ウクライナの現体制は2014年2月のクーデターで誕生した。その体制の現大統領であるウォロディミル・ゼレンスキーは好戦的な発言を繰り返しているが、追い詰められていることは間違いない。 ドイツの有力誌「シュピーゲル」はウクライナ側の抵抗が7月いっぱいで終わり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できるとする同国の情報機関BND(連邦情報局)の分析を紹介 していた。
少しでも戦闘を引き伸ばしたいアメリカやイギリスの政府はHIMARS(高機動ロケット砲システム)、M270-MLRS(M270多連装ロケットシステム)、空対地ミサイルのブリムストーン、あるいはM777榴弾砲といった兵器を供給、また ロシア側の動きをリアルタイムでウクライナ軍へ伝えている という。ウクライナ軍の情報機関で副長官を務めるバディム・スキビツキーによると、偵察 衛星の写真も受け取っている 。その一方、情報収集活動しているロシアのスパイを排除するために米英は追跡しているという。
EUのジョゼップ・ボレル外相(外務安全保障政策上級代表)はスペインのエル・パイス紙に対し、ロシアを勝たせないためウクライナを支援しなけらばならないと主張、それにともなう代償の支払いをEU市民は厭うべきでないと語った。この発言でもわかるが、ボレルはアメリカ政府の政策に従うタイプの人間である。
ロシア政府は昨年から繰り返しアメリカ/NATOが自国の安全を脅かさないことを保証する文書を作成するように求めていた。ウクライナへNATOが拡大することは新たなバルバロッサ作戦の開始を意味すると考えているからだ。
今年1月10日にもアメリカとロシアの政府高官がウクライナ情勢について話し合っているが、その3日前、 アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官やNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務局長はロシア政府の要求を拒否 、ウクライナのNATO加盟に文句を言うなとする姿勢を示した。 ボレルも自分たちの行うことにロシアは口をはさむなと発言 していた。会議後、 ストルテンベルグはウクライナをめぐり、NATOはロシアとの軍事衝突に備えなけらばならないと口にしている 。ストルテンベルグもボレルと同じようにアメリカの操り人形だとみなされている。
ウクライナの軍や親衛隊がロシア軍に勝つ可能性は極めて小さいことを理解しているであろうアメリカやイギリスは戦闘を少しでも引き伸ばそうとしている。最後のひとりが死ぬまでウクライナ人は戦い続けろという姿勢だ。所詮、ウクライナ人は彼らにとって道具にすぎない。ウクライナという国が破壊され、人が死滅しても構わないはずである。
アメリカやイギリスはウクライナを使ってロシアを疲弊させようとしていることは確かだろうが、それだけではないように思える。
ウクライナでの戦争、それを口実にしたアメリカの「制裁」でロシアはさほどダメージを受けていない。最も痛手を被っているのはヨーロッパだ。EUの上層部はアメリカの命令に従っているが、それによって社会は大きな損害を受け、庶民が不満を爆発させても不思議でない状況になっている。アメリカが行っている「制裁」のターゲットはヨーロッパだとしか思えない。ヨーロッパも彼らの潜在的なライバルであり、最終的には潰す対象だ。ふたつの世界大戦でアングロ・サクソンはロシアとヨーロッパ諸国を互いに戦わせ、弱体化させたが、同じことを繰り返そうとしているようにも見える。勿論、日本も米英の潜在的ライバルであり、中国と潰し合いをさせられる可能性がある。