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hihitos

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2010.07.26
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カテゴリ: お話

ミサイル工場



 丘に囲まれた盆地の平べったい皿の真ん中に、ずっと当たり前にあり続けると思えた。一年に必ず一人は地元出身の高卒ルーキーを獲得し、そのように人質をとり続けて町の失えない存在となった。

 確保されたルーキーが定年まで約40年工場に奉仕し、抜けるものも、ほとんどないから、まず40人いて、 そこに大卒の出戻り組が役員候補の名目で雑じり、転職組の中途入社と主婦組がパート参加したから、それなりの人数になって、曖昧な総数のまま、結局、数え切れないでいた。

 誰でも、誰かのお母さんや兄だったりし、聞き覚えの無い名の無いコミュニティー。時々、出来の悪いのをとるが、知れた名だから計算内で、子供の頃の位置と関係性を保持した安定した社会がずっと続いていた。

 外側を囲む町も似たようなものだったが、全ての価値や感覚が固定され、それが囲われてはなく、現代の安定した物流とエネルギー効率に、町民は自然と増えていて、決して増えない町が持つパイから溢れた数は、中央の都市か、人工調整が不十分な地方都市へと流れた(なので、中央の都市については人口の上限が設けられなかったし、全ての都市が人工の把握についてある程度の調査しかしていなかった)。多くの若者が、この町から消えていき、残ったものが町のルールを引き継ぐ。その毎年の繰り返しの中に町の長く続く平和は保たれた。



 私が職についた翌年に、この町の持つパイが広がると噂を耳にしだし、狭いパイの限られた人口の中で急激に広まり、町民のほとんどで、それについての話を、わずかであっても交わすようになった。

 ここ数十年では起こったことのない、もしかしたら百年に一度きりの出来事かもしれなく、なぜ今、それが、この町に起こり得るか理由が見当たらないまま、着々と進行し、町から見て、川を挟んだ対岸の山の裾野にある流通ラインのすぐ側に新しい工場が出来た。

 町からは随分と距離のある人家のない所で、歩いて通勤するものはいないと予測できたが、幸運にも、ほぼ全ての世帯に免許所有者が居り、世帯数以上の車の台数があるので、それを見越した調査の行き届いた今回の出来事なのかも知れなく、何か大きな国策レベルの事情の出来事なのではないかと感じ、本来、無縁なものに巻き込まれたのでなかろうかと思える町と町民、それに私の家族のいつもと変わらぬ表情の無頓着さに、不幸な被害者と見てしまう。



 3つ下の弟は新しい工場へ就き、母は新しい工場へ納品する簡単な部品作りをし始め、やがて近所の主婦も集まった我が家は下請けの小さな部品工場となった。



この町の人口のように、世界の食料供給が安定していたのは、何処か外国の町で成された合意の結果であり、それ以来、この工場もずっと同じ調子らしい。





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最終更新日  2010.07.26 21:50:05
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