多岐さんのブログ

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2023.04.30
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週刊朝日が創刊して 100 年目を迎え、めでたし、めでたしと思っていた矢先、使命を終えて休刊するニュースが流れて久しいが、いよいよ、来月に迫ったようだ。

そこで、今日のブログは週刊朝日惜別の稿として記憶にとどめたい・・・





実は、今から 15 年前の週刊朝日が募集した「週刊朝日の悪口書いて世界一周 記念懸賞エッセイ」に応募した。最優秀賞はもらえず、掲載には至らなかったが、残念賞 10 作品の一つに入った。因みに選はニッポン放送の社長を歴任した亀淵昭信氏だった。

いささか長いが、お付き合いのほどを・・・

85年目の「関白宣言」

 おまえも85にもなったか。いろいろあったなぁ。そもそもあんたが生まれた1922年といえば・・・日露戦争に勝ち、第一次世界大戦に勝ち、日本がますます調子に乗って本気になって中国取りに出ていった頃だ。そんな調子に悪乗りしたわけではなかろうが、新聞社があんたを生んじゃった・・・。さてと、気合を入れたとたんに関東大震災に見舞われた。世の中は、事に政治はここで少しは謙虚な気持ちになればあの悲惨な戦争にもならなかっただろうに、こうなりゃ自棄だといわんばかりに明治以来の大矛盾を欧米列強のごとく戦争で解決しようと企んだ。

「さっきから黙って聞いていればいい気になって、それはあたしのせいじゃないって。」

勿論だ。あんたのせいじゃないけれど、少なからずともあんたも言論の真ん中だか隅だか知らないが、そんな一隅に居て、クレージーな軍部と松岡洋右のような頑迷な政治家に牙を抜かれ、蹂躙されっぱなしで、言論は完全に去勢されてしまった時代だ。そういう意味で新聞やテレビ以上に自由に物が言えるあんたの存在は貴重なんていうものじゃない。雑誌とかサブカルチャーと言われるジャンルがお上や訳の分らない団体から圧力を受け、自らの自由を放棄し始めたらこの国の言論はまた悪夢を見ることになる。雑誌の自由はある意味で言論が正常か否かのバロメーターになっている。この機にもう一度しっかり噛締めようじゃないか。

 ところで、あの忌まわしき戦争を経ながらも私の前に立ってくれたくれた時のことを忘れない。余談になるが、ウチはオヤジが毎日新聞、サンデー毎日、毎日グラフの「毎日一家」。たまに、朝日ジャーナルなんぞ買ってくると胡散臭そうに一瞥されるようなウチだった。単に新聞店のオヤジがウチのおやじと友達だったという理由だけで他意はなかったが・・・そんなわけであんたには18の春まで縁がなかった。高校を卒業したら大学に受かろうが受かるまいがとにかく「ウチを出る」と決めて東京に来た。大学に落ちて予備校に行く前に少し間が空いていたのでこの際だから東京見物でもしようとやってきたのがどういうわけか清水谷公園。「べ平連」の日和見シンパとしては清水谷公園を一度見ておかないと話しにならないという、思い出すだに恥ずかしい気持ちで行ったっけ。

大久保利通の記念碑の前で「サンデー毎日」の大学合格者 高校ランキングのページをめくっていると、普通ではありえないことが起こった。可愛いけどどこか垢抜けない二人組みの女性がつかつかと寄ってきて、いきなり、図々しくも「その雑誌と私が持っている雑誌と交換してくれませんか」と言ってきた。・・・東京って言うところはこんな女もいるのかとやや怪訝な顔をしていると、気の短そうなもう一人の女が「交換してくれるの、してくれないの」と迫ってきた。東京って言うところに慣れていないのか、この手の女になれていないのか躊躇していると「あなたも大学落ちたんでしょう。実は私達も」と屈託がない。「あなたが見ている週刊誌と私の週刊誌のランキングのデータがあっているかどうか調べてみたいと思ったら、サンデー毎日を持っているあなたがいたって言うわけ。私達は週刊朝日、どう」・・・有無もなく交換させられたのがおまえとの出会いだった。おまえはともかく、あの2人連れと何にもなかったのは惜しいことをした・・・

あれから、海外出張を除けば毎週手元においておかないと何か落ち着かなかったことを八十五周年のメモリーとして告白しておく。こう言っては怒られそうだが、あんたの他にも誘惑がたくさんあった。「平凡パンチ」「プレイボーイ」といったグラビアやトレンド情報には自慢じゃないが弱いところがあって結構買っていた。それから「週刊現代」「週刊ポスト」から「週刊新潮」に「週刊文春」と・・・事にグラビア特集にころっと宗旨を変えるくせがあったな。断っておくがこれは浮気とは違う。永六輔氏が何かに書いていた、「うちですればいいものを、ついしてしまった立小便みたいなものだ。」と。あんまり深く考えるな。しかし、こういっちゃあ何だが、あんたはこれといった色気があるわけでもなく、美人?でもないのに、毎週、毎週飽きもせず手元に引き寄せては前から後ろから上から逆さから蹂躙するように、可愛がってしまうのは我ながら的確な分析不能に陥っているきらいがある。不思議な関係になってしまったものだとも思っている。本命はいつもお前だから・・・

