ネオコンの宣伝機関的な色彩の濃いCNNの依頼で6月13日から7月13日にかけて実施された世論調査によると、 バイデン政権の仕事ぶりを認める人は全体の38% にすぎず、認めない人は62%に達する。大統領に就任して間もない2021年4月に認める人が53%いたことを考えると、大幅な落ち込みだ。バイデン政権からアメリカの有権者は離れた。
分野別に見ると、認める人が最も少ないのは「インフレーション」の25%で、「経済」も30%。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)対策」として打ち出した政策によって人の動きが厳しく制限され、社会は収容所のようになった。そのひとつの結果として経済活動は麻痺して企業は倒産、人びとは失業、ホームレスや自殺者が増加している。
アメリカの従属している国々でも似たように、政府への支持低下が起こっている。例えば、イギリスではボリス・ジョンソン首相が辞任、フランスでは6月の議会選挙でエマニュエル・マクロン大統領の与党「LREM」が大幅に議席を減らしているが、いずれの理由もおそらくアメリカと同じだ。
アメリカをはじめとする国々て行われている政策は資本主義を「大々的なリセット」することが目的なのだろうが、リセットする前に迷走し始めている。このリセットを宣言した WEF(世界経済フォーラム)のクラウス・シュワブは2016年1月にスイスのテレビ番組でマイクロチップを脳へ埋め込むことで外部の巨大コンピュータと人間をつなげるという構想も明らかにした 。いわば人間の端末化だ。
こうした発想の背景には優生学がある。イギリス人のフランシス・ゴルトンから始まるとされているが、個人というより、そうした考え方のグループが存在していたというべきだろう。ゴルトンのいとこにあたるチャールズ・ダーウィンもその中に含まれている。
言うまでもなく、ダーウィンは『種の起源』を書いたことで知られている人物。最近の研究報告を読むと、生存競争において有利な種が「自然選択」によって残り、繁栄するというほど自然界は単純でないようだ。
そうしたことが自然科学の世界では明らかになってきたが、社会科学の世界では様子が違う。イギリスではハーバート・スペンサーが適者生存を主張、それがアメリカの支配層に受け入れられた。ビル・ゲーツやテッド・ターナーを含むエリートは「人口論」を信仰しているが、これは「劣等な人間を駆逐する」という発想からきているようにも思える。
富豪や権力者は選ばれた人間だということ。「神は人類のうち永遠の生命に予定された人びと」を選んだが、「これはすべて神の自由な恩恵と愛によるものであって、決して信仰あるいは善き行為」などのためではない(ウェストミンスター信仰告白)というわけだ。
経済社会は競争の場であり、勝利者が生き残り、さらに富という報酬が与えられ、敗北者は獅子の餌食になるというのだ。スペンサーたちによると、競争で強者が生き残ってその才能が開発され、その一方で弱者は駆逐される。弱者に無慈悲であればあるほど社会にとっては「優しい」のだという。(J. K. ガルブレイス著、鈴木哲太郎訳『ゆたかな社会』岩波書店、2006年)
キリスト教の聖典である新約聖書のマタイによる福音書やマルコによる福音書では「金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」と書かれていて、富を蓄積すること自体が良くないとされているのだが、それを否定している。
優生学は19世紀のイギリス支配層に蔓延していたが、信徒のひとりがセシル・ローズ。彼は1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に『信仰告白』を書いた。その中で彼はアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張、領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するとしている。
当時、イギリスを動かしていたのはローズのほか、彼のスポンサーでもあったネイサン・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット(エシャー卿)。その後、アルフレッド・ミルナー(ミルナー卿)が中心的な存在になった。
この優生学がアメリカへ波及するのだが、その信奉者を「白人至上主義者」と言うことはできない。彼らが優れた種だと考えているのはゲルマン/北欧系で、その中にアングロ・サクソンも含まれている。日本人が「白人」だと考えている集団の中にも差別の対象になっている人が少なくない。ナチスもそうした優秀な種を想定、「アーリア人」というタグをつけた。彼らが信奉した優生学の発祥地はイギリスだ。
こうした思想に基づいて侵略戦争が展開され、破壊、殺戮、略奪が繰り広げられた。人種差別はそうした歴史と密接に関係している。こうしたアングロ・サクソンにアジアを侵略する拠点を提供し、戦闘員を供給したのが日本に他ならない。