南カリフォルニアの青い空

南カリフォルニアの青い空

2009.04.21
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ch1.jpg


オレゴン北部からワシントン州に入ると、やたらと

桜のようなピンクの木が増えてくる。それでいて

そばで見ると、幹は桜でも、梅でも、桃でもない。

我が家にはネクタリンの木があったから知ってるが

ネクタリンでもない。なんという木かしらないが、

兎に角、桜並木を思い出させるものが野山にも、

フリーウェイ、ハイウェイ、人家の庭、並木と、

ふんだんに咲いていて目を楽しませてくれる。

Derrick 2.jpg

今日泊まるところは、デレックと言って、私のことを



「サン(息子)・ナンバー・トゥー」と呼んでいるが、

このデレックが中学生位のとき学校では問題児

として扱っていた。小学校までは、弱虫で、余り

目立たなかったのだが、中学位からどんどん背が伸び

たいていの先生までを見下ろすような大男になった。

後で知ったが、その頃、両親が離婚したらしく、しかも

可なり強烈な夫婦喧嘩の続く暗い毎日だったらしい。

その辺から、この熊のようなデレックは勉強もせず、

ガキ大将になり何人かの子分を連れて、校内をカッポし、

他の生徒をいじめたり、物を奪ったりして全校を震え上がらせて

いた。他の父兄からも、その噂を聞いていたが、そのデレックが



「ブルックに会いたいけど、いる?」と、私を見下ろした。

彼の後ろには、いつものように目つきの悪い子分達が

控えていた。

私の息子は彼とは正反対、品行方正で成績もよく皆から

好かれていたから、このコネクションが分からなかった。



嫌な顔もせずに玄関でデレックと話していた。どうやら

彼の壊れた自転車を直してほしいと、頼みにきたようで、

息子は快く、ガレージを開けて招きいれ、トンカチ、

ぐいぐい、とものの数10分後には直してしまった。

それからというものは、このガキ大将が、息子を崇め奉る

ようになり、我が家に出入りするようになったから、人生

とは愉快である。

Derrick.jpg
(私が168センチだから、彼の高さがわかるでしょう)

私は、私で、台所の手伝いをさせたり、力が必要なときは

デレックの手を借り、段々家族の一員になって行った。

私がピアノの練習などしていると、そばでじ~っと聞き入る

ようなこともあった。ドイツから移民してきた家族で、

クラシック音楽がすきだったようで、ずっとあとになって

クラシック・ギターを弾くようになった。

その内に、我が家に住むような格好になり、子分は消え

デレックが息子の子分になった。高校になると、休みの

たびに二人でキャンプ道具を車につんで、アメリカ横断の

旅など、何度もしていた。兎に角彼は成績がかんばしく

なかったから、学校側から、「大学進学は無理でしょう」と、

へんな太鼓判をおされていたが、

「絶対にそんなことない」と、毎晩息子が数学や科学を教えて

一つだけ受かった大学がオレゴンにあった。

こういう成り行きで、デレックはオレゴンを愛するようになり

卒業後、一年くらいカリフォルニアに戻って息子の家に

住んだりしていたが、結局はオレゴンで結婚をし、離婚をし、

住居をかまえることになった。本来のデレックは心優しく、

正直、親切で、誰があっても一目で好きになるような男である。

「何度も自殺しようと考えていた中学時代に、ブルックとヒロコ

にめぐり合って本当に感謝してる。それから、人生で初めて

ローンを出してくれたのは、ヒロコなんだ。覚えてる?」

と、デレックが言った。金遣いが荒く、借金だらけになって

いた頃、私の古いボルボを彼に譲り、

「いくらでもいいから、毎月払える金額を決めて、

必ず払い終わるまでつづけなさい」と言ったことが

あるので、そのことかと思ったら、そのもっと前に

どうやら、プラモデルの材料費を私が出してやった

事があったらしい。すっかり忘れていた。

Mugs.jpg
(息子の妙名だそうである)

そのデレックが、昨年、カリフォルニアから合流した

母親の出費で一緒にコーヒー・ショップを開いた。

ところが、まだ新しいショッピング・センターである事や、

この経済不況も手伝って商売はかんばしくなく、

我々に良いアイディアが無いかきいた。

「店の片隅で、クラシック・ギター弾いたら?」とか、

「どこかの団体に割引クーポンをくばったら?」とか

ミチコさんと二人で提供するアイディアを彼は、熱心に

ノートに書き留めていた。

その時、ひらめいたのが、昨日ジェーンの家で予期せぬ再会を

したクリスの事である。

「カイ覚えてる?」

「覚えてるさ、中学時代の子分の一人だよ」

「あれ、そうだっけか。カイがこの町に住んでるの知ってる?

ハーレー・デービッドソンのスペシャリストだってよ」と言うと

デレックがひっくり返るように驚いた。

「え!信じられない!じゃ、明日早速あの店にいってみる。

この町には、バイク・ショップ一軒しかないし、バイカーが

良く立ち寄ってコーヒー飲んでくれるんだよ」と言った。

「じゃ、バイカー割引とかいう、クーポンをつくって、カイ

のところに置かせてもらったら、どうだろう?」と、提案すると

大喜びをしていた。

 人の繋がりというのは、こういうことである。







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最終更新日  2009.04.21 23:35:20
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