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2005.05.13
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 もう遠い昔の話だけれど、わたしは自分が柔らかな毒だと考えていたことがあった。わたしに触れた人間は、わたしに深く触れた人間はみんな死んでしまう、そうしたことを真剣に思っていた。もちろんそれは父が経営していたコンビニで店番をしながら、人の姿の見えない外の通りを眺めている静かな夜に、ふいに思いついては消えていく類の妄想にすぎなかった。ただ、他のさまざまな思いつきは一度きりわたしに浮かんではすぐに消えていったけれど、それは何度も浮かんでは沈み、そしてまたわたしの中に現れた。わたしの肉体が毒だった、とは言えない。不自然なほどに、わたしは健康な身体をしていた。けれど、わたしの精神は毒ではなかった、と言うことはできないかもしれない。わたしが愛した人は、壊れやすくできていた。

 記憶の中にぼんやりと残っているものは、少しずつその形を失っていく。手触りさえ浮かび上がるほどに確かなものだった美しい記憶も、時が重なるにつれてあちこちに穴ができてしまう。隅々まで丁寧に思い出そうとすればするほど、自分がどこかを忘れてしまっているということに気づく。そのうえで、自分が若かったころにどのように感じていたかさえも思い出そうとするなら、それはわたしに苦しみを強いる時間になる。けれど、わたしは書かなければならない。誰からも忘れられた過去は、なかったことになってしまうから。そしてなかったことにするには、わたしがそれをやりそこなったという思いは激しすぎるから。

 雨が降っていた、と思う。それすらも確かな記憶ではないことを、わたしは認めなければならない。記憶はたやすく捏造される。とにかく、雨が降っていたことをわたしは思い出す。わたしが家に帰って大きな封筒を母から渡された時に、それに触れるのをためらったから。汗まで焼いてしまうような夏の空は、夕暮れになって急に雨を降らせた。わたしはバス停から家まで雨の中を走った。バス停で雨宿りをしている人たちから逃げるようだった。わたしはバスでどこに行っていたのだろう? わたしにはわざわざバスで出かけるような場所は多くなかったはずなのに、うまく思い出すことができない。





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Last updated  2005.05.17 22:00:03 コメント(2) | コメントを書く


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過去探し  
まりあ さん
どうぞ最後まで・・。 (2005.05.14 14:39:07)

まりあさんへ  
ひみ@喉  さん
過去探し…ではないかもしれません。過去はどうしようもなくそこにあって、揺るがしようのないもので。書きようによっては、変えることができるのかもしれませんけど…  (2005.05.15 18:33:04)

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ひみ@喉

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Comments

ゆう@ とうとう出ちゃったね うわさは本当だったよ。 <small> <a hre…
ミーシャ3216 @ ひみとさんへ 最後まで、楽しく読ませていただきました…
ミーシャ3216 @ ひみとさんへ 抱かれちゃうんだ・・。
ミーシャ3216 @ Re:『かなりあ』(11)(06/07) う。。どうなるのでしょうか・・(//・_・/…
ミーシャ3216 @ うん・・。 >とりあえず、わたしはでたらめだった。…

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