闘魂 サバイバル生活者のブログ

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カテゴリ: 闘魂
本山美彦「消された伝統の復権」より、 野崎日記(256) オバマ現象の解剖(1) インペリウム(1) を読む。

(貼り付け開始)

 二〇〇九年末に封切られたマイケル・ムーアの話題作『資本主義、ある愛の物語』によって、ゴールドマン・サックスのあまりにも巧妙な錬金術に世界の注目が集まるようになった…

●同志社から三和銀行経由でハーバード大学で政治学を学んだ仲間(?)がいる。彼は、ゴールドマンサックスの日本法人に勤めている。典型的なジャパンハンドリングのための日本側カウンターパートだろう。売国奴と罵倒される立場に堕ちてしまったという訳だが、本人たちは、たいそう裕福な暮らしを送っているのかも知れない。ハーバードで政治学というのがやばいわ。別に勉強が好きなわけでもないし、頭が切れるわけでもない。体力と世渡り術に長けていたというところか。

…古今東西、金融は厳しく取り締まられてきた。なんであれ、それを手に入れたいという欲望はある。しかし、モノに対する欲望には上限がある。いくら高級車が好きでも、ひとりで何百台と所有できるものではない。高級ワインに目がないといったところで、何万本も飲めるわけではない。もうこれ以上は要らないという欲望の限界がモノにはある。

 ところが、カネに対する欲望は無限に大きい。限度がない。一〇〇万円を手に入れた人は、さらに一〇〇〇万円が欲しくなる。それを実現すれば次には一億円、そして一〇〇〇億円、一兆円と、それこそ自足することがない。

●先生のおっしゃることで、もっともわかりやすい話である。カネが減価すれば、蓄財の用をなさなくなる点を突っ込んだのが、シルビオ・ゲゼルであり、そこに問題解決の糸口を見出したのがミヒャエル・エンデだ。カネは、時間とともに価値が減るどころか、利子を生んで、蓄財にもってこいである。

 そもそも、カネ儲けのできる人や組織には第一級の情報が入ってくる。カネ儲けは情報が一般化する前に投資することによって可能になる。当たるも八卦、あたらぬも八卦の世界にカネ儲けはない。必ず、儲かるという確かで最新の情報に基づいて投資はおこなわれる。上限のないカネへの欲望が、買占めや価格操作によって、経済社会の安全を脅かす。そうした投機が横行すれば、失業者が続出し、社会は破壊される。だからこそ、アリストテレスのいう社会的合意の産物としての「ノミスマ」(貨幣)論が、オイコノミカ(経済学)の基礎に据えつけられたのである。それは貨幣を社会的に制御することであった。



 市場は、あらゆる産業に平等な条件を与えているのではない。この点の認識がとくに重要である。まず、玄人向けの産業は利益が薄い。鉄鋼業は膨大な設備と従業員を抱えなければならない。生産に擁する固定費は莫大である。固定とは売上高にかかわらず必要となるコストのことである。変動費にしても原料高が製品コストを直撃する。

 ところが、鉄鋼の買い手は素人ではない。業界のコストを正確に理解している玄人としての巨大寡占体が買い手である。鉄鋼企業の販売価格は、巨大な力を振るう買い手との長期間にわたる交渉の末にやっと、そこそこの薄利を上乗せされたものに圧縮させられてしまう。つまり、最終需要先を持たない鉄鋼などの素材産業は儲からない。

●広く浅くが素材産業の強みだ。生活を下支えする、縁の下の力持ちである。

 それに対して、素人相手の産業の利益は大きい。素人は正確な生産コストを知らないからである。しかも、素人はこれでもかこれでもかと打たれるコマーシャルに心を奪われる。まるでファッション服を求めるように、新製品に飛びつく。このことは、テレビ・コマーシャルの出し手を見てもすぐさま理解できることである。鉄や造船などのコマーシャルにお目にかかることはきわめて稀である。だからこそ、寡占ないしは独占体は最終需要に照準を合わせた消費財に成立する。たとえば、鉛筆、歯磨粉、洗剤、ピアノ。ほとんどの人は上位二社程度しか名前を想いう浮かべることができない…

…正確な価格を知らしめないで営業する典型例が投資銀行である。彼らが売りまくった金融商品、とくに証券化された金融商品には市場価格が付いていない。その多くは市場から付けられたものではなく、投資銀行が顧客のために見繕い、自社の計算式によってはじき出された人為的価格である。いきおい、ブームが投資会社によって煽られる。

●ITバブルのときにベンチャーファンドと付き合ったことがある。ファンド数本で、年間10億円のIPOを果たしたこともある。しかし、そんな付き合いは、利殖としても長期的に上手くいくものではない。

 ブームとはバブルである。ブーム時に投資銀行は、証券化された金融商品を高値で顧客に売りつけて膨大な利益を得る。そのうち、様々な顧客情報を総合することによって、投資銀行はバブルが弾けるという読みを持つようになる。投資銀行は、今度は、売りつけた金融商品の空売りに出る。空売りとは、売るべき金融商品を顧客から手数料を出して借り、借りた金融商品を使って売り浴びせることである。金融商品の価格が十分に下がった段階で現物を買い戻し、それを借りた相手に返却すれば、高値で売り、安値で買い戻すのだから差益が出る。つまり、投資銀行は、バブル時にも、バブル破裂時にも、利益を出すことができるのである。

