山口小夜の不思議遊戯

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2005年12月19日
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 早朝、引き戸の向こうから押し殺したように呼ぶ声がするので、朝風呂の一件のことで、すでにしっかりと目覚めていた豊は、すぐに廊下とを仕切る襖を開いた。

 そこに立っていたのは父宮であったが、彼の顔がひどく曇っているのを見て、豊は少なからず胸騒ぎを覚えた。

 ふたりは朝のあいさつをかわし、部屋の中央に対峙
して腰をおろした。

 豊は一番茶を点てようと茶葉をつめはじめたが、続けざまに‘へくしん、へくしん’とくしゃみをして中身をこぼしそうになり、小角さまに苦笑いされた。それでふたりのあいだの空気が少し緩んだのを、互いが感じることになった。

 ──おまえはこうして父が急に訪ねてきても、心騒がせることはないようだ。
 ──・・・・・・・?

 ──はぁ・・・・・・へっくし。
 ──寒いのか?
 ──いえ今は。朝に、長いこと水を浴びていたので。

 小角さまは、いつになく驚いた様子で息子の姿をじっと見つめた。
 ──感心だな。おまえが朝から禊をするなど。
 ──禊・・・・・・だったのかな。

 息子がひとりごとのように答えるのを聞いて、父宮は少し考え込むように窓の外の橘の幹に目をやった。そしてぽつんと言った。
 ──おまえはよく御詞(みことば:神語)を話すな。
 豊は棗に茶をつめる手をとめた。

 ──ありがとうございます。
 彼は言った。

 ──では単刀直入に訊くが、おまえは御詞を話すのと同じほどに楽しく想う女性はいるのか。

 豊は手に取ろうとしていた古伊万里の茶碗をあやうく取り落しそうになった。彼は何度か唇を開きかけてはつぐみしていたが、やっと意味のある言葉をしぼりだした。

 ──どういうことですか。
 だが、顔がさっと朱に染まったのは父宮の方だった。
 ──おまえと誰ぞとのあいだに、なにがあるのかと訊いている。


 ──つまり、父上はわたしが女性と関係を持ったことがあるのかと訊ねておいでなのですか。
 ──そのとおりだ。
 ──ではお答えします・・・・・ありえん。父さまはわたしをいったいいくつだと思ってます。
 ──じきに十六だろう。二十八年前、わたしが神子(みこ)として山の神に捧げられた年齢と同じだ。

 豊がはっと息を詰める、かすかな音がした。
 ふたりの間に長い沈黙が落ちた。

 東の部屋に、風が入ってきた。
 七月に入ってから、空に雲のかかる日は少ない。今朝もまだ明け初めたばかりだというのに、部屋でゆっくりと過ごすには陽射しが強すぎるほどである。

 ややあってから、小角さまが重い口を開いた。
 ──豊、これは大切な話だからあえて尋ねるのだ。女性と関係を持ったことはないが、おまえの身体はどこにも支障はないと考えてもよいのだな。
 ──はぁ・・・・人並みに成長していると信じておりますが。
 不機嫌そうに答える末息子を、父宮は軽く睨んだ。

 こうしてふたりで向かい合っていると、互いの姿かたち、声色さえもそっくり写し取ったようで、はたから見ればタイムスリップして同一人物の未来と過去を目の当たりにしているかのように錯覚するほどに、似通っている父子である。

 ──もう一度訊くが、心に決めた女性はいないのだな。
 父宮の問いに、豊はわずかに首を傾けた。
 ──今、心に決めた女(ひと)がいるかと訊かれれば、いないと答えるよりありません。けれども、わたしはいつか結婚はするつもりです。
 ──結婚をするつもりなのか。

 たたみかけるようにそう訊かれて、豊はうなずいた。
 ──そうです。
 そして、さっきと反対側に首を傾げ、ちゃっかりと言った。
 ──わたしがそうと決めた折には、ぜひ、お許しいただきたく。

 小角さまは考え込んだ。
 不二一族の嗣子として生まれながら、自分勝手な恋に大切な清童を捨てた他の息子たちのままごと遊びになら反対もしようが、結婚というかたちを見据えている人生ならば、男性として感心ではある。
 しかも、その未来の伴侶のために身を清く保っているのだとすれば、この者を誰も──神でさえ否定する理由はどこにも見つからないだろう。

 ──相手が人間ならば、おまえの決めたとおりで佳い。
 ──フツー結婚相手は人間なのですが。

 だが、小角さまは息子の軽口をきれいに無視して居ずまいを正した。

 ──豊。
 彼は鋭くその本名を呼んで、息子の注意をひきつけた。
 ──このまま部屋のなかで待っていろ。
 父宮の口調は、厳しかった。

 ──誰ぞに操を立てているおまえには気の毒だが・・・・・・。
 そして、豊への視線を定めると、
 ──今宵、【荒神さま】の供物となることを、わたしは守宿としておまえに命じるよりほかはない。

 そう言い切り、視線を凍らせている本人が何か言う前に、不自由な左腕を苦心して揃えた。
 そして、両手をつき──言った。

 ──おまえに、頼みます。不二のことを・・・・・・。






 皆さま、今週末はクリスマスですね。
 楽しいご計画を、それぞれお持ちのことでしょう。

 私も今週からクリスマス・ウィークです。
 手始めに今日、クリスマスパーティを自宅にて開催します。
 今朝もこれから準備です。今日はケーキを手作りしようと思うのですよ。

 不二屋敷でも、みんなが子供の頃は毎年思いっきりハジケてパーティしてそうですね(笑)。
 ビンゴ大会とか、大盛り上がりでやってそう!


 明日は●血の奉献●です。
 クリスマスだけに──カトリック的(笑)。
 豊がまた、ひとりで小細工をしているようですよ。往生際の悪いやつめ。
 タイムスリップして、不二屋敷の楓の木の下に集まりなんせ。


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最終更新日  2005年12月19日 05時56分45秒
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