かぜはイタ!づら

PR

×

キーワードサーチ

▼キーワード検索

フリーページ

お気に入りブログ

<ある日の出来事>… マッチ400717さん
いつかコキリになる… ヨーク&ランカスターさん
速読を書籍のみでマ… 日本神話古事記朗読カイフさん
★おまつりにっし!・… まつり男児(ダンディ)さん
大好きなもの日記 禰ねさん

コメント新着

ゆう@ とうとう出ちゃったね うわさは本当だったよ。 <small> <a hre…
ふなや自転車操業ふなやゆうじ @ Re:なにかに出会って(07/28) みなわひとしさん 楠田レモンさん 素敵…
マッチ400717 @ Re:春のスケッチ(05/07) こんばんは^^ マッチです 桃ちゃ…
はこべほっと @ Re[1]:さわさわと、春が(03/29) マッチ400717さん >いつも来てく…
マッチ400717 @ Re:さわさわと、春が(03/29) おはようございます マッチです 今…
Mar 24, 2005
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
ハトが路上を歩く姿は
なんだかよちよち歩き
のように思えるのだが
よくよくみれば、
なかなかに気を配っていて
決してつかまえられたりは
しない。でもいつもよちよちふうに
歩いている。   みなわ ひとし
フーアーユー

「おう、骨壷ね」

まるでビールでも飲むような一気飲み。
「骨壷?」
とけげんそうな喜一さん。
「ほら、この甕、骨壷に似ているでしょ。
通のひとたちは、そう呼んでいるんですよ、ね、
風祭さん」
ちょっと酔っ払った小野さんが、
風祭さんの肩に手をかけた。
その途端、風祭さんが、
荒々しく、小野さんの手を払いのけたの。
「ボクは、キミをトモダチとは思っていない」

いったいどうなってるの?
小野さんが、口をきゅっと結んで
何事もなかったように、おでんを
小皿によそい始めた。
喜一さんが、黙って風祭さんのカップに

「ボクはスキにやります」
風祭さんは、邪険に自分のカップを
喜一さんの手からもぎとったの。
いったい何が、どうしたの。
「風祭さん、おでん、召し上がる?」
小皿に入れてあげようとすると、
「ボク、勝手にやりますから」
と、とりつくしまもないの。
おいしい酒も台無しになるような
奇妙な沈黙が流れたわ。
それでも喜一さんと小野さんは、
なんでもないように静かに飲み続けていたわ。

桃子ちゃんが、ちょっと心配
そうに風祭さんを見つめていた。

風祭さんは、突然立ち上がると
隅っこのいすを三脚運んできて
並べるとごろりと横になった。
桃子ちゃんが、そのそばにだまって、
カップと、おでんの小皿を
おいてあげてた。
風祭さんは、足をぶらぶらさせて
目を閉じている。

「ねえ、どうしたの」
小さな声で喜一さんに問うと、
「多分クスリを飲まなくなったんだ」
喜一さんの暗い顔。
小野さんが、私のほうを見て、
首をふった。
「飲みましょう」
小野さんが、カップを
ぐいぐい口にもっていく。
「目、開けてる」
桃子ちゃんが、私の耳元で
ささやくように言う。
どすん、と音がして、
風祭さんが椅子から落っこちたみたい。
「ボク、スキにやりますから」
言いながら、竹のひしゃくを
とりあげたかと思うと、
甕のほうにぐらりと体がかたむいて、
そのまま小野さんのほうに倒れこんだ。

甕が床に落ちて中の芳醇な
液体が無残に流れてしまったの。
ああ、あっ、まあ、えーっ
声ならぬ声。

小野さんが、風祭さんの重い体を
支えるように立て直した。
「風祭さん、ぼく送っていくから。
帰ろう」
小野さんが意を決したように言った。
風祭さんの目がきっとなって、
「ボクは帰らない。
ボクはジユウです。
キミは、ボクじゃない」
と、桃子ちゃんと私の間に割って入るように
座り込んだ。
「そう、その通り。
人間は自由なんだから」
桃子ちゃんの顔がピンク色に
なっていたわ。
「桃子、まさか」
と喜一さんが、桃子ちゃんの
コップを取り上げた。
「あー、飲んでる。
高校生なんだよ」
と桃子ちゃんをにらんだ。
「いいんだよー」
桃子ちゃんは、すっかりいい気持ちで
喜一さんからコップを取り返した。
「きみから、なんとか言って」
喜一さんが私を見る。
「何がキミだ」
風祭さんが、喜一さんの胸倉を
いきなりつかんだ。
「キミは、なんでもわかった顔して。
鼻持ちならない。
そうだ。ボクはキミと絶交する」
風祭さんのひげには、卵の黄身が
こびりついていた。
「そうね。喜一さん、
少し若年寄みたいなとこあるわ。
でも、絶交はないでしょ」
風祭さんを鎮めたくて言ったけど、
かえってそれが、火に油を注ぐ
ことになってしまった。
「レモンさん、彼をかばうこと
ないですよ。彼はね、優しさを
装った偽善者ですよ。
ボクはミヌイテいます」
風祭さん、憎憎しげに喜一さんを
見つめた。
喜一さんは、こぶしを握りしめるように
しながら、目を閉じた。
小野さんが、ケータイで、タクシーを
呼んでいる。
桃子ちゃんが、ぐいぐい飲んでいる。
私のこころは、どうしたらいいのか、
うろうろしているばかりだ。

