鈴木 セイヤ 0
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競馬学校の1年生が先週一週間、美浦トレーニングセンターへ研修に来ていました。数週間前には栗東にも一週間行ってきたそうです。本格的な厩舎実習は9月からだそうですが、その前に雰囲気だけでもといったところでしょうか。みんなまだ所属厩舎は決まっていませんが、仮の所属として各厩舎に配属され一週間を過ごしていました。国枝厩舎には所属としては誰も来ませんでしたが、調教を手伝ってもらいました。研修最終日の日曜日には時計になるような速いスピードの調教にも騎乗。水曜日の追い切りや日曜日の早いところでは時計感覚がかなり重要になります。しかし彼らはきちんと調教師の指示通り半マイル56秒や5ハロン72秒といった調教をこなしていました。正直言って驚きです。時計感覚は馬場が違えば全く異なるものです。普段競馬学校の馬場で15-15や追い切りをしていてもあまり参考になりません。競馬学校はダートですし、トレセンの馬場に比べたら小回りです。流れる景色も違いますから相当に感覚に違いがあるのです。またトレセンはやたらと広いですから馬場にあるハロン棒だってとても複雑です。隣接した馬場(BコースとCコースなど)のハロン棒もありますからね。実際騎乗してもらったのは坂路とBコース(ウッドチップ)。乾いたウッドチップは想像以上に力が必要でダートの時計感覚で騎乗すれば相当遅くなってしまいます。またスタート地点が計測開始の地点よりかなり遠い場合と、駈足におろしてすぐに計測開始になる場合では馬のバテ方も全然違いますから。よく初心者に完歩を算えて時計を合わせるやり方を勧めます。1ハロンを33~34完歩で走っていると大体15秒。しかしこの「大体」が命取りで、お馬さんよってかなり歩幅の差があるものです。完歩に頼りすぎても時計感覚は完全には身につきません。長くなりましたが、それほどもまでに初めての場所や初めて騎乗する馬で時計をぴったり合わせるのは難しいのです。でも国枝厩舎を手伝ってくれた彼は、それを完璧にやってのけました。お見事。日頃頑張っている成果が出たのでしょう。彼らがトレセンに帰ってくる日を楽しみに待ちたいと思います。頑張れ!
2012年01月30日
パララサルーちゃんが菜の花賞を快勝しました。このレースは数年前ピンクカメオさんが勝ったレースです。ここから桜花賞へ向かい、ついにはG1NHKマイルカップを手にしました。当時はオープンのレースでしたが今年は500万円下の競走ですのでどこかトライアルもしくは重賞に向かって桜花賞へとなることでしょう。男の子のベストディールくんに続き楽しみが増えました。さて今夜は東京都心でも積雪があるようです。夜遅くから未明にかけてとニュースでは伝えていましたが。つまり明日の早朝は関東地方には雪が残る可能性がある。降雪時には晴天の夜ほどの冷え込みはありません(氷点下5℃とか6℃ということはきっと無いでしょう)。しかし積雪は調教に重大な支障をもたらす事があります。こういう状況の時、夜を徹して競馬会はトレセンの調教施設の整備に当たります。しかし降雪が続けば当然整備は追いつきません。雪を除けても除けてもその上から降ってきますから。そうなると限られたコースを徹底して整備し、そのほかのコースは諦めるしかありません。全てのコースがクローズという最悪の結果にならないように。ですから今夜の天気次第では明日もどこかのコースが閉鎖される可能性はあるでしょう。仮に使えたとしてもダートコースはグチャグチャの悪いコンディションでしょう。オールウェザー馬場として有名なポリトラックコースのコンディションだって読めません。とにかくいつもような平時とは違いますから、何事も慎重に考えなくてはなりません。事故を起こしてしまったり、お馬さんたちが怪我をしないように。救いは、明日が追い切りの日ではないということくらいかな。調教時間中も雪が残ると、馬場や運動場に積もった雪がお馬さんの体重で圧着されて蹄の裏に氷の塊となって詰まってしまいます。私たちはそれを「下駄を履く」といって嫌います。なぜならコンクリートやアスファルト、パドックなどに用いられている舗装材の上をその状態で歩くととにかく良く滑る。馬場にはそのパドックの舗装材のような材質で舗装された地下道があります。その地下道を通って各コースへと出て行きます。その際当然のことながら上り坂、下り坂があるわけです。なんせ怖いのはその下り坂。そこへ下駄を履いた状態で突入するとお馬さんが横転してしまうのではないかと思ってしまいます。ですからとにかく明日の早朝の天気が今から心配でたまりません。なるべく雪が降りませんように。
2012年01月23日
先週寒い寒いと書きましたが、その先週はさらにその上を行く寒さが日本を襲いましたね。美浦では-7.5℃を記録したそうです。私は-5℃の表示までしか目撃しませんでしたが、トレセンの中で記録された数字だそうです。その様な気温の中で騎乗すると、防御が薄い手先や足先は寒さや冷たさではなく痛さとの戦い。キャンター中などには拳はほぼ同じ形を維持しながら(動きがないまま)氷点下の空気の中を時速40kmほど(追い切りなら60km以上)のスピードで突き進みます。血流が悪いところに来て、冷却されるわけですからね。痛いのです。でもあまり分厚い手袋をすれば乗りにくいですし、靴下を何足も重ねて履けばブーツに足が入りません。寒いって本当に嫌ですよ。そんな愚痴はさておき、今年に入って早くも5開催日が消化されました。今年も40勝、獲得賞金10億円を目標にみんなで頑張っているところです。幸先良くベストディールくんが京成杯を優勝することができました。クラシックへ向けて期待が膨らみますね。しかし、昨年は39勝(地方交流含む)。獲得賞金は6億9500万円強。重賞勝ちはアパパネのヴィクトリアマイルとマイネルキッツのステイヤーズステークスの2勝。昨年も同じ目標設定ではありましたが今ひとつの成績でした。今年こそは目標の数字を超える。そう信じています。昨年は2着が勝ちとほぼ同数の37。私自身はここを何とかせねばと感じています。2着という着順は、お馬さんたちにとっては非常によく頑張った結果です。馬主さんからみてもある程度の評価をいただける結果かも知れません。しかし私たちには頑張って走っているお馬さんに栄光を与えられなかった悔しさが残ります。常日頃から自分たちと接していて、頑張っている姿を肌で感じている彼らに対し申し訳なく思える結果です。1着と2着。そこには恐らく皆さんの想像以上に大きな差があります。しかしそれは自分たちがやってきたことの結果でもあるのです。昨年の国枝厩舎は2着が多かった。それは自分たちの仕事の結果です。何とかせねば。もう一度基本に立ち返る、今以上に丁寧な調教をする、お馬さんの怪我や病気を未然に防ぐ。当たり前のこととして以前から取り組んでいたことです。しかし、昨年の結果を肝に銘じて全ての仕事に対し「本当にそれで良いのか?」と自分たちを問いただしながら今年は進んでいきたいと思います。さて、今年もがんばろっと。
2012年01月16日
寒の入りを迎え例年以上に寒いこの冬も、さらに寒さを増しています。毎年いっているような気がしますが、美浦って周辺の土浦やつくばなど比べても寒い場所にあるんです。霞ヶ浦の湖畔にある影響なのか寒さが厳しく雪が少ないのが特徴とも言えるでしょう。今年は-4℃を一瞬記録したかな。先ほども話に出たつと浦やつくばなどよりも深夜や早朝は1℃から2℃ほど低いようです。太陽が昇って来れば厚着で何とかしのげますが、まだくらい夜明け前は何を着ていてもといった感じです。私は極めて寒がりの暑がりですから(単なるわがままですね)、人並み以上に着込んで朝の調教に望んでいます。ユニクロのヒートテックの肌着を2枚重ねて、デサントの防寒仕様になっている長袖Tシャツを一枚。その上にプロテクターを着て、ユニクロのウルトラライトダウン。さらにその上に裏地にフリースを貼り付けてある極厚手の厩舎ジャンパー。下半身はやはりヒートテックの肌着を2枚。その上に防風ジーンズ。冬用の厚手の靴下を着用しています。そして首もとから顔を覆うようにネックウォーマー。もうシルエットだけではどこの誰だかわかりませんね。土曜日や日曜日などの開催日は馬場開場が通常よりも早い4時~4時30分。今の日出は朝7時前くらい。これだけ重ね着していても・・・手や足は痛くなってしまいます。寒いや冷たいではないんですよ。痛いのです。特に速歩やキャンターなどで少し手の形を固定し血流が悪い状態が長時間続くと極めて厳しい。しばらくはその痛みが続きます。次の強い調教に移るためあぶみの長さを変えようとしても手が思うようには動きません。それくらい痛いのですよ、ホントに。好きでやっている仕事とは言え、この時期の極寒と寒い季節の雨だけは勘弁願いたいものです。北海道で読んで下さっている皆様、この軟弱者を笑ってやって下さい
2012年01月09日
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。中央競馬は恒例となっている1月5日の開催で今年も開幕いたします。昨年は未曾有の大震災に見舞われた日本。被災地である福島競馬場は、あの日以降未だ開催が行われておりません。しかし今年4月7日から始まる福島開催、いよいよ東北地方に中央競馬が帰ってきます。競馬は平和があってこそ。そのことを再認識させられた災害でしたが、その平和が少しずつでも帰ってきている。この競馬再開はその象徴となり被災地の方々の希望となる事でしょう。競馬の持つ復興への大きな力。それは、素晴らしい競走馬たちをレースに送り出す事によって見る人々を魅了する力。より魅力のある競馬を提供し、見る人々の勇気や希望を生み出す力の一翼を担えればと思います。被災地の皆さんに一日も早く平静な日々が訪れますよう願っております。さてその1月5日の開催に向けて東西のトレセンでは、今日から調教を再開しています。といってもお休みをもらったのは元日だけです。大晦日も当然調教はありましたから。そして5日の次の開催日は8日、9日ですから次のお休みは10日です。ちょっといつもより長いですが、頑張りましょう。国枝厩舎はフェアリーステークスにパララサルーちゃん、京成杯にベストディールくんがスタンバイ。今年のクラシック戦線に乗っていけるかが懸かっていますので、皆さん大いに楽しみにしていて下さいね。どちらもそれだけの期待をしてもいいくらいのお馬さんたちですから。大きな夢を見させてもらいましょう!
2012年01月02日
すでに報道にあったようにマイネルキッツくんは鼻出血のため有馬記念への出走を回避しました。秋シーズン3戦目を迎えるに当たり、至って順調に調整されてきました。体調も良く、活気に満ちあふれキッツくん自身もハッピーな毎日を過ごしておりました。しかし、一寸先は闇。追い切りを終えて上がってきたキッツくんの右の鼻孔からわずかに血液が。すぐさま競走馬診療所へ向かい内視鏡検査を受けます。外傷性ではなく肺からの出血であることが確認され、大事を取って出走を断念しました。さて、皆さんも競馬に長く携わっていれば必ず耳にするであろう鼻出血という病気。今日は少し詳しく紹介しますね、良い機会ですから。鼻出血。読んで字のごとく鼻孔からの出血です。人間の場合は多くが鼻孔内部の鼻粘膜の血管に傷が付いて出血するものです。それは、血管がふさがればすぐに出血は治まります。つまり外傷性の鼻出血ということになります。これはお馬さんにも時々起こり、鼻をどこかに擦ったりぶつけたりした場合に見られます。この場合は内視鏡検査で鼻孔の入り口付近に出血が見られ、そこより奥には血の跡が見られません。これはよほどひどくない限り安心です。しかし、問題になるのは今回のキッツくん場合のような肺からの出血です。これを運動誘発性肺出血といいます。実は詳しいメカニズムは解明されていないのですが、肺の中の肺胞にある毛細血管が破れ出血しているという見方が一般的です。馬の運動中の肺動脈圧はかなり高いため、血管に何らかの原因により脆弱な部分があると出血しやすいということ。ですから競走中や追い切りなどの激しい運動時に多く発症し、発症すると呼吸が困難になるため失速してしまいます。つまりフルに能力を発揮することができなくなります。しかし実は、この運動誘発性肺出血は潜在的にはかなり多くの馬に発症しているといわれています。それは鼻孔からの出血を伴わない程度であるため、誰も気付いていないだけ。ですから、微量でも鼻孔から出血が見られるということは、肺の内部では相当の量の出血があるということです。馬の肺は良く金属疲労に例えられ、多く収縮を繰り返せば破れやすいし加齢と共に血管が硬くなれば破れやすい。キッツくんの場合は、やはりステイヤーズステークスで3分50秒も頑張った後遺症とも言えるでしょう。ですからここはきっちり休養を取って、破れた血管がしっかりと修復するのを待てば大きな問題ではありません。しかし一度破れた血管は修復を待たねば、弱く脆いものです。そのような状況から今回の有馬記念は回避ということになりました。一つの大きなレースを回避する事は非常に残念ですし、悔しくもあります。しかし、大きな故障や致命的な故障を発症しもう二度と走れなくなってしまったお馬さんたちを私は嫌というほどたくさん見てきました。そんな子達に比べたら、この程度の事で良かったとさえも思えます。またキッツくんに会える日を楽しみにしていて下さい。それではみなさん良いお年を!
