にかいどう じぇっと してぃ

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二階堂 薫

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あーひょ@ おめでとう! いいな、新婚さんか~♪楽しそう^^ 私は…
たぼち@ ふはは。 君の妻より更新したと噂を聞いて見にきて…
二階堂 薫 @ ご無沙汰しておりました。 dolamiさん 立川でしたら総武線、中央…
dolami77 @ Re:どらみです(笑) つい先ほど、立川のオーケストラ練習から…
あーひょ(お久~♪)@ にょ~ん 元気してまっか?私は元気っす♪ イケメー…

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カテゴリ: 物語・読み物

 得意とする変化球はスライダー 。バッターの手元で「消える」とまで言われるその伝家の宝刀はプロ野球界屈指だと思っている。
 この物語は西武ライオンズのエース、西口文也投手を題材に描かれた短編です。


    舞へ西口よ、マウンドのなかで ~人生を変えたあの日~

                                二階堂 薫

 学校からの帰り道。僕はいま走っている、しかも本気で。なぜかって?うんこ がもれそうなんだよ。そしてアキラ君という僕の親友が横で一緒に走っている。アキラ君は僕が走って帰るのに合わせてくれてるんだ。だからアキラ君はうんこはしたくない。というかアキラ君は学校を出てたったの30秒でいきなり屈み込んでしまった。僕は一体どうしたのだろうと思って訊いてみたんだ。
「どうしたの?」

 なんでアキラ君はいきなり屈み込んじゃったかというとうんこがしたくなったかららしい。校門を出てすぐだったから学校に戻ってトイレに行けばいいと提案したのにアキラ君は学校では絶対うんこはしない性格なんだ。美しくないからだと言っていた。

僕はアキラ君の「うんこ一挙手一投足」を近くで見ていてなんだか自分もうんこしたくなったってわけ。俗にいう「もらいうんこ 」。

 だからいま真剣に走っているんだ。アキラ君はうんこを済ませて「身体が軽い」らしく速い。僕も負けないよう懸命に走る。少しでも速く帰れるように。
 現代は軽さの時代だ。身体にうんこなんて溜めていたら時代遅れなんだ。これ僕らの小学校では定説。もっと速く、僕は風邪になりたい。

 上本町 のアウィーナ大阪 をカミカゼのように通り過ぎようとしたらおばさんにぶつかった。僕はおばさんの身体に体当たりをしてしまっておしりの穴からうんこが少し飛び出ちゃったんだけど、なんとか引っ込めることができた。おばさんは僕に向かってこう言った。
 「ボウヤ、ちゃんと前を見ないとダメよ。」おばさんはすごく綺麗な人だったからびっくりした。僕のお母さんよりずっと綺麗だと思った。

 アキラ君は僕がこのおばさんにぶつかったのに気づかないで一人で勝手に走って行っちゃった。二人とも前を全然見てなかったんだ。
 それにしても目の前のおばさんがすごく綺麗で、この人になら何をされてもいいって思ったから、僕はこう言った。

 「ごめんなさい。おばさんがあまりにも綺麗だったから抱きつきたくなった。あ、いや、それはウソで、えっと、あの、その、おばさんに触れてみたかったんだ」

 この言葉が僕の人生を変えたんだ。

 その日、僕は西武ライオンズの青い帽子をかぶっていたんだ。おばさんは僕に西武ファンなのかと訊いた。僕は「そうだ」と答えた。僕は西武の西口という投手が大好きで、パ・リーグ の、とりわけ西武の試合が観たいがためにお父さんに頼んでケーブルテレビに加入してもらっていた。


 「おばさんこれから東京ドームに巨人VS西武を観に行くけど、ボウヤも一緒に来る?あなたってよく見ると可愛い顔してるのね。おばさん気に入ったわ」
 僕は野球なんて観に行ったことがなかったから何も考えずにその場で「行きたい」と言った。するとおばさんは微笑んで「ついていらっしゃい」と言った。僕はこの時もううんこのことなんて忘れていた。

