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雨上がりの虎ノ門ヒルズは、まるで水晶のように光っていた。高層ビルの鏡面ガラスに映る夕陽が、オレンジ色の光を周囲に投げかけている。その光景を、佐倉はカフェから眺めていた。
「また来てしまった」と佐倉は思う。
同じ席、同じメニュー、同じ時間。彼女は無意識のうちに、この場所に足を運んでいた。それは彼との約束の場所だったから。
昨年の今頃、彼はここで「東京を離れる」と告げた。海外転勤の辞令が出たのだという。期間は未定。「帰ってきたら、また会おう」。そんな言葉を残して。
窓の外を見ると、新緑の木々が風に揺れている。あの日は桜が散り始めていた。虎ノ門ヒルズの足元に広がる小さな公園で、風に舞う花びらを二人で見上げたのを思い出す。
「これ、東京の桜を持っていくよ」と彼は笑った。散った花びらを一枚、手帳に挟む彼の横顔が、今でも鮮明に思い出せる。
あれから一年。連絡は途絶えることなく続いていたが、先月から急に彼からのメッセージが来なくなった。海外の通信環境の問題か、それとも彼に何かがあったのか。佐倉は何度もメッセージを送ったが、既読すらつかない。
「お待たせしました」
ウェイトレスがコーヒーを運んできた。いつものカフェラテ。彼が好きだった飲み物。
佐倉はスマートフォンを取り出した。やはり返信はない。彼の最後のメッセージは「近々、サプライズがあるよ」というものだった。それが何なのか、佐倉には分からなかった。
外の景色に目をやると、日が傾きかけている。あの日も、こんな時間だったか。
ふと、カフェのドアが開く音がした。振り向いた佐倉の目に映ったのは、一年ぶりの彼の姿だった。
「やっぱりここにいると思った」
彼は笑った。その手には小さな箱があった。
「開けてみて」
佐倉が箱を開けると、中には押し花になった桜の花びらがあった。あの日、彼が手帳に挟んだもの。
「一年前の約束、覚えてる?」
佐倉は頷いた。言葉にはできなかったが、もちろん覚えていた。
「東京に戻ってきたよ。今度は、ずっと」
窓の外では、新しい年の桜が咲き始めていた。虎ノ門ヒルズの光沢に、やわらかなピンク色が映り込んでいる。
佐倉は思った。都市と自然、過去と未来、別れと再会。すべてが交差するこの場所で、新しい物語が始まろうとしていた。
「ようこそ、帰ってきたね」
佐倉はようやく声に出した。彼の目を見つめながら。
(文:Claudeによる)


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