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Aちゃん22

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2025.07.18
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カテゴリ: 電子工作
Metronix 524B CC 制御回路 簡略化回路図 のタップ切り替え回路部分を次の様に修正する。タップ切り替え回路部分のシミュレーションをしていたら気づいた。



この日記にある LTSpice 回路をダウンロードできる様に用意した

トランスタップを出力電圧に応じて切り替える回路を見ていく。タップ切り替え回路は出力電圧 V2 に応じてトランスのタップを切り替えるリレー {Rtapry, Ltapty} を駆動する回路だ。シミュレーション回路にはリレーのアーマチュア {Larm, Carm, Rarm} を簡易に組み込んである。簡易なので遅延動作、可動鉄片の着脱による Ltapry の 動的変化は組み込んでいない。


Tap change circuit, METRONIX model 524B (PDF)

タップ切り替え回路の電源は出力端子の PLUS Terminal を GND level とする。V1 によって供給される負電源で動作する。-16V としたのは交流電源が 85V ~ 90V くらいの低い電圧の場合を想定している。実際は安定化無しの -21V ~ -23V 程度になる。

ツエナーダイオード D2 によって -6.8V を生成している部分は他の回路と共用している。ここでは単独で使っている。

シミュレーション波形を見る前に主役のリレーを見ていく。松下の AP39281 が使われていた。データシートは見つからない。廃番だと思う。



形状と回路電圧から制御盤用途の DC24V リレーのカバーをネジ止め式 (Case-surface mounting) にしたものだと思われる。取り付けネジ穴の間隔が約 38mm になっている。現行の互換品で探すと OMRON LY2F-DC24 (digikey)



コイル定格 DC24V なのに駆動電圧源は -21V ~ -23V になっている。リレーの応答時間を遅くして良ければ定格電圧の 80% 程度で駆動することを許容している。これは意図的だと考えている。タップ切り替え回路も応答時間は遅くとも良いから、勢いよく接点を動かさない設計をしたと思える所がある。「リレーの音が大人しいなぁ」と思える理由かもしれない。次の画像をクリックするとリレーの動きを撮った 2.78Mbyte の動画をダウンロードして再生する。



おおよそ出力電圧が 8.47V に上がるとタップアップ、8.18V に下がるとタップダウンする。シミュレーションでは 8.5V 辺りを中心としてタップアップ・ダウンする様にしてある。

回路に戻る。CV amp, CC amp と違い差動増幅は使わず Q2 の Vb, Ve で閾電圧比較している。温度変化は許容している。{R5, R7} によってタップアップ・ダウンの電圧にヒステリシスを付与している。僅かな出力変動でリレーがカチカチと忙しく動かない様にしている。

悩ましいのは C1 だ。普通のリレー駆動回路は逆起電力バイパス(あるはフリーホイールと呼んでいる)ダイオード D1 だけ入るのが普通だ。C1 の意図は次の様に考えている。
  • アーマチュアをゆっくり動かし、加減速に伴う振動発生を少なくし、接点跳ね返りによるノイズを減らす
  • アーマチュアが振動することでリレーコイルに発生する振動電流・電圧を抑制する
  • D1 で吸収しきれない逆起電力を吸収する
次の様な懸念もある。
  • リレー接点が閉じる寸前と僅かに開きはじめる状態の時間が長く、放電が生じやすい?
  • トランジスタ Q1 が ON に遷移するところで Ic Peak 電流値が定格越えする可能性がある
  • D1 で吸収していてもコイル電流が Off に遷移するときは電解コンデンサの極性とは逆の電圧が掛かる(1V 未満なら許容判断かも)
波形を見ていく。C1 を放電するとき(Q1 が ON になるとき) Q1 コレクタ電流が 205mA ほどになっている。C1 の ESR を 1.2Ω にしてあり、制限が掛かる様にしてある。現実的な値のはず。


Waves Tap change relay circuit, METRONIX model 524B (PDF)

瞬間的なピークは 524B で使ってる 2SC1815GR の Ic max 定格 150mA を越える(2SC1815 はピーク定格を規定していない)。シミュレーションだと Ic が大きい領域(2SC1815GR だと Ic >= 30mA)で hFE が低下する現象が現実より出にくいので、物理現象は定格内かもしれない。タップ切り替え回路部分を接写したのが下の画像だ。



あっ、シミュレーション回路に入れなかった 10nF のコンデンサがあった。画像を確認していたら気づいた。上の画像に写る 10nF のコンデンサはシミュレーション回路の Q2 ベース (Vin) と GND の間に入っている。

このコンデンサもリレーに C1 を並列に入れた故の更なる追加だろうか? C1 があるのでQ1 が ON に遷移しても約 2.7ms の間は Q1 コレクタの電圧が下がり切らない。リレーから出るノイズ除去?