2011年12月26日
早いもので今年もいよいよオーラス有馬記念です。昨年こそ出走が叶わなかった国枝厩舎ですが、今年はマイネルキッツくんで参加を予定しています。2006年ウインジェネラーレで初参戦。ディープインパクトの引退レースで盛り上がった年でしたね。近走の成績が振るわなかったため、周囲からは雑音が聞こえてきました。でもジェネさんは頑張りました。3コーナーで蛯名さんは「ひょっとして」そう思ったそうです。競走から戻ってきての第一声は「夢見た、何とかなるかと思った」でした。何だかとても嬉しかったのを覚えています。あれだけの名手ですし、きちんとレース中の馬の様子や手応えなどを整然と話ししてくれる方ですから。背骨の骨折や片眼の失明、慢性的な球節の不安を乗り越えての出走でしたから。たくさんの勇気をもらった思い出です。そして翌2007年はなんとなんとのマツリダゴッホくんでした。強敵相手にまさか勝つとは。そんな感じで、レースの後も「やった、やった」と言っていた記憶があります。その後に味わう苦しみも知らずに。2008年はディフェンディングチャンピオンとして迎えます。日経賞、オールカマーを勝ち中山の鬼としてどうしても譲れない、そんな思いもありました。とれるチャンスの一番大きいG1だと。しかし現実はそんなに甘くはありませんでした。12着惨敗。終始折り合いに苦労し、外外を回らされる展開となってしまいました。G1って本当に甘くない。そう感じたレースでした。そして2009年はオールカマー3連覇を達成し引退も決まり、最後のチャンス。3~4コーナーで一気に先頭へ。ゴッホらしい素晴らしい見せ場たっぷりのラストランになりましたね。そしてその有馬記念に出走していたのがゴッホくんと同級生のキッツくんでした。ゴッホくんは3年連続の出走、一方のキッツくんは6歳にして有馬記念初出走。しかし結果はゴッホくんよりも前でゴールの5着。大健闘でした。そしていよいよ8歳にして今年、有馬記念へ2度目の挑戦。体調は万全。中山2500mは相性も良いコースです。相手は三冠馬に現役最強馬。甘くはない。でもチャンスはある。いままで国枝厩舎が挑戦し続けた有馬記念。ゴッホくんが、ジェネさんが教えてくれたこと。その恩を返せるように、この一週間をキッツくんと共に楽しみながら過ごしたいと思います。
2011年12月19日
香港のレースは残念な結果に終わってしまいました。アパちゃんは14頭立ての13着。力を発揮出ずに終わってしまった感じです。このせいにしてはいけませんが、やはり出国時のトラブルは余分でしたね。機内で15時間の待機ですから。到着してからもアパちゃんは至って元気だったそうですから、そのせいだけではないのでしょうけれど。一つ考えられるのは、デビュー戦の福島以来の当日輸送のない競馬だったこと。2歳の頃は競馬も調教もよくわかっていなかったのでしょう。しかし今となっては彼女が「今日これから競馬なんだ」と理解できる状況をしっかり演出してあげることが大事なのかな。府中牝馬ステークスの時も、レース前に栗東に行かなかった事は大きかったと思いますし。物心ついてからはいつも休み明けは栗東でしたからね。馬は習慣の動物と言われます。馬にとって最適なリズムはおのおの異なるのでしょうが、そのリズムは習慣の中から作られていきます。ベテランになればなるほど、彼らが大切にしている習慣を崩さないようにしていかないといけません。海外遠征の難しさはそんなところにもあるのでしょう。ヨーロッパやアメリカのお馬さんたちがいとも簡単に自国以外の国で力を発揮できているのには、その辺りに秘密があるのかなと感じます。今回の香港ヴァーズを勝ったドゥナーデンはフランスのデルザングル厩舎の馬で、前走、前々走はそれぞれオーストラリアで走り、今回はオーストラリアから直接の香港入り。ジョッキーは前走のルメールからオーストラリアのウィリアムズに(前走はウィリアムズの騎乗停止)。昨年のスノーフェアリーもしかりです。ここまで周囲の環境が変化している中で結果を出せる。お馬さんの心の中になる「何か」を掴んでいるのでしょうね。それは調教師なのかスタッフなのか。私たちはまだまだです。勉強することが山ほどあるようです。この敗戦を糧に、また精進していきます。さて、気を取り直していきましょう。有馬記念まであと2週!!
2011年12月12日
ようやくみなさんに強いキッツくんをお見せすることができました。距離適性もあるのでしょうが、ラスト1ハロンの手前の1ハロンつまり4コーナーから直線の入り口にかけてのラップタイムはなんと11.9秒。そこで一気に後続を突き放してしまいました。他のお馬さんたちは3000m以上走って一杯一杯になってしまう辺りです。そこであのラップですから、みんな着いて来られませんよね。さすがに最後はキッツくんも一杯になりましたが、そこで稼いだセーフティーリードがものをいいきっちり粘り込みました。競馬を終えて検量室前に帰ってきたキッツくん、表彰式を待つ間両膝に力が入らず何度か前脚から崩れ落ちそうになっていました。いつもはジョッキーに騎乗してもらって写真を撮りますが、このときはさすがにそんな気にはなりませんでした。そんな風になってしまうまで一生懸命に走ってくるのですね。正味5ハロンのスパートを決めた訳ですから、いつも以上に苦しかったでしょう。普通お馬さんはどんなに能力があっても3ハロンのスパートが限界に近く感じます。半マイルから動いていくと大体最後は歩きます。競馬でも追い切りでも。もちろん重賞で勝ち負けする特殊なお馬さんたちはもう少し頑張れますけどね。それにしても滅多に見られないロングスパートでした。三浦皇成騎手も本当に上手にそして馬を信じて乗ってくれました。道中はロス無く内に入れて、仕掛けた5ハロン地点から外に出し、何頭分も外を回らされるリスクを避けるため一気に前まで行きました。結果的にロングスパートになりましたが、先頭に並んだところで一旦後続を待ちましたよね。そこで一息入れてからの再仕掛け。キッツくんの能力と、好騎乗が重なって本当に良い競馬ができました。感謝、感謝です。ここまでの長かった道のりを思い出しますよね。勝ったのは1年9ヶ月ぶりですか。そんなに長かったですかね。09年の天皇賞、10年の日経賞、そして今年はステイヤーズステークス。3年連続の重賞勝ちですからキッツくんを褒めて上げて下さい。昨年日経賞を勝った直後に発症した蓄膿症。注射が大嫌いなキッツくんにとってまさに悪夢の毎日でした。一日三回の注射ですから。そんな中天皇賞で2着。あのレース後の悔しがっていたキッツくんの表情は今でもずっと頭から離れません。ごめんねとしか言いようがなかったですから。そして秋には馬運車内での事故によってお尻に大けが。何十針も縫いました。全身麻酔して倒馬して。麻酔から覚めたら当然注射の連続です。その傷跡は今でもくっきりと残っています。そして連覇を目指した日経賞は東日本大震災の影響を受け2週間の延期。さらには中山から阪神へ開催場は変更。なんせここまで本当に順調ではありませんでした。ようやく、ようやくキッツくんの持てる力を十分に発揮できる環境が整った、そんなステイヤーズステークスになりました。レース後も大きな問題もなく今日まで過ごしてきています。今後、調教を再開して問題がないようなら有馬記念に向かうようです。相手はブエナビスタやオルフェーブルと超豪華なメンバーです。しかしキッツくんは天皇賞馬です。胸を張って向かいたいと思いますので、応援よろしくお願いします。一方香港に遠征しているアパちゃんの近況です。輸送の経緯を報告しますと既報の通り飛行機のトラブルによって関空に駐機中の輸送機内で15~6時間待機させられてしまいました。輸送に当たったシンガポール航空は出発準備が全て整ってからエンジントラブルにより出発できないと連絡を受けました。その後修理のための部品を調達するのに、わざわざシンガポールから取り寄せです。航空機の世界には全く詳しくないのですが、なぜ?ちなみにその部品は成田にもあるそうです。なぜ?航空会社にしてみればただの荷物なのでしょう。あ~あ、壊れちゃったで良いのでしょう。困ったものです。飼料も最低限しか積んでいませんから(お馬さんが乗るストールは狭く、余分な荷物は別輸送)ぎりぎりです。アパちゃんは肝の据わったお馬さんですから、入れ込むこともなくいらつくこともなく乗り越えることができました。飼い葉もよく食べていたそうです。香港に到着してからも元気いっぱいだと報告を受けています。このトラブルは決して彼女にプラスはありませんが、週末を楽しみに待ちたいと思います。皆さんの応援がきっと香港まで届くはずですから、どうぞ応援のほどよろしくお願いいたします。
2011年12月05日
毎年この季節になると言ってる気がしますが、寒いです。あ、だれでもそうか・・・でも寒いんですよ、美浦って。一昨日の土曜日なんて調教時間帯の気温は0℃。もう0℃ですよ。ただお馬さんってやっぱり寒い方が暑いよりよっぽどいいんですね。みんな元気いっぱいです。今年はつい先日までとても暖かい日が続き、一般的には穏やかで美しい季節が長く楽しめた年になりました。しかし「冬を待つ」タイプのお馬さんたち(冬場が得意なお馬さん)にはたまったものではなかったのかも知れません。一見体調は良さそうに見えるし、調教の動きなんかも申し分無いのだけれど、競馬に行って一息。そんな子達には待ってましたの冬到来ですね。冬場が得意なお馬さんたちはほんのわずかな変化なのですが後?の上部、専門的な言い方をすれば十字部の後ろ辺り。皆さんにわかりやすく言えば鞍の真後ろからしっぽにかけての辺り。そこの部分の筋肉の張りがここ数日グンと良くなってきています。普段から見ていないとその変化はちょっと分かり辛いかも知れませんが、乗っていて感じるトモの力強さは大違いなんです。上手く言えないのですがキャンターやギャロップで走っているときに「前に進む」感じがするんです。しかもそれが長続きする。きっと馬体重では2キロや4キロくらいの増量なのでしょうが、極めて大きな変化です。逆にこの変化が小さいお馬さんは夏場も得意なのでしょうね。夏場が苦手なお馬さんたちは、その季節にどんなに食べてもどんなに強い調教を課してもその部分の筋肉が盛ってきません。しかしこの気温の変化でぐっと良くなってくるんですね。そうなってくると鍛えれば鍛えるほど体の張りも良くなってきます。そして夏前くらいまでその調子を維持していくのです。そんな季節に行われるジャパンカップや有馬記念がチャンピオンシップにふさわしい競走になるのもそんな冬型のお馬さんが圧倒的に多いからなのでしょうね。さて、国枝厩舎からは今週のステイヤーズステークスにマイネルキッツくん。そして11日には香港マイルにアパパネちゃんが出走します。共にここに来てグングン調子を上げてきているので、大いに楽しみです。実はどちらも冬型です。楽しみにしてて下さいね。
2011年11月28日
今日はここ最近のトレセンを取り巻く環境の変化についてお伝えしますね。昨年宮崎県で口蹄疫が発生し、さらに同年には高病原性鳥インフルエンザが発生し今年の3月までに9県で24例の発生がありました。それを鑑み今年、家畜伝染病予防法が改正されました。お馬さんには関係無いように思えるのですが、これはきっと口蹄疫や鳥インフルの話しだけではなく、全ての伝染病に対する策なのでしょう。今回の改正でトレセンに関係する部分はこんなところです。・平時における家畜の所有者の消毒設備の設置義務を新設し、畜舎等に入る者の身体、物品および車両の消毒を徹底。さらに居住空間と家畜が生活する場所を区別することにより、畜舎周辺を病原体に汚染される可能性が少ない清浄区域とし、畜舎への家畜伝染病の侵入リスクを低減することを目的として衛生管理区域を設定することになりました。この衛生管理区域はトレセンの場合はもとより立派な壁や柵で囲まれていることから特別な変化はありませんが、一般の畜産農家などではロープや白線、柵やプランターなどでしっかりと境界線を作り区別する必要があります。しかもこれは畜舎(トレセンでは厩舎の建物のこと)のみではなくその周辺も含みます。畜産農家としては大変な作業ですよね。そして先ほどありましたように消毒設備を設置することが義務づけられ、トレセンでも出入りする全ての車両の消毒を徹底し、厩舎に出入りする際にもその出入り口付近で手指や所有物の消毒を行う設備の設置および実施を行うよう指導がありました。現在ではその設置も完了し対応しています。まあ、口蹄疫や鳥インフルから派生した問題ではありますが、競走馬を取り扱う世界でも馬インフルエンザによる開催中止や宮崎県で発見された馬伝染性貧血の問題もありましたからね。馬関係としてもタイミングの良い法改正だったのではないかとも思います。ちなみに今年問題となった馬伝染性貧血ですが、日本ではほぼ清浄化されたと認識されていた病気です。しかし今年宮崎県で天然記念物「御崎馬」から発見され、九州では九州トレーニングセールが開催中止となる事態にまで発展してしまいました。なぜ急に清浄化されていたはずの病気が発生したのでしょうか?そこにはなかなか難しい問題が立ちはだかっていたのです。この馬伝染性貧血、略して伝貧(でんぴん)。昔は多くのお馬さんがこの病気で殺処分となっていました。未だかつて有効な治療法や予防法がなく今でも発見、淘汰のみが有効な清浄化への道となっている病気です。しかし数十年前にこの病気に罹患しているお馬さんの発見を確実にできる検査方法が確立されました。その検査結果を基に淘汰してきた結果、日本ではほぼ伝貧を清浄化することに成功しました。じゃあ今回の御崎馬からはなぜ?実は彼ら日本では数少ない野生のお馬さんなんですね。先ほど紹介した家畜伝染病予防法には伝貧に掛かったお馬さんは殺処分と定められています。もう気づきましたか?そうこの法律の名称は「家畜」伝染病予防法なんですね。野生馬は法律上「家畜」ではないんですよ。ですから検査や淘汰の対象にはならないのです。飼い主がいるわけではありませんから、検査や処分などの義務を負う者もいませんしそもそも競走馬のように全頭検査なんて無理な話し。しかし何かの調査の過程で伝貧が発見されてしまったというわけです。この対応には宮崎県も農林水産省も困ったでしょうね。なんせ天然記念物ですし所有者もいないのですからね。でもこの馬伝染性貧血は水平感染も起こる病気です。つまり蚊やアブなどの吸血昆虫が媒介となって他のお馬さんに感染していく病気です。放っておけば九州にいるお馬さん全体に広がる可能性もあるということになります。可能性としては。苦渋の選択の結果陽性反応が出た13頭を宮崎県の判断で殺処分し事態は収拾しました。(今まで全く検査の対象外だった御崎馬から他のお馬さんに感染することはなかった。だから日本は清浄化されたと錯覚していたいたんですから今更という気もしますが・・・)このように常に伝染病の危険にさらされているお馬さんたち。彼らを守るための法改正、そしてそれに伴うトレセン周辺の対応。いつ自分が重大な伝染病を運んでしまうかもわかりませんから、ルールに従いきちんと対応していこうと思います。
2011年11月21日