 アウィーナ大阪の地下の駐車場までついて行くとすごく大きい車の前で黒い服を着た男の人が2人立っていた。おばさんはその黒い強そうな男の人に話し掛けた。「この子は私の甥よ。これから東京ドームに行くから新大阪まで行ってちょうだい。」
 恐そうな男の人は訝しがりながらも僕にお辞儀をした。僕はなんだかすごく恐くなったけど、綺麗なおばさんをなんとなく信じていたし、西武の試合をナマで観れるのが何より楽しみだった。

 このすごく大きくて長い車はリムジン という名前らしい。こんな車乗ったことなかったし、ちゃんと曲がれるのか心配だった。それにしてもこのおばさんは何をしてる人なんだろう。男の人を召使のようにして、なんだかとても偉い人のように思えた。きっとお金持ちなんだろう。



 「ねえ、どうして僕を野球に連れて行ってくれるの?」
「ふふ。おばさんはね、巨人ファンなのよ。ボウヤとひとつ賭けをしたくなったの。巨人が勝ったらボウヤにお願いしたいことがあるわ。西武が勝ったらボウヤに何でも好きなもの買ってあげるわよ」
「僕にお願いって何?」
「それはいまは秘密よ。」

 僕とおばさんは色んな話をした。学校のこと、家族のこと、西武の西口投手の大ファンだということ、そして今日はまさに西口の先発する試合だから観に行くことができて本当に嬉しいし夢みたいだと言った。

 おばさんは昔好きだった男の人が巨人ファンでよく一緒に試合を観に行くうちに本当に好きになったらしい。そして東京ドームに年間指定席を持っていて毎日でも観に行けるらしい。でも最近は忙しくて全然暇がないし、今日は僕と出会ったから特別に行くことに決めたと言った。おばさんはまだ結婚してなくて、何かの会社の社長だとも言っていた。

 東京駅を出るとまた黒い大きな車に乗った。ここでも黒い大きな男の人が2人いた。おばさんは本当に偉い人だと思った。この車はベンツという車らしい。車の中でおばさんはずっと男の人と話していて、それはどうやらおばさんの仕事に関することみたいだ。難しくて何のことかはさっぱり解らなかったけど。

 東京ドームはテレビで見るよりは狭く感じた。座った席はバックネットの真裏で、ちょうど真正面にピッチャーとキャッチャーが見える最高の席だ。いつでもこんな席で野球を観れるおばさんは本当に羨ましいと思った。

 初めてナマで観る試合が本当に楽しみだった。胸がドキドキした。
 いまプロ野球はセ・パ交流戦と言ってセ・リーグとパ・リーグの球団が対戦している。

 試合が始まった。プロのピッチャーの投げるボールは近くで見ると本当に速くてびっくりした。そして真後ろで観ているから変化球の変化がよく分かって興奮した。
1回の表に西武は2点先制した。3回にも4点を取って6-0で西武の一方的な試合運びとなった。西口は得意変化球のスライダーの調子が良く、巨人のバッターが空振りばかりしていてすごく気持ち良かった。気分は爽快だったけど、ずっと忘れていたうんこがまたしたくなってきた。だけど、少しでも試合を観ていたくて我慢していた。

 5回、6回が終わったあたりから僕とおばさんと、あと周りの人たちが「あること」に気づいた。それは何かと言うと西口がまだ誰にもヒットを打たれていないということだ。清原にデッドボールを与えただけで西口はいまのところノーヒット・ノーラン だったんだ。

 おばさんは巨人が負けていて悔しそうだったけど、今日の西口は素晴らしいと言った。僕は興奮すると同時に緊張してきた。西口は前にもノーヒット・ノーランを達成しかけた時があったんだ。ロッテとの試合で最後のバッター小坂選手にヒットを打たれた。あの時、ケーブルテレビで観ていたら西口は笑っていた。でも僕はすごく悔しかったんだ。ノーヒット・ノーランというすごい記録を達成してもっと西口が有名になってほしいと思っているから。松坂 なんかより西口の方がずっと好きだ。あの時、僕は眠れずに一晩中ふとんを噛んでいたのを覚えている。

