マーク・ミリー統合参謀本部議長が述べたように 、ウクライナ軍がロシア軍に勝利する可能性は小さい。ウォロディミル・ゼレンスキー政権がドンバスへ送り込んでいた軍や親衛隊は4月から5月の段階で壊滅、兵士を補充するために18歳から60歳の男子が出国することを禁じて動員の対象にしていたが、すでに45歳以上の男子も戦場へ駆り出されている。
アメリカ/NATOは兵器だけでなく軍事衛星からのデータを含む機密情報を提供、通信システムも供給し、今では指揮もNATOが行なっていると言われているが、それでもウクライナ軍にはロシア軍と戦う能力はない。NATO軍かアメリカ軍をロシア軍と直接戦わせなければならない状態なのだが、それは世界大戦、つまり核戦争を意味する。
そうした中、ポーランドのプシェボドフが2機のミサイルで攻撃されて2名が死亡したと同国政府は発表、ウクライナ政府ともどもロシア政府を批判している。このミサイルはS-300防空システム用の5V55K。射程距離は75キロメートルしかない。ちなみにウクライナ西部の都市リビウからミサイルの到達地点までが約70キロメートル。つまりロシア軍が撃った可能性はゼロに等しい。
問題の時、NATOはAWACS(早期警戒管制機)のE-3Aを飛行させていたので、ミサイルがどこから発射されたかを知っている。アメリカの大統領も軍もロシアが発射したとする話に否定的な理由はそこにあるだろうが、イギリスのメディアは「ロシアがやった」と宣伝している。
9月26日にノード・ストリームとノード・ストリーム2が爆破されたが、ロシア国防省はイギリス海軍が実行したと10月29日に発表した。その日にクリミアのセバストポリをキエフ政権が9機のUAV(無人機)と7隻の無人艦で攻撃したとされているが、ロシア政府によると攻撃したのはウクライナの第73海軍特殊作戦センターの隊員で、その隊員を訓練したのはオチャコフにいるイギリスの専門家だという。
10月8日にクリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)を爆破したのはウクライナのSBU(ウクライナ保安庁)だとロシア政府は主張しているが、計画したのはイギリスの対外情報機関MI6(SIS)だという情報も流れていた。イギリスは破壊活動や情報活動でアメリカの師匠的な存在だが、その背後には巨大金融資本がいる。
MI6やその弟子であるCIAは情報操作を利用したイメージ戦争も得意だ。アメリカは東南アジアやラテン・アメリカにおける戦争で殺戮と破壊のイメージがついた。そうしたイメージを変えるためにメディア支配を強化、ロナルド・レーガン政権は「プロジェクト・デモクラシー」なるタグを使い始める。アメリカに「デモクラシー」や「人権」というイメージを結びつけようというわけだ。この工作はアメリカとイギリスが連携している。
このプロジェクトを始めるためにレーガン大統領は1983年1月にNSDD(国家安全保障決定指示)77に署名、プロジェクトの中枢機関としてSPG(特別計画グループ)をNSCに設置した。ここが心理戦の中心になる。(Robert Parry, “Secrecy & Privilege”, The Media Consortium, 2004)
すでに有力メディアをCIAは影響下に置いていたが、さらにNGOを設立、あるいは乗っ取り、国際機関の支配も進めた。最近、米英支配層の手先として「活躍」しているのは「紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表」のプラミラ・パッテン。今でもドネツク州のマリウポリでロシア兵が女性に対して性的な犯罪行為を「軍事戦略」として行なっていたと発言していた。これはゼレンスキー政権の主張をそのまま口にしただけのことだ。
彼女はリビアを侵略するときに使われたバイアグラに関する作り話を使い回していたが、4月中旬にロシア軍が制圧した際、解放された住民は異口同音に逆のことを証言していた。親衛隊の主力でネオ・ナチを中心に編成されているアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)による残虐行為を批判していた。パッテンは自身の発言についてAFPの記者に証拠が示されていないと指摘され、 自分はニューヨークのオフィスにいて調査はしていないと開き直っている 。この女性、モーリシャス国籍だが、イギリスで教育を受けた法律家だ。