南カリフォルニアの青い空

南カリフォルニアの青い空

2024.06.30
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その内の一組は、祖母の家にいた住み込みのお手伝いさんMで、出入りしていた腕利きの大工さんと一緒にしたとかだったが戦争で世の中が逆転し、祖母が間借り生活になった時、Mさん達は海に近い実家の大きな土地に家を建て、更に機械部品工場を建て経済的にもどんどん豊かになっていった。私が高校生になったころ「二泊三日で千葉に海水浴に行こう」と母がいったので、貧乏育ちでしっかり者の私が「お母さまはすぐ遊ぶことばかり考えるんだから、今月は電話代も払えないけど、どうしようって私に相談したばかりじゃないの、そんな余裕ないでしょ!」と呆れて答えると、「大丈夫、電車賃だけあればいいの。うちにいたMさんが隠居所を新築したからいつでも泊りに来てくださいっていうから、行ってみよう」という事だった。

Mさんの家に着くと、「ま~おじょうちゃま。しばらく振りでございます」と母の事を言ったので、笑ってしまったが、「風の便りで皆さまご苦労なさってると聞いてます、どうぞどうぞ、遠慮しないでゆっくりしていってください」と、ご主人とMさんが大歓迎してくれ、新しい畳と白木の良い香りのする小さな別棟に案内された。日当たりのよい縁側付きの大きな部屋に台所も風呂場もトイレもついているもので腕利きの大工ならではの建物であった。

夕食の時に、「今こんなに幸せな生活ができるのも、奥様(私の祖母)にこんな働き者で良い嫁を紹介していただいたからで感謝してます」と、旦那さんが言うと、「いや、反対だよお父ちゃん、お父ちゃんみたいに正直者で何でもできる人を紹介してくれたんだもの」というMさんを見て、お見合いというのも悪くはないのだなとも思ったりした。

今では誰も聞かなくなったが、アメリカに来た当時「日本人は見合い結婚だときいてるが、あなたも見合い結婚か」とか、「アメリカ人との結婚に反対されなかったか」とよく聞かれたものである。考えてみれば、祖父母、両親、従兄も見合い結婚であったし、別にそれが不思議だとも思わなかったから「一般的にはまだそのようでも、だんだん自由になって来て私達は恋愛結婚ですよ」と答えたが、考えたら一回だけ、お見合いを断ったことがある。

戦後、ながい間借り生活からやっと抜け出て小さな家を買った後も、我々は全員で働いて協力しなれば食べていけなかった期間があり、母はフルタイムで働き同居していた従兄も私もバイトで稼ぎ少しでも負担を軽くすることに協力していたし、祖母は海軍の恩給の他に着物を縫ったり、和歌、謡、小鼓などを教えていたのだが、その頃よく訪ねて見えた昔の学友のなかに平岡さんという方がいて、私がお茶を出した時に「孫のヒロコです」と紹介された。何度目かの訪問の時、彼女の孫の話になった。

「孫が最近アメリカ留学から戻ってきたのですが、人前でヘラヘラ笑って自分の意見もなくペコペコする日本の女には興味ないなどと生意気なことを申しますのよ」と言い、それに対して祖母が「誰の前でも怖気ずズバズバ自分の意見をいうヒロコみたいなのもいますよ」と言うと、「わたくしも同じ事を考えておりました。お背もたかく朗らかで話題も広く・・・お写真いただけますでしょうか」という事で、つまり互いの孫達に見合いをさせようという事であった。

ところが写真などと言われても、和服もなく洋服も普段着くらいで慌てたわけで、たまたま成人式用に新調したスーツがあったので、それで写真を撮ることになり、従兄がちょっかいをだして。「ついでに、この電気のかさも被っていけよ」と帽子を私の頭に乗せ、それが見合い写真となった

暫く経って平岡さんがやってきた時、私は留守をしていたのだが、祖母が言った。「平岡さんのお孫さんね、あなたに興味があるらしいわよ。168センチか?フン、この女なら会ってやっても良いって言ったんですって、どうする?」というので、「あってやっても良いだと?そんな男こちらから断る!」というと、祖母はパン!と膝を叩いて、「よう言った!それでこそ私の孫!落ちぶれたといえども西郷がごときに馬鹿にされてたまるか!」といった。そう、平岡さんは西郷隆盛の弟西郷従道の娘であった。

祖母曰く、その昔西郷家は祖母直径の原田家よりずっと下級の侍だったそうだが明治維新で逆転したと言う。私は爆笑し「おばあちゃんの話は、いつも歴史のひとこまだね」といったが、今アメリカに暮らす私は82歳になっていて「これって、本当の話だったのだろうか?」とウィキペディアで調べてみたら、ちゃんと西郷従道の次女として平岡栄子という名が記してあった。

(祖母のアルバムにあった写真です。平岡家にとついだので、私は平岡さんのおばさまとお呼びしてましたが、西郷隆盛にしろ従道にしろ眉毛が濃くて、平岡のおば様の眉毛もとても濃かったです。祖母は戦争で本当に全部なくしたので、鼓も質屋にいれたりしました。それを聞いたクラスメート達が助けてくださり、この平岡さんは、鼓をくださいました。この事は雑誌には書いてありません。)









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最終更新日  2024.06.30 14:04:35
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