《櫻井ジャーナル》

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2022.02.06
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 アメリカ国務省の報道官を務めている​ ネッド・プライス ​は2月3日の記者会見で、ロシアの偽情報と、モスクワが計画しているかもしれない偽旗作戦に強い関心を持っていると切り出した。1月14日にはホワイトハウスのジェン・サキ報道官はロシア政府がウクライナの東部地区、つまりドンバス(ドネツクやルガンスク)の周辺で「偽旗作戦」を行おうとしているとする情報があると発言していたので、「ロシアの偽旗作戦」はアメリカ政府の公式見解なのだろう。

 プライスの発言に対し、APのマット・リー記者は主張を裏付ける証拠を示すように求めたが、プライスはアメリカ政府の情報機関が機密解除した情報だという言うばかりで、結局、証拠は示せなかった。主張と情報は違うと言われ、イラクを攻撃する前にアメリカ政府が宣伝していた「大量破壊兵器」の話を持ち出されても答えられなかったプライスはCIAの「元高官」だ。

 その翌日、アメリカの有力メディア、​ ブルームバーグはロシア軍がウクライナへ侵攻したとする記事を掲載 ​した。そうした事実はなかったが、インターネット上で指摘されるまで30分にわたってホームページに掲載されていたようだ。「ミス」だとされているが、そうした記事が存在していたことは間違いない。いわゆる「予定稿」が流れてしまったのだろう。

 ウクライナの現体制は2014年2月にアメリカのバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターで成立させた。キエフの実態を知ったクリミアの住民は3月16日に住民投票を実施、80%以上が投票し、その95%以上がロシアとの一体化に賛成した。

 クリミアのセバストポリには黒海艦隊の拠点があり、その制圧はアメリカ政府にとって重要な意味があった。ロシアにとっても重要で、この拠点を確保するため、ロシアは1997年にウクライナと条約を結んでいる。その条約で基地の使用と2万5000名までのロシア兵駐留が認められていて、クーデター当時には1万6000名のロシア軍がクリミアに駐留していた。西側の政府や有力メディアはこの部隊をロシア軍が侵略した証拠だと宣伝していたが、これも「予定稿」だった可能性がある。

 クーデターを行ったオバマ政権で副大統領を務めていた人物がバイデン。大統領に就任して間もない3月10日にNATO加盟国の軍艦がオデッサへ入港、同じ頃にキエフ政府は大規模なウクライナ軍の部隊をウクライナ東部のドンバス(ドネツクやルガンスク)やクリミアの近くへ移動させている。

 3月14日には少なくとも2機のC-17A輸送機がトルコからウクライナへ空輸、トルコ軍兵士150名もウクライナへ入った。4月10日にゼレンスキーはトルコを訪れてレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と会談、その直後にトルコの情報機関は「ジハード傭兵」を集め始めた。

 4月に入るとアメリカ空軍は1週間の間に少なくとも3度、物資を空輸していると伝えられ、4月5日にはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はカタールを訪問、そのカタールの空軍は5機の輸送機を使い、トルコを経由でウクライナへ物資を運んでいるという。

 4月6日と7日にはNATO軍事委員会委員長のスチュアート・ピーチ英空軍大将がウクライナを訪問、9日にアメリカは「モントルー条約」に従い、トルコ政府へ自国の軍艦2隻が4月14日か15日に地中海から黒海へ入り、5月4日か5日まで留まるとると通告した。

 その前にアメリカの軍艦2隻が4月14日か15日に地中海から黒海へ入り、5月4日か5日まで留まると通告されていたが、ロシアの反発が強いため、米艦船の黒海入りはキャンセルされた。

 ロシアの国防大臣はアメリカ/NATO軍がロシアトの国境沿いに4万人の部隊を配置していると指摘、それに対抗してロシア軍は2方面軍と3空挺師団を西側の国境近くへ移動させたと説明。またロシアの黒海艦隊に所属する艦船20隻以上が空軍や防空軍と共同で軍事演習を実施している。アメリカ/NATO軍が何らかの軍事的な行動を起こした場合、ロシア軍は迅速に動けることを示したのだろう。

 その後、アメリカ政府は「ロシアがウクライナへ軍事侵攻する」と主張し始め、その一方でウクライナの現政権は部隊をドンバスの近くへ移動させて軍事的な圧力を強める。同時にアメリカは黒海へ艦隊を入れて軍事演習を実施してロシアを挑発してきた。

 そうした中、ウクライナの国防大臣が辞意を表明し、その一方でネオ・ナチ「右派セクター」を率いる ドミトロ・ヤロシュ が参謀長の顧問に就任したと伝えられている。

 昨年12月に入るとアメリカの偵察機が黒海の上空を何度も飛行、民間航空機の飛行ルートを横切るなど脅しを繰り返し、ウクライナ軍はアメリカ製の兵器を誇示してロシアを挑発している。その前にはアントニー・ブリンケン国務長官がロシアを恫喝、ロード・オースチン国防長官はウクライナを訪問していた。

 そしてバイデン大統領とプーチン大統領は12月7日にオンライン会談を実施、プーチン大統領はNATOの東への拡大は止めるように求めた。アメリカやNATOがNATOの拡大を止めることを保証できないなら、ロシアは自らが拡大できないようにするという姿勢をプーチンは示している。それに対し、バイデンはウクライナのNATO加盟へロシアは口を出すなという態度を示すが、プーチンは自国を守る権利があると釘を刺している。

 おそらく、ロシア政府はアメリカ政府の予想を上回る強さで臨んできた。クリミアは勿論、アメリカ/NATOはドンバス(ドネツクやルガンスク)を軍事的な支配地にすることが困難な状況だ。ウクライナの特殊部隊をCIAが2015年からアメリカの南部、ドンバスにはアメリカの傭兵会社アカデミー(ブラックウォーター)に所属する戦闘員も入っているようで、そうした訓練を受けた部隊が何らかの行動を起こす可能性はある。それをロシア側が明らかにした場合、それは偽情報であり、偽旗作戦だとアメリカ側は宣伝することになるだろうが、その下準備をアメリカの政府や有力メディアはしているようだ。

 1月26日にロシア、ウクライナ、フランス、ドイツの代表がパリでウクライナ情勢について討議、事態を平和的に解決することで合意。ウクライナの​ ウォロディミル・ゼレンスキーは西側の記者に対し、侵略が差し迫っているという間違った警告はウクライナの経済を危険な状態にすると発言、パニックを作り出そうとしないように求めた ​が、アメリカ政府は無視している。






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最終更新日  2022.02.06 14:11:13


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