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桜が散りきってから、人はようやく、春という季節の輪郭に触れるのかもしれない。
四月の半ば。あれほど賑わっていた花見の声は、引き潮のように静かに遠のき、川沿いの道には日常の呼吸が戻っている。自転車にまたがり、ゆるやかに走り出すと、土手の桜並木はすでに葉桜となり、淡い花の記憶を置き去りにするように、やわらかな萌黄色が風のなかで揺れていた。
散り遅れた花びらが、川面を頼りなく漂っている。
それはどこか、旅の余韻のような白さで、静かに胸に残った。
ペダルを踏み込むたび、空気に混じる匂いが変わる。甘やかな花の気配は消え、代わりに立ちのぼるのは、青く、少し土を含んだような、生の匂いだ。木々はすでに次の季節へと歩みを進めている。花をまとっていたときよりも、葉を広げた今のほうが、桜はずっと大きく見える——そんな当たり前に、ふいに気づかされる。
川の水は澄み、底の小石が指折り数えられそうなほどに透けている。斜面にはタンポポが点々と灯るように咲き、誰に見られるでもなく、ただ確かにそこに在った。
あれほど人で埋まっていたベンチも、今日は空席のままだ。腰を下ろして川を眺めていると、水の音が思いのほか近くに感じられる。
桜のあとの春は、静かだ。
主役を見送った舞台のように、すべてが一段落したやさしさに包まれる。それでも——いや、だからこそ、光はやわらかく、風はぬくもりを帯び、空はどこまでも深く青い。
自転車を押しながら、土手をゆっくり歩く。急ぐ理由は、どこにもない。
葉桜の影が、足元で静かに揺れていた。

春だ、花見川で自転車(写真1+Artguru)
春だ、花見川で自転車(写真1+Artguru)

春だ、花見川で自転車(写真1)
春だ、花見川で自転車(写真2+fotor)
春だ、花見川で自転車(写真2+fotor)
春だ、花見川で自転車(写真2)
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