 そんな西口が今日こそ記録を達成しようとしている。7回も8回もノーヒット、マウンドで躍動する西口が僕を虜にする。おばさんも黙って観ている。スライダーで次々に三振を取る西口はカッコイイ。クールな西口が本当に好きだ。マリオネットのような投球フォームが好きだ。おばさんはバッターが凡退するごとにため息を吐いている。僕は興奮と緊張の入り混じった気分で目を凝らして観ていた。西口の鼓動を感じる、魂を感じる。僕はこの西口の中にヒーローをみていた。

 9回裏。
「あぁ、本当にノーヒット・ノーランやっちゃうのかしら・・・。勝ち負けなんてこの際どうだっていいわ、とにかく誰かヒット打ってちょうだい」

 西口は簡単に2アウトを取った。誰も打てない、誰にも止められない。
マウンドで最後の力を振り絞って投げる姿は美しい。その踊るような、舞うような投球フォームに魅了され、時間さえも忘れる。すごい、最高だ、西口。僕はもっと、もっとその姿を、観ていたい。ずっと、永遠に・・・。


あとアウト1つ あと一人 最後のバッターは 清水
初級はストレート ファール
2球目 歯を食いしばって 右腕を振り下ろす 僕も 歯を食いしばる。
その刹那、僕は心の中で こう叫んでいた

「舞え西口よ、マウンドのなかで・・・」

渾身のスライダーに バットの芯が 当たった
ボールが 高々と 舞い上がる

             ホームラン!!!!!

球状の歓声が 溜息に変わる
清水は 小さくガッツポーズ 西口は

微笑んでいた

その場にかたまって 微笑んでいた 
6-1 最後の 最後で 打たれた 西武ファンの 僕の そして
西口の 夢が 果てた

 次のバッターはセカンドゴロで試合終了となった。西口は完投勝利だ。

 おばさんは「危なかったわ。本当に、もう・・・。試合は負けたけど悪くない気分ね」と言った。僕は口惜しいような悲しいような、また嬉しいような気分で、なんだか涙が出てきた。西口はよく投げたし、カッコ良かった。感動して僕はうんこを少し漏らしてしまったんだ。
 そして賭けに勝ったからおばさんに西口のサインボールを買ってもらった。

 その後、僕とおばさんはホテルに泊まった。広くて高級そうな部屋だ。初めて会った女の人と一緒の部屋で一晩を過ごすなんてもちろん初めてだった。おばさんは僕のうんこの処理をしてくれて、一緒にお風呂にも入った。おばさんは僕の身体を丁寧に洗ってくれた。僕はおばさんの身体がすごく綺麗ですごく興奮してしまった。
 お風呂から上がって身体を拭いてもらっている時に「おばさんって綺麗な身体してるんだね。だから今日ぶつかっちゃったんだよ」って褒めてあげるとおばさんは顔を赤くして裸のまま抱きついてきた。僕は鼻血を出してしまった。まるで漫画みたいに・・・

 あれから9年たった。
 あの時、洟垂れ小僧だったオレはハタチになった。いまは大学に通いながらホストクラブで働いている。おばさんが経営している店だ。おばさんは東京にも大阪にも色んな店をたくさん持っている。おばさんはやっぱりすごい人だったんだ。オレは独立できるくらい人気のあるホストだけど、勉強と両立したいからいまはそれなりに働いている。オレは将来もっと魅力ある人間になりたいし、そうなれると信じている。

 おばさんの手許でオレは色んな経験をした。たとえば初体験なんて突然おばさんが強引に誘ってきた。高校に入ってすぐだったかな、大人になるってのはなんだか感慨深かった。他にも株 を教えてくれたり、酒もたくさん飲ませてくれた。大学では経済学を専攻している。驚くなよ、京大でだ。もちろん実力。

 そう、野球を一緒に観た日がターニングポイント だった。あの日、オレの人生が変わったんだ。あの時、オレは賭けに勝っておばさんに何も「お願い」されなかったけど、ちゃんと「お願い」を果たしているだろう。おばさんはオレの価値観を育んできてくれた。そしてこれからも・・・

 おっと、もうこんな時間か。そろそろ夏子ちゃんを迎えに行かなくちゃ。愛車のロールスロイス で、オレの愛する夏子ちゃんを・・・ (了)





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Last updated  2005/07/20 03:30:46 PM コメント(4) | コメントを書く


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