昨日のエリザベス女王杯、みなさんご覧になっていただけましたか?残念ながら今年もイギリス調教馬スノーフェアリーにやられちゃいました。あのお馬さんはよく「タフ」と表現されますが実際のところはどうなのでしょうか。検量所に帰ってきたフェアリーさんは肩で息はしていたものの、全くの「なみあし」。(なみあしとは歩いている状態のことです)普通お馬さんは競馬や追い切りなどの強い運動の後は速歩や駈歩になるものです。それは興奮してそうしているものも多いのですが、現実的な問題として体内に必要な酸素を取り入れるためにそうしているのだそうです。つまり強度の運動に必要な酸素は彼らの肺の力だけでは体内に取り込みきれないのです。そこで体を前方に動かすことで内臓を動かし、その動きを利用して横隔膜を前後に動かします。それによって胸腔内の圧力を変化させ肺を拡げたり縮めたり。これを内臓ポンプと呼んでいます。つまり競走後は普通のお馬さんなら内蔵ポンプを利用しなければ酸素が足りない状況です。ですから普通のお馬さんはじっとしていられないのです。しかしフェアリーさんは至って冷静に歩いていました。これは極めて心肺能力が高い証拠です。自らの肺の力だけで酸素が足りていて、心拍で全身に酸素を送り届けられているということですからね。しかし昨日は昨年の香港カップを勝って以来の勝利。春シーズンは棒に振り、復帰してからも強敵相手とは言え惜敗続き。ようやく出た「結果」だったのでしょうね。気負わず走るタイプですから、日本の競馬スタイルと馬場はぴったりなのでしょう。昨日も折り合いは完璧・・・というよりは少し反応が鈍いくらいでした。その分最後の最後、ゴール直前では一番おつりがあるのでしょう。ヨーロッパならあのコース取りでは前が開かないのでしょうが、昨日は上手く馬群を捌いてきましたね。条件が合ったとはいえやはり挑戦や工夫なしでは成功はなし得ません。悔しいけれど、おめでとうございます。そんな中、アパちゃんも一瞬夢見た3着。復活ののろしを上げました。昨年も敗れた相手に今年も敗れる結果は、周囲から見れば勝負付けが済んだと思われてしまうでしょう。でもきっと彼女はそうは思っていませんね。もちろん私たちも。スノーフェアリーとは対照的に前進気勢が旺盛なアパちゃんですから、その分のロスは大きいです。道中も他の馬とぶつかったりしていましたから、若干エキサイトする場面もありましたし。マイルくらいなら今後も活躍できるでしょう。お馬さんってきっと、競って競って競り負けると「負けた~」っていう気持ちなると思うのです。しかし昨日のようにシュッと追い抜かれると「あれ?」って。まあ、心理的ダメージの少ない負けだったとは思います。今後の路線はまだわかりませんが、次こそは。そう思えるエリザベス女王杯でした。
2011年11月14日
さて皆さんはどこでJBCをご覧になったでしょうか。今年から新設されたレディースクラシックも花を添え場内は非常に盛り上がったようですね。しかしながら、本番中の本番JBCクラシックの売上げは前年比90%強。盛り上がりに水を差すようで非常に申し訳ないのですが、興行面では興味を引く番組でなかったということが言えるでしょう。フリオーソがいなかったこともあり、戦前から2強の競馬。そして現実にレ-スも前3頭と後続馬は別のレースとなりました。しかし、内容としてはスマートファルコンとトランセンドのやりとりは非常に興味深く、生であの勝負を見た方々は先々まで自慢できるものですよね。それはいまや競馬の世界では禁じ手となったマッチレースそのもの。極めて見応えのあるものだと私は感じました。面白かったです。勝負自体は。しかし、何とか一矢報いてやろうという姿が見えたのは3着のシビルウォーだけに私の目には映りました。というか、前3頭とそれ以外のお馬さんたちとは足の速さが全然違うんですもの。競馬は興行であり、馬券の売上げがあってこそです。良い馬を揃え、良いジョッキーをそろえること。参加した関係者の方々には誤解を与える言い方かも知れませんが、良い商品を陳列棚に並べなければ消費者の興味はないということです。古谷さんも触れられていましたが、2極分化が進む中央競馬と地方競馬。各地区の代表が一同に顔をそろえるという趣旨は理解したいところです。しかし、あまりにその実力差があると競馬の根底にある「勝利を得る」ための出走ではなくなります。つまり馬券を買って下さるお客様に対する背信行為とも言い換える事ができるでしょう。馬券圏内に入る可能性が極めてゼロに近い(事故が起こることにかける事になってしまう)馬の馬券を売っているわけですから。もちろんルールに則り参加した馬や関係者は、当然責めることはできません。今回のJBCクラシックも上位馬と4着以下の馬は別のレースで施行していれば全く問題のない話です。このままではおそらく今後もこのような競走が行われ続けることになるでしょう。統一G1競走に限ってはレーティングによる出走馬の選別を行うとか、各地で行われるダートグレード競走の勝馬もしくは連対馬しか参加できないなどの思い切った条件があっても良いのではないでしょうか。少なからず地元枠を主張する声が上がると思いますのでおいそれとはいかないのでしょうが。しかしJBCは開催すれば大きな収益を計算できる興行です。何とか、来年以降は場内もそして馬券の売上げも大いに盛り上がりを見せるJBCにしてもらいたいと願います。
2011年11月07日
う~ん・・・勝てない。なかなか勝てないです。ぼやきからの始まりで申し訳ありませんね。というのも、国枝厩舎は数週間前まで関東リーディングのトップを走っておりました。しかし今現在は4位まで後退。トップとは3勝差。リーディングが下がる程度のことはどうでもいいのでしょうが、9月18日のバンダムミラージュくん以来勝ってないというのは苦しいものです。そのミラージュくん以降42連敗中。その大きな要因となっているのが2歳新馬戦の惜敗続きでしょう。今年の国枝厩舎の2歳新馬戦の成績は2勝。スマイルゲートちゃんとベストディールくんです。しかし新馬戦での2着がなんと8回!!ロベルクランツ、エポキシ、エンドレスノット、ジェノアチャリス、シュガーヒル、パララサルー、コスモグランデール、レッドブルピサ。この中で後に勝ち上がったのはまだロベルクランツくんだけです。もちろんアパパネさんの例もあるように新馬戦で勝つか負けるかはお馬さんたちの将来にとっては、そう大きな問題ではありません(もちろん賞金的には新馬勝ちのほうがいいのですが)。実戦を一度経験してから成長を促すこと、それは非常に有効な育成法であることには間違いありませんから。しかし、「厩舎の成績」という馬主さんやファンの方においては関係のない部分での話になると、実は大きく影響してきます。リーディングを争うとなるとひとつにその年においてまとめ勝ちをする馬、つまり年間に3勝も4勝もするようなお馬さんが複数いること。これが大きな条件となります。下級条件から一気にオープンまで連勝を重ねていくようなお馬さんです。年間5~6勝するお馬さんもいますのでそんなお馬さんが複数いればそれだけで10から15勝の計算になります。そしてもう一つが2歳戦の成績ということになります。もし仮に今年の国枝厩舎で新馬戦の1着と2着の成績が逆なら38勝でリーディングではトップになる計算です。つまりそれくらいに2歳戦の成績は厩舎の成績に直結しているということなのです。もちろん新馬戦で2着と頑張ってくれたお馬さんたちは、将来にわたって数多くの勝ち鞍を厩舎にプレゼントしてくれる事は確定的です。ですから彼らの将来を潰さないよう、壊さないように大事に育てて行きたいと思います。
2011年10月31日
実に痛快な三冠達成の瞬間でしたね。強い馬が、強い内容のレースをして勝つ。ライバル達はその馬を徹底的にマークして負かしにいく。でも、負けない。そんな素晴らしい内容になった菊花賞でしたね。素晴らしい商品を用意して、お客さんに買ってもらう。これは商売の基本です。今回の菊花賞はまさにそんなレースだったのではないでしょうか。だからこその売上げ増(前年比103.1%)だったのでしょう。しかもその三冠馬の父親は内国産馬、母の父も内国産馬であったことは、競馬ファンにとってたまらないもの。<最近誕生した三冠馬>ディープインパクト(サンデーサイレンス)ナリタブライアン(ブライアンズタイム)シンボリルドルフ(パーソロン)ミスターシービー(トウショウボーイ)ミスターシービーはトウショウボーイ産駒ですが母の父はトピオという凱旋門賞馬。そんな中オルフェーヴルは父ステイゴールド、母の父メジロマックイーンと競馬好きなら誰もが「知った」名前。そんなところに競馬の面白さ、奥行きを感じたファンが多かったのではないでしょうか。今後もオルフェーヴルの快進撃でどんどんファンを引っ張っていってもらいましょう。しかし、このオルフェーヴルというお馬さん。その成績の中に実に不思議な感覚を覚えます。初戦の新馬戦こそ快勝でしたが、2戦目の芙蓉ステークスではホエールキャプチャの2着。3戦目の京王杯2歳ステークスではグランプリボス、リアルインパクトと強敵相手だったとはいえ10着に惨敗。その後もレッドデイヴィスやトーセンラーに完敗。正直この辺りでは「勝負付け」が済んだとも見えました。もちろん気性面の難しさは新馬戦から見られたし、その点を厩舎サイドも課題に挙げてはおりました。後方から脚を図って、競馬の中で池添騎手がこの馬の特性を最大限に生かす方法を見つけたのでしょうか。同じジョッキーが乗り続けることの重要性も見えた結果です。そして皐月賞トライアルからの快進撃。ここに一体何があったのでしょうか?惜敗続きから、一転して快進撃。本当に不思議です。秋には体も大幅に成長し、いよいよ完成の域に近づいてきています。今後ますます強くなる事でしょう。どこかで国枝厩舎のお馬さんが負かすことができるように、頑張って行きましょう。
2011年10月24日
私たちの住む競馬の世界は、言い換えれば勝負の世界。ですから私たち厩舎人には、何事にも「勝つ」という意識が潜在的に眠っているものです。中にはいわゆる験担ぎ(げんかつぎ)を行う人も多いようです。私はしませんが。でもそれは、そこまでしてでも「勝ちたい」という気持ちが強いということです。人事を尽くして天命を待つ。まさにそんな心境なのでしょう。そんな世界ですから道具に関するこだわりも多いようです。こんな言葉を聞いたことはありませんか?勝負道具国枝厩舎の場合、普段の調教で使用している馬具とレース当日にお馬さんが着用している馬具は異なります。お馬さんの癖などをフォローするために使用しているものは時として兼用することもありますが、頭絡(お馬さんの顔に装着された革のようなもの)や手綱などは完全に使い分けています。なぜ使い分けるのか?それはやはり勝負に挑むに当たって、きちんと手入れをされ美しく、安全を細部まで確認された道具で望むということ。今度パドックでよく見てみて下さいね。綺麗な革の道具を使っていますから。ハミだって磨かれてピカピカです。昨日は残念な結果になってしまいましたが、お気づきになられた方はいらっしゃいましたかね?アパパネちゃんのおでこの部分。ピンクの革が使用されていましたね。あれも気持ちのこもったおしゃれのひとつ。実はあのおでこの革、金子オーナーの奥様がピンクカメオちゃんにと特注で作って厩舎まで届けてくださったもの。晩年、力を出し切れなかったカメちゃんを心配して、お守りとして作って下さいました。その額革(ひたいがわ)をアパちゃんが初めて着用したのが今年のヴィクトリアマイル。カメちゃんが輝いた府中のマイルでアパちゃんに力を貸してくれる結果になりました。もちろんこの額革だって普段から使用している訳ではありません。勝負の時だけ。背水の陣で望む本番、エリザベス女王杯でも使う予定です。このように様々な想いを込めてオーナーや生産者、育成牧場の方々や私たちは勝負に向かっているのです。無事に、無事に。いつもそう祈って見守っています。
2011年10月17日
今日は三日間開催の最終日です。お出かけの予定が特にない方は在宅投票、少し出てみようという方は是非とも東京競馬場へお出かけ下さい。今日は岩手競馬をそして東北の被災地を応援する開催。場内では「岩手県応援スペシャルデー」として各種イベントも行われています。もちろん一般入場は無料です!国枝厩舎は4レースの新馬戦に参加。お馬さんはあのアパパネちゃんの弟シュガーヒルくん。いよいよそのベールを脱ぎます。お姉ちゃんと比べるのはちょっとかわいそうですが、先週は坂路で50秒台前半をたたき出すなど素質の片鱗を見せています。スタートの練習もたくさんしたので今日は上手に出てくれると信じています。普段の彼はお姉ちゃんに負けないくらいのマイペースぶり。横になって寝ているときは、人が周りにいても全く無視・・・食欲だってお姉ちゃん譲り。ご飯をもらうと一心不乱に飼い葉桶に顔を突っ込み、顔を上げることはありません。そして細かいことには全く無頓着なんですよ。なんだかとても大物感を見せています。元気が余って大はしゃぎすることもありますが、それ以上人を困らせることはしませんし、おりこうさんです。今日は初めての競馬場できっと大はしゃぎしているんだろうな・・・競馬でそのエネルギーを爆発させてくれたら良い競馬ができると思うので、ぜひ応援して下さい。話しは戻りますが今日の東京競馬場は岩手競馬を応援する日。競馬場にきて、馬券を買う。在宅投票で馬券を買う。それだけで岩手競馬、そしてなにより被災地に貢献できる一日です。皆さん今日は是非ともたくさん馬券を買って、岩手競馬と東北の被災地をバックアップしていきましょう。よろしくお願いいたします。
2011年10月10日
ロケットマン残念でしたね。ちょっと力を出し切れなかったかな・・・一方、勝ったカレンチャンは正攻法の競馬。センスの良さが大一番で活きましたね。お見事でした。後続がちょっとごちゃついたとはいえ1200mのG1であの着差は完勝、楽勝と言えるものです。次は香港スプリントあたりになるのでしょうか?ぜひ、アウェーでもあの走りを見てみたいものです。一方で凱旋門賞は日本馬にとっては残念な結果となりました。世界の壁をまた一層厚く感じさせられましたね。それにしてもスプリンターズステークスは1着と3着、凱旋門賞も1~3着は牝馬でした。以前にも感じたことですが、サラブレッドの血統の異変というかこれは行き詰まりなのか曲がり角なのか。牝馬と牡馬の肉体差がかなり小さくなってきている気がしてなりません。さて、今週は東京競馬が3日間開催です。月曜日には岩手競馬と中央競馬がコラボレーション。岩手競馬を支援する日と銘打って様々なイベントや競走が執り行われます。3月11日の大震災を受け、岩手競馬は甚大な被害を受けました。そんな中岩手では関係者の努力により開催を早くに再開し、地元の復興支援を先頭を切って行っています。被災地を支援することに直結する月曜日の東京開催。南部杯を筆頭にトーホウエンペラー記念やメイセイオペラ記念、オーロカップなど岩手を代表する競走や地元のスターを冠にした競走が開催に華を添えます。当日はWIN5も発売されますし、全競走で売り上げの5%が払戻金に上乗せされます。もちろん当日の売り上げの一部は被災地へと送られます。みなさん奮って今週末から始まる開催にご参加ください。よろしくお願いいたします。写真は元気に開催している盛岡競馬場の様子です。お時間があればぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
2011年10月03日
