小夜子姉貴さん
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学校の近所、街並を見れば僅かながら変わったところが見えるはず。

小夜子さんは袋川を毎日渡って通ってたわけですね。う~んあのあたりだと新しい道ができたりしていますよ。
(2005年10月28日 22時50分59秒)

山口小夜の不思議遊戯

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2005年10月28日
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 ──これは、なんしておまいが持ちようだ。

 豊は平静を装ったまま、綾一郎にそう尋ねた。
 だが、それは語るに落ちたも同然の言いぶりだった。
 そして、この計画に全神経を傾けている綾一郎がそのことに気づかないはずはなかった。

豊はこの文字のことを知っている。

 これを確信すると同時に、綾一郎は豊が小夜と似たような問いかけをしてきたことにも、好ましい兆しを見てとっていた。今や、彼はすべてのことが腑に落ちていた。

 暗号文字──これはとりもなおさず、豊と小夜がふたりだけの秘密の交信に使っていた文字であったのだ。綾一郎は今日、同じ精神をもつふたりの人間を、期せずして目の前に見ていたのである。

 急展開とも呼べる事の運びではあったが、綾一郎はそこまで思い当たった新事実については、ひとまず胸の内にしまっておくことにした。それを切り札として持ち出すのは、自分の計画するところの相生村文化振興事業に豊の協力を要請するという当初の目的を遂げる折で、充分遅すぎるということはない。
 最終的に、豊は自白のうえ協力せざるを得なくなるだろう──綾一郎は、証拠のとれた刑事のような気持ちになっていた。



 ──ねねだが。
 ──なにて?
 ──ねねだっちゃ。小夜だいや。小夜がこれを書いたとや。この書きつけは昨日、おまいの席の下から拾ったもんだが。おおかた、おまいに遣ろうとした文(ふみ)だっちゃ。

 豊は押し黙り、そして二度とは言葉を話さなかった。
 この文が自分に宛てられたものであるとの綾一郎の言が本当のことならば──

 豊の頭の中には、ただひとつのことだけが席巻していた。


 醇風や 乙女こもごも 春の膳
あなたは醇風の中、春の膳をともにとったその少女なのですか──。

 音寧と聞いて 誰とも知らぬ 吾亦紅 今年ばかりは 墨染めに咲け
私のことをねね(紅い花)とわからないのなら吾亦紅よ、今年ばかりは墨色に咲くがいい。


 曖昧な好意に対する苛烈な糾弾。


 愛するのも憎むのも、この者は同じ激しさでするのだろう。

 この句を神聖文字を解さない綾一郎が目撃したこと自体はたいしたことではなかったが、書き手の少女が自分に直接に渡そうとしていた文ではないかと思うとひどく心が動き、それが彼の顔色にも表れた。

 自分の顔色が変わるところをだれかに見られたのではないかと、豊は頬を熱くした。あたりの様子をうかがおうとして顔をあげて、さらに耳まで熱を帯びるにいたった。
 綾一郎が彼を見ていた。

 鼓動が早鐘を打つのを感じながら、豊は必死に気を鎮めようとした。

 ──今日はもう、小夜と話はせんだか?
 彼はそう尋ねつつ、疑わしげな目を向け、豊は内心たじろいだ。

 ──せんわ。
 返事をできるだけ短くすることで、なんとか声を平静にたもとうとした。
 だが綾一郎の目のなかにある、詮索するような表情は消えなかった。

 ──わしは・・・、(小夜っちゃなんは、よう知らんわ)
 豊は言葉を継ごうとして、呪(しゅ)にかかったように自分の口が動かなくなるのを知覚した。

──わたしを誰だかわからないと言うのなら・・・。

 小夜の呪だ──。
 豊は小さく身をふるわせた。
 だがそれは彼を寒からしめるものではなく、未来への期待と憧れに高揚する気持ちがさせた、武者震いのごとく熱い身体の震えであった。

 綾一郎はそんな豊の様子にじっと目を留めていた。
 概して言うと、やみくもな感情にすっかり混乱している少年にすれば、彼は可能なかぎり自制心をたもっていた。

 それでも、ほとんど綾一郎の目はごまかせなかった。
 人が抱くある種の感情がはた目にどう映るものか、それがわかる程度に早熟であった綾一郎は、豊と小夜の顔に同じものが表れているのを見てとっていた。

 綾一郎は、たとえ誰であれ、人がその感情を抱くのをとがめる気にならないような器の大きな少年だった。彼らの感情が村の子供たち全体になんの面倒ももたらさないであろうこともその気持ちの決め手であった。
 このふたりが互いに興味を持つのは必然性のあることだと綾一郎は心から認めていた。
 なんといっても、彼らは異分子同士なのだ。

 それになにより──と、綾一郎は心の中で誰に向けるともなく笑顔を見せた。
こういう話はいつだってええことじゃなくってよ?

 そして、豊の肩を引き寄せると、彼が聞いているか否かに関わらず、楽しげな調子で大将命令をその耳に吹きこんだ。

 ──あすは話をしてもらう。おまいたちはもっと、自分のことを話さねばならん。



 本日の日記---------------------------------------------------------

 【男性を格好良いと思うポイント】

 この日記だけでも軽めのコーナーにしたいとは常々思っているのですが、あまりに本文とのトーンが変わってしまうのも困るし・・・。
 でも、たまにはこんなテーマなどいかがでしょう。ほんとにたまですが(笑)。

 小夜子の独断と偏見による「男性の格好良くみえる仕草」について

 ・車をバックさせるとき、助手席に手をかける仕草(これは案外定番かもしれない)。
 ・受話器を肩に挟んで電話する姿(これも賛同者が多いと思う)。
 ・ふだんは「ぼく」とか「わたし」と言っている人が、「おれ」と言い間違えた時。

