・『70%で働く』 は、佐野創太が「もっと頑張る」ことを前提にした働き方から降り、長く働き続けるための方法を考えた本だ。2026年4月刊、212ページ。著者は20代で介護離職を経験し、その後1500人以上のキャリア相談に携わってきた。本書の中心にあるのは、100%を出し続けることではなく、 普段は70%程度の余力を残し、必要な瞬間に100%へ切り替えられる状態をつくる という発想である。
・ 本書は三つの段階で、「頑張りすぎる働き方」を解体していく。第1章では、「もっと頑張らなければ」という焦りそのものを問い直す。現代の仕事では「頑張る」がいつの間にか「無理をする」と同義になっている。そこでまず、自分が現在何%の力で働いているのかを見つめ、働き方のペースを落とすサインに気づくことから始める。第2章では、会社に合わせすぎた働き方から主導権を取り戻す。「お金」「人」「仕事」「生活」という四つの観点から働く理由を考え、働き方の満足度を「体感年収」という尺度でも捉える。重要なのは、会社の評価ではなく、自分が何を大切にして働くのかを明確にすることだ。第3章では、疲労の原因を「仕事量」だけに求めず、「悩みすぎ」にも目を向ける。解決すべき悩みを選び、思考の種類を変え、感情や習慣を動かすことで、70%の状態を維持する方法を探っていく。
人生の不確実性に備えて、余白を戦略的に残す 余力そのものを資産として扱うこと にある。
・ 本書の面白さは、「働き方」を時間管理の問題だけにしなかった点にある。30代、40代になると、仕事は単純な労働ではなくなる。役職、家族、収入、健康、将来のキャリアなど、いくつものものが絡み合う。そのため「もっと頑張れば解決する」という20代的な発想が、むしろ人生全体を窮屈にする。佐野が問い直しているのは、「頑張ること」ではなく、「誰のために、何のために頑張っているのか」ということだ。「働かされている」と「働いている」は、似ているようでまったく違う。前者では、会社の目標や他人の期待が自分の行動を決める。後者では、自分なりの目的を持ったうえで仕事を選択する。本書は、その小さな主導権を取り戻そうとする。
・一方で、「70%」という数字を厳密な生産性指標として受け取るべきではない。この数字に科学的な絶対性があるというより、「100%で働き続けることを疑うための思考装置」として読むほうが本質に近い。
・100%で走り続ける人生から、必要なときに100%を出せる人生へ。 『70%で働く』が伝えているのは、仕事を軽くする方法というより、 仕事によって人生そのものを食い潰さないための思想 だ。「もっと頑張らなければ」と思ったとき、本当に必要なのはアクセルなのか。それとも、一度アクセルから足を離して、自分がどこへ向かっているのかを見ることなのか。本書は、その問いを静かに突きつけてくる。
70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法 [ 佐野 創太 ]
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