さて秋競馬もオールカマー、神戸新聞杯と進みいよいよ熱を帯びて参りました。主役達が強い競馬を見せ、本番がとても楽しみになる結果を残していますね。強い馬が強い競馬をして勝つ。そして多くの有力馬が順調に「本番」を迎える。穴党ファンには少し物足りないのかも知れませんが、そこはハンデ戦やWIN5に夢を乗せてもらうことにして。やはり真の勝負を本番では見てみたい。それが競馬ファンの心の声なのではないでしょうか。心から感動できる勝負を楽しむ。そんな競馬も実はみんな大好きなんですよね。私は法律で馬券を買うこと(中央競馬ね)が禁止されている身分ですから、いつでも強い馬が勝つ「良い競馬」を見たいという願望があります。そんな目線からですと今年のクラシック戦線はホールキャプチャやオルフェーヴルが順当な結果でそれぞれ本番へ向かうようですから、今からとてもわくわくしています。古馬もアーネストリーが格の違いを見せつけました。そこにどのような形でアパパネちゃんやキッツくんが絡んで行けるのか。国枝厩舎のお馬さんが「良い競馬」に良い形で参加できるように、頑張って調整していきますね。今のところアパちゃんもキッツくんも至って(極めてと言っても良いくらい)順調ですから、楽しみに待ってて下さい。そんな中、今週で最後となる競走条件があります。そうです、条件付き3歳未勝利戦。いわゆるスーパー未勝利戦。これまでに通算で5戦以下、もしくは前走着順が5着以内(時期はいつでもOK)のお馬さん限定の未勝利競走です。今週の中山、阪神、札幌でそれも終了。その後は、500万下などの格上の競走に出走頭数の空きがあれば出走できますが、基本的には「自分の条件」で走ることができません。つまりここで勝てなければ登録抹消され地方競馬に転出するか、その他の用途(乗馬など)になるかが大半です。後のない勝負。レベルの高い重賞やクラシック競走といった勝負が「本物」の勝負なのかも知れませんが、ここもまた生き残りをかけた真剣勝負なのです。体質などに弱いところがあり、素質はありながらデビューが遅れたお馬さんや怪我で戦列を離れざるを得なかったお馬さん。そんな彼らの中には将来ハイレベルな勝負に顔を出すような逸材が含まれているのも事実。そして厩舎サイドも多くのお馬さんに対し「負けられない」という気持ちがいつも以上に強く出るのがこの競走の面白いところです。もちろん勝負するジョッキーも。「勝ち」に行くため道中息の入らないほど異常なハイペースになったり、後続を待ち牽制し合って逃げ切られたり。一戦必勝に端を発する実に面白い心理戦が繰り広げられています。午前中の競走で、なかなか馬券で参加される方は少ないのかもしれませんが是非早起きしてご覧になってみて下さい。そして「後のない戦い」を見守って下さい。そこには重賞競走では味わえない「本物」の勝負を垣間見ることができますから。
2011年09月26日
今日は3日間開催の最終日です。札幌、阪神での開催となり阪神では阪神ジャンプステークス、札幌ではダートの重賞第16回エルムステークスが行われます。そのほかにも阪神では今後のダート戦線を賑わせてきそうな好メンバーが揃ったオープンのエニフステークスが行われます。こう見るとWIN5の発売こそ無いものの、面白いレースが目白押しですね。国枝厩舎は札幌競馬に参戦し、5Rの新馬戦にはディープインパクト産駒のパララサルーが、10レースの道新スポーツ賞には洋芝巧者のグレイスフルソングがそれぞれ出走。楽しみにしています。このような変則開催のとき私たちは一体どのように休みを取っているか紹介します。例えば美浦組。メインとなる開催場は中山です。中山競馬は土曜日、日曜日の開催ですから平常通り今日月曜日が全休日となります。札幌競馬場に滞在しているチームは今日も開催がありますので、先週の火曜日から引き続き今日まで仕事です。そして明日火曜日が全休日となります。もちろん阪神競馬を中心にしている栗東組も今日は阪神競馬の開催がありますので明日が全休日となります。大変なのは美浦から阪神競馬の月曜開催に出走させている関係者ですよね。今日のレース終了後阪神を出発し、明日の早朝に美浦へ到着します。そこではもう通常通り仕事があるわけで・・・でもそういう人たちは当然明日火曜日はお休みとなります。その人の仕事は、他の人たちが分担するということですね。そしてもう一つ、この変則開催で困るのがお馬さんの調教です。特に今度の土曜日に出走するお馬さんの調教。火曜日を全休日にするとお馬さんは水曜日から一週間がスタートします。通常の月曜日全休ですと火曜日からスタートして火曜日は全身をほぐすような調教。火曜日一日体をしっかりと動かしてから水曜日にハードな追い切りとなるわけです。木曜日を軽めの調教にして、金曜日またほぐすように体調を維持するように調教します。そして土曜日の開催を迎えます。が、しかし水曜日から一週間がスタートしてしまうと、普通に考えたら追い切りは木曜日ですよね。一日全く運動できない全休日の翌日に追い切るのは筋肉などを痛めるリスクが大きいですから。しかし木曜日に追い切ると、競馬まで間に金曜日のわずか1日しかありません。ちょっとハードでタイトなスケジュールになってしまいます。しかも次節でいえば栗東組で土曜日の中山に出走するお馬さんが大変です。木曜日に追い切り→金曜日に長距離輸送→土曜日に出走となりますから。おそらくこのパターンならリスクは覚悟で水曜日に追い切る事になるのか、今日月曜日に追い切るのかのどちらかになるのでしょうが。結局のところお馬さんに負担が掛かる結果になってしまいます。3日間開催のときは、全休日という考えを払拭して交替で休みを取れるようならお馬さんも楽なのですが・・・もう一つ大変なのがジョッキーです。土曜日札幌→日曜日中山→月曜日阪神なんて人もいるかも知れませんね。ベテランは火曜日はお休みの人も多いでしょうが、美浦の所属ジョッキーで若手なら・・・火曜日も早朝から調教ですよ。彼らは個人事業主ですから、休みたければ休んでもかまわないのですが、自分を売り込むためにはやむを得ないのでしょうね。まだまだ暑い日が続いていますが、皆さん体調のにはくれぐれも気をつけて今日も競馬を目一杯楽しんで下さいね!
2011年09月19日
日本からフランスに遠征中の3頭はいずれも残念な結果でしたね。まあステップレースですから、結果はどうあれ練習なのですがあそこまでいったら勝ちたかったというのが本音でしょうね。観ていてもさすがにゴール前は力が入ってしまいました。それにしてもヒルノダム-ルはフランスの馬場が合いそうです。最後まで足取りが衰えることはありませんでしたし、スタミナは十分。スローペースにも全く戸惑うところを見せていませんでした。本番は期待して観ることにします。一方でナカヤマフェスタは昨年のジャパンカップ以来の競馬ですから仕方ない結果でしょう。目標にされながら、それでも終盤まで踏ん張って走っていましたし、闘争心に衰えは感じさせませんでしたから。長期休養明けの厳しさは、みなさんが想像する以上のものがあります。特にクラスが上位の馬たちの競馬は本当に甘くなく、見た目や調教の動き程度では判断できないものがあります。そして一番わからない、そして見えないものが競馬に行っての気持ち。あんまり一生懸命走らなくていいや!なんて気持ちになってしまうのがお馬さんです。そりゃ当然ですよね。人間だって同じで、年を取るとずるさを覚えるでしょ。それが一番怖いのです。もう絶対に「一生懸命走ろう!」には戻りませんから。人間は反省もできるし「やっぱり頑張ろう!」と改心することもできます。お馬さんには・・・厳しいでしょ。そんな目でナカヤマフェスタを観ていましたが、ゲートを真っ先に飛び出していくし、ゴール前でも踏ん張っていましたから。心配なさそうですね。こちらも本番での巻き返しが楽しみです。ただし、ジャパンカップから昨日まで競馬を使えなかったのには理由があるはずです。それが何かはわかりませんが、そのあたりが昨日のレースを乗り越えられれば大いにチャンスはあるでしょう。頑張ってほしいですね。ナカヤマナイトは力を出せていないように感じました。返し馬もゲートを出てからも、どうも背中を丸めて走っているような。ふざけてやっているのか、下を気にしているのか、元気が余っているのか。いずれにしても若いですね。ですから昨日の一戦が良い経験になることは、どの馬よりも大きいでしょう。割としっかりと負けてしまいましたが、みんなと一緒にスタンドに帰ってくる姿に悲壮感や全力を出し切った感じは見受けられませんでしたね。なんか楽しく遊んで帰ってきましたというような雰囲気に感じました。大きくステップアップしてもらいたいですね。皆さんも日本馬たちのビッグレース参戦に心躍らせていることでしょう。それは私たち厩舎関係者も同じです。昨日の競馬はステップです。本番に向けての予行演習です。本番までみんなで大いに楽しみましょう。
2011年09月12日
先々週の日曜日、新潟競馬に出走がなかったこともあり、朝の仕事を終えちょっくら行ってきました。成田発13時の飛行機に乗り込み着いた先は韓国ソウル。ソウルでは毎週土曜、日曜に競馬を開催しています。そんなわけでインチョン空港からソウル市内へ。途中漢江を渡り、空港エクスプレスで43分。ソウル駅で地下鉄に乗り換え20分ほど。競馬公園駅に到着です。駅前はこんな感じ。韓国では一般的な虫の煮物を路上で売っていました・・・ここから歩いて5分ほど。着いてびっくり、なんて立派な競馬場!!そしてお客さんの多いこと。韓国では多くの賭け事が厳しく規制されていることもあるので、競馬は数少ないギャンブル場の一つ。競馬場でも1人1レース10万ウォン(約7000円)までと購入制限があります。もちろんカジノには原則として外国人しか入れませんし、ドッグレースやパチンコ屋さんもありません。やはり競合相手の存在は売り上げに大きな影響があるという事でしょう。それはさておきこちらがパドック。見下ろす感じでちょっと見にくいのですが、広さがあるのでフォローできているかな。もし皆さんがソウルの競馬場に行かれることがありましたら是非寄ってもらいたいのが外国人専用ルーム。新スタンド(ゴールから遠い方)の1階に受け付けカウンターがあり、パスポートを提示すれば無料でこのラウンジに入れます。この中は将来的に購入額の制限を取っ払う方向で調整中とのこと(今はまだ10万ウォンまでです)。そしてレースは直線が長いため、結構追い込みが利いています。ここは誰でも入れる有料席。1ヶ月5万ウォン(約3500円)。しかしこの席、立派で広いのですが残念なことに食堂や食べ物を売っている場所がありません。ですからこの後改装工事を行い、その当たりを改善しリニューアルするそうです。馬券はこんな感じです。単勝を1万ウォン購入。1万ウォンも買うと大層大金持ちになったような気分ですが約700円です。そしてソウル競馬場の驚きはこちら。なんと場内に銀行が・・・ざっとこんな感じのソウル競馬場ですが、惜しいことにナイター開催は8月の3週間だけ。元々冬場の電力事情が厳しいソウル。それに備えてということなのでしょうが、もう少し長くやってもらいたいですね。最後にソウルで見つけた残念な日本語。ここまできたら日本語で併記する意味ないですよね。
2011年09月05日
お盆前後の猛暑は去りましたが、残暑が厳しい毎日です。大雨か蒸し暑いか。なんだか極端な天候に毎日左右され調教に励んでおります。今週は台風の影響もありそうな雰囲気ですし、まだまだ油断なりません。お馬さんたちも、強雨にはうんざりなようで、一生懸命雨を避けようとしてる子もいたり、雷の音におびえている子も多数見かけます。お馬さんたちには安定した涼しい気候が一番。早く穏やかな秋になってほしいものです。そんな夏の風物詩となってしまったこの高圧洗浄機。もう何年の付き合いになるものやら。今年もとうとう出番です。今年の仕事場はこちら。お馬さん達のお風呂場とでも言いましょうか、シャワーブースのような場所。その名も「洗い場」。お馬さんを洗浄するだけではなく、調教やレースで疲れた脚を冷やしたり、獣医さんが診察したりするのに使われる場所。この場所には年中「水」が付きもの。家庭のお風呂場と同様に水垢が発生する場所でもあります。ただ、屋内の風呂場と違い密閉されることはないので乾燥させることも可能です。ですから家庭ではとても嫌われる「カビ」の発生はそう滅多に見ることはありません。しかしその反面、日光のよく当たる場所でもありますから違った悩みが・・・そうですコケです。水槽や池の中などによく見られるような緑色の絨毯みたいな奴らです。光合成に適し、充分な水分を得られるため洗い場の床面にはコケがびっちり生えてしまうのです。カビよりはマシなのでしょうが、コケには根があるのでタワシやデッキブラシなどで擦ってもなかなか駆除はできません。そこでこの高圧洗浄機の出番です。しかし、仕方ないのは百も承知で言いますが・・・先が細すぎて一向に作業がはかどりません。これの先が太かったら勢いも無くなるわけですからねぇ。まあそんな訳で、この高圧洗浄機を活用して床に生えたコケを駆除していきます。このコケを放置しておくと、お馬さんたちがズルッとこけちゃいますからね。本当によく滑るんですよ。お馬さんがこれで転んだことはありませんが、足が2本しかない人間はしょっちゅうズテっと。結構危険です。でももうこれで安心。また来年くらいまではですけどね・・・さて、残りのコケ落とし頑張ろうっと。
2011年08月29日
オオエライジンの強さは相当なものですね。初物ずくめの遠征で完勝ですから今後の活躍に期待したいです。8月16日というお盆の時期の競馬でしたから、レース前の兵庫から東京への輸送はどれくらいかかったのでしょうか。想像するだけでも気が遠くなります。ちなみにゴールデンウィークの関西地区から美浦への輸送は通常7時間ほどの距離を11時間ほど要しました。競走馬としてデビューしてから初めての長距離輸送だったのでしょうから、その精神力には驚きです。対外戦に勝利を得るということは外から見るよりはるかに大変なことです。この勝利を機に大いに自信を持って今後も園田競馬を代表するスターホースになってもらいたいものですね。是非中央競馬にも挑戦してもらいたいです。国枝厩舎にもサイレントメロディくんやウインマリアベールちゃんといったダートでひょっとするとなんて思っているお馬さんたちがどんどん力を付けてきています。いつの日か良いレースを共に作って行ければと思い、彼らがかなう相手か今後もこの兵庫のスターの動向を見守ります。坂田さんや古谷さんが触れもう書くのはやめようかとも思いましたが、やっぱり書きます。先週の月曜日、岩手県の盛岡へ行ってきました。そうですクラスターカップ当日です。この日はお盆ということもあり場内には多くのお客さんが。それも話を伺うと、かなり遠方から競馬のために遠征してこられたという方が多く非常に驚きました。私はトキオリアリティが勝った第1回クラスターカップ以来およそ15年ぶりの盛岡競馬場だったのですが、当時と代わらず綺麗な競馬場は維持されておりました。お客さんの入りも、競馬ブーム絶頂期の当時と遜色ありません。まだまだ条件をそろえれば地方競馬もやれるというところを示してくれたように思います。潜在的な競馬ファンは多く、見たいと思わせるレースを行えばお客さんはお金を使ってくれるのですね。その、「見たい」と思わせるレースがこちら。この広告、かなり格好いいですね。テレビのCMなどでも使われた絵のようです。「見たい」と思わせるものですね。騎手対抗戦。海外ではシャーガーカップに代表されるように、時々行われる催し。日本では売り上げに繋がらないと思われているのか、どうやら初の試みだったようです。しかしこれが実に面白い。もちろん初の試みですからどの程度の盛り上がりを見せるか主催者側も掴めなかったようですが、このように応援団長を置いたり、(左から我らが古谷っち、旅打ち芸人井上オークス大先生、そして泣く子も黙る岩手のスーパーアイドルふじポンです)参加騎手の紹介イベントを行うなどして、事前のプロモートはばっちりだったように感じました。いざ蓋を開けてみれば、「中館さんの逃げ」に始まるという素晴らしい内容。この「中館さんの逃げ」あたりから、場内の空気はやることなすこと盛り上がるといった一種のトランス状態。メインイベントのクラスターカップに向けボルテージはかなりヒートアップしてました。そういう状態を演出できた場内イベントの力が今回の驚異的とも言える売り上げに繋がった様に感じました。やればできる。それを体感できた一日でした。復興へ向け立ち上がった岩手競馬。水沢での開催には未だ至りませんが、どうにか競馬から元気を被災地に届けてもらいたいものですね。
2011年08月22日