Vin の電圧に Q2 の Vebo 定格越えが見られる。Q2 に充てられているのは 2SA1015GR だ。このトランジスタの Vebo は -5V だ。Q2 エミッタは -6.8V、出力電圧が 0V の場合、Vin は約 -250mV になる。従って Q2 Veb は -6.55V (有効桁丸めで -6.6V)になる。定格越えだ。

乾電池 1 個の代わりに 1.5V 以下の出力で使い続けない限り故障に至らないので気づかない?あるいは故障してリレーが動かなくなっても、タップ切り替え無しで負荷電流が 100mA 程度であれば、設定電圧 18V で出力は下がることは無い。



そう言えばメッキ用途に改造されたと思われる Metronix 521C を見たなぁ。これは出力電圧が 0 ~ 3V にされていた。こちらはタップ切り替えが無いので 524B の様な問題は起きなかったはず。

タップ切り替え波形を見ていく。タップアップ(コイル電流を流す)は出力 8.68V、タップダウン(コイル電流を止める)は 8.42V 付近で発生している。差が 264mV だ。シミュレーションだとヒステリシスが実際より小さい。200mV もあれば操作感は悪く無いはず。カチカチとタップ切り替えが気になるようだったら、R7 680kΩ を小さくするか、R5 10kΩ を大きくするか。


Waves at changing Tap, METRONIX model 524B (PDF)

C1 の効果はタップダウン時に大きい。30ms ほど掛けてリレーコイル電圧が 0V に落ちている。コンデンサ 1 個(さらに Q2 ベースにもう 1 個)ではアップ・ダウンとも効果を出せなかったか。

設計意図を取り違えている恐れはありつつも、コンパレータで作り直してみる。LM393 を想定して LT1017 を使う。


Tap change circuit using comparator, METRONIX model 524B (PDF)

ヒステリシス・コンパレータ (直上の回路にて) U1、リレー駆動電圧に傾き変化を付けるスロープ生成 U2、リレー駆動・電圧制限 Q2, Q1、3 つの部分を作る。基準電圧源 Vinvvref は CV amp, CC amp で使った Vref 6.1V を反転する。入手性が良い基板取り付け型 DC12V リレーを使い、フリーホイール・ダイオードをリレーに近接して配置できる様にする。こうすればコイル電流 off 時に器機内配線で放出されるパルス的な電磁波を減らせる。接点にスナバも並列できるだろう。接点放電がどのように変わるかという心配もある。



全体的な波形を見てみる。


Waves Tap change circuit using comparators, METRONIX model 524B (PDF)

LM393 なので Vin 電圧は 0V(LM393 の V+) ~ Vee の範囲にあれば大丈夫(LM393 の入力部分にあるトランジスタは何かの保護があるのか、丈夫に作ってあるのか)。524B の Vee は -21V ~ -23V 程度なので定格だ。ダイオードを入れればより安全だろう。

リレー電圧 Vry は -11.7V になった。温度を -10℃ ~ 80℃ の範囲で振ってみて -10V ~ -12V に収まっている。おおよそ自分が使いそうな環境でリレーは動く。

タップアップ・ダウンの閾電圧にヒステリシスがあって使いやすそうか確かめてみる。出力 8.68V でタップアップ、8.39V でタップダウン、差は 287mV となる。元の動作と比べて違和感は無いだろう。


Waves at Tap-Up and Tap-Down, Tap change circuit using comparators, METRONIX model 524B (PDF)

リレー電圧 Vry の変化を確認する。タップアップ時は 43.0ms で 0V → -11.7V に変化していた。タップダウン時は 42.8ms で変化している。タップダウン時の電流変化は 12mA ~ 0mA の変化で急な所が残っている。12mA 程度なら許容しよう。D1 で十分に吸収できる。アーマチュアを勢いよく放すことも無いと考えている。


Relay voltage wave, Tap change circuit using comparators, METRONIX model 524B (PDF)

トランジスタ 2 個の回路なのにコンパレータで作り直すのに手間取ってしまった。出力電圧を 1.5V 以下で長時間使う事は今のところ無さそう。ダイオードの I-V 特性調査で使用機会は有るか。故障の可能性があることに留意しよう。

タップ切り替え回路をフォト・リレーと 1 chip マイコンで作るのが今時なのかもしれない。せっかくの完全アナログ電源だ。壊れてリニューアルするとして、意地でもクロック源、PWM の様なスイッチングをする回路は入れないつもりだ。フォト・リレーを使う場合、駆動するシーケンサはアナログで作ろうと考えている。

次の日記 部品交換








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最終更新日  2025.07.25 12:49:31 コメントを書く


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