南カリフォルニアの青い空

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2022.06.05
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本音と建て前・へつらい

 遠慮なく言わせていただくと、私は『本音と建前』は嫌いだし、『日本式奥ゆかしさ』も持ち合わせていない。「お口にあいますかどうか存じませんが、どうぞ」というのと、「不味いものですがどうぞ」というチョイスがあるなら、私は前者をとる。「ほんの一口ですが、どうぞ」に対して「何もありませんが、どうぞ」の場合も前者をとる。

 実はこの件で、最近日本人の男性と会話をした。「これ(後者の例)、英語に直訳すると大変なことになるわね」と言った私に、「あのねぇ、ひろこさん、これは日本人の奥ゆかしさなんだよ。相手を敬った口のききかたで、我が家には貴方のような方の、お口にめすようなものは何もございませんが、とへりくだってる日本の奥ゆかしい風習なんだ」と説明してくれた。勿論わかってはいる。でも私だったら「これ、とっても美味しいから食べてみて」という方が好きである。だから日本には住めないのかもしれない。

 へりくだる、と言えば思い出すのは、私がまだ日本からハワイに来たばかりの1960年代の就職活動のころ、面接ではへりくだって控えめでなければならない、出しゃばったり、しったかぶってはいけないという日本の一般社会の常識があったから、「何々はできますか」と質問された時も「あまりできません」とか「少しなら出来ます」と答えていたら、どこも雇ってくれなかった。

 毎日「今日も落ちた」という私の事を不審に思ったアメリカ人の友達に説明したら、「そりゃ落ちて当然だよ。アメリカではね、ちょっと出来る事でも、できます!と言わなかったらどこも雇ってくれないよ」と言われたのだった。それで、次の面接を受けた時に、「タイプは?」「できます、1分70~80ワード位打てます」「でも、経験はないのでしょう?」「ありませんけど、頑張りますからチャンスを下さい」といったら、「では明日から来てください」という事になったのである。しかも、いままで受けた会社の数倍も良い収入!ワイキキの一流ホテルのフロントデスクの仕事であった。勿論、就職したからには、それ相応の仕事が出来なければくびになるから、一生懸命にはたらいたが、この時、アメリカでは日本式奥ゆかしさでは生きていかれないのだと学んだ。

 『本音と建て前』の話に戻ろう。私がまだ日本にいた昭和時代のはなしであるが、「親戚同様でございます、京都においでになったら、是非是非我が家にお泊り下さい」とフレンドリーな人がいた。実際に、我が家にもよく泊まった人で、『親戚同様』の付き合いをして数年後、京都へいくことになった時、祖母に「〇〇さんに手紙をだしてみたら?」といわれて、「初めての京都で心もとないので、お言葉に甘えて二泊ばかりさせていただけますでしょうか」みたいな内容の丁寧な手紙をだしたのだが、なかなか返事が来なかった。すると、一月以上たった頃、第三者を通して「何とずうずうしい娘だ、我が家へどうぞというのは社交辞令だという事もしらないのか、との事です」と言う返事が返って来たのだった。これには、祖母も母も立腹し「それなら、最初から来いなどといわなきゃいいのに」といい、親戚付き合いはその場で終わった。

 考えてみたら我が家系は、父母も祖父母も親戚も本音と建前の嫌いな人ばかりであった。「先生、本当ですか?」などと聞かれると、父は「僕が嘘を言うとでも思ってるのか!」と、よく怒鳴っていたのを覚えている。又お世辞などもいわない家庭だった。それゆえに褒められると最高に嬉しかったものである。

 更に「出来ない事を約束してはいけない」「約束した事は守らなければいけない」これは、私が育った家の躾の一つであり、自分の子育てにも口を酸っぱくして繰り返した言葉である。日本人だとか、アメリカ人だとかではなく、人間の道徳として実行してもらいたかったからだ。

 かたちは違えども『本音と建て前』はアメリカでも勿論あり、特に政治の世界や競争の激しいエンターテインメントの世界では成功者の足を引っ張ろうとする人が使う手である。若くして監督になった我が娘を嫉妬した元監督の男性に、人前ではお世辞たらたらで娘を褒めたたえていたその裏で足を引っ張るような事をされて酷い目にあった事がある。

 娘も息子も世の中の『本音と建て前』をそれぞれに体験して、悔しがったり、鬱気味になったりして成長してきたが、本人達は今だに『正直であれ』『出来ないことは約束するな』『約束は守れ』という私の教えをまもってるようで嬉しい。因みに、娘の足をひっぱったその男性はそれきり二度と監督職についてないが、娘は30年このかた次々と監督職を続けて今に至る。フェイク・ニュースがはびこる今、誠実さの方が長持ちするこの社会、まだ見捨てたものではない。  









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最終更新日  2022.06.05 04:56:48
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