軍事的な活動を活発化させています。アメリカの私的権力は挑発をエスカレートさせていますが、ロシアはその挑発に乗りません。バイデン政権は苦境に陥っていると言えるでしょう。
バイデン政権はロシアや中国を屈服させると決意してルビコンを渡りましたが、両国は恫喝に屈しません。そこで恫喝をエスカレートさせ、両国が設定した「レッド・ライン」に迫っています。アメリカは準備してきた生物戦をロシアや中国に対して始めるかもしれませんが、もし実行したなら、それが致命傷になる可能性があります。
2022年に入って早々、「アメリカ後」のヘゲモニーを誰が握るかという戦いの山場に入りましたが、アメリカの思惑通りには進んでいないようです。そうした点について考えて見たいと思います。