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2008.05.30
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カテゴリ: カテゴリ未分類
まだ昼間の1時だと言うのに・・俺は歌舞伎町にいた。

午後の日差しは暑く、まだまだ夏は続きそうだ・・


歌舞伎町の区役所の裏側の、ビルの一角にその劇場はあった・・。


俺は不似合いな花束を持ってそのビルの前に立った・


と・・

昨日、店に来た『徳さん』と言う体格のよい男が階段を降りて来た。


『あー!先生!どうぞどうぞ!上がって下さい!』


コワモテな人相をしているが、人はよい。


大きな躯をこれでもか、と言う程屈めて、案内をしてくれる。



、プロのダンスの先生と言い出した・・

俺より一回りは歳上だろうに、若造に、先生と言ってくれるのは嬉しい判明、照れ臭くもある。


俺は階段を駆け上がり、踊り場にある、チケット売り場に顔を近づけた・・。

老婆がチケットの前に座っていた。


ママが言っていた言葉を思い出す。


『明日来たら、ママを呼んでって言ってちょうだい。』


俺はチケットを売っているお婆さんにママを呼んで欲しいと頼んだ・・。


と・・


その、お婆さんの背後から、ママさんが顔を出した。

『あら、たけちゃん!ちゃんと来てくれたのね。どうぞ入って・・』

モギリのお婆さんは怪訝そうに見ていたが、俺はそのまま中に入った。



目線の高さに舞台が儲けられており・・

中央には『デベソ』と言う本舞台に繋がる、通路がある。


簡易な作りと言う感じは否めない。

「場末のストリップ劇場・・・」

そんな言葉が脳裏を過ぎった。




席には還暦ぐらいの老人が7人、

後は職業不定と言う感じの中年男性が5人程、座っていた・


花束を持ってる、20代の男・・明らかに浮いている。


構わず、俺は真ん中の1番後ろの席に座った。

ママに言われた事があった・・

『もし来てくれるなら、ショーを最初から見て・・』



右端に、本日の出演者と言う掲示板があった・・

そこには7人の名前がある・


一人持ち時間が15分~20分。

大トリが30分であった。

彼女の出番は5番目・・

大トリが、ゆきと言う姉さんと呼ばれていた人だ。

客席は半分も埋まっていなかったが、ショーが始まった・・

ブザーがなり、場内が暗くなり・パチンコ屋のアナウンスみたいなMCが流れた。

最初の出演者が登場する


アイドル歌手の『十七歳』と言う曲が流れる・・

歳の頃は二十歳くらいだろうか・・いかにもアイドルのような恰好だ・・

そのまま・・フルコーラスを・ワンステップと、手振りだけで踊っている・・。

まるで、幼稚園のお遊戯だ。

確かに、可愛い顔をしてるが、4分間・・

ぎこちない踊りと作り笑いは見ている方が辛い・・。


2曲目になる・・

スローなバラードが流れる・・。

ステージ上で、おもむろに、衣装を脱ぐ・・。

舞台袖に脱いだ衣装を持って行き、

シースルーのガウンを身に纏う・・。

と・・

その時を待っていたかのように、10人近くの客が入って来た。


いや、その時を待っていたのだろう・・。


常連客のようなオヤジ達は・・下半身にしか興味がないのだろう・・。


その娘の名前を呼ぶ・

舞台上では・・微笑みながら、下着を脱ぎ、股を広げたその娘が笑ってる・・


痛い・・・。


・・来るんじゃなかった。

俺は後悔の念に苛まれた。


今、見ているのと同じ光景をレナと言う娘に置き換える・・


つらすぎる。


舞台上で股を広げる度に、噛り付きで見ている、

10人位の爺さん達の頭が左右に揺れる・・。


滑稽でありながらも・・・虚しい光景だった。


見ている側には哀れさを感じ・・

見せている側には失望感を感じる・・


そうまでして・・見たいのか・・・。



明るい曲がかかり・・

全裸のその娘が舞台の右左と移動しては股を開いた・・。

タンバリンを持って、股を開く・・。

それで、その娘の出番は終了した。



一人目が終わり・・二人目が出てくる。



赤い着物を着た、小肥りの中年女性だ・・

塗りたくった化粧が哀れさを誘う・・。

と・・客席からは、一人、また一人と、客がゾロゾロと出ていってしまった。


正直だ。

席に残ったのは十人前後だ


その小肥りの中年女性は、おもむろに、赤い着物を開けた・・。

乳房がポロンとこぼれる・・・

ためらいも無く股を開く。、

タバコを吸い・・

それを股間に持っていき・挟む・・。

股間の間から煙りが出る・・

掲示板には『花電車』と書いてある・・。

その場所にいるのが辛くなって来た・・


俺は何してるのだろう・・

疑問が湧いて来る・・。



その後フィリピン人の女の子、と、

20代中頃の女の子のステージが終わった。



あの娘の出番だ・・。


見ていていいのだろうか?


そんな気もしたが・・・

やはり・・しっかりと、見るのが筋だろう・・


見ては行けない物を見る気がして・・

心臓が高鳴る。


と・・

いつのまにか、先程まで、空いていた客席が満席になっている・・


立見客までいる・・。


切なさが心をつんざいた。


彼女も「見世物」になってしまうのか?