皆さんの中には一口馬主のクラブなどで出資されている方もいらっしゃると思います。もちろん中央競馬、地方競馬の馬主登録をされているという方からも「読んでるよ」と声を掛けてもらう事も。そんな馬主ライフを楽しんでいらっしゃる方というのは、そう多くはありません。競走馬1頭のお値段は車や家が買えるような単位ですものね。当然生き物ですから、毎月のかいば代や敷料代、調教や治療にかかるお金などなどそのお馬さんの生活を支えていかなくてはなりませんから維持費も相当な金額になりますしね。誰もが楽しめるというものではありません。何らかの世界で成功された方々が、馬主として私たち厩舎や皆さんが楽しんでいる競馬の根底を支えてくれているわけです。そんな馬主さんたちの楽しみといえば、自分の愛馬が勝利を収めたときの通称「口取り」と呼ばれる記念撮影です。G1ともなると広く爽快な競馬場の芝コース上で数十名のカメラマン達に迎えられ盛大に行われます。その後に表彰式、関係者が集合してプレゼンターとの集合写真の撮影と進んでいきます。さて、そこまではファンの皆さんに見える場所で式典は進行していきます。しかし、競馬にはビッグレースの後に必ず最終レースが組まれているため、いつまでも馬場を占拠しているわけにはいきません。口取りから集合写真の撮影まで、ざっと20分くらいでしょうか。その後って皆さん知ってますかね?G1勝ちを収めた陣営はどうなるか。もちろんお馬さんは、疲れてもいますし、検体(尿もしくは血液)の採取という大事な作業があるため担当厩務員とともに厩舎へと帰ります。残った馬主さんや調教師。G1という最高のレースを勝ったのですからもっと余韻に浸っていたいですよね。実は陰ながら「シャンパンルーム」なる場所が競馬場には存在しているのです。記念撮影を終えた一行はそのシャンパンルームで今度はそのレースのVTRを見直します。生で見ていたときは興奮のあまり道中やゴール前の詳細を覚えていなかったりするもので、この場所でようやくこんなに強い競馬をしたんだと改めて驚く事もしばしば。そのVTRを見ながらゴールに合わせてみんなでシャンパンで乾杯となります。なかなか素晴らしい時間です。何度見ても自分の馬が負けるレースは流れませんから。繰り返し見ては、G1で優勝したという最高の喜びの余韻に浸れる場所なのです。しかし、このシャンパンルームG1だけではなく重賞競走や限られた競馬場の特別戦などでも使用され、オーナー達の憧れの場所となっています。このシャンパンルームと呼ばれる部屋、実は世界の様々な競馬場に存在しています。以前訪れた香港、シンガポールなどでは限られたレースではなく全てのレースで提供されていました。そしてそれはひっそりとあるのではなくファンの皆さんから丸見えの場所です。そして何か他の用事に使う事はなくそれ専用の部屋です。かなりの人数が入る事ができる広さで、床は大理石という豪華な作り。勝利を収めた記念のお土産に開けたシャンパンとシャンパンフルートがもらえます。これが全レースで行われ、調教師たちはオーナーがとても喜び、この部屋で祝杯を上げる事を何よりも楽しみにしてくれているんだと言っていました。売り上げが下がり賞金や手当が下がり続ける中、小さな事ですがオーナーに喜びを持ってもらえる行事作りはどんどん進めていってもらいたいですね。
2011年08月15日
関東地区では新潟開催、関西地区では小倉開催、そして北海道開催は今週から札幌開催。いよいよ夏競馬も本番と言ったところです。毎年言っていることなのですが、小倉と新潟の同時開催は関東馬にとって正念場となるところ。先日どこかのスポーツ紙にも美浦~新潟、栗東~新潟間の輸送時間が共に6時間30分で同じであることが掲載されていましたね。距離で言えば200km近くも栗東からの方が遠いのですが、高速道路状況の違いにより輸送時間は同じとなるようです。ですからこの時期の栗東所属馬の番組選択は、小倉と新潟の2場。一方美浦所属馬は新潟のみとなってしまいます。もちろん美浦在厩馬が小倉競馬に出馬投票することはルール上は何も問題ないのですよ。しかし美浦~小倉への輸送は20時間近くかかります。震災による変則開催時に、仕方なく小倉へ輸送し競馬をしたお馬さんがおりました。良い競馬をしてくれて、帰ってきたら即勝ち負けという内容でした。しかし、長時間に及ぶ輸送の疲れで美浦に帰着するとその日のうちに高熱を出してしまいました。懸命に治療し、一旦は回復したのですが数日後にそのストレスから疝痛を発症、命を落とすという最悪の結果となってしまいました。このように美浦から小倉への輸送競馬には大きな大きなリスクがついて回ります。先ほどのケースは極端で稀なものですが、ときにはその様な事もあるのです。ですからこの時期の関東馬には周辺状況からほぼ新潟しか選択肢はないといえるのです。その現状が端的に表れるのが新馬戦。先週から新潟、小倉の開催となりましたが、その2週で新潟で5鞍、小倉で6鞍の新馬戦が組まれていました。そのうち小倉の1鞍は九州産馬限定のものですから外して考えると、東西で5鞍ずつ。新潟の平均出走頭数は17頭。小倉の平均出走頭数は14.1頭。新潟の新馬戦における関西馬の出走頭数の平均が1レースあたり2.4頭。小倉の新馬戦における関東馬の出走頭数の平均が1レースあたり1頭。となっています。つまり関東地区に在籍するお馬さんが賞金(8着まで)を獲得できる可能性は関西馬よりもはるかに低い。そうとも言えるでしょう。これを仮に東西に出走制限を設けたと考えると(関東馬は新潟、関西馬は小倉でしかデビューできないとする)新潟の新馬戦17-2.4+1=15.6頭。小倉の新馬戦14.1-1+2.4=15.5頭。美浦と栗東における新馬の調教状況および調教進度はほぼ同等であるとは言えないでしょうか。それなのに、選択肢の差で賞金獲得に差が出るのは厳しいですよね。関東よりも関西に馬を置きたくなる馬主心理も納得できます。単に関東馬が弱いとか、関東の調教師が努力してないとか言うのは違う気がします。もちろんこれは数字的に見やすいから新馬戦で比較しただけで、すべての条件戦に言える事。なんとかこの時期を良いリズムで乗り越えないとリーディング上位に残っていけませんね。
2011年08月08日
以前から多くの質問を受けていたことについて今日はお答えします。厩舎関係者の休みについて。昔から厩舎で働くイコール休みがない。これは半ば常識的なことでした。生き物を扱うのだから当然だという方も多いと思います。しかしここ最近では、労働組合側からの働きかけもあり多くの厩舎で有給休暇の取得が進むようになりました。この部分の改革はどのようにして動き出したのか。やはり進上金というシステムが大きな障害となっていたことは間違いありません。厩務員には担当馬と呼ばれる馬が基本的に常時2頭います。この2頭が競馬に出走し賞金を稼ぐとその5%が厩務員の収入となります。この5%のすべてが他の厩務員や調教助手(持ち乗り)には行かずすべて自分の手取りとなるのが常識でした。もし休みを取るとなると自分の担当馬の世話を他の人に見てもらうことになります。調教師から進上金以外に給料をもらっている訳だし、3頭目の馬を世話すれば一日いくらかのお金はもらえますから嫌だとは言えません。しかし簡単に考えると2頭の担当から3頭の担当になれば仕事量は1.5倍ですよね。自分が休むことで人に迷惑が掛かるという意識が厩務員の中に芽生えるのは当然のことです。ですから「休む」とは言いづらい環境になります。そんな状況下ですから有給休暇の取得は思うように進まないことが多かったようです。しかし最近ではその進上金の一部をみんなで集めて分け合うシステム、いわゆるプール制を敷く厩舎が増えてきました。お金を分けると言うことは当然仕事もみんなでシェアする訳です。2頭の面倒を見る仕事プラス1頭分の仕事で1.5倍の仕事量になるのではなく、20頭を12人で面倒を見る。1人頭の世話する馬の数は約1.7頭分。こう考える事がようやく広まりつつあり、お馬さんに迷惑を掛けず、他の人ともお互い様で休みが取れる。こんな環境がトレセンの中に徐々に広まってきているのです。ですからここ最近は有給休暇の平均取得日数も増えつつあり、中には1人平均が10日を超える厩舎もあるようです。盆も正月もオフシーズンもなく、週に1日しか休みのない労働環境ですから、年に1度や2度はまとまった休みがほしいものですよね。集中力が途切れた仕事は危険を伴います。たまの休暇は安全に仕事をする上でも重要なこと。ただしお馬さんに迷惑をかけないで。それを両立できる厩舎は成績上位の厩舎に多く見られます。休むときは休む、働くときは目一杯働く。国枝厩舎もそんな風になれたらと、みんなで協力し合って目指していこうと思います。
2011年08月01日
ここ数日はとても涼しく過ごしやすい気候となりました。そのおかげでお馬さんたちはとても体調が良く、元気いっぱいです。しかし今週からは再び猛暑となることが予想されています。今現在、美浦トレーニングセンターの馬場開場は午前5時。しかしこの時期の日の出時刻は午前4時30分頃。日の出と共に気温はぐんぐん上昇し、開場時刻から1時間もすると気温は30度近くに達してしまいます。つまりきちんと調教をこなしていける時間帯は朝の1番だけ。それ以降はお馬さんたちにとって地獄のような環境へと変わってしまいます。中山開催中は土曜日と日曜日の開催日に限り4時から馬場が開いていたのでいくらかは凌ぎやすかったのですが。つまりこの時期は太陽が昇ってしまったら調教には向かないと言うこと。せめてまだ暗い時間に調教ができたらなと思います。全国的にサマータイムを導入するというアイデアが持ち上がったときはそうなってくれと願ったものです。なぜ導入してくれなかったのかな・・・せめて馬場開場を4時くらいにしてもらいたいものです。そんな中でどのように対処していくことができるのか。もちろん朝の調教時間帯の中で、時間が遅くなればなるほど暑さは増していきます。なるべく早く終わらせる。しかし厩務員は2頭の担当馬がいるためどちらかは早い時間に乗れますが、もう1頭はどうしても遅い時間になってしまいます。国枝厩舎では1頭目と2頭目の調教の間の時間を通常2時間40分で組んでいます。この2時間40分というのは馬場のハロー掛けの時間や調教前の準備運動、調教後の整理運動、お馬さんの汗を流してあげる時間等を考慮し設定されています。しかし早く2頭目の調教を早く終わらせるとなると、この間の時間を短縮することが絶対的な条件となります。当然馬の調教や運動量に悪影響がないように。もちろん30℃を超える炎天下、しつこく準備運動や整理運動、そして調教をしているのも無意味。ですからすべて手短にということにはなりますが、最低限馬の生理的な部分に悪影響を及ぼさない程度にはきちんとやらなければいけません。つまり過不足なく。そこをきちんとお馬さんの様子を見ながら図っていかないといけません。その中で手短に。結構難しいんですよね。そんな工夫と葛藤の中で日々の調教メニューを組み立て猛暑の新潟競馬に備えています。皆さんも暑さに負けず、今週も夏競馬を楽しんでくださいね。
2011年07月25日
先週に引き続き今週は新馬紹介男の子編です。プレミアムタイムくん。父ハーツクライ 母タイムトゥダンス兄にはダートで2勝をあげているシャドウブルースがいる血統。国枝厩舎には初入厩のハーツクライ産駒。この子もおとなしい性格でおりこうさん。国枝厩舎にいた姉のオブザモーメントちゃんよりどっしりと構えている印象です。そして何よりこのタイムくん、調教での動きが抜群です。普段スイッチが入っていないときのタイムくんはおっとりしているくらいの雰囲気なのですが、一度スイッチが入ると凄いんです。誰よりも前へ。絶対に抜かせないぞ!といった気迫のある走りを見せてくれます。その変わり様がかわいくてたまりません。ナンヨーヤシマくん。父アグネスタキオン 母モアムーンライト姉には今年の菜の花賞で1位入線ご降着になってしまい、その後にフラワーカップでトレンドハンターの3着と活躍を見せているマヒナの弟。ヤシマくんはとっても愛想のいい子なのです。馬房の前に人が通りかかると、必ず顔を出しておでこ撫でてって。決して噛んだり、頭突きを食らわすなんてことはしません。こんにちは!って言わんばかりに寄ってきます。本当にかわいいんです。写真は振り向き顔なのですが・・・それはおいといて、走りはタキオンらしさがよく出た良いフットワーク。背中をよく使いクラシック競走のような長い距離に対応できそうな雄大さを持っています。でもまだ気持ちが子供っぽく、女の子を見かけると気持ちがそっちに。走っているときは全く問題ないのですが、運動中などには気をつけていないと。とっても元気のいいお馬さんです。ロベルクランツくん。父アドマイヤムーン 母アルフェッカ叔母にタケショウレジーナさん、叔父にタケショウオージくんがいる血統。母のアルフェッカも1200m戦を中心に活躍したスピード馬。クランツくんは430キロと決して大型ではありませんが、とても賢く気のいいタイプです。そして優秀な競走馬が持つ「勇気」や「度胸」を持っている。初めての場所でも、1人でも。人の言うことをよく聞いて、きちんとこなします。まだ入厩から日も浅く、強い調教は進めていないのですが、牧場でかなりのところまで仕上げられてきており、後は最終調整のみといった感じです。そう遠くはない日にデビューとなるでしょう。ここで紹介できていない2歳馬たちもいるのですが、まだ入厩から日が浅く性格や特徴など見えてきていない子達です。その子達も順次、改めて紹介させてもらいますね。
2011年07月18日
2歳戦も一開催を終え、順当に勝ち上がったお馬さん、うまくいかなくて負けちゃったお馬さんと様々。国枝厩舎からは初日にデビュー勝ちをしたスマイルゲートちゃん以外はまだデビューしていません。入厩こそ早かったものの、体調が整わない子、痛い場所が出てきてしまった子など山あり谷ありの現状です。そんな中、デビューに向け厩舎で頑張っている2歳馬たちを今日はご紹介しましょう。今日は女の子から。エポキシちゃん。父ディープインパクト 母シーズアン兄弟にはビーオブザバンやデビュー勝ちを飾ったシーズンズベストやテンペルといった活躍馬が多い血統です。とにかく素直で良い子。一切余分な事はしないし、バタバタしたり入れ込んだりなんてことも全くありません。入厩当初は非力な感じではありましたが、調教が進むにつれその点も徐々に解消。調教に跨がったジョッキー達にも口をそろえて「乗りやすいねー!」と褒めてくれました。皆さんには大したことには感じられないでしょうが、実はこの「乗りやすい」という要素は競馬に行くにあたり非常に重要なポイントとなります。その子の持っている力を100に近い形で発揮できるということですからね。サイレントクロップちゃん。父シンボリクリスエス 母サイレントハピネス母親は重賞2勝の活躍馬ですね。お兄ちゃんのサイレントメロディくんは国枝厩舎で活躍中。お兄ちゃんにも重賞級の活躍を期待しているのですが、妹も負けちゃいません。こちらも素直で、真面目な性格。手が掛からないのはお兄ちゃんと同じですね。ただクロップちゃんは女の子の分お兄ちゃんよりも気持ちが前向きです(この時期の男の子は気が散りやすいのです)。スタートも早くセンスの良さを感じさせられますね。何より飼い葉食いが旺盛で、調教がきつくなってきても全く食欲が落ちることがありません。これは競走馬として大きな能力の一つ。女馬でありながら500キロ前後の雄大な馬体で周囲からも注目を浴びています。最後に今のアパちゃんの様子を少し。競馬までまだ3ヶ月近くあるので、少々のんびりモード。徐々に調教のペースも上がり、飼い葉の量も増えるのでみるみる変わって行く事でしょう。それでは今週から始まる新潟競馬。暑い盛りで皆様も大変だとは思いますが、是非とも競馬場でお馬さんたちを応援してあげて下さいね!
