PR
Keyword Search
Calendar
Comments
Freepage List
九月の終わりに近い夜だった。昼の名残りをわずかに含んだ空気は、それでももう秋の入口に立っていて、道の端にたまった熱を、ゆっくりとほどいていた。蝉の声は途絶え、代わりに、走る車の音と、どこかの室外機が低く唸る音とが、夜の底で静かに重なっていた。
「幕ブラ」と呼んでみると、歩くという行為が少しだけ軽くなる。目的地へ向かうのではなく、目的のないまま、街の呼吸に歩調を合わせていく。交差点をひとつ渡り、角をひとつ曲がる。そのたびに、昼の地図からこぼれ落ちていた小さな風景が、夜の側からこちらへ姿を現わす。
家々の窓には、それぞれ違う明かりが灯っていた。白い光の部屋、黄ばんだ光の部屋、カーテンの隙間から細く漏れる光。そこには夕食の片づけをする人がいて、明日の準備をする人がいて、帰ってきたばかりの人がいて、まだ帰れずにいる人がいるのだろう。知らない暮らしの一つひとつが、窓という小さな額縁に収められている。
道ばたの植え込みから、夜の草の匂いがした。昼間はただの緑として見過ごしていた葉が、暗がりのなかでは濃い影を持ち、風が吹くたびにかすかに揺れた。九月の風は、夏を完全には手放していない。それでも、その手のひらの奥には、冬へ向かう冷たさがもう隠されている。
歩いていると、街は記憶に似てくる。
見覚えのない場所なのに、なぜか以前にもここを通った気がする。あるいは、通ったことのある場所でさえ、夜になると別の場所に生まれ変わる。昼間は建物の壁だったものが、夜には沈黙になり、昼間はただの電柱だったものが、夜には空を支える細い木のように見える。視界が狭くなるぶん、心のなかに広がるものが増えていく。
(文:Manusによる)
幕張5丁目の夜を歩く(写真1+Google)
幕張5丁目の夜を歩く(写真1+Artguru)
幕張5丁目の夜を歩く(写真2+Google)
幕張5丁目の夜を歩く(写真1〜2) コラージュ
幕張駅北口側 小さな猿田神社(幕ブラ)、20… 2026.10.03
9月の花見川と生甘酒こうじくんと糀弁当の… 2026.09.20
君が代にも登場する石に由来、幕張 さざれ… 2026.09.20