FROM  NEW  YORK

Jul 25, 2007
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カテゴリ: NY発信


そう思うようになったというのは私がただ年を取ったからではなく、和、日本の伝統芸能に誇りを持って接したいと感じるようになったからではないかと思う。

   2004年夏、リンカーンセンターに設置した小屋で公演された中村勘九郎率いる平成中村座。エアコンの音、近くに座るアメリカ人老夫婦の翻訳デバイスから聞こえてくる英語、飛行機の音などが気になる中での観劇だった。そして演目最後にNYPDを持ち出して歌舞伎の世界をぶち壊してしまったなぁという感想はあったけれど、歌舞伎という世界に少なからず魅了された。

   その平成中村座がまたNY公演に戻ってくるというニュースを聞いたのは今年冬のことだった。あれから3年が経ち、2年間の中村勘三郎襲名公演を経て戻ってくる平成中村座に期待していた。

今年夏、リンカーンセンターで行われるイベントは幾つかあり、チケット販売開始された時は歌舞伎だけチケットを買うことが出来なかった。だからシングルイベントのチケット販売解禁日を心待ちにしていた。3年前の公演は売り切れだったこともあり、発売日に即チケットを購入した。一番安い$25のチケット。時代劇が大好きで日本でも歌舞伎を良く観にいっていたという同僚と一緒に行くことにした。

   会場のアベリーフィッシャーホールの前ではダンスの他イベントが同時進行し、そこにまるで異次元から訪れたような平成中村座の旗が立ち並び、数件の伝統工芸職人と工芸品が並んでいた。3年前に比べると規模は小さい。けれど、久しぶりに見る日本風の手ぬぐいや工芸品は一瞬のうちに私と同僚を懐かしい時代の日本にワープさせた。

   もしも私が大学卒業間もない20代の若者だったとしたら。。。

きっとこういった工芸や民芸品に見向きもしなかったかもしれない。年を重ねるということは『良いものは良し』と判断出来る知識と経験が培ったということなのかもしれない。

   今回、歌舞伎小屋は建てられなかったが、アベリーフィッシャーホールがたくさんのちょうちんで飾られ、着物姿の人たちをちらほら見た。楽日に行くという友人も着物着付け仲間と着物で観劇したと言っていた。そうやって「なんちゃって日本」がリンカーンセンターの一角に演出された。



   観劇する前、会社で同僚たちとこの平成中村座のことが話題になっていた。観劇した人たちの評判が良くないというのが噂話の中心だった。
「$200も出してチケット買ったけど、無駄だったわ~って友達が言ってたわよ。」
観たままを感じようと『法界坊』の話の筋も読まずに出かけた。

   テレビのスペシャル番組のお陰で勘三郎さん長男、勘太郎さんが怪我をしリハビリ姿を知り、彼の姿を舞台で追った。私の大好きな野球の選手たちと勘太郎さんがダブって見えたからだ。弟、七之助さんは『ラスト・サムライ』出演から米国でも有名と解説には載っていたが、やはり勘三郎さんが登場すると舞台の空気がガラっと変わるのがわかった。さすがこの中村座の座長の貫禄だ。

   知人に歌舞伎俳優の若者がいる。初めて歌舞伎というものに興味を持ったのは彼の影響だと言って過言ではない。3歳から日舞を始めたという彼から世襲制の歌舞伎という伝統芸能であり、特異な世界のことを聞き、少なからずお稽古の大変さというのを知った。その歌舞伎世界で世襲の子供たちにとってどんな意味合いを持つのか。その肩にのしかかるプレッシャー、責任というものはきっと私たちの想像を超えるものだろう。

   さて『法界坊』は、というと正直とてもガッカリだった。3分の1が英語でパフォーマンスというのが日本のニュースでは話題にあがりあの辛口NYタイムスも絶賛していると書いてあったが、とにかくNY在住日本人たちには完全なる不評。NYタイムスでは『大はしゃぎのセックスコメディー劇』と書かれ、歌舞伎演目の中では珍しいという喜劇だと知ったが、英語でのパフォーマンスと使用される英語がいただけない。日本で歌舞伎を良く見ていたという友人は演目が悪いと言っていたけれど、彼女も含めて誰もが媚び過ぎだと眉をしかめていた。日本的ギャグの連続など、歌舞伎という伝統芸能と学芸会の紙一重の差を感じてしまった。

   休憩時間、隣に座るアメリカ人の中年女性2人に感想を聞いてみた。
 「席が悪いのかもしれないけど、言ってる英語が全然わからないわ。衣装が素敵でなかったら最後まで見ないで帰りたいんだけどねぇ。20年前にビーコンシアターで観た歌舞伎はすごかったわよ。」

つたない記憶からこの歌舞伎は市川猿之助さんのスーパー歌舞伎のことを言っているのではないかと思う。私も一度だけスーパー歌舞伎を観たことがあるが、「これならブロードウェイでもウケる!」と感じたほど感動した。

   休憩の後の約20分でやっと満足するような歌舞伎が見る事が出来た。舞の踊りは本当に指先まで神経が行き届き繊細さをも表し、勘三郎さんの身のこなしはダンサーそのものであった。だからこそ、残念でならない。観光客はニューヨークに遊びに来る。エンパイヤーステートビルに登り、自由の女神を拝観する。「うぁー、ニューヨークって楽しい!面白い!」と言って沢山っ写真を撮ってまた帰ってゆく。ここで暮らす本当の厳しさや日々の戦いを全く知らずに。それと同じ感覚の平成中村座NY公演だった。

   良いものは良いと観る目を私たちは持っている。それは言葉が通じなくても、伝えたいという気持ちがあれば伝わるからだ。日本に来るオペラで日本人に受けるように日本語で歌ったり、バレエに日本舞踊を付加えたりすることはしない。



  もっと自分たちの持つ魅力と素晴らしさに誇りを持ってニューヨークでパフォーマンスして欲しい。その誇りを伝えるためにも。。。

Heisei Nakamura Za 2007
開演前にこの写真を撮った時怒られましたが公演中の無断撮影は決して致しません!






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Last updated  Jul 26, 2007 12:52:39 AM
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