2011年07月11日
先週に引き続き今週は新馬紹介男の子編です。プレミアムタイムくん。父ハーツクライ 母タイムトゥダンス兄にはダートで2勝をあげているシャドウブルースがいる血統。国枝厩舎には初入厩のハーツクライ産駒。この子もおとなしい性格でおりこうさん。国枝厩舎にいた姉のオブザモーメントちゃんよりどっしりと構えている印象です。そして何よりこのタイムくん、調教での動きが抜群です。普段スイッチが入っていないときのタイムくんはおっとりしているくらいの雰囲気なのですが、一度スイッチが入ると凄いんです。誰よりも前へ。絶対に抜かせないぞ!といった気迫のある走りを見せてくれます。その変わり様がかわいくてたまりません。ナンヨーヤシマくん。父アグネスタキオン 母モアムーンライト姉には今年の菜の花賞で1位入線ご降着になってしまい、その後にフラワーカップでトレンドハンターの3着と活躍を見せているマヒナの弟。ヤシマくんはとっても愛想のいい子なのです。馬房の前に人が通りかかると、必ず顔を出しておでこ撫でてって。決して噛んだり、頭突きを食らわすなんてことはしません。こんにちは!って言わんばかりに寄ってきます。本当にかわいいんです。写真は振り向き顔なのですが・・・それはおいといて、走りはタキオンらしさがよく出た良いフットワーク。背中をよく使いクラシック競走のような長い距離に対応できそうな雄大さを持っています。でもまだ気持ちが子供っぽく、女の子を見かけると気持ちがそっちに。走っているときは全く問題ないのですが、運動中などには気をつけていないと。とっても元気のいいお馬さんです。ロベルクランツくん。父アドマイヤムーン 母アルフェッカ叔母にタケショウレジーナさん、叔父にタケショウオージくんがいる血統。母のアルフェッカも1200m戦を中心に活躍したスピード馬。クランツくんは430キロと決して大型ではありませんが、とても賢く気のいいタイプです。そして優秀な競走馬が持つ「勇気」や「度胸」を持っている。初めての場所でも、1人でも。人の言うことをよく聞いて、きちんとこなします。まだ入厩から日も浅く、強い調教は進めていないのですが、牧場でかなりのところまで仕上げられてきており、後は最終調整のみといった感じです。そう遠くはない日にデビューとなるでしょう。ここで紹介できていない2歳馬たちもいるのですが、まだ入厩から日が浅く性格や特徴など見えてきていない子達です。その子達も順次、改めて紹介させてもらいますね。
2011年07月08日
今日は先週の競馬中に起きた一つの事故、出来事から。中山グランドジャンプ。距離4260m。真夏ではないとはいえ、高温多湿な時期のハードなレース。勝ったマイネルネオスさんは当日の馬体重-16kg。2着のメルシ-エイタイムさんも-8kgでの出走でした。どちらも前走は3月という競走馬にとって非常に過ごしやすい季節の出走だった事もあったのでしょうが、大きな馬体減。一見、体調が悪いのかとも思われがちな数字の減少ですが、私にはこの過酷な距離と障害、そして気候を乗り切るための厩舎サイドの秘策だったように感じました。大きな筋肉は余分なエネルギー消費を招きます。かといって「痩せて」いては厳しい競走を走りきることができません。何らかの工夫が実を結び、あの究極とも言える馬体を完成させたのでしょう。ムダのない体。平地でも同じ事が言えるのですが、レースの質が高くなれば高くなるほど、厳しさが増すほどに仕上がりは重要なポイントとなってきます。やはり「太め」はダメ。次があるという考えの基に馬体に余裕があれば最後の1ハロン、いや100mで勝負に甘さが出る。それがG1だと思います。目一勝負と人間の気持ちが入りすぎれば、過食、オーバーワークという方面へ傾きます。そんな中調教師も騎乗するスタッフも厩務員も「ちょうどいい」仕事をする。難しいことですね。マイネルネオスの走りを見て、最後に一伸びできたレースぶりを見てつくずく感じた次第です。もちろんお馬さんの根性も飛越のセンスも素晴らしかったです。苦しかったでしょうね、ネオスさん本当におめでとうございます。その一方でハナを切り見事なまでの逃げを見せ、最終障害でその命を落としてしまったメジロラフィキさん。五十嵐騎手の最終障害直前の顔と、ラフィキさんの最終障害を見ていたあの顔はこの先障害競走を続けていく上で一生忘れられないものになりそうです。かなり厳しいペースでの逃げ。しかし、勝てそうな勢い。絶妙なペース配分だったと思います。でも苦しかったのでしょうね。一瞬手にしかけた栄光。すべての辛さ、苦しさから何もかも解放されたと考えてあげるべきでしょうか。苦しまずに最期の時を迎えられたのなら。メジロラフィキさん、スズカスペンサーさんお疲れ様でした。一つの競走の中に光と影をしっかりと見ることとなった、そんなグランドジャンプでした。
2011年07月04日
まだ梅雨の最盛期だというの先週は暑かったですね。梅雨と真夏が同居って結構辛いものがありますよ。お馬さんたちもかなり困惑気味です。何が困るって調教の番組です。毎日前半戦はいくらか涼しく過ごしやすいのですが、後半になるとちょっと厳しい感じ。ですからどうしても後半に乗るお馬さんたちは調教の強度を軽くせざるを得ません。そんな中での調整ですから苦労します。まだまだ体力不足な2歳馬や体の大きなお馬さんたちは早くもバテ気味です。今日はそんなお馬さんたちが生活する部屋、そうですいわゆる「馬房」を紹介します。これが入り口ここから厩舎の中に入るのですが、廊下は人間専用。お馬さんたちが歩くにはちょっと狭いですね。ですから馬房をお引っ越しする時はいったん外に出て入り直すことになります。さて中はというとスペースは6畳くらいかな・・・そんなに広くはありません。しかし狭いからといってお馬さんたちは快適でないかというとあながちそんなことはないのかも。狭い場所には「安心感」がありますから。恐怖心の塊のようなサラブレッドたちですから、あまり広すぎれば落ち着かないということも考えられますよね。そして床はこのような感じ。ベトンと呼ばれる素材なのですが、一昔前の日本の家屋にあった土間のような感じかな。土を固めたような、かといってセメントやアスファルトのような硬さではありません。適度なクッション性を持っている感じです。その上に国枝厩舎ではバッカンと呼ばれる麦の茎の部分を乾燥させたものを敷き詰めベッドにします。そして馬房の周囲にはこのような2本の木の板が張り付けられています。これなんでしょう?想像出来ますか??お馬さんって背中がかゆいときや、寝わらが綺麗になったときなどに背中を地面に擦りつけるようにゴロゴロと寝転びます。ほぼすべてのお馬さんがする行為です。大概馬房の中央で体の左右どちらかの側面を下にしてする行為なのですが、勢い余って反対の体が下になってしまう時があるのです。すると馬房の中央にあった体は馬房の端っこへ。脚が壁に押しつけられるように「はまって」しまいます。するとお馬さんたちは・・・壁に足を滑らせて体勢を立て直す事ができず、立ち上がれません。大きな体を横たえたまま、4本の脚を壁に押しつけ身動きできなくなるのです。そんなとき壁にこの板があると、板と壁の段差にうまく脚が引っかかり体を中央付近まで押し出せるわけです。文章じゃ分かり辛いか・・・まあとにかくお馬さんをピンチから救ってくれるわけですね。そしてこれは女の子の馬房に取り付けられた小窓。隣の子とお話できます。寂しがり屋な子には持ってこいのアイデアですね。そしてこちらが裏戸。人間もお馬さんも出入りできるサイズですが、ここからお馬さんが外に出ることはありません。出入りするのは人間だけ。普段は網戸がしてあります。もちろん冬場は完全に締切り。このような部屋で毎日を過ごしているのです。暑さも寒さも受け入れ、日々精進しているお馬さんたち。今週も応援してあげて下さいね!
2011年06月27日
夏競馬も函館、中山、阪神と変則的ではありますが、無事に開幕を迎えることができました。なんといっても夏競馬といえば新馬戦ですよね。国枝厩舎も期待のスマイルゲートちゃんを無事に送り出すことができました。何かと順調にいかない新馬の調教。初めてのトレセン入厩から私たちとの関係がはじまります。ここに来るまでも、生産牧場、初期馴致(人が乗ったり動かしたりする練習です)、育成牧場とと経て入厩に至ります。その場その場で環境への対応、接する人たちへの対応、そして厳しい競走馬としての訓練があるわけです。脚や筋肉が痛くなったり、極度の疲労やストレスから病気にかかったり。その度周りの人々に支えられ、トレセンまでやってきます。トレセンに入厩すれば草地への放牧もないし、来る日も来る日もトレーニング。そう、なんせトレセンってトレーニング・センターですから。連日の発走練習に週に1~2度の追い切り。飼い葉も嫌というほど食べさせられます。すると多くの2歳っ子たちは、入厩から3週間から1ヶ月ほどでその疲労はピークを迎え、いったん調教の強度を落とさざるを得なくなります。しかしそれが普通。どこか筋肉を痛める、ソエが出る。内臓の疲れがどっと出てジンマシンが出る。全くご飯が食べられなくなる。こんな事が日常茶飯事。彼らにとってこの「疲労」という壁は、乗り越えなくてはならない試練なのですね。そんな中、大きなトラブルもなく昨日のデビュー戦を迎えたゲートちゃん。体質が強い。そう言ってしまえばそうなのかも知れませんが、それも秀でた能力です。しかし、こうは考えられないでしょうか。持っている能力のポテンシャルが他の同級生よりはるかに高い。一般的な高級車とF1カーほどの差があれば。一見順調にデビューを迎えた様に見えますが、実は彼女自身はここまでのトレーニングが朝飯前な感じ。だから「疲れる」とか「痛い」とかのところまで追い込まれていない。この時期の新馬戦を勝つということには、そんな「可能性」があるわけです。子供たちの運動会を見るような目で、若い彼らを見守ってあげて下さいね。
2011年06月20日
大震災から復旧し、その後続いてきた東京競馬も終了。今週からはいよいよ夏競馬!と、言いたいところですが地震の影響を大きく受けた福島競馬場は未だ開催の目処が立たず今週からは中山、阪神、函館で中央競馬は開催されます。函館以外は今ひとつ「夏競馬!」というイメージは薄く、トレセンも春競馬の延長の様な感じです。しかし、番組的には2歳新馬戦も始まりますし、4歳馬の降級もあり、そこはやはり夏競馬。気持ちを切り替えていきましょう。6月8日に美浦からイクゼギンギラギンくんとイオスさんが函館に向けて出発。10日にはコモレビちゃんとレッドアンジェリカちゃんが北海道内の牧場から函館競馬場に直接入厩。当面はこの4頭で函館競馬を戦います。前走でブリンカーを着用し、ハナに行くことでようやく力を見せてくれたギンちゃんことイクゼギンギラギン。小回りのコースなら前進可能ですね。環境の変化に弱く、トレセンから競馬場へ輸送すると入れ込んでしまう事の多いイオスさん。滞在競馬はもってこいです。ここ数戦は練習の成果もありきちんとゲートも出てくれますから安心です。コモレビちゃんは腰のあたりに疲れがあったため、少し長めの休養になってしまいましたが成長と休養で回復する部分ですから心配はないでしょう。素質は一級品ですから、期待しています。レッドアンジェリカちゃんはデビュー戦でまさかの骨折。しかし前肢ではなく後肢の微細なものですから大きな心配事ではありません。再起しスピードのあるところを見せてもらいたいものです。同じサクラバクシンオー産駒のグランプリボスのように、1600mくらいまでは対応できそうな感じです。以上、函館組の紹介でした。さて今週は早速新馬がデビューします。父タニノギムレット 母シーセモアそうです、あのスマイルジャックの全妹。その名もスマイルゲートちゃん。笑う門には・・・・スマイル(笑)ゲート(門)です。初日の1200mでデビュー予定。まだまだ幼さもあどけなさも残っているゲートちゃんですが、走りは文句の着けようがありません。スピード感も抜群ですし、体の張りというか身のつまった筋肉を全身にまとい圧倒的な存在感を示しています。暮れの大きなレースに、そして来年の春は・・・福来たる。期待しています!!
