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「藍の言いなり 紅のぬくもり」**Scene 6-7** 三村は席を立ち、自分の食べた皿を持ってキッチンに入る。「そこ、座ったら。 今、コーヒーいれてやるから。」私は三村が座っていたカウンターの丸いすに座る。コーヒーをいれてくれるなんて・・・。三村にいちいち驚き感激する。コーヒー豆の香ばしい深い香りにうっとりする。コーヒー豆をミルミキサーで一気にひく音。湯が沸くのを待つ。三村が部屋の明かりを消す。キッチンカウンターの、細く短い蛍光灯だけの明かりになる。青白くて冷たい光・・・。三村は何もしゃべらず、簡単な首のストレッチをしている。私はそんな三村を見ている・・・。三村の、ボタンを留めてない白のポロシャツ。ストレッチで襟がはだけた時、左側の鎖骨にほくろを見つけた。襟がはだけた時だけ。襟が直れば、ほくろは服に隠れてしまう。その見え隠れするほくろをじっと目で追っているうちに、口で強く吸ってみたくなる。私は孝夫の鎖骨を強く吸った事はない。だって、それは許されないし。三村の彼女は、三村の鎖骨のほくろを吸った事があるのだろうか。三村はそれを許す男なのだろうか。私は本当に今夜三村とセックスするのか・・・孝夫は・・・三村がコーヒーの周りからゆっくりお湯をかける。コーヒーをゆっくり蒸らしながら、少しずつ湯を注ぎ、コーヒーを落とす。私も、落ちるコーヒーを見ている。――青白く冷たい光と、沈黙。三村が大きめのマグカップにコーヒーを注いで、私に渡してくれた。一口飲む。インスタントとは全く違う。「美味しい。」三村はキッチンの壁に寄りかかりながら、コーヒーを飲んでいる。「名倉さん、これ飲んだら・・・しよっか。」「・・・。」私の心臓がドキンと飛び上がる。孝夫が悪い。今日の里美との会話は他愛のないものだったけど、藤坂に守られて、赤ちゃんを心待ちにする喜びが表情に表れていた。孝夫に私もこんな顔で誰かに話できるようにして欲しい。昼間手をつないで街を歩いてみたい。私の話を真剣に聞いてくれて、ねだれば忙しくても1時間だけでも会いに来てくれる日もあって。いつも私の隣にいてくれて、私だけの孝夫で・・・。人の気配や温もり、そして心の抱擁。それが私の欲しいもの。それを的外れな三村に求めてしまった。たった一度、駅でジュースを買ってくれて、一緒に電車を待ってくれた三村に。私は孝夫を裏切りたいんじゃない。ほんの少し反抗してみたかった。しかし三村は違う。今夜三村が欲しいのは私の身体。もう自宅までついて来てしまったし、食事も食べてしまったし、コーヒーもいれてもらってしまった。人恋しさは満たしてもらった事になるのだろうか。次は三村の望むものを・・・。でも・・・今はポロシャツの襟元からは、あのほくろは見えない。「・・・もう黙るなよ。 あのさ、冗談とかで切り返して来てくれない?」「・・・。」三村の顔を見る。「もう、そんな顔するなよ。 分かってるよ、桐原と付き合ってるんでしょ。 安心して、俺、そこまで節操なくないから。」「・・・。」私は今、どんな表情で三村を見ているのだろう。「あの桐原が気に入ったくらいだから、名倉さん、本当はギリギリの駆け引き上手いのかなって、期待してたのに。」一番言われたくない事を言われた。会話さえ続かない私が、ギリギリの駆け引きなんて――――。三村が大きくため息をつく。「桐原は、名倉さんのどこが良くてつきあってんだろ。」そう独り言のように言うと、一気にコーヒーを飲み干した。「――クルマで送っていくよ。 下、ジーパンに履き替えてくるから。」そう言うと、キッチンを出て行った。シラけたから帰れって事だ・・。私はもう、コーヒーを飲めなかった。---------------------------------------------三村さん、キッツ~!!このくだり読んで最初に思ったこと。そして・・・色々考えちゃいました。皆さんはどんなこと考えたかな。ではまた次回をお楽しみに!
