《櫻井ジャーナル》

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2022.11.01
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 アメリカのバラク・オバマ政権は2014年2月、ネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。ヤヌコビッチはウクライナの東部と南部を支持基盤とする政治家で、アメリカは2004年から05年にかけての反ヤヌコビッチ工作、いわゆる「オレンジ革命」でこの政治家を排除している。

 ヤヌコビッチがアメリカの支配層から嫌われていた理由のひとつは彼が欧米巨大資本の利権にとって目障りな存在だったからだ。ウクライナから利益を吸い上げることは勿論だが、それだけでなくEUとロシアの関係を断ち切ることも目的だった。

 EUとロシアを結びつける最大の要因は天然ガスにほかならない。それを輸送するパイプラインの多くがウクライナを通過しているので、そのウクライナを支配することで天然ガスの輸送を止めてしまおうとしたわけだ。そこでドイツとロシアはウクライナを迂回するためにノード・ストリーム(NS1)とノード・ストリーム2(NS2)を建設したのだが、その2本のパイプラインが9月26日に破壊された。これはドイツへの攻撃だと言える。

 パイプラインを管理しているロシアのガスプロムは異常をアラームで知るのだが、詳しい状況は理解できなかった。​ そのアラームが鳴った1分後、イギリスの首相だったリズ・トラスはiPoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送っている ​。この情報は10月30日に報じられたが、その前日、ロシア国防省はこれらのパイプラインを破壊したのはイギリス海軍だと発表、トラスはその4日前に辞任している。

 流出(爆破)箇所はボーンホルム島の近くだが、その近く(NS1から約30キロメートル、NS2から約50キロメートル)にアメリカ海軍の強襲揚陸艦「キアサージ」を中心とする船団がいて、キアサージから飛び立ったと思われるアメリカ軍のヘリコプターが9月上旬にパイプラインの上空を飛行していたことからアメリカ軍に疑惑の目が向けられた。

 6月にはNATOがバルト海で軍事演習BALTOPS22を実行、その際に​ ボーンホルム島の近くで無人の機雷処理用の潜航艇を使った訓練 ​が行われていた。武装した無人の機雷処理用潜航艇は同じ場所で2015年11月にも発見されている。

 そしてNS1/2が爆破された直後、ポーランドで国防大臣や外務大臣を務めたラデク・シコルスキーは「ありがとう、アメリカ」と書き込んでいる。シコルスキーはその後、ノード・ストリームの破壊はプーチンの策略の余地を狭めるとも書き込んだ。ロシアは再稼働できることがEUへのプレッシャーになることをシコルスキーは理解していると言えるだろう。





 トラスのブリンケン宛てメッセージが報道される前日、クリミアのセバストポリにあるロシア海軍の黒海艦隊をキエフ政権は9機のUAV(無人機)と7隻の無人艦で攻撃した。UAVは全て撃墜、無人艦も破壊したとロシア政府は発表している。ロシア側によると攻撃を実行したのはウクライナの第73海軍特殊作戦センターの隊員で、そのメンバーを訓練したのはオチャコフにいるイギリスの専門家だという。この攻撃も人びとの関心をトラスのメッセージから逸らすことが目的だったのかもしれない。パイプラインの爆破はドイツに対する攻撃にほかならないからだ。

 ジョー・バイデン政権がNS1とNS2を止めたがっていたことは事実。​ 今年1月にはビクトリア・ヌランド国務次官が ​、​ 2月にはジョー・バイデン大統領がパイプラインを止める意思を示している ​ものの、実際はアメリカ政府を後ろ盾としてイギリス政府が実行した可能性が高い。

 シコルスキーはイギリスを援護しようとしたとも理解できるが、その経歴を見ると理由が浮かび上がってくる。​ この人物は1980年代の前半にオックスフォード大学で学んでいるが、その際、学生の結社「ブリングドン・クラブ」のメンバーに選ばれている ​。​ ボリス・ジョンソンやデイビッド・キャメロンも1980年代にこの結社のメンバーだ ​。このクラブの人脈は今も生きているはずだ。






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最終更新日  2022.11.01 00:00:09


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