曹操注解 孫子の兵法

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Oct 8, 2005
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カテゴリ: 戦略
 一橋大学大学院国際企業戦略研究科の野中郁次郎教授は、端倪すべき恩師ともいえるかもしれない。

 もちろん、今になると、もはや教えてもらう必要はない。

 個人として指導を受けたことはないが、学生時代に読んだ名著『失敗の本質』(野中郁次郎・戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀 共著 ダイヤモンド社 1984年)に触発され、私はダイヤモンド社の学生論文大賞に応募し、通産大臣賞をいただいた。
 これがまあ、現在の戦略研究の専門家としての人生を最初に決定したわけだが、要するに企業も、国家も、社会も戦略不在だとやがて行き詰まり、大失敗に陥るのではないかと警告したのである。
 ただし、『失敗の本質』からの援用はその数行だけであった。

 別に戦史研究の感想文を書いて通産大臣賞をもらったわけではない。

 この『失敗の本質』に書かれているようなことは、司馬遼太郎さんがすでに『坂の上の雲』で日露戦争の成功と失敗を詳細かつ冷徹に分析したものがあったから、「あっ、専門的にもこう読めるんだ」という感想だった。論文にドキュメンタリーとはいえ小説を引用するわけにもいくまい。

 円高不況で日本の大企業が巨大な「組み立て産業」になりつつあった時に、下請け中小企業が切られ、大企業だけが勝手に都合をつけて海外進出するという異常事態に対して、自分としては非常に腹を立てていた。
 そこで『資本革命・その可能性と合理性』という題で、中堅以下の中小企業群が「協業化」をすすめて、取引顧客を紹介しあったり、部品をセットにして、新規の他社に売り込むような自立した自由契約社会をつくりあげるべきだと主張したのである。


 これが第二回ダイヤモンド学生論文大賞・通産大臣賞の内容だったわけだ。

 通産省はその年から私の論文をベースにして中小企業対策に「自立化と知識融合化」という産業戦略を発表し、これによって多くの下請け中小企業が生き残った。
 大田区や東大阪市の中小製造工場のおやじさんたちは、「そんなことぐらい昔からやっていたよ」と笑われるかもしれないが、現在でも多数おこなわれている中小企業の異業種交流会や製品展示フェアは通産省の政策がはじまって、国家予算がついてから正式に動いたのである。
 幕張メッセや国際展示場など、それらを展示したり、交流会をしたりする場所も、私の提言した戦略にしたがって、ほとんど旧通産省がつくったのである。政府の補助金も各市町村にばらまかれ、親会社の不利な要求に泣き崩れていた下請け中小企業の自立が促進されたのであった。

 今では、大企業のほうが新製品をつくるたびに担当者を中小企業の町に派遣して、あちこちの工場に「こういう部品はつくれませんか」と頭を下げて回っているではないか。
 私が学生時代だった1980年代まで、製造業でベンチャー企業は生まれないといわれ続けてきた。
 それはすべての中小製造業が「下請け系列」に吸収され、親会社以外の外注を一切受け付けなかったからだ。
 まさに「系列の裏庭に咲く中小の花」だったのだ。
 達成感といえば、売り上げや儲けより、親会社の社長印のついた感謝状だけだったじゃないか。ほとんどの中小下請工場は。
 しかし、今では製造工場を持たないで、すべて契約工場の部品供給と組み立てラインのリースだけで製品を市場に出しているベンチャー企業は多数ある。
 パソコンもすぐ自作できるようになった。

 そして部品セットをつくりつづけている企業が、もっとも早くペンティアム・シリーズの最新バージョンを使った最強最速パソコンを低価格で市場に出してくる。

 『資本革命』は成功したのだ。
 その仕掛け人は、私に通産大臣賞を手渡した通産省官房企画室長、現在の福岡県の麻生渡知事であった。
 野中教授は「戦略の重要性」を論証した。それに基づいて、私は『資本革命』という具体的な産業構造変革の戦略プランを書いた。麻生知事はそれを国策として実行にのせた。
 だから、野中教授と麻生知事は、私の人生にとって恩人であるわけだ。


 ただし、戦略がなければ、野中教授と麻生知事の存在だけで、『資本革命』のような決定的な国策が生まれたであろうか。

 戦略家の仕事は見えにくい。
 しかし、戦略家は実に常に重要なのである。

 たっぷり自画自賛だけれどね(笑。





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Last updated  Oct 8, 2005 08:36:44 PM
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