しかし・・

そんな邪念は一瞬で吹き飛んだ。


その時、けたたましい音とともに、ピンスポットが光り、その中に彼女が現れた。


黒いジャケット・スラックスに、ベスト・

胸元まで開けた白いシャツ・白い手袋

ダービーハットに黒い髪は納められて、細い首筋が印象的だ・・。

音楽が流れる・・

それまでのショーとは、明らかにに違う!

空気が張り詰め、見る側も、何が始まるのか?

と、期待と興奮が入り交じった空気になっている。


ちょっと、生意気で、クールな女・・

そんな印象を抱かせる。

曲に合わせ、ステップ・・ポーズ。


その、ジャズのナンバーに動きがフィットしている。

かなり、踊れる・・。

目線は合わせない様に・・?悲しみを堪えてる様にも見える。


っと、その曲のフィニッシュで仰け反る・・


見事に反り返った瞬間、ダービーハットが飛ぶ!


長い黒髪が、「バサッ!」と現れ、妖艶な空気を醸し出す・。


決まった。



そのまま・・次のスローなナンバーに変わる。


仰け反った身体をゆっくりと戻す・・。


戻し終えると・・正面を向いて・・刹那・・溜息をを吐く・・

ゆっくりと歩き・・

ダービーハットを拾い・・

バードポールハンガー と言う洋服掛けの上に乗せる・・。

着ていたジャケットをかけ・・ベストのボタンを・・ゆっくりと外し・・

その、バードポールハンガーに、着せるようにかける・・


スラックスのウエストボタンを外す・・。

するっと、スラックスが落ち、白い綺麗な生足が見える・・。

ワイシャツ1枚の姿で、しゃがみ込み、跪き、妖艶な女に変わった・・


脱いだスラックスを、包むようにたたみ・・

バードポールハンガーの下に、かける・・



と!・・照明の加減もあるが・・



そこに、「シルエットの男性が」誕生した!

あたかも男性が・・立っているように見えるのだ・・



曲のフレーズと重なる・・♪死んでしまったの~♪

そこに、サスライトが上からあたる・・。


無機物な男の姿が浮かび上がる・・。



♪今年も海に行くって・・たくさん映画も見るって・・約束したじゃない・・♪


ワイシャツ1枚の姿・・

長い黒髪の女が、バードポールハンガーの男性にもたれるように・・

甘えていく・・・。


気が付く。

着ているのは、男性物のシャツである・・。

曲とイメージがダブってくる・・。


頭のダンスシーンは・・好きだった男性の真似・・

身につけているのは亡くなった男の愛用していた衣服・・。


その悲しみと苦しさから・・

彼女は、いつもクールな冷たい女になってしまったのだ・・。


シャツのボタンを一つ、一つ外していく・・。

少し甘えたような顔で・・

さっきの冷たかった顔が・・柔和な女の顔に変わった・・。


シャツの隙間から、白い乳房が覗く・・。

長い黒い髪が、胸の谷間に入り込み・・

赤い口紅・・白い肌・・長い黒髪が・・

艶かしく動き、妖艶な姿を浮かびあがらせている・・。


客席も水を打ったように静まり返り・・

ステージに見入っている・・。


曲が変わり、大作映画のような曲になった・・

衣服を脱ぎ捨て・・全裸になった・・。

臆せず・・通路の中まで、歩み・・祈るようなポーズを取る・

這い蹲り、仰け反り、見事な開脚を見せ・・

最後・・ブリッチをする・・。



幻想的な音楽と共に・・

ブリッジをした状態から、身体が起き上がっていく・・

1ミリ・・1ミリ・・時間をかけて起き上がっていく・・

渦を巻いていた、長い黒髪が・・

床から真直ぐ、垂直になっていく・・。


ゆっくりと、滑らかに・・幻想的だ。


弓なりに反った身体が、徐々に戻っていく・・。

スモークと照明に照らされ・・

起き上がっていく姿は神々しい・・・・。

時間をかけ、仰け反った身体が戻っていく・・。


全身に・・鳥肌が立ってくるのが解った・・。



強い、冷たい女・・

弱い、優しい女・・

しなやかな女らしさ・・


20分のステージは、見事に構成され・・演じきった・・

一時として飽きさせる事なく、見るものを魅了した。



ここに・・俺は「ショー」の原点を見た気がした・・。

確かに、「技術」で人を「魅了」する事は出来るかもしれない・・

だが・・「見せる」技術はそれだけではない・・。


俺は一人で・・20分・・飽きさせないでステージをこなせるだろうか?

たった・・一人で・・?

20分と言う時間を踊れるだろうか・・・?


自問自答する。


これこそ・・ショーの原点ではないのか・・・?


彼女のステージに魅了された・・。



ステージ上では、明るいライトの元・・彼女が微笑んでいる・・。

目線が合う。


俺は立ち上がり・・花束を渡した。


俺に気付いた彼女は、喜びに満ちた表情で・・受け取り、笑顔を返してきた。





大トリの姉さんまでは、意味深いショーが続いた・・


ママに言われた『もし来てくれるなら、ショーを最初から見て・・』


と言う意味が解った。


「ショー」の原点、進歩の過程を見て欲しいと言う事なのだろう・・。








その日のステージを終え、彼女は歌舞伎町から旅立った・・。






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Last updated  2008.05.30 19:57:45
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