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2004年11月28日
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カテゴリ: 小さな旅
 勝浦港を見下ろせる小高い丘の上に小さな神社がある。こじんまりとした商店街を抜けたところに、丘へと登っていく長い石段があって、登り口の石柱には「遠見岬神社」と彫ってあった。

 遠見岬神社へと登っていく階段は、足を踏み外せば転げ落ちそうなほどに急で、あれこれ考えている余裕もなかった。気がつくと、もう半ば以上登っていて、ふと横を見ると勝浦の市街地が広がっていた。身を低くしながら海に向かっていくような街並み。上空は風が強いのか、分厚い雲が勢いよく流れていた。

 石段を登りきると、逆光の中に鳥居が立っていた。思っていたより明るい雰囲気の神社で、嫌な気持ちが湧き起こることもなく、すんなりと鳥居をくぐった。
 賽銭箱に五円玉を放り込み、ぱんぱんと手を打って目を瞑った。久しぶりに目を閉じたような気がして、瞼の裏の闇が心地良かった。しばらく、そのまま手を合わせていた。

勝浦の街

 社殿の横に、不思議な形の巨樹が立っていた。ガジュマルのように複雑に入り組んだ枝ぶりで、幹は垂直に伸びるつもりはさらさら無く、四方に巨大な蛸の足のような枝を広げていた。いったい、これは何の樹なのだろう。
 昔、アラスカから帰ってきたときに、成田エクスプレスの車窓風景を食い入るように見ていたことがあった。アラスカでは、シラカバ、アスペン、黒松、トウヒといった、いかにも寒さに強そうな木ばかり見ていたので、日本の緑濃い森の風景が新鮮だった。でも、今思うとあれは「日本の」というよりも「千葉の」といった方が正解だったかもしれない。この時期、もう長野の樹はすっかり冬支度を始めているのに、千葉の樹はまだ光合成をする気満々だ。緑が濃い。
 そしてまた、なにか猛々しいような気がする。この神社の樹にしても、誰かに愛でてもらおうとは少しも思っていない。無骨だ。自分の姿を思いのままに決めている。
 もしかすると、鎌倉武士ってこんな感じだったのではないかと、まったく発想が飛んだところで思うのだ。関東一円の兵が「武士による政権」という新しい時代の息吹を支えていたのだとすれば、その時代の精神性が、この緑濃い、無骨な樹の姿に現れていたとしても不思議ではないだろう。ちょっと発想が飛び過ぎたかもしれないが、たとえば、人に見られることを意識したような京都の樹木とは違い、優美さなど無いが、剛直で生命力の強いこのあたりの木々には、また違った魅力がある。


 それにしても、よくこんな巨大な横枝を支えていられるなと、ほとほと感心した。ポンポンと幹を叩きながら見上げると、複雑に張り巡らされた枝々、その緑の切れ間から白っぽい空が覗いていた。

                   つづく

巨樹





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最終更新日  2004年12月04日 12時45分48秒
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