南カリフォルニアの青い空

南カリフォルニアの青い空

2022.05.30
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セゴヴィアでは、ギターの手作りをする工房の見学と、昼食の計画でとくに有名なギター作りの名人の工房見学をたのしみにしていた。ホテルから、チャーターバスの所まで600メートル位の登坂がある。ホテルを出た時暗くなっていた空が、50メートルくらい歩いたところから雨になったので、グレッグが背負っていたバックパックの中の傘を取り出したかったが、腰を痛めていた私が一番おそかったので、グレッグはパニック状態。

「ちょっと、傘を取り出す数分間とまってちょうだい」というのに、止まってくれない.「乗り遅れたらたいへんだよ。濡れたって良いから歩け!」と、どんどん先にいってしまう。悲痛な声で、「びしょ濡れになってきたから、とまって。全員そろわなかったら、出発するはずないんだから」といって、バックパックにしがみついたらやっと止まってくれたけど、バックをあけて、傘を取り出そうとした途端に、「もういい!はやくしろ!」と歩き出したので、びしょびしょの道に、中身が全部おちて、もっと遅れることになった。傘だけ二個取り出して、必死で閉めたとたんに、彼は雨の中にきえてしまった。「先に行って、弘子を待つようにいうから」というわけだが、私は絶対に添乗員が私一人を置き去りにする筈は無い事もわかっていた。

 彼がおいてきぼりを、極力怖がるのには訳がある。彼が10才の時に父親を亡くしていて、継父とうまくいってなかった。6年生の時の遠足で、船でカタリナ島に行くはずだった時、波止場に8時に集合だというので、継父が送ってくれたのはよかったが、まだ誰も来ていなかったのに、会社に行く途中だったので一人置いて出勤してしまった。ところが、母親は、その遠足が一日伸びたという学校からの知らせをちゃんと読んでなかったので、グレッグは波止場に置き去りにされてしまったのだった。そういう苦い経験があるので、グレッグは約束の時間には必ず、はやくいかないと気が済まない人である。いうまでも無く、この事件がますます彼を継父嫌いにしてしまった。(私と一緒になってから仲直りをして、亡くなる前には二人で旅行をするくらいの仲になっていた)

 バス乗り場には全員そろっていて、私が一番最後だったけど、雨が大降りになってきた爲、交通渋滞でバスも20分くらい遅れて来た。安楽なバスに座ってほっとして数分後、ハビエルがセゴヴィアの話をはじめた。大型バスに17人とハビエルの18人なので、最後のセビリアまでのツアーは、ほぼ全員、一人ずつ窓際にすわるようになった。

 マドリッドの郊外にでたころから、もうバンパー・ツー・バンパーの渋滞で、10メートル位走っては、10分くらいとまるのを2時間も繰り返し、「この分ではお昼までにセゴビアには着かないだろう」と、皆がささやき始めたころ、屋根に雪をつんでいる対向車が増えだした。ハビエルは顔色も替えずに携帯につきっきりだったが、山門が遮断されているのを見て、「ちょっと、待っててください。交渉してくるから」とバスを降りた。

何を交渉したのかしらないが、そこからセゴヴィアまでの道は遮断されたので、次々に車がターンしている間、遮断機をあげて我々のバスだけ門の内側まで、のろのろと入れてくれ、また閉めた。「大雪で山越えができないので、せめて途中のカテドラルまで行こうと思います。トイレにも行きたいだろうし」と言った。ちなみに、このツアーでは、必ず数時間でトイレストップがあった。これは、どうやらバスの運転手組合でも決まった事らしく、運転手にも数時間に20-30分の休憩をさせることが規則だといった。疲労を防ぐ爲にも良い事だとおもった。

 バスが山道を登り始めると、だんだん大雪になってきて、当たりは真っ白であった。「わ~、僕は雪が降るのを実際にみるのは生まれて初めて」と、グレッグが子供のようにはしゃいでいた。山の中腹に大きな十字架が見えて来た時、雪はみぞれになって、風と共に横に降りだした。

 独裁者フランコが、つい最近まで埋葬されていたそうだが、大きな建物なのに、殆ど窓がなくて洞穴のようで、とても陰気であった。建物そのものが、巨大なお棺なのかもしれない。寒いし、暗いし声はエコーするしで、はやくバスに戻りたかった。ドアを出た途端に、吹雪が体中をなぐりつけるようであったが、エンジンをかけっぱなしで暖房を入れたバスに乗ったときは皆、ため息をついていた。

「まあ、天候だけは、我々もコントロールできないのでセゴヴィアにいけなかったのは残念でしたが、そのかわりに、マドリッド一番のパエリアの老舗にお連れします。」と言って、バスはマドリッドに後戻り。そのまま直接、そのレストランにいったのだった。

 ホテルに戻るまで気づかなかったが、今朝、バックパックから傘をだした時に携帯の充電器二個、コード二本、ヨーロッパ用のソケット全部をうしなってしまったのだった。



























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最終更新日  2022.05.31 03:18:01
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