2011年06月13日
一番人気で勝つことの難しさ。アパちゃんは6着と初めて掲示板を外してしまいました。年度代表馬を負かした激走の疲れがあった。馬体重が8キロプラスの太めだった。スタート直後に内に押し込められてしまった。様々な敗因が考えられますが、ひとまずアパちゃんは無事です。力の限りを振り絞って走ってきましたが、無事です。レース後の彼女の姿を見ると、競馬を走ることの厳しさを改めて考えさせられますね。検量室の前で、ジョッキーから馬を引き受けます。そこから厩舎地区への帰り道は、長い長い地下通路。その通路には大きな上り下りの坂道があります。その下りの部分にさしかかると、競走を終えたアパちゃんは前脚の膝が砕けるように躓き転びそうになります。まだ実際に転んでしまった事はありませんが、それほどまでに消耗仕切って帰ってきます。一戦ごとに力を出し切ることは、競走馬として最高のこと。しかし、そこまで頑張り続けられる『何か』はどこから来るのでしょうね。彼らには、人間のように何かを達成すれば栄光や名誉、収入を得られるという欲はありません。目一杯走れば「辛い」「疲れる」「苦しい」の三拍子。そうなることは彼らははっきりと理解しています。それなのになぜ?何故あそこまで全力を振り絞って走ってくるのでしょうか。そんなアパちゃんを勝利という栄光に導いてあげられなかったこと。彼女に謝りたい気持ちで一杯です。
2011年06月06日
今年もまたダービーが終わりました。オルフェーブルの圧勝といえるダービー。池江厩舎は初めてのダービー制覇となりましたね。栗東に国枝厩舎が出張するときいつもお世話になっている厩舎ですから、勝手に身近に感じています。おめでとうございます。しかし一方で、あの場に立てなかったこと。そしてあの勝利が自分たちのものにならないことの悔しさ。これはオルフェーブルの関係者以外のホースマンは皆感じていることでしょう。ダービーに限らず、どのレースでも私は感じます。しかしなぜだか毎年ダービーを見ると、この悔しい思いをバネにまた頑張って行こうとその度決意するものです。決して私はダービーに思い入れがあるわけではく、自分の中の最も勝ちたいレースだと思っているものでもないのですが、なぜだかそう感じさせるレースなのです。この積み重ねがいつの日かそれぞれのホースマンの中でダービーという重みに変わっていくのでしょうね。さて、季節は移り変わり今年は早くも梅雨。美浦も連日雨・雨・雨・・・寝わらもしっとり水分を含み、お馬さんたちも快適とはほど遠い生活を余儀なくされています。そんな嫌な雨に対抗すべく、お馬さんたちにも雨具があるのはご存じでしょうか。これは調教中お馬さんの腰の部分に掛けて背中や腰が雨に直接さらされてしまうのを防ぐ道具。こちらは雨のときゼッケンが濡れてしまうのを防ぐものです。さらにはこれ、なんだかわかりますか?実は革製品である調教鞍を雨から守る鞍用のカッパ。そしてこれは引き運動のときに全身を雨から守る雨合羽。最後はこちら。頭のてっぺんからお尻までほぼ全身すべてが包まれるカッパです。このようにお馬さんたちは様々な道具を駆使して、濡れて風邪を引いてしまわないように調教に励んでいるのです。しかしこの時期は蒸し暑い雨の日も多く、カッパを着用すると蒸れて大汗をかいてしまうことも。そんなときは逆効果です。かといって、まだ寒いくらいの日もありその調節には神経を使います。早く梅雨明けしないかな・・・
2011年05月30日
オークスも終わり、いよいよ日本ダービーです。今年も国枝厩舎はダービーへの出走がありません。とても残念ですが、また来年のダービーを目指して頑張りましょう。そのオークスは、なんとデュランダル産駒が勝利!超個性的な短距離の追い込み馬である父親の存在を知っている方には、なかなか狙いづらい結果となりましたね。でもそんなところが競馬の面白さ。今週は一体どんな結末が待ち受けているのか。ダービーウィークをみんなで楽しみましょう!さて最近気になることがひとつ。数年前から、主要な重賞競走やG1競走の出走馬が確定すると、同時に中間の馬体重を発表するようになりました。今年も国枝厩舎ではマイネルキッツくんの天皇賞やヴィクトリアマイルのアパちゃんなどが対象となりました。国枝厩舎では追い切りが終わり翌日の木曜日、軽めの運動を終えた後に発表用の馬体重を測定しています。キッツくんは508キロ。アパちゃんは500キロ。この数字で新聞紙上などに発表されました。しかし競走当日の馬体重はキッツくん498キロ。アパちゃん490キロ。それぞれマイナス10キロ。果たしてどのようにこの事前発表の数字を皆さんはご利用されているのでしょうか。ご活用されている方がいらっしゃったらここでひとつアドバイス。国枝厩舎では毎週火曜日の朝、調教後に全馬の馬体重を測定しています。しかし時折馬が入れ込んでしまったり、体重計の調子が悪いこともあり火曜日の調教後に測定できない場合があります。仕方なしに水曜日の調教後などに測定するのですが、この数字が全く参考になりません。事実、発表に使用された数値と、火曜日に測定した数値でもかなりの差があり、天皇賞の週の火曜日のキッツくんと、ヴィクトリアマイルの週の火曜日のアパちゃんはキッツくん502キロ。アパちゃん504キロ。要はお馬さんの一週間の生活スケジュールの中における同じタイミングで数字を取り、比較しないことには大きな差が出てしまうということ。競馬の直後を除いてお馬さんは毎週曜日ごとにほぼ同じスケジュールで生活を送っています。そのどのタイミングで数字を取るか、きちんと決めておかないとその数字の持つ意味は大きく変わってしまいます。普段から毎日測定していれば、その数字の移り変わりも意味を持って捉えることが出来るのでしょうが、あるとき突然思い立って馬体重を測定すると競馬のときの体重と全く異なるものを目の当たりにし驚く結果となるでしょう。競走前の馬体重の数字も、水曜日に測ったものと木曜日に測ったものではかなりの開きがあるということです。ですから、前回のアパちゃんの500キロという数字が、次走の安田記念で水曜日に測定していたら同列に比較しては意味がないということです。発表時には水曜日の測定値か木曜日の測定値かが明記してありますので、是非ともご注意の上検討に活用して下さい。
2011年05月23日
アパちゃん、勝ちました!なんと昨年の年度代表馬ブエナビスタさんを破って、春の牝馬チャンピオンの座につくことが出来ました。今までにないほどスムーズな折り合い。そして強烈な末脚。最後もチャンピオンに迫られながらも、脅威の二枚腰。本当に強い競馬を見せてくれましたね。感謝、感謝。一方で、ブエナビスタさんは中距離から長距離を中心に競馬を使われてきたこともあり、勝負所での反応が今ひとつでしたね。それでいて終いの脚は冷や汗が出るほど強烈でしたから、ちょっとかわいそうな結果にも感じました。ここ数戦をマイル前後で戦ってきていたら・・・ですからこの結果が、この2頭の真の実力差というわけではありません。これからも挑む気持ちを忘れずに向かっていきたいと思います。でも、やっぱりチャンピオンホースに勝ったことは凄いことですよね。さて、激闘から一夜明けアパちゃんの様子が気になり、ついさっき見てきましたよ。当然競馬を走った後ですから、お疲れモード。かと思いきや、案外平和そうな雰囲気です。この気持ちのオンとオフがこの子の最も優れたポイントのひとつなのではないでしょうか。レースの際にゴール前で見せる鬼の形相、そしてこのアイドルのようなかわいい穏やかな表情のギャップ。見る人を虜にするわけです。疲労の回復具合を見てということになりますが、次走は中2週で安田記念。今度は古馬の、しかも屈強な男馬が相手となります。彼ら古馬のオープン馬たちが全身から発するオーラというか、醸し出す雰囲気にはものすごく大きなプレッシャーを、私たち人間でさえ感じる事があります。そんな強者共に混ざって、レースを走る恐怖。今まで以上に厳しいレースとなることは間違いありません。今一度、基本に返り無事に送り出すことが出来ればと思います。また応援して下さいね。
2011年05月16日
さて、今週はヴィクトリアマイルです。昨年の年度代表馬ブエナビスタさんに昨年の牝馬三冠馬アパちゃんが挑みます。両馬の勝負強さは皆さんに説明する必要はありませんよね。どちらも力を出し切って、素晴らしい勝負になることを祈っています。広い東京コースでこそ持てる力を存分に発揮できるブエナビスタさん。ここぞという勝負では絶対的な勝負強さを見せるアパちゃん。舞台は1マイル。胸を借りるつもりで向かいます。さて今日は、そんなアパちゃんのお食事の様子からご覧いただきます。とにかく食欲旺盛なアパちゃんなのですが、少しだけ食事に対するこだわりがあります。わかるかな?手前からいろいろと食器が並んでいます。一番手前はお水。水道水を家庭にもある浄水器で綺麗にしたものがいつも入っています。その次にあるのが小さめの飼い葉桶。この飼い葉桶には配合飼料が入っています。その配合飼料はあのシーザスターズも食べていたものと同じ。ビタミンやミネラルのバランスも考えられており、タンパク質もかなり高めの設定となったものです。しかしこれはあくまで補助食品。メインは一番奥にあり、アパちゃんが一心不乱に顔を突っ込んでいる大きな飼い葉桶。ここに彼女の大好物エン麦がたくさん入っています。アパちゃんのこだわりとは、大好物であるエン麦に他のものを混ぜないこと。せっかくのエン麦ですから、それだけで食べたいとのことです。混ぜて与えると器用に、本当にびっくりするくらいに綺麗に鼻先でより分け、エン麦だけを食べています。それはあまりに疲れる作業でしょうから、最初から分けてあげましょうとこういう形態になった次第。その分邪魔になる余計な飼い葉桶もつるさなくてはなりませんが、それでも彼女はそうしたいんだって。そして食べている脚元には乾草。チモシーとルーサンの乾草です。エン麦を食べる合間に、むしゃむしゃ。ですからエン麦のすぐ近くに配置してもらっています。こうして日常を送っているアパパネちゃん。こうやってみていると、その強さはどこから生まれるのかわからないほどにかわいいのですよ。日曜日も楽しみですね。
2011年05月09日
天皇賞のキッツくんは6着という残念な結果に終わってしまいました。しかし、案ずることはありません。昨日は非常に出入りの激しい競馬でした。1周目の正面からバックストレッチにかけては13.4秒や13.9秒なんていうラップが刻まれるほどの遅い流れ。スローペースというよりもむしろ強めのキャンターのような感じのレースでした。あれでは普段競馬では折り合いに心配のないお馬さんたちでも、リズムに乗ることができませんよね。ローズキングダムやトゥザグローリーなども競馬になっていませんでした。もちろんそんな中でもしっかりと折り合い、自分の競馬をすることができたヒルノダムールさんには感服しました。ただちょっと今年の展開は異常だったなと思いますから、参考外と捉えてよさそうです。もちろん厩舎サイドとしての反省材料も山のようにありますけどね。ここ数年のスローペース症候群が際立って目立った今年の天皇賞・春。競馬は本当に難しいです。でもあの展開をコスモヘレノスもトゥザグローリーもナムラクレセントもみんな納得せず、自ら流れを変えに行った点はここ最近になく良い点だったとも思いました。見ている方々は、先頭のお馬さんが入れ替わる度わくわく、ハラハラしたのではないでしょうか。全体のペースが遅すぎたことはエキサイティングさに欠ける競馬につながりかねない事でもあるのであまり歓迎されることではありませんが、多くのジョッキーが自らのチャンスを最大限に広げるために流れを変えに行った姿勢は今後の条件戦などでも見せてもらいたいものですね。そういった点では良い競馬だったと思います。さて、昨日香港ではヴィクトワールピサさんが回避しすっかり日本人の興味がなくなってしまったオーデマ・ピゲQE2カップがシャティン競馬場で行われ、今年の香港ダービー馬アンビシャスドラゴンが快勝。今シーズンの戦績を7戦6勝としました。このアンビシャスドラゴンさんは昨シーズンをクラス4という下級条件で4戦して未勝利。今シーズンに入るとめきめきと頭角を現しレイティングも昨シーズンの52~54から一気に116へジャンプアップ。アジア中距離路線の主役候補に名乗りを上げました。ドバイ・スーパーサーズデーのジェベルハッタの勝ち馬ウィグモアホールやカリフォルニアのグッドウッドステークスの勝ち馬ジターノエルナンドなどを負かしての勝利ですから、胸を張って良いものでしょう。ヴィクトワールピサの走りも見てみたかったのですが、それは来年以降の楽しみにとっておきましょう。それでは岩手競馬の復興も決まった5月もみんなで頑張りましょう!
