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2004.12.30
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(前回のあらすじ:動かなくなった右腕の湯治を求めて東北の温泉町を訪れたHは、雪山に前人未踏の秘湯を探し歩くうちに、小規模ではあるが抗しきれない量の雪崩に巻き込まれる)

 便器に座ったまま洗面台の縁にもたれかかり、口を開いてみる。嘔吐の気配、僅かな兆しはあるのだけれど、それがどのような形を取るか予想がつかない。Hはすぐに吐くことを諦めると、浴槽の中に戻り再びシャワーを浴びる。だが、気持ちの悪さにお湯に漬かっていられない。床に座りこみ、便器の縁に手を突き、口を開く。

 少しずつ吐き気が強まっていく。なにも考えることができず、吐くこと、それも吐き気に伴う肉体の動きに突き動かされて、口を開いては押し出そうとする。けれど、肉体から水分が失われて、唾液すらたいして出てこない。だが、自分が吐くことをHは確信している。そして、急に嘔吐は進展する。

 それまでの、自分が吐こうとする口の動きとは異なった質の、喉の奥から押し上げるものがある。1度目ではまだ、硬く収束した吐息しか出てこない。少し間が合って、2度目の衝動。唾液が喉から唇の裏までを満たして、そのまま便器に流れ落ちる。喉を保護する自然の働きか、それとも単に胃液に混じった水分が先行するのか。Hは少し顔をあげて、自分が吐くことはここで終わったのだと考える。

 そして3度目。Hは吐く。何の色だろうか、嘔吐物は赤い。そして所々に黒いものが混じっている。荒く摩り下ろした果実のようだ。一回の嘔吐で、Hの気分は少し上向く。自分が吐いた物に酒が混じって排出されたかと思うと、幸せさえ感じる。だが、それをじっくりと見ている間もなく、4度目の衝動とともにもう一度吐き出す。便器に広がる吐瀉物は広がって、窪みに溜まった水へと滑り落ちていく。目元をじんわりと濡らしながら、Hはそれを見る。

 たまに道に広がっているものと違って、Hはそれに汚さは感じない。Hは、自分を形作る臓器の一部、それも綺麗な色をした物が流れ出したようだと思う。細かに観察すると、吐く前に食べた物が見て取れる。全体としてはHはそれにマイナスの印象を持たないが、食物の欠片である物には嫌悪を感じる。

 Hは洗面台で口をゆすぎ、便器の水を流す。何度かうがいをしてみるが、喉の奥に残る苦さは消えることはない。たまに零れて来る欠伸じみたものに混じる匂い、それを嘔吐物の匂いだと感じてHは眼を細める。口の中は水によって流されたが、肉体の内側には嘔吐の名残がしっかりと残っていることをHはその匂いから感じる。

 身体を拭き浴室から出ようとするが、頭の痛みは残っている。Hはそのまま浴槽へと戻り、シャワーのお湯で口をすすぐ。肉体の部分が引き伸ばされただるさ、新たに加わって断続的に湧き起こる腹部の痛み。浴槽の栓をしているために、皮膚を流れ落ちた湯は少しずつ溜まっている。Hは尻を浴槽の隅に押し付けるようにして、たわいのないことを考える。肌の内側には血液が流れている、肌の外には水が流れている。その二つは交じり合うことなしに一方はいずれは下水へと消えていくし、もう一方は肉体の中を巡っている。それほどに血と水は遠いものなのだろうか。

 しばらくそうしているうちに、考えることが再び妨げられていくことにHは気づく。Hは自分が既に吐き終えたと思っているので、その感覚に戸惑う。浴槽に溜まったぬるいものに、Hは腹部を圧迫されていると感じる。気分の悪さは増していき、Hは自動的と言える速やかさで便器に座り、洗面台にもたれかかる。自分がなにを吐くのだろう、唾液しか出てこないのではないかとHは不安に思う。だが、すぐに肉体の動きにHは身を任せる。そしてもう一度、嘔吐は繰り返される。





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Last updated  2004.12.31 03:36:08
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ひみ@喉

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Comments

ゆう@ とうとう出ちゃったね うわさは本当だったよ。 <small> <a hre…
ミーシャ3216 @ ひみとさんへ 最後まで、楽しく読ませていただきました…
ミーシャ3216 @ ひみとさんへ 抱かれちゃうんだ・・。
ミーシャ3216 @ Re:『かなりあ』(11)(06/07) う。。どうなるのでしょうか・・(//・_・/…
ミーシャ3216 @ うん・・。 >とりあえず、わたしはでたらめだった。…

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