痩せた小野さんが、渾身の力を
振り絞るように
風祭さんを引き連れて
出て行った。
「ボクはボクで、
キミじゃない」
風祭さんのわめくような声が
聞こえてきた。

台所で片づけをしていると、
桃子ちゃんがふらふらと
入ってきた。
「大丈夫?」
振り向いて話しかけると
ピンクにそまった頬に
涙が流れていく。
「どうしていいか、わからなかった。
苦しくて苦しくて。
風祭さん、
いつもあんなに優しいのに」
思わず桃子ちゃんを抱きしめると
私の目頭も熱くなって、止まらない。

ネットカフェの片隅に
喜一さんがぽつんと座り込んでいた。
「いつも春なんだ。
クスリを飲まなくなって
どうにもとまらなくなって
ここに来るんだ。
けど、彼が、ボクに言ったこと
本当だ。彼は、どんなときも
真実しか話さない」
誰に言うともなく、
喜一さんが話し続ける。
「もう、病院に入るころに
なったんだ。
どうしてやることもできない。
あんないいやつ、なのに」
「帰ろう」
桃子ちゃんが、喜一さんの腕を
優しくゆさぶった。     楠田レモン







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  Mar 24, 2005 02:04:54 AM
コメント(7) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:面白うて、やがて哀しき(下)(03/24)  
おひさでやんす。
しばらく読んでいなかった分がたまっちゃって、
まだ話の展開がなぜこうなったのかが&#25681;みきれていやせん(^^ゞ
でもとても場の雰囲気が伝わって来やす。
また少しずつ読んで行きやすね。
(Mar 24, 2005 06:55:00 AM)

お久しぶりです!  
ふなや自転車操業ふなやゆうじさん
きてくださってありがとう。
今年に入ってから、日記を続けていけるかどうか
迷っておりましたが、ふなやさんのような
お知り合いとの交流忘れがたく、またがんばって
いこうと決心しました。
毎日とは行かないかもしれませんが、
末永く続けていきたいと考えております。
またよろしくお願いいたします。 (Mar 24, 2005 07:27:53 PM)

Re:お久しぶりです!(03/24)  
はこべほっとさん
>ふなやさんのような
>お知り合いとの交流忘れがたく、またがんばって
>いこうと決心しました。

  あ~良かった(*^_^*)
  そして心から喜んでいやす。
  あっし、このごろ日々の生活に追われて
  自分の日記はおろか、リンクを頂いた
  皆さんのHPへもなかなか参れやせんでした。
  でもこんなあっしでも、もうかれこれ1年半
  続けられているのは、
  皆さまのお便りに支えられているからである事は
  間違いありやせん。
  今では自分のHPは自己紹介代わりに
  いろんな人に宣伝しているんですよ(*^_^*)


>毎日とは行かないかもしれませんが、
>末永く続けていきたいと考えております。
>またよろしくお願いいたします。

   だいじょぶでやんす♪
   マイペースでやって下さいね。
   あっしは楽しみでやんすから。。
   こちらこそよろしくお願い致しやす。

(Mar 24, 2005 08:03:21 PM)

続きを  
逆転速読人  さん
楽しみにしてますよ。

ほっとをこれからも運んでください。 (Mar 25, 2005 12:26:20 AM)

Re:続きを(03/24)  
逆転速読人さん
ありがとう。
これからもよろしくお願いします。 (Mar 25, 2005 12:40:18 AM)

Re:面白うて、やがて哀しき(下)(03/24)  
こんにちは

マッチです

久しぶりです

お元気でしたか

日記の更新がされて嬉しいです
また、ゆっくり話の展開を読んでいきたいと思います

レモンさんの書き込みを読んで嬉しかった

これからも宜しくお願いします (Mar 26, 2005 10:45:41 AM)

ありがとう。  
マッチ400717さん
ありがとう。
うれしい。
どうぞよろしくお願いいたします。 (Mar 27, 2005 10:09:26 AM)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: