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2005年07月08日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
茶道の世界では「一・楽、二・萩、三・唐津」と言われるほど、茶碗として高く評価されている楽焼。その伝統は桃山時代から続き、現在が15代。その伝統をひっしと背負う楽吉左衛門さんのお話が聞けるという貴重な機会があり、会社を半休にして行きました。陶芸家としての繊細な感性が印象に残りました。

今回、お話を聞くことができたのは、京都に残る伝統文化に触れながら、その継承者に話を聞くというユニークな「伝統未来塾」(http://www.dento-mirai.jp)のカリキュラムを発見したのがきっかけでした。この講義のラインナップが非常に内容が盛りだくさんで、その充実ぶりはまさに充血モノ。

講義は1時間半近くで、それに加えて楽焼の製作工程についてのビデオを見ました。ビデオでは、約90年も寝かせた粘土を使うこと、ろくろではなく手びねりで外側を決めた後、ヘラで少しずつ削りながら形を整えること、秘伝の釉薬を使うこと、炭を使って10人近くが火をくべながら一碗ずつ焼くことなどが紹介されます。非常に伝統にのっとった製作工程です。楽焼のまろやかな感じは、あの釉薬と、低温で焼くことによってもたらされているようです。

当代の楽吉左衛門さんは、芸大の彫刻を卒業して、イタリアに留学。家を継ぐ決心をしたのは27歳のとき。イタリアでの経験が大きな影響を与えたと話していました。言葉や考え方が違う、光や音が違う…自然や生活など地域に根ざしているところから文化が芽生え、育まれることを痛感したようです。

彼は日本の文化を「すりあわせの文化」だと言っていました。何と何のすりあわせかはよくわからなかったんですが、確かに日本は、何らかのオリジナルを、様々なアジャスト(すりあわせ)をすることによって、自らの文化に昇華させることがうまいですよね。書道、お茶から、野球・企業経営に至るまで。

短い講義のなかで、ひとつだけ質問することができました。恥ずかしながら、かなりビギナーな質問です:「なぜ<茶碗>なんですか?」 楽と言えば、抹茶茶碗。他の用途で使われるのを見たことがなかったからです。

楽さんは答えてくれました。「様々な表現ができて、作り手の思いや精神性がずっしりとこもっていて、使う人がそれをしっかりと受け止めることができる、しかも日常的に使える、そんな器は(抹茶)茶碗しかないと思います。コーヒーカップやお皿ではこういうふうにはいかないでしょ?」「初代・長次郎の茶碗は、真っ黒でごつごつとして、一見ぶっきらぼうにすら見えます。でもよく見れば、余計なものを徹底的に削り、否定に否定を重ね、最後に残った<何か>を表現したかったのではないかと感じられます。その<何か>はシンプルという表現とも違って、言葉にできないのではないか」「長次郎は、赤楽茶碗を通して赤を表現したかったのではなく、土を表現したかったのではないか」

講義後の雑談では、日本的な感性について熱心にお話されていました。欧米とは、光や音、言葉が違う。静けさが違う。表現ができなくなったときは、京都の郊外で自然の中に身を置き、ささやかな変化を感じ、時には感動しながら、しばしば心身をリセットするということでした。芸術家らしい繊細な感性の世界に、ほんの少しだけ触れることができました。

こういう話を聞くと、テレビの世界というのは罪作りだなあと感じてしまいます。日本伝統の「間」や「静けさ」「影」「空間」を徹底的に否定して、ゴテゴテの色と、音と光と言葉(字幕とナレーション)で埋めまくる。視聴率が下がらないために、ありとあらゆる手を使うわけで、致し方ないとも言えますが、これでは文化が壊れてしまうかも。なんとかならないものか。






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最終更新日  2005年07月11日 02時57分51秒
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