米中の接近に伴って、 1972 年日中国交回復が調印され、その陰で、日本は台湾と国交を断絶した。しかし、 1 年 3 カ月後に、日台の航空路線は再開した。その再開に際し、中国政府は不干渉。アメリカと肩を並べるまでになって事あるごとに口出ししてくる中国とは雲泥の差の、まさに、“大人の対応”ぶりを見せていた。
当時の航空業界も、イニシャル・フラッグの日本航空が後ろ盾になって、日本アジア航空という別会社を作り、表向きの日中関係を維持しながら、日台の特殊な関係を維持してきた。みんな表向きの歴史を踏まえながら、“それなりの知恵”を絞って関係の維持に努めてきた。
昨今の中国、台湾関係は米中の対立激化の中で、大きく揺さぶられ、台湾の現政権維持を表明した国とアメリカを訪問し、その陰で、中国との関係を回復したい台湾のアンチ政権派が中国を表敬訪問するという、傍目には理解ができない真逆な対応になっている。
国が向いている方向が違って、軍事バランスが損なわれて、ギスギスしても、培ってきた歴史と文化を旅して感得し、国やそこに生きている人々を理解する旅は、その国の今日的な思惑とは別次元で大切だ。そこに、時の為政者も知恵を絞ってきた。ここまで、来てしまったら、ここでまた改めて、ヨーロッパの歴史に学びたくなる。「また、始まった」と思われるが、ヨーロッパのかつては東西の最前線だった“マジノ線”上のオランダ・ベルギー・ルクセンブルグのベネルクス三国が EU の礎になり、スイスが中立国として存在するように、台湾を極東の中立国にして、平和を維持する知恵を発揮するときではないかと思うが・・・そこで、日本が、韓国が、フィリピンが非常に重要な役割を果たす意味は計り知れないが、そんなことを、本気で語る政治家がいないものか。また、中国は、あの 1970 年代の中国をもう一度振り返ってほしいものだ。世界は中国の香港に対する強圧的な覇権的な中国をある種のトラウマにしてみていることを知るべきでもある。