さてと、俺の事はさておき、おまえも随分と・・・ま、いい加減とは言わないが、元気がない時もあったなぁ。これは、外の人間が書いている連載が多いから仕方がない気もするが、風邪をひく事もあろう。ネタが尽きることもあろう・・・が、しかし、ある連載が元気がなくても、他の連載が冴えていたり、表のグラビアがもう一つだと思っていても後のグラビアに光るものがあったりと雑誌の真骨頂が発揮されている。やっぱり、ごった煮に魅力があるんだなおまえさんは・・・決して見てくれがいいとはいえないが、噛めばそれなりの味は出してくれて全体にまとまった味をちゃんと醸し出している。それに一定のグレードも保っている。これも町の巨匠に感謝ということだろう。あんたに成り代わって俺が厚く礼を言っておく・・・。おっといけねぇ、明るい悪口を書いているのについ褒めちまった。あまり褒めるとつい頭に乗る悪い癖があるので金輪際褒めるのは止める。ここからは本格的な俺の悪口だから耳かっぽじって聞いておくれ。

雑誌だから方々から人間を連れてきて書く事は誠に結構だ。その実績も認める。しかし、これからはおまえがおまえらしく自らの力で輝くようになって欲しいな。専門家には専門家の持ち味があるがあるように週刊朝日の雑誌記者ここにありと言うような気概を持った雑誌記者の目で書いた記事や写真がもっと欲しい。今、アタシジャーナルを書いている中森明夫氏がかつて雑誌の冒頭でコラムを書いていたような大局観のある編集長コラムがあっていいのではないかと思うがどうだろう。そして、俺は中道とか中庸が好きだが、中道こそ正義なんて思わずに、もっと右に行っても、左に行ってもいい、尾翼がぶっ飛ぶようなダッチロールは困るが、言いたいことを言って、週刊朝日から議論が沸いてくるような雑誌になって欲しいな。そして、その中核には外部の識者や評論家がいるのではなく、匿名ではない週刊朝日の記者や編集長がいて欲しいと思うがどうだろう。ともすると、外から買ってきた化粧や衣装で身を飾って見てくれのいいものを目指して気持ちよくなっている気配を感じるが、自ら、内面から輝くおまえになることが21世紀に相応しいのではないかと思う。このことは新しいことでも何でもない。こういう雑誌になりたい、作りたいといった85年前の意志は先ずはそういうところから生まれたんじゃないのか。つまり、アニバーサルは原点回帰も意味しているのだから・・・

最後に、テレビから「お笑い」番組が消えてはならないように、雑誌も言論の中核から追いやられないように、いつも大局観を持ちながら、元気でいて欲しいな。いつの特集とは言わないが、旬が過ぎた人が出てきて、どうしてこの人・・・と、思うことがたまにあって、大衆感覚とずれている時がある。写真一枚の選択にも慎重になっておまえらしさを発揮して欲しい。冒頭におまえが生まれた頃のことについて触れたが、言いたいことが言えなくなるのは簡単なんだ。ほんの少しの油断が思わぬ、取り返しのつかない時代を招来してしまう。もう一度言っておく。サブカルチャーを含めた自由な言論におまえさんは立っている。俺はいつも元気なおまえを見ながら、日本は大丈夫だ。世界はどうあるべきだということを確認してゆきたい。週刊朝日も含めた雑誌カルチャーが骨抜きになったり、非合法的に蹂躙されたり、最もひどいのは、体制におもねて、自ら無用なセンサーシップをして自由に物が言えなくなるような「自由」を放棄しないことだ。いつも、俺のギャグに突っ込みを入れるように、悪態つくように、元気でいて欲しい。

もう一つ、中東もアフリカも民族間の対立が泥沼化している。よせばいいのに、欧米列強は新たな利権を求めて口を挟む。かつて日本も朝鮮半島から中国、東南アジアに出掛けて彼等のこころに傷をつけてしまった。傷が癒えるにはそれ相応の時間がかかるのに、性急に、様々な理屈をつけて憲法を改正してつまらない戦争に加担しようとしている向きがある。それに対しておまえらしく厳しい論陣を堂々と張って欲しい。

また、かつてあった狂乱のバブルやホリエモン、村上ファンドなど「踊った社会」にいつも冷静な目を向けて警鐘を鳴らし続けて欲しい。俺はそんなおまえをいつまでも大切にするから・・・そして、どんなに苦しくなっても、俺より先に死んではいけない。俺より早く逝ってはいけない・・・






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最終更新日  2023.04.30 18:57:44
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