ソ連消滅後、旧ソ連圏は米英をはじめとする西側諸国の強大な私的権力に支配されるようになった。その手先になったオリガルヒにはミハイル・ホドルコフスキー、アレックス・コナニヒン、ロマン・アブラモビッチ、ボリス・ベレゾフスキーが含まれている。ベレゾフスキーは40歳代の半ばだったが、残りは20歳代の後半。背後に黒幕がいることは明らかで、こうした勢力はクレムリンを支配、ロシアの富を盗み続けた。
この構造を変えたのがウラジミル・プーチンをはじめとする勢力。オリガルヒに対し、政府の命令に従うように要求、従わない場合は不正行為を摘発していった。そこで、少なからぬオリガルヒはイギリスやイスラエルなど国外へ逃亡している。ここからロシアの再独立は始まった。
中国も当時のロシアと同じ問題を抱えている。西側の巨大資本と結びついた富豪が北京の政策を無視、地方政府とも手を組んだ。そのために新自由主義は続き、バブルを生み出すことなった。こうした私的権力の問題を解決できなければ中国は真の意味で独立することはできない。
1933年3月から45年4月までアメリカ大統領を務めたフランクリン・ルーズベルト大統領は1938年4月29日、人びとが容認する私的権力が民主主義国家そのものより強くなると民主主義国家の自由は危うくなり、その本質はファシズムだと主張している。1990年代のロシアや1980年代以降の中国は西側諸国と同じように、ファシズム体制に近かったと言えるだろう。
そうした実態を示す出来事が北極海で起こっている。ロシアが進めているLNG(液化天然ガス)2プロジェクトをアメリカ政府は潰そうとしている。 このプロジェクトに参加したなら「制裁」を課すと恫喝している のだが、インドのムンバイに登録されているゴティックとプリオ・エナジーの2社が制裁の対象になった。LNG2プロジェクトで生産されるLNGを「輸出しようとした」疑いだとされている。
ロシアはインド企業に参加を呼びかけているものの、まだインドからの参加はない。ただ、インドはロシア産原油の最大の顧客で、駐露インド大使ビナイ・クマールは9月5日、ウラジオストクで開かれたEEF(東方経済フォーラム)で、インドはロシアからのエネルギー輸入を増やしたいと述べている。
それに対し、中国のエネルギー企業はLNG2プロジェクトに対するアメリカの「制裁」に従うことで同意、中国の銀行はロシアとの間の支払いを禁止した。また、TikTokはロシアのメディア、RTとSputnikのアカウントを削除させている。ロシア政府はTikTokの決定に怒っているようだが、中国の政府と経済界の力関係にも関心が集まっている。
中国にとってロシアが重要な戦略的な同盟国である事実に変化はないが、アメリカから完全に独立しているわけでもない実態が再確認されたとは言える。今後、中国でも私的権力をどのようにコントロールするかが問題になってきそうだ。
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【 Sakurai’s Substack 】