Mar 29, 2009
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「藍の言いなり 紅のぬくもり」**Scene 6-6** 私はカウンターから料理を覗き込む。チャーハン。むきえび、チャーシュー、わけぎ、玉子、具がたっぷり入っている。あまりのいい香りに夕食は食べてきたのに食欲がわく。私は家庭のキッチンで男性が料理するのを見たのは初めてだった。私の父は家で料理をする人ではない。――孝夫も。三村が皿を2枚用意してチャーハンを盛る。私の分も作ってくれた?チャーハンを盛ったさらにスプーンをのせて、グラスに麦茶をつぐと私に渡す。「そっちで食べて。」部屋の中央のテーブルを目で示す。私は受け取るとテーブルに着く。三村の分はカウンターに用意し、丸いすに座る。仕事の書類を読みながら、食べ始めている。「・・・いただきます。」私は小さく言うと、チャーハンを一口食べる。・・・美味しい。あくまでついでだと思う。でも、三村が私にチャーハンを作ってくれた事・・・実に驚き、胸に熱くこみ上げてくる。こういう状況は初めてなので、どうしてよいのか分からない。三村に何か言いたい。三村にこれ以上ない言葉。どう表現したら・・・。迷っているうち、三村から「スーツ、掛けといてくれてありがとう。」三村は書類から目を離さず、背中を向けたまま言う。孝夫の脱いだスーツをハンガーに掛けるのは当然のこと。お礼を言われるなんて、考えた事もない。なのに、三村は私にお礼を言ってくれた。”ありがとう”が心の中に深く染みてくる。救われたような歓喜に満たされる。私からも「チャーハン美味しい」と、料理をほめよう。「家に帰ってまで仕事なんて大変ね。」と労をねぎらって、「一緒に食べよう。」って甘えてみようか。三村にも言いたい。三村の心を満たす言葉。「・・・チャーハン美味しい。 私、男の人に料理作ってもらったのって初めてなの。」少しはしゃぐように言ってみる。「――そう。」書類から目を離さない。会話終了。私は再びチャーハンをほおばる。もう、そうするしかないから――。静まり返った空気の中、食べ終えたお皿をキッチンで洗う。それから一度カウンター側に出て、三村の空いた皿に手を掛ける。「・・・ナグラさん、名前なんていうの?」「・・・。」「これからさ――。」三村が書類から顔を上げる。「これからするのに、名前も知らないのもどうかなって思って。」・・・もうその話はナシなのかと思った。でも確かに、チャーハンだけ食べて帰宅という事はないか。三村はどうしてラブホじゃなくて自宅マンションに私を通したのか。ペアカップのある、かすかに彼女の色のある部屋に。「――あの、その前に、 三村さん、彼女いるんじゃないですか?」「いるよ。」「なのに、どうして。」「誘われたから、ナグラさんに。」「私は――、」思わず声が大きくなる。今更ながら、誘ってしまったかもしれない恥ずかしさと、本当はセックスを誘ったのではない言い訳と。「・・・ナクラです。濁らないの。 『ナクラ マスミ』。 字は真実の真に純粋の純。」「俺はカヅキ。字は・・・」近くの鉛筆をつかむと、読んでいた書類の端に書く。「三村佳月。三村の家は男にみんな月の字を入れるんだ。なんでだかは知らないけど。・・女みたいでしょ。」「・・・でも、きれいな名前。」三村の目が少し笑う―――。--------------------------------------------こんばんは!東京では開花宣言が出されましたね。桜の季節・・・私の大好きな季節です。(これで花粉が飛ばなかったなら。。。)三村さんのチャーハンは美味しかったようですね♪チャーハンを上手に作るとはたいしたもんです!男の料理はけっこうボリューム大な可能性が。。。私はお腹が満たされると人に優しくなれる気がします。・・・食欲と性欲って、確か反比例するんじゃなかった?デザート(?)は、別バラかもしれませんね。次回をお楽しみに!!
Mar 21, 2009
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「藍の言いなり 紅のぬくもり」**Scene 6-5** 再び三村の背中を追うのか・・・そしたら私は本当に孝夫を裏切る事になるかもしれない。正直、そんな覚悟もないくせに。でも、この自動ドアが目の前で閉まり、知らない町を1人でT駅に向かって引き返すのが怖かった。前に進む――。2人を待っていたかのように、エレベーターの扉が開く。―――4階の角部屋。407号室。玄関を上がり、短い廊下を進むと畳にして12畳位のワンルームのフローリングの部屋が広がる。左に対面のカウンターキッチン、真ん中に木製のテーブル、右にベッドが見える。ベッドの横にまだ開けてない引越しのダンボールが積んであった。三村はまるで私がいないかのようにスーツを脱ぎ、Yシャツとパンツと靴下という、なんとも恥ずかしくみじめな格好で部屋を出る。そのまま廊下の左ドアに入った。私はベッドの上の脱ぎ投げられたスーツをハンガーにかける。掛け終わると、ふと三村のスーツだったことに気づく。いつも孝夫のスーツをハンガーに掛けるので、条件反射かもしれない。ハンガーをフックに掛け、部屋の中をもう一度ゆっくり歩く。外側のキッチンのカウンターから中を見る。食器棚のガラス扉越しに、白地に赤の柄と青の柄のペアカップが見える。また、デニム生地にオレンジのギンガムチェックのポケットの付いたエプロンが、丸めるようにたたまれて電子レンジの上においてある。――女の影。三村に女性がいても、なんら不思議ではない。なぜか少しがっかりする。三村がぬれた髪を拭きながら部屋に入ってくる。短い時間だったから、シャワーを浴び髪だけ洗ってきたのかもしれない。スポーツメーカーのロゴの入ったスウェットパンツと白のポロシャツを着ている。三村はキッチンに入り、冷蔵庫を開けペットボトルの水を飲むと料理を始めた。炒め物のフライパンと熱い油の音がする。まるで私がいないかのように行動する三村。私の事は見えていない?私は透明?「――座れば。」・・・見えていたらしい。----------------------------皆さん今日もお越しいただきありがとうございます♪料理ができる男性は素敵ですね。特に男性が作ったカレーとかチャーハンとかヤキソバは自分が作ったのより美味しい気がする。(私が下手なだけかもしれませんが)いまはモテる男性の条件にも入ってるというし。次回は三村さんのお味見を・・・・・お楽しみに!
Mar 8, 2009
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