ある後追いファンが語る河合奈保子さん
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前にも書きましたが、河合奈保子さんが「ヒデキの弟・妹オーディション」で優勝してからデビューするまでは、わずか2か月ほどという短期間のスケジュールでした。私の手元にある文献をもとに時系列にすると、以下のようになります。(下記日付はすべて1980年)3月16日 「ヒデキの弟・妹オーディション」決勝大会で優勝3月31日 上京(10日ほど芸映の専務宅に滞在)4月1日 大本恭敬さんのボイストレーニング開始4月18日 初レコーディング6月1日 デビューシングル「大きな森の小さなお家」発売デビューまでの期間が短いこともさることながら、トレーニングを始めてからわずか17日後にレコーディングというのも驚くべきスケジュールです。ちなみに、二代目「ヒデキの妹」となった石川秀美さんの場合、1981年12月のオーディションで優勝していますが、デビューは1982年4月でした。これは中学卒業を待つという事情もあったと思われますが、奈保子さんよりはだいぶ時間を取っています。河合奈保子さんのヴォイストレーニングの模様については、前回引用した『夢・17歳・愛』の奈保子さん本人による回想に加えて、トレーナーである大本恭敬さんが『理想の声に近づく本』の中で比較的詳しく記述されています。奈保子さん自身がいろいろと大変だったと振り返ったトレーニングですが、これは大本さんにとっても少々想定外な面があったようです。以下、少し引用させていただきます。その(トレーニングの)最初の日、彼女の第一声を聞いて、私はアレ!こんな声だったかな、こんな子だったかな、と思いました。いろいろな歌を歌わせてみると、リズム感が良くない。(中略)高い声が出ない。歌が重い。正直なところ、マイッタな、なんでこんな子を選んでしまったのか、と感じました。しかし、今さらしょうがない。よし、やろう、と猛訓練を始めました。(『理想の声に近づく本』より カッコ内は私が追記)レッスンは一日平均二時間、どうやらデビューまで基本的に毎日続けられたようです。今ちょっと出典を確認する余裕がないのですが、奈保子さんは後年何かのクイズ番組でこの時期のことを振り返って、16歳の高校生が平日の昼間から私服で出歩いているので家出少女と勘違いされた、というエピソードを話していたと思います。ちなみに二時間のレッスンというのは、日常の仕事、あるいは勉強などをしている感覚からすれば必ずしも長いとは思われないかもしれませんが、歌のトレーニングとしては(強度にもよりますが)かなりきついのではないかと想像します。しかも、後述のような「宿題」付きだったので、実質的には衣食住に関わる時間以外は常に歌のことを考えているような生活だったのではないでしょうか。大本さんによる「猛訓練」の具体的内容については、いくつかのポイントに分けて解説されているのですが、興味深いのは「レッスンテープを繰り返し聴く」という点と、「リズム感トレーニングには縄跳びが一番」という指導です。前者については、レッスンの模様をすべてテープ録りして、それを聴くのが毎日の宿題になっていたとのことです。私は以前楽器をやっていた時、たまに自分が練習している時の音を録音してチェックしたりしていましたが、自分で弾いている分には良い気分でうまく弾けているつもりでも、録音したのを聴くといろいろと粗がわかってへこむ反面、直すべきポイントがわかるので確かに効果がありました。奈保子さんの場合は、大本さんの厳しいトレーニングを受けている様子がすべて録音されていたわけですから、非常にたいへんな一方でレッスン内容の振り返りにもなり、自分の歌について(良い意味で)反省することができたのではないかと思います。縄跳びについても、これまた出典を確認できないのですが、やはりクイズ番組か何かで、リズム感を鍛えるために縄跳びをしていたことを奈保子さん自身もコメントしていたことがあります。わたしはこちらについては体験がありませんが(笑)、大本さんから見た(聴いた)「リズム感の悪さ」は、もしかすると奈保子さんがもともとクラシック系の、しかも器楽(ピアノやトロンボーン、マンドリン)のバックグラウンドがあったことによるのかもしれないと想像しています。クラシックの場合、(楽器にもよりますが)基本は音符に対して正確な長さで、かつ「平均的」に音を伸ばす練習をします。「平均的」というのは、音が途中で抜けたり膨らんだりしないで、音質・音量が均等になるようにする、ということです。ピアノの場合は打鍵楽器なので、出した瞬間から音が減衰するという特徴がありますが、一音一音のタッチに差が出ないように弾くという意味では同じです。ですが、このような音の出し方をそのまま忠実にポップス、あるいはロックのような曲にあてはめて歌うと、おそらく非常に平板でノリの悪い歌い方に聴こえるでしょう。クラシックでも、上記のような基本はあくまで基本であり、ここからさまざまなヴァリエーションを習得することで表現力を上げていくわけです。大本さんの回想によると、奈保子さん自身は「リズム感、リズム感って言われるけど、自分はピアノも弾いていたし、マンドリンも弾いたりしていたから、そんなに悪いと思ってなかった。リズム感ってそんなにむずかしいものなのか、と考えこんでしまったこともあるようです」といいます。逆に言えば、奈保子さんは器楽を通じて音楽的な「基本」が具わっていたので、短期間でポップシンガーに相応しいリズム感のある歌い方を身に着けることができたのかもしれません。<参考文献>『夢・17歳・愛』河合奈保子『理想の声に近づく本』大本恭敬
2026.02.08
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