2011年05月02日
さて私は、ここにきています。わかるかな?もう一枚見せるとこんなところです。どっかで見たことあるでしょう?これでどうだ!そうです、いま私は滋賀県にあります栗東トレーニングセンターにきています。あっ、ちなみに最後の飛び出す子供の絵はこの近辺に多いようで、交通事故の防止に役立っているようです。さて私、栗東に来てからというものツキがありません。初日に行った回転ずしでは最初に注文した黄金サバが酢でしめてあるし・・・生が食べたかったのに・・・○クドナルドではチキンのバーガーを注文したら売り切れ。ファミレスでカレーでも食べようとガ○トに行けばカレーは売り切れですと・・・サバはいいですよまだ。○クドナルドやガ○トで売り切れって。震災の影響で品薄なのかな?でも、幸せの総量が一人一人で決まっているなら、こんな不幸ならどんと来いです。かかってきなさい。まあそんなことはどうでもいいのですが、今週はいよいよ天皇賞。長かったブランクから一度競馬を使われて気配もよくなってきたマイネルキッツくんの登場です。栗東に来るのはもう何度目になるのかな。到着したその日こそ、若干そわそわしていましたが今では余震の続く美浦よりも安心して毎日を暮らしております。日曜日には半マイル57秒ほどのところをポリトラックでこなしましたが、身のこなし、精神的な部分共に順調です。決戦は5月1日日曜日。皆さん楽しみに待っていてくださいね。応援よろしくお願いします。
2011年04月25日
アパちゃん、注目の復帰戦は4着でした。まあ、この馬のパターンというか様々な手を尽くし目指す目標を見据えた上でこの結果。前向きにとらえていいでしょう。ただ、今回も馬券を買って応援していただいた方々には申し訳ない結果となってしまいました。今後とも応援よろしくお願いいたします。レースを振り返ると、スタートも良く道中の折り合いもまずまず。復帰初戦としては試すべきことはきちんとこなすことが出来た、そんなレースだったように思います。終いも最後まであきらめずに走っていたし、相手は屈強な男馬たち。良い内容の復帰初戦だったと思います。次はブエナビスタさんとの対決となるヴィクトリアマイル。決戦は5月15日。これからの一ヶ月が本当の勝負です。無事に迎えることが出来れば負けない。そう信じて頑張りましょう。しかし、競馬というのは難しいもので、この一戦が勝負!と意気込むとろくなことになりません。常々言っていますが「目一勝負」なんて言葉はいけませんよ。お馬さんはそんな事どうでもいいわけですから。この一戦は絶対落とせないなんて思っていると、その子に余計なプレッシャーを与えることになる上に人間も余分なことをする。以前ベテランの調教師と話をしていたときに聞いた言葉「前日に決めた調教メニューを当日に変えない」そこには人間の持つ欲張りな感情を納めるための自戒のようなものを感じました。もちろんその方も、馬場の状況やお馬さんの状況が悪い方に変わればメニューを変えます。しかし、当日お馬さんの元気な姿を見るとつい攻めたくなるそう。余分に調教すればその分レースの結果が良くなる。そう思ってしまうのが人間の弱さなんですね。飼い葉も同じで、たくさん食べればその分走ると思ってしまう錯覚。前日に冷静な頭で組んだ調教メニューを無意味に強くしてしまうことの無いようにという言葉です。今、国枝厩舎にはヴィクトリアマイルを目指すアパパネちゃんと、天皇賞を目指すキッツくんがいます。そんなありがたい言葉をしっかりと胸に刻んで、5月を迎えたいと思います。
2011年04月18日
震災から一ヶ月が経過しました。そんな中高松宮記念、桜花賞とG1競走も無事終了し少しずつ競馬の世界は平静を取り戻しつつあります。しかしいまだ連日続く大きな余震。美浦に在厩しているお馬さんたちへの心理的影響がここに来てとても心配になってきました。大震災発生当初は余震がここまで多く、そして大きなものだとは思ってもみませんでした。しかし本当にしつこい。プレートに大きな歪みが出来てしまっているとのことで仕方ないそうですが。直下型に近い場合は最初に「ドン!」と大きな縦揺れがあります。その度お馬さんたちは恐れおののき、大きな声でいなないたり不安に駆られ馬房の中を回り出したり。先日の最大の余震は真夜中にありましたが、早朝に厩舎へ出かけると窓ガラスにひび割れが。本来あの時間、お馬さんたちは静かに寝静まり明日への英気を養うとき。多くのお馬さんは体を横たえ、眠りについていたのでしょう。しかしこの余震はお馬さんたちに休息の時間を与えません。道理がわかる人間でさえ、緊張感が走る余震。動物たちの感じる不安といったら想像に耐えません。あの大きな余震は木曜日の夜中でした。水曜日に追い切り、その午後のチェックで何事もなかったお馬さんがおりました。そして翌木曜日の朝も異常はなく、午後の歩様検査でも脚元の検査でも異常のなかったそのお馬さんが金曜日の朝、脚が着けない状態になっていました。幸い胸前の筋肉を少し痛めただけの軽傷でしたが、おそらく夜中の余震で寝ているところを飛び起きたのでしょう。その際に少し捻ったようです。もうこれ以上関東のお馬さんたちをいじめないでもらいたいものです。そんな美浦にも春は来ました。南茨城は今桜が見頃を迎えています。東北地方にももうすぐ春はやってきます。頑張りましょう。
2011年04月11日
大震災から約3週間が経過し、阪神、小倉の2場開催も3節を経過いたしました。ここまでの関東馬の健闘により美浦が明るいなどの報道を目にしましたが、現実としてはどうでしょうか。短期間での出来事を考えれば、美浦組vs栗東組の勝ち鞍の比較も成り立つのでしょうが、そろそろ美浦組の疲弊感も成績に出てくる頃でしょう。現在、超変則的な2場開催となっているため未勝利、500万円下、1000万円下の条件ではそれぞれ5着、3着以内の馬に与えられる次走優先出走権を獲得できない馬の出走はとても厳しい状況になっています。そして震災直後にその優先権を阪神で獲得した関東のお馬さんたちが出走してくるのが今週末あたり。美浦から栗東もしくは京都へ前日に輸送し、当日再び馬運車に乗り阪神へと輸送される競馬に至るまでの輸送ルート。それを中2週で再び経験させなくてはなりません。一度目の出走時にも大きく馬体重を減らしていたお馬さんが圧倒的に多かった関東馬。今後一体どうなることやら・・・東京競馬から関東地方の競馬が開催できるようになれば、いくらかは救われるのですが、これからもずっと続くとなるとね。日曜日に阪神で出走したお馬さんたちなんて、レースを走って2時間後には馬運車に乗せられて8~9時間ときには10時間(渋滞があったり)の輸送を経て翌朝の3時や4時に美浦に帰ってくるのです。みんなぐったりしています。そんな彼らの様子を見ていると、そろそろ美浦組は出番がなくなるんじゃないかと思ってしまいます。その状況に対応するすべがありません。間隔を開ければ良いじゃないか?そう思うでしょう?でも優先権は4節、つまり一ヶ月で失効です。それを超えると、出走間隔の長い馬から優先されますが、着順による優先権のあるお馬さんのほうが優先です。ですからいまの状況ですとフルゲートの頭数がすべて着順による優先馬で埋まり出走間隔での出走はかなり厳しいものになります。お馬さんたちのことを考えると、早く関東地方で競馬が出来ることを祈るばかりです。
2011年04月04日
ヴィクトワールピサと関係者の皆さんおめでとうございます。素晴らしい結果となりましたね。ついに、トップオブトップのレースのひとつを日本産馬が、日本調教馬が勝ち取りました。さて、厩舎で働く者としてこの勝利に何を感じ、何を考えるべきか。この世界最高賞金額のレース、ドバイワールドカップを日本産馬が制したという事実。世界中をそのニュースが走るわけです。いままでこれでもかというほど苦しい思いをしてきた日本の生産界。明るいニュースとして受け止めるところでしょう。このひとつの勝利は、新たな世界への販路を開拓することになるのでしょうから。ひとたび世界が日本の生産界に注目すれば、他の日本製品同様仕事の繊細さ、精度の高さ、安定感からくる品質の高さはどの国にも負けないことは火を見るより明らかですからね。世界を席巻してきた日本ブランドがついぞサラブレッド生産界にも、となることでしょう。今回勝利を収めた社台ファームさんを始め、努力を重ねてこられたことが一気に世界へ向けて花開くことになるでしょう。しかし、ここに大きなジレンマが生じることは否めません。今後、それだけの上級馬は外国へと輸出されてしまうことになるわけです。セリの透明性を掲げ大成功を収めたセレクトセールですから、これから良い馬は日本人オーナーにしか売りませんとはいかないでしょうから。そういったことを防ぐため、中央競馬では手厚い手当や賞金などで良質の競走馬を確保してきました。しかし今回の大震災を受け、売り上げは大きなダメージを受けており、昨年の純利益40億円を今年も確保することは厳しい状況下にあります。来年度以降の保護政策は困難を極めることになるでしょう。超一流の選手がメジャーリーグに流れたことでしらけてしまった野球界のようにならないようにしないといけません。今の世代の競走馬は今後も世界で活躍することは想像出来ますが、数年後日本調教馬がトップオブトップのレースで活躍することを望むのはもう厳しいかも知れないということです。その流出を防ぐには、日本調教馬にもブランドを作らなければならないということ。逆に世界中の名馬を日本の調教師に託したいと望ませること。恵まれすぎているが故、厳しい環境下でしのぎを削ってきた生産界と大きな温度差ができてしまっているようにも感じられます。今回勝利した角居厩舎は日本の厩舎の中でも格別です。スタッフもシステムも、他の厩舎とは一線を画しているといっても過言ではありません。その角居厩舎が出した船に乗っかろうとしても誰にでも乗船許可は出ないでしょう。みんながそのレベルまで上がっていこうと努力しないと。
2011年03月28日
東北関東大震災被災地支援競馬としてこの土曜日から中央競馬が再開されました。本日もその3日目として1回阪神競馬5日目が阪神競馬場で開催されます。馬主、調教師、騎手からそれぞれ1出走あたり3万円、1万円、1万円が被災地へと送られることになります。競馬を開催するとその場所には多くの人々が集まります。その場で募金活動も行われています。またそれとは別に馬主協会、調教師会、騎手クラブからも多くの寄付金が拠出されました。こんなときに競馬?と思われるかも知れませんが、ある規模をもった経済活動が停止すれば日本の経済状況は冷え込みます。外食産業なども「不謹慎」と思われることで大きなダメージを受けているようです。食べるものもない被災者の方も多くいる中で、贅沢に思われてしまう様な行為をすることを躊躇う日本人の優しさが生んでいる経済の冷え込みです。大きな規模の経済活動の中のほんの一部のお金をみんなで出し合うことで大きな大きな支援をすることも出来ます。節電すること、支援することと今まで通りに生活できる人が出来うる生活をしないことは別じゃないかと思っています。もちろん「競馬を見てもらって被災者に勇気を」なんて思うことは出来ません。ギャンブル全般に対し否定的なとらえ方をされている被災者の方には腹の立つ活動かも知れません。「競馬開催に使われるお金をすべて送ればいいじゃないか」とも思われるかも知れませんね。確かに競馬は平和だからこそ多くの人に受け入れてもらえる興業でもあります。でも競馬産業をなくして支援に回すことよりも、そこから生まれる支援の輪を広げることの方が受け取る側にも受け入れられやすくも思います。だったら今まで以上に素晴らしい競馬を披露して、支えていければと思います。僕らには競馬しかないんですから。
2011年03月21日
この大地震は美浦村にも大きな影響をもたらしました。でも今は水道も復旧し、明日からは馬場もすべて使える見通しとなっています。しかし、流通は止まっているようで人間の食料が手に入りにくい状況となっております。それにしても大きな揺れで、厩舎のスタッフもそれぞれの家はもうぐちゃぐちゃ。ガラス類などが散乱し、危険な状況もあったようです。しかし、厩舎群はこれといった大きな被害は無いようです。お馬さんたちも動揺は隠せないものの、これといった怪我などもありませんでした(国枝厩舎のことです、他では小さな怪我などの話は聞きました)。しかし震災の数時間後、厩舎と従業員の居住地区で断水せざるを得ないことが判明。昨日の午後までは、復旧と断水の繰り返し。特に翌日の土曜日はほぼ断水状態が続いたため、トレセン周辺の育成牧場にある井戸水を運んでもらいお馬さんたちは難を逃れました。しかし馬場は土曜日も馬場内の角馬場、Bウッドコース、Cポリトラックコースの使用は可能であったため大きな問題もなく調教を終えることが出来ました。日曜日になるとAコースおよび坂路コースも復旧し、各馬の調整は順調に進められています。水道の方も、昨日の午後からは完全に復旧。とりあえず、火曜日からは通常通りの調教がこなしていけるようです。お馬さんたちの食料も、元々コンテナ単位で輸入しているものがほとんどですから、当面は備蓄分で間に合うようです。各方面からご心配の連絡をいただき感謝しております。小さな傷跡は残っておりますが、お馬さんたちはいたって平和な日々を、震災以前と変わらず送っておりますのでご安心下さい。最後に穏やかな表情の今のアパちゃんとキッツくんの写真をご覧いただきたいと思います。アパちゃんキッツくん
2011年03月14日
またここ数日寒いです。そして月曜日は決まって雨。でも調教のある日に降られるよりは全然マシ。さて、そんな寒い毎日ですがお馬さんたちは休むことなく日々調教に励んでいるわけです。しかし寒さは体に応えるわけで・・・骨折や大きな傷を負った経験を持たれる方には「そうそう!」とわかってもらえると思うのですが、寒さは古傷をうずかせます。完全に癒えている古傷の場合、決して痛いわけではないのだそうですが、何とも言えない違和感があるそう。それはきっと物言わぬお馬さんたちも同じことではないでしょうか。痛みがあれば跛行を呈す(歩様を乱すこと)などの明らかな意思表示を見せてくれますが、このような違和感程度のことですと我慢強い子になれば表だって見せることはありません。だからといって放っておくのもかわいそうですよね。そんなときには以前にも紹介したこのマイクロレーダーで暖めてあげましょう。人間ですとお風呂に入っているような感じかな。体表だけなのかも知れませんが血行を促し、硬くなった筋肉を優しくほぐしてもらいます。傷の跡などは、修復した箇所の筋肉組織が固まりしこりのようになっています。そんなところもマッサージやこのマイクロで柔らかくしてあげれば、少しずつでも楽に動けるようになっていくのでしょうから。若い3歳の子たちなんかにはまだわからない大人の古傷。古馬になれば誰だって古傷の2つや3つはあるものです。古馬になっても未だ厩舎に残ってくれているお馬さんたちというのは、それだけ厩舎にも大きく貢献してくれてきたということ。できる限りのケアを、できる限りの快適を提供してこれからも末永く活躍してもらいましょう。写真は帰ってきたキッツくん。肝心要の腰にマイクロを当ててもらっている様子。パワーを一杯蓄えて、春シーズンに向かいます。アパちゃん共々応援よろしくお願いします。
2011年03月07日
ヴィクトワールピサさん強かったですね!どこからでも競馬ができる、そんな余裕を感じさせる内容でした。ちょっと次元が違う感じです。ドバイに行っても今回のような自信に満ちあふれた立ち居振る舞いを見せてくれれば、負ける姿は想像しがたいですよね。凱旋門賞への挑戦が彼を一回りも二回りも大きくしてくれたようにも感じます。お馬さんも人間と同様、様々な経験を積むと少々のことでは雰囲気に飲まれてしまうこともなくなります。例えば身近な例では、ゲートを怖がるお馬さん。出ることを知っていて、ゲートの先にある苦しさからくる恐怖ではなく狭い場所が怖いというタイプの子の場合。そんな子にウォータートレッドミルの練習をしてみたり、プールの練習をしてみたりと狭い場所や、ゲートとは比べものにならないほど彼らの想像をはるかに超える恐怖を乗り越えさせる。そんなことをしているうちに、ゲートなんてへっちゃらになっちゃうなんてこともあるのです。もちろんそうは問屋が卸さない子もおりますが。まあとにかく様々な経験を彼らに積ませてあげることは、彼らを大きく成長させてあげることへと繋がるのです。充実の4歳を迎えたヴィクトワールピサさん。今後の動向からも目が離せませんね。さて、その中山記念を熱発で回避しみなさんにご心配をおかけしたアパパネちゃん。今ではもうすっかり元気いっぱいです。中山では走りたくなかったのかな・・・こんな感じでバリバリ飼い葉も食べ、せっかく競馬に向けて作った体も、今はまた普通の健康体です。今後は4月16日土曜日(皐月賞前日)に阪神競馬場で行われるマイラーズカップに向けて調整していきます。正直言って元気すぎるので、早くみなさんにお見せしたいところなのですが、4月まで我慢していて下さいね。そして、彼も帰ってきましたよ。キッツくん!!札幌記念以降、なかなか思うように調整できずみなさんをお待たせしてしまっているのですが、すっかり元気になって帰ってきました。去年は厄年だったのかと思うほどいろいろあったキッツくん。でもその苦しい経験も、裏を返せば素晴らしい体験。苦難を乗り越えた彼には、今まで以上に強い精神力が備わっていることでしょう。休み明けは3月26日土曜日(高松宮記念前日)中山の日経賞。今年はちょっとしたG1よりも強いメンバーが揃いそうですが、ディフェンディングチャンピオンとしてここから天皇賞へ向けて始動します。暖かく見守って下さい。先週は土曜日にロイヤルパープルくんが鮮やかな新馬勝ちをおさめてくれました。期待通りの素直な競馬っぷりでしたね。最後の直線でみせた重心を低く沈める走りと、道中で見せる体の起きた四肢に体重が乗った良いバランスの走り。これが彼の真骨頂だと思います。そのメリハリと人に対する素直さを兼ね合わせたパープルくん。先々週のカグニザントくんと一緒に今後に期待を持たせてくれますね。さて、今週からはいよいよクラシックへ向けたトライアルレースが始まり、一気に競馬シーンは春めいてきます。みなさんも今年の夢を見つけて下さいね!
2011年02月28日
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