 ちなみに、このマイセオリーはある特定の男性に限ったことではなく、「男性であれば誰でも、この仕草さえすれば格好良いと思える」というのがポイントです。

 格好良さを演じる男性がカッコ良く見える年齢は過ぎました。
 今は演出された格好良さにはもうひっかかりません。
 逆に、男性が期せずして自然に女に垣間見せる‘男性を感じさせる’仕草というものに、惹かれるようになりました。
 格好をつけない大人の男性の余裕というものを、私も理解できるようになったかな(笑)。

 明日はこの章の終わり●相生文字の隆盛●です。
 前章からの長い長い一章が完結します。
 皆さま日ごとに応援くださり、ありがとうございました。
 やっとやっと、ふたりが直接に出会うことが叶います。
 タイムスリップして、豊と小夜の接近遭遇をはるか高みから見物にきなんせ。






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最終更新日  2005年10月28日 06時46分40秒
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いよいよ・・・。  
yuu yuu  さん
佳境・・・。今日は冷静に降臨ゆえの高まりが・・・。小夜の書き物に動揺を隠せぬ豊・・・二人の仲は・・・。明日が待たれる・・・。
男は女のように演技が上手ではありません・・・。まして、そのように格好をつけても・・・。バカな役者が離婚騒動・・・何時までも子供で大人になれない、衝動だけの大人・・・。
私はいままはただの人です・・・。欲得なく生きるとなんとすがすがしいことか・・・。こんな本が読みたいなと、いうものが書けたら良いと・・・。少しずつ書いてますが・・・。
ご自愛と・・・ご健筆を・・・。 (2005年10月28日 14時38分07秒)

Re:いよいよ・・・。(10/28)  
小夜子姉貴  さん
yuu yuuさん

そうなのですね。
男は女のように演技ができないのですね。

かわいそうに・・・それじゃ真っ向勝負で傷ついていくばかり。けれどもそれだけにいとおしい。

離婚騒動のこと──やはり、ひとのものを自分のものにしてはいけないのですね。結局、そういうことのできる女なのだと男からも見限られている。

足ることを知る境地に至る道のりのなかで、おそらく私はあと四半世紀ほどもこの泥水の中をはいずりまわらなければならないことでしょう。

先達の背中をはるかに憧れながら、追っつけ後から参ります。
(2005年10月28日 15時28分39秒)

【男性を格好良いと思うポイント】の寸評(in鳥取)  
今晩は飲んでるので・・・ゴメンナサイ!!!


・車をバックさせるとき、助手席に手をかける仕草(これは案外定番かもしれない)。

 最近はバックカメラがあるので助手席に
 手を置くのは少ないのかも・・・

 ・受話器を肩に挟んで電話する姿(これも賛同者が多いと思う)。

  最近は鳥取でも電話も軽量・受話器の
  小型化が進んで首を傾ける角度が大き
  くなりました。

 ・ふだんは「ぼく」とか「わたし」と言っている人が、「おれ」と言い間違えた時。

  鳥取では「ワシ」やちょっとアッパー
  になれば「うら」が多いかと・・・。


う~ん男性を感じさせる仕草かぁ。都会の人がカッコよく見えるのでは。鳥取ではなかなかいないと思います。

いつもROMってばかりでゴメンナサイ。実際の醇風の子は先週修学旅行で京阪神に行ってました。
(2005年10月28日 20時47分59秒)

Re:【男性を格好良いと思うポイント】の寸評(in鳥取)(10/28)  
小夜子姉貴  さん
VIENTOさん

貴重な情報に飛び上がってしまいました!
醇風情報とは──ノックアウト☆

もう修学旅行の時期なのですね。
私は五年生で横浜に帰ったので、修学旅行にみんなと行けてないんですよね(涙)。

それじゃあまりに悲しいので、三月の自分の学校の卒業式が終わってすぐに飛行機で鳥取までひとりで行って、醇風小の卒業式に出席しました。

その時はみくまりの家に泊めてもらって、市内にできた温水プールとか行ったなぁ。帰りは長距離バスで大阪に出て、そこで待っていた母と京都を観光して帰りました。

このブログ始めて二ヶ月ですが、これまでに醇風の同窓生は一度も名乗りを上げてきてくれないんですよ。鳥取ってインターネット盛んだと思うんだけど、やっぱりここまでは行き着かないのかな・・・。ちょっと淋しい。

(2005年10月28日 22時07分39秒)

なんと醇風小は去年新しい校舎になってますよ。  

Re:なんと醇風小は去年新しい校舎になってますよ。(10/28)  
小夜子姉貴  さん
VIENTOさん

うそ~ん。新しい校舎!?
これは見にいかないと。

は~ばたく鳩に 集まる笑顔~
(三番まで憶えてるけど以下略)
という愛唱歌も代わってないかな。

校歌は「人はただ、誠の道を」
(これも二番まで知ってるけど以下略)
という難しい歌でした。

うちはね、市内では片原町に住んでたんよ。
県の独身寮の奥の一軒家だが。だから醇風にはすんごく近かった。薬師町とかに今でも友達います。
あと、少し離れたところで吉成とか。実は相生って町名もあるよね(笑)。

県の独身寮に住んでたお兄さんたち、優しかったよ。うちにたすけごまなしの自転車教えてくれたが。番地も電話番号もまだ覚えてます。

0857-22-××××だったよ。

袋川はそんなに近くはなかったけど、湯所ショッピングセンターで、バレンタインのチョコとか買ってました。それから家帰ってきたら高熱出しました(おそらくインフルエンザ)。

VIENTOさん、しいたけ会館って、あれなに?




(2005年10月28日 23時28分26秒)

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