●カラ売りのしくみがわかった。こういうことなのね。

 そして、金融機関がそのような方向に向えば、社会のカネは雇用拡大のための生産的投資ではなく、激しい価格変動がある金融商品売買に集中するようになる。いきおい、社会の資本は、投機化して、生産の縮小、雇用の減少をきたしてしまう。その意味において、バブルを煽ったのも、バブルを破裂させたのも、投資銀行であったと断定してもよい。金融の自由化とは雇用の拡大に向う義務を免除されて、自由に投機に耽ることができるという体制整備のことである。

●投機というのはすなわち博打である。ウォールストリートは博徒の街だということだ。

 投機は、しかし、必ず失敗する。しかし、失敗によって大打撃を受けて、競争相手の投資銀行が撤退してしまえば、公的資金の注入を受けて生き延びることができた投資銀行は、次の飛躍のチャンスを掴むことになる。



 実際には、ゴールドマン・サックスの被害は小さかった。にもかかわらず、同行は、他の甚大な損失を出した金融機関と同額の公的資金の注入を受けた。注入を受けただけなく、AIGへの投資額二〇〇億ドルのうち、一三〇億ドルの補償を政府から与えられた。

 二〇〇九年の世界恐慌前夜にもかかわらず、ゴールドマン・サックスの従業員三万人の一人当たり平均報酬は七〇万ドルもあった。会長のブランクファインの二〇〇七年のボーナスは六八〇〇万ドルもあり、ゴールドマン・サックス株を五億ドル程度付与されていた。そして、二〇〇九年の第二・四半期(四~六月期)の利益は三四億ドルであり、ボーナス分として二〇〇億ドルを別途積み立てているとの観測が流れた。二〇〇億ドルとは、一ドル=九〇円で換算すれば一・八兆円もの巨額である。そして、会長は二〇〇七年を上回るそれこそ史上空前の巨額ボーナスを支給されることになる。

●こっちは金融資本に収奪される側で、消費者としても物価に含まれる利息相当分を支払うのに四苦八苦している。かといって、貯蓄がないと将来の不安が大きいので、ベーシックインカムではないが、高福祉社会の実現を試す価値はある。そうすれば、雇用問題に寄与しない、金融資本の権勢を削ぐことができる。価値転換の分節点にあると思いたい。

 ゴールドマン・サックスは、二〇〇八年のTARP(不良資産買取政策)によって、米政府から一〇〇億ドルもの公的資金注入を受けた。二〇〇九年に二三%もの利子をつけて返済したので、なにも遠慮は要らないとの判断なのであろうが、この巨額のボーナスがムーアによる「カネを返せ」という映像を生み出したのである。

 投資銀行は、よしんば破綻しても政府からの支援を受けないという条件で、営業内容の一切を金融監督当局に報告する義務を免除されてきた。



●ひどい話である。日本人には、到底まねのできないシステムだ。奴らのやり口を覚えて、後の世に伝える責務がある。

 サブプライム・ローン危機前よりも、膨大な財政出動によって市中を駈けめぐるカネの量が桁違いに増えている。しかも、最大のライバルであるリーマン・ブラザーズとベア・スターンズが市場から消えた。メリル・リンチも残っているが、メリルは青息吐息で、昔日の面影もなく、ライバルといえるのはモルガン・スタンレー一行である。こうして、オールドマン・サックスは、以前にも増して投資銀行業務を活発に展開できるようになったのである。ゴールドマン・サックスが空前の利益を確保できたのは、米政府が規制についてなにもせず、カネのみ惜しみなく市場に供給した結果にほかならない…

●ドルの信認の話は、しばらくは表面化しないようだが、アジアの取引がドルでなく、元によってなされるようになったいま、ドルのだぶつきはどこかで問題を引き起こす。

…ゴールドマン・サックスをはじめ、米国の投資銀行界では、高給をとることが成功の証であり、豪勢な消費が顕示される。まさに、金儲けに耽溺している。

 たとえば、ロンドン店の総裁、マイケル・シャーウッドは、豪華なヨットを五隻も買い換えた。それは帆走が目的ではなく、ただ所有することに喜びを持つと誇らしげに語っている。その一つのライオンハートと名付けられたヨットは二〇八フィート、三二〇万ポンド(四七億円)もした。

●おかしい。次にあるように、短期間で、生涯賃金を生み出す反動を畏れる。

 ただし、勤務条件は非常に厳しい。休暇はほとんどとれない。年に数日あるかないかである。毎年三~五%の従業員が首になる。平均勤続年数は八年程度と非常に短い。従業員の多くは四〇歳までに退職する。他人を蹴落として生き残ることが自己目的となり誇りとなる。金融の肥大化は、人々の精神を確実に貧しくさせている。カネを集める吸血鬼の顔付きになるまで人々が堕落する(数値については、Times Online, November 8, 2009より)。

 この連載は、切り捨てられている普通の人々の悲しみが社会変革の梃子になることを願いつつ、倫理なき金融のおぞましさ、そして、中国もそうした金銭的強欲の弊に染まりつつあるという恐怖に駆られて、オバマ現象、メガ・チャーチ現象、レフトビハンド現象を描いた。

●長銀をクビになって、外資系をわたり歩いていた旧友がいつしかJPモルガンの名刺に変わっていたが、今年の年賀状に、浪人中だとあった。二宮尊徳的な価値観でこの国はやってきたし、今後もそれしかない。中国にGDPを抜かれたから、今後はひとりあたりのGDPで勝負するとでも言い出すんだろうか。それだと欧州の国々にかなわない。では、なにを拠り所にするか、世間は、政権交代の余波で、かまびすしいが、国のあり方をどう変えていくか、戦略の部分を組織的に透明度を高くしながら策定すべきときではないか。





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Last updated  January 16, 2010 03:58:57 PMコメント(0) | コメントを書く
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