曹操注解 孫子の兵法

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May 17, 2005
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テーマ: 中国&台湾(3344)
カテゴリ: 戦略
   ◇それでも靖国神社は必要な施設


 私の一族の一人は、靖国神社に合祀されている。
 だからといって、「靖国神社が必要だ」というわけではない。
 なぜなら、私の軍神もそうだが、多くの戦死者は若く、妻子もなく、青年のまま戦陣に散った。
 父母がいる間は、もちろん肉親として慰霊されたわけだが、その父母も亡くなってしまうと名前も存在も忘れられてしまうであろう。

 靖国神社は、国家の起こした戦争ために殉難・戦死した人々を永代供養し、慰霊する施設として建設されたのだ。
 靖国神社が永遠であれば、そこに祭られる人々も永遠に命日の神楽奉仕の慰霊を受け続ける。
 戦前には、「靖国神社に祭られる」ということは、特に殊勲の功績をあげた戦死者、つまり名誉あるエリートのみだった。
 これに対して、現在の靖国神社では戦争に関係した軍属や、沖縄の「ひめゆり部隊」のような少女義勇兵までも合祀され、慰霊行事がおこなわれている。


 「輸送船団」の戦死者・殉難者たちも合祀された記念に特別展が開催されたが、その展示内容は、なまなましく悲惨な被害の実態を解説し、護衛の不備を嘆き、無謀な給油作戦の欠陥を暴露し、戦争の悲劇を簡潔に表現していた。
 もし、それが靖国神社で展示されていなかったら、内容は戦争そのものを批判し、軍部の戦争指導あるいは、その船団壊滅の現場にいるはずもなかった輸送作戦の立案責任者の過誤をも糾弾するものだった。
 靖国神社は、大本営発表のウソをガナリ続ける場所ではないのだ。

 私は「北京裁判をやろう」といった提唱者である。
 しかし、北京裁判で「真犯人」と決まった人物であっても、戦争さえなければ、そして旧体制の権力の欠陥がなければ、そのような問題を起こすことはなかったであろう。
 つまり、慰霊行事は良かろうと悪かろうと、必要なものなのである。
 靖国神社で祭礼を受けるということは、神道の原理では霊魂が「祟り神」になり、現代社会に災厄を起こす可能性があると信じるからである。

 だから、日本には靖国神社は必要なのである。
 これを御霊信仰という。
 京都には市街を囲むように、たくさんの「御霊神社」がある。
 「御霊」というのは、ほとんどが中世以前、生前に天皇に反逆し、刑罰を受けたり、討伐で死んだ体制反逆者たちの霊魂のことである。


 大戦の大空襲の被害も逃れた京都は、もともと応仁の乱の兵火で巨大な大極殿や平安京の門楼を全て灰燼に帰した歴史がある。
 その乱が勃発した最初の事件は、御霊神社の神域で発生した。
 この神社は、平安京を建設した桓武天皇の皇太弟・他戸親王を「御霊」として勅祭したもので、桓武天皇がみずから慰霊の儀式をした遺跡である。
 他戸親王は謀反の疑いをかけられ、淡路島に配流される移送中に自殺した。
 このエピソードが映画『陰陽師』のテーマになっている。


 この伝統的な「御霊」の信仰が、靖国神社の招魂儀式の中にも受け継がれている。決して、明治時代に軍国主義や天皇制の維持のために都合よく創設した施設ではないのである。

 いい霊も、罪のある霊も、差別せずに一緒に祭り、できるかぎりの記録をのこし、後世に伝えるという、単純な機能施設が、現在の靖国神社なのだ。
 靖国神社は歴史裁判所ではなく、慰霊の儀式場にすぎない。
 その意味では、罪のあるものは永遠に汚名をさらし、恥辱を受け、裁きを受け、批判されるという意味でもある。

 古代中国の春秋時代にも、同じような考え方があった。

 安徽省にあった「宋」は、殷(商)王朝の王家の子孫だった。
 それで建国に際して祖廟を建て、毎日のように君主が先祖の殷王・帝乙を祭祀した。
 しかし、帝乙は『易経』で示唆されているように、淫乱・暴虐で、楽しみで異民族を征伐した。捕虜の首斬りの数を占いで決め、数百人の首をいっぺんに斬りおとして、犠牲の首を山のように積み上げた。
 それでも、「宋」を建国した宋公・微子啓は賢人であり、異腹弟の帝辛と対立し、殷の滅亡後、周公旦に抜擢されて、父の帝乙の祭祀をしたのである。

 古代戦国時代、河南省にあった「韓」は、王家の先祖が西周の萬王であり、これは暴虐であるために大臣たちに首都を追放された暴君だった。
 しかし、韓王家では国家の独立に際して、立派な祖廟を建設し、萬王を首座にすえた。

 当時の君子の評価はこうだ。
「これが礼なのだ」





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Last updated  May 18, 2005 01:17:56 AM
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