熊五郎の部屋

熊五郎の部屋

Jun 11, 2010
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
酒さえあれば女はいらん、が口癖だった腕のいい

六十四歳。職工時代に同じ釜の飯を食った消息の知れる最後の友人だった。
『東京・蒲田』の名もない零細工場の片隅で、
作動する旋盤の前でうずくまるようにして倒れ、そのまま……死んだ。
私が最初に飲み屋の暖簾をくぐったのは彼とだった。
職工のたまり場のような『白金』の居酒屋。
周囲の人の顔や話し声の先に、六十過ぎのいい歳をした数人の職人が、
勤め先の上司の悪口を云いあいながら呑んでいた。

と小声で話しながら呑んだ…。
時は流れ、私も彼もほぼあの職人たちの年齢になった…なったがなってみると
彼は豪快に呑んだ翌朝、あっさりと旅立った……。
私が独立すると間もなく、
彼は『白金』から、『蒲田』の精密部品工場に引き抜かれていった。
私は難しい製品の注文があると、図面を持って切削過程を教わりに
彼のアパートをよく尋ねた。
一通り教わるといつも呑みに行った。彼はネオン街を嫌い、
案内する飲み屋は、場末の定食屋(昼間)を兼ねたような居酒屋で、
五十前後の女の子?が一人か二人、人のよさそうな割烹着を着た女将。
そんなような店ばかりだった。だが、どの店も、

どんな店であろうとそれはそれなりに表や裏、矛盾が
あっただろうに、と今は思う…。
最後まで通っていたと云う定食屋(夜は居酒屋)の女将が、
ワンカップを語りかけながら棺桶に入れたとき、私の脳裏に
「酒ありてこそ我が人生、ありがとう」






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jun 11, 2010 08:41:45 PM
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

荒岩熊五郎

荒岩熊五郎

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

Rush@ Re[1]:春近し(02/25) エキサイティング 四日市市さん >なつか…
エキサイティング 四日市市@ Hi Hi FRIDAYnight なつかすぃ 元気してるかい。 たまには思…
放蕩詩人 @ Re:楽しもう(01/15)  ちょっとした諸事情でページを閉鎖する…
荒岩熊五郎 @ Re[1]:妻と二人で(01/01) 放蕩詩人さん > あけましておめでとう…
放蕩詩人 @ Re:妻と二人で(01/01)  あけましておめでとうございます。お二…

Freepage List


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: