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『ダークマター スケルフ葬儀社の探偵たち』ダグ・ジョンストン著A DARK MATTER Doug Johnstone菅原美保=訳 小学館文庫 2023年4月11日カバー画 3rdeye/カバーデザイン 鈴木成一デザイン室ダークマター スケルフ葬儀社の探偵たち [ ダグ・ジョンストン ]■著者紹介 ダグ・ジョンストンスコットランド・アーブロース出身、エディンバラ在住。物理学とジャーナリズムの学位、核物理学博士号を持ち、ミュージシャンとしても活動。2006年に『Tombstoning』でデビュー。(ツームストーニング・非常{ひじょう}に高いところから海や川に飛び込むこと。 )これまで本作を含め三作がマッキルヴァニー賞(スコティッシュ・クライムブック・オブ・ザ・イヤー)の最終候補作に。本作は第四弾まで発表された人気シリーズの第1作。■訳者紹介 菅原美保広島県生まれ。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。訳書にアレックス・ノース『囁き男』など。別名義でビジネス関連書や児童書などの訳書もある。■イラストレーター情報1977年東京生まれ 16歳から25歳までアメリカへ留学。2000年 School of the Museum of Fine Arts - Boston 卒業帰国後、雑貨メーカーへ勤務した後、2005年からイラストレーターとして活動を開始。東京都在住。■【ダークマター】暗黒物質(あんこくぶっしつ、英: dark matter、ダークマター)は天文学的現象を説明するために考えだされた仮説上の物質。 “質量を持つ”、“物質とはほとんど相互作用せず、光学的に直接観測できない”、“銀河系内に遍く存在する”といった性質が想定される。■あらすじ エディンバラで操業百年、十年前からは探偵業も営むスケルフ葬儀社。亡くなった当主ジムを火葬した直後、妻ドロシーは夫の秘密を知ってしまい愕然とする。バツイチの娘ジェニーは解雇通告を受け、仕方なく 探偵業を引き継ぐことに。孫娘の大学生ハナは失踪した親友の捜索に乗り出す。三世代の悩める女たちはそれぞれの案件を解決しようと体当たりで突き進むが、次々と衝撃の事実が判明し……。 苦笑、失笑、毒もたっぷり、傷つきながら必死に生きる各世代の女のリアル満載。美しい古都を舞台に繰り広げられる、スコットランド発ブラックユーモア・ミステリー。■感想当主ジョンの火葬シーンから始まるスケルフ葬儀社の妻ドロシー(米フロリダ出身)娘のジェニー・孫娘の大学生ハナがそれぞれの動議から事件を追って探偵を始める話。話の流れはスムーズで、個性的な面々が沢山出て来るので巻頭のエディンバラの地図と登場人物を何度も見返し見返し時々ネットでエディンバラの公園墓地や美しい建物などを見ながら、それでも最近の私にしてはさくさく読めて面白かった。テンポよく進むが、(時々あっけに取られて呆然・憤然とするが)ドロシー・ジェニー・ハナの章に分かれていて読みやすかった。彼女らは色々色々考えるんだけど、私が昔、カウンセラーさんや色んな研修や集まりで考えたり感じたりする訓練を受けた時みたいに、匂いや色や触覚や感覚や音などから発展させて行く自分の内部の変化や思いなどを感じ取る時みたいに一緒に色々と感じ取ったり考えたりして楽しかった。つまり、その時々に彼女達は自分と向き合って答えや結論を出しつつ、惑いながら頑張って行く。大学生ハナは物理が専攻なので、視点が一々最先端の物理を介してのもので、この数年は物理を調べて色々と思っていた私には実にぴったりな表現や視点で楽しかった。この作家の特異性(物理学とジャーナリズムの学位、核物理学博士号を持ち、ミュージシャンとしても活動)が随所に出ていて、文章表現も分かりやすくて読みやすかった。これは訳者さんがすごく上手いんだと思う。英語文をイギリスに見合った内容に、日本人が理解できる日本語に翻訳するのが、ものすごく上手なんだと思う。しかも堅実温厚ながらも行動力のあるそれでいて自分を見失わないドロシーらしさ、諦めや挫折で言い訳が多い中、突然行動派になる流されやすいジェシーや、猪突猛進で純粋な若者ハナが生き生きと描かれている。稼業が葬儀社と言うのはドラマでは見る事があるけれど、小説としては初めて読むと思う。(最近の私の記憶力は赤の直前の黄色状態なので 確信は持てないが)死者を大切に扱いつつも女性3人が稼業として色んな作業をこなす様が、彼女らの心の矛盾や行動の理由ともなり、面白い背景だった。ただね、ジェニーがさ~流されるのがさ~己の弱い所を見るようで不快だった。まあ、結末のために必要ではあったのだけど、何の容疑もない男子学生の急所を掴んで脅すとか、自分でも驚いていたけれども、こんな事をジェニーにさせた作家を少し不快に思っている。 そして成り行きで始めた探偵業は、正直探偵らしからぬ滅茶苦茶が多くて「探偵には秘密保持があるんじゃないか?!」「探偵は自分が探偵だと言ったら探偵になっちゃうのか?!」「そんな感情的になって、探偵と言えるのか?!」が並んでいて、ちょっと。私の中ではちょっと物議をかもしました。え、探偵だって自分で言ったらまかり通るのか?!ストーリー上面白可笑しくするために必要なんだろうけど、なんかなあ~今まで一般人として生きて来た人の抵抗感とか苦しみとかがあるんじゃないのかなって思ってしまう。面白かったけどね。翻訳者と編集者が最高だったろうと思うけどね。翻訳者がとても良かったので訳者「あとがき」が楽しみだったのにあとがきが無くて、「解説」三浦天紗子(ライター・ブックカウンセラー)だったのが残念だった。元気いっぱいエネルギッシュに書いてあるんだけど、本文を読む前に読んではいけないヤツだった。思い入れが感じられないので、訳者じゃない人に「解説」を書いてもらうのは編集者の意気込みを感じるものの、私は訳者さんの素直な感想を知りたかったなぁ。どんな点に苦労したとか、配慮したとか、誰のここが好きだったとか、ビックリしたとか、訳者さんと共有したかったなぁ。2024年10月10日頃読了――ここまでが最近書いた感想――――ここからは読了直後に書いた感想――■直後の感想庭先での当主ジョンの火葬シーン(これがもうとんでもない)から始まるスケルフ葬儀社の妻ドロシー(70歳フロリダ出身)離婚を引きずる娘ジェニー(40代ジャーナリスト)孫ハナ(大学生レズビアン)が、それぞれの動機から事件を追って探偵を始める話。話の流れはスムーズで、いつも冷静なドロシーの心の中、流されがちなジェニー、無垢で真っ直ぐなハナの葛藤と苦しみを読みながら、苦楽を共にしているような、とても読みやすい本だった。これは作家は勿論、翻訳者も編集者も素晴らしい人に違いないと思う。(最近Youtubeの『ゆる言語学ラジオ』をよく見ていて、 2人のMCのうちの一人が出版社の編集者を生業としているため、 出版に際して編集者がどのように関わるのかを知る機会が増えた。 それでこの頃ようやく、 良い本は編集者の尽力による事を知った次第です。)まず、表紙の絵が良くて、闘いを挑むべく立っている3人の女性と手前の猫、緑多めの色と黒の色彩と構図に惹かれた。これは読んでみると、実に本書の内容をよく表していると感心した。読み終わってから眺めると、全てこの通り!この表紙に惹かれた人はこの話も気に入るはず!と思った。この功績はイラストレーターと編集者にあると勝手に思っている。私はこ10年くらいは最近の物理に接して、宇宙の繋がりや、人や生き物全ての繋がりについて思いを馳せて来たので、物理を学んで来たハナの思考の時に飛び交う 物理的視点の考察や発想が凄く楽しくて、友を得たり!と思った。(笑)真っ直ぐな性格も好きだ。でもハナの母親のジェニーについては自分の悪い所「流されやすい」が感じられる度にイライラしてしまった。やだこの人、またズルズルだよ。止めなよぉぉ。お酒に酔って勢いでやっちまうなんてさぁ。探偵って秘守義務があるんじゃないの?ダメじゃん、依頼主の秘密をバラしたら!!この人は探偵じゃなくて、ただの調査人だ!!とムカついたのだった。スケルフ葬儀社の女主人になったドロシーはコツコツと情報を集め、相談すべき事は相談し、黙って動く時は黙っている芯の強い女性で、この人はとても好きだ。私は本当はかくありたい。(笑)そして読後に表紙をよく見てみると、3人の女性の性格が立ち位置・立ち方によく表されている。イラストレーター凄い。カバー画3rdeye カバーデザイン鈴木成一デザイン室となっている。素晴らしい仕事だと思っている。3人の無鉄砲さにはちょっと呆れた。祖父たるジョンが亡くなったばかりで抑制が取れないにしても、余りあるジェニーの情緒不安定。ハナが行方不明のメルの部屋を滅茶苦茶に引っ掻き回して証拠を探すシーンは、その後の大事な物とそうでない物の区別が付かなくなるだろうと思った。どうせ死んだんだからと片付けない所は何か嫌な気持ちになった。亡くなった人の部屋でも尊厳を保ちたいと思うのは日本人だからなのかな。でもハナの一本気な所は気持ちが良い。3人3様の事情を抱え、どんどん行動して行くので面白かった。心理描写も豊かで、分かり易かった。エディンバラの歴史的な風景の写真をネットで観ながら、格調高くて荘厳な建物が多いイギリスで、このポップなお話と言うのが面白かった。話の進め方が上手だった。このスケルフ社の話はシリーズ物になり、イギリスではその後3冊ほど出版されているらしいが、日本ではさてどうなるのか。この後の本書の評判によるかな。最近の私にしては早く読めた。――2024年10月10日頃読了――
October 30, 2024
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『ダークマター スケルフ葬儀社の探偵たち』ダグ・ジョンストン著A DARK MATTER Doug Johnstone菅原美保=訳 小学館文庫 2023年4月11日カバー画 3rdeye/カバーデザイン 鈴木成一デザイン室ダークマター スケルフ葬儀社の探偵たち [ ダグ・ジョンストン ]■著者紹介 ダグ・ジョンストンスコットランド・アーブロース出身、エディンバラ在住。物理学とジャーナリズムの学位、核物理学博士号を持ち、ミュージシャンとしても活動。2006年に『Tombstoning』でデビュー。(ツームストーニング・非常{ひじょう}に高いところから海や川に飛び込むこと。 )これまで本作を含め三作がマッキルヴァニー賞(スコティッシュ・クライムブック・オブ・ザ・イヤー)の最終候補作に。本作は第四弾まで発表された人気シリーズの第1作。■訳者紹介 菅原美保広島県生まれ。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。訳書にアレックス・ノース『囁き男』など。別名義でビジネス関連書や児童書などの訳書もある。■イラストレーター情報1977年東京生まれ 16歳から25歳までアメリカへ留学。2000年 School of the Museum of Fine Arts - Boston 卒業帰国後、雑貨メーカーへ勤務した後、2005年からイラストレーターとして活動を開始。東京都在住。■【ダークマター】暗黒物質(あんこくぶっしつ、英: dark matter、ダークマター)は天文学的現象を説明するために考えだされた仮説上の物質。 “質量を持つ”、“物質とはほとんど相互作用せず、光学的に直接観測できない”、“銀河系内に遍く存在する”といった性質が想定される。■あらすじ エディンバラで操業百年、十年前からは探偵業も営むスケルフ葬儀社。亡くなった当主ジムを火葬した直後、妻ドロシーは夫の秘密を知ってしまい愕然とする。バツイチの娘ジェニーは解雇通告を受け、仕方なく 探偵業を引き継ぐことに。孫娘の大学生ハナは失踪した親友の捜索に乗り出す。三世代の悩める女たちはそれぞれの案件を解決しようと体当たりで突き進むが、次々と衝撃の事実が判明し……。 苦笑、失笑、毒もたっぷり、傷つきながら必死に生きる各世代の女のリアル満載。美しい古都を舞台に繰り広げられる、スコットランド発ブラックユーモア・ミステリー。■感想 当主ジョンの火葬シーンから始まるスケルフ葬儀社の妻ドロシー(米フロリダ出身)娘のジェニー・孫娘の大学生ハナがそれぞれの動議から事件を追って探偵を始める話。 話の流れはスムーズで、個性的な面々が沢山出て来るので巻頭のエディンバラの地図と登場人物を何度も見返し見返し時々ネットでエディンバラの公園墓地や美しい建物などを見ながら、それでも最近の私にしてはさくさく読めて面白かった。 テンポよく進むが、(時々あっけに取られて呆然・憤然とするが)ドロシー・ジェニー・ハナの章に分かれていて読みやすかった。彼女らは色々色々考えるんだけど、私が昔、カウンセラーさんや色んな研修や集まりで考えたり感じたりする訓練を受けた時みたいに、匂いや色や触覚や感覚や音などから発展させて行く自分の内部の変化や思いなどを感じ取る時みたいに一緒に色々と感じ取ったり考えたりして楽しかった。つまり、その時々に彼女達は自分と向き合って答えや結論を出しつつ、惑いながら頑張って行く。 大学生ハナは物理が専攻なので、視点が一々最先端の物理を介してのもので、この数年は物理を調べて色々と思っていた私には 実にぴったりな表現や視点で楽しかった。この作家の特異性(物理学とジャーナリズムの学位、核物理学博士号を持ち、ミュージシャンとしても活動)が随所に出ていて、文章表現も分かりやすくて読みやすかった。これは訳者さんがすごく上手いんだと思う。英語文をイギリスに見合った内容に、日本人が理解できる日本語に翻訳するのが、ものすごく上手なんだと思う。 しかも堅実温厚ながらも行動力のあるそれでいて自分を見失わないドロシーらしさ、諦めや挫折で言い訳が多い中、突然行動派になる流されやすいジェシーや、猪突猛進で純粋な若者ハナが生き生きと描かれている。 稼業が葬儀社と言うのはドラマでは見る事があるけれど、小説としては初めて読むと思う。(最近の私の記憶力は赤の直前の黄色状態なので 確信は持てないが)死者を大切に扱いつつも女性3人が稼業として色んな作業をこなす様が、彼女らの心の矛盾や行動の理由ともなり、面白い背景だった。 ただね、ジェニーがさ~流されるのがさ~己の弱い所を見るようで不快だった。まあ、結末のために必要ではあったのだけど、何の容疑もない男子学生の急所を掴んで脅すとか、自分でも驚いていたけれども、こんな事をジェニーにさせた作家を少し不快に思っている。 そして成り行きで始めた探偵業は、正直探偵らしからぬ滅茶苦茶が多くて「探偵には秘密保持があるんじゃないか?!」「探偵は自分が探偵だと言ったら探偵になっちゃうのか?!」「そんな感情的になって、探偵と言えるのか?!」が並んでいて、ちょっと。私の中ではちょっと物議をかもしました。え、探偵だって自分で言ったらまかり通るのか?!ストーリー上面白可笑しくするために必要なんだろうけど、なんかなあ~今まで一般人として生きて来た人の抵抗感とか苦しみとかがあるんじゃないのかなって思ってしまう。 面白かったけどね。翻訳者と編集者が最高だったろうと思うけどね。翻訳者がとても良かったので訳者「あとがき」が楽しみだったのにあとがきが無くて、「解説」三浦天紗子(ライター・ブックカウンセラー)だったのが残念だった。元気いっぱいエネルギッシュに書いてあるんだけど、本文を読む前に読んではいけないヤツだった。思い入れが感じられないので、訳者じゃない人に「解説」を書いてもらうのは編集者の意気込みを感じるものの、私は訳者さんの素直な感想を知りたかったなぁ。どんな点に苦労したとか、配慮したとか、誰のここが好きだったとか、ビックリしたとか、訳者さんと共有したかったなぁ。2024年10月10日頃読了――ここまでが最近書いた感想――――ここからは読了直後に書いた感想――■直後の感想 庭先で当主ジョンの火葬シーンから始まるスケルフ葬儀社の妻ドロシー(70歳フロリダ出身)離婚を引きずる娘ジェニー(40代ジャーナリスト)孫ハナ(大学生レズビアン)が、それぞれの動機から事件を追って探偵を始める話。 話の流れはスムーズで、いつも冷静なドロシーの心の中、流されがちなジェニー、無垢で真っ直ぐなハナの葛藤と苦しみを読みながら、苦楽を共にしているような、とても読みやすい本だった。 これは作家は勿論、翻訳者も編集者も素晴らしい人に違いないと思う。(最近Youtubeの『ゆる言語学ラジオ』をよく見ていて、 2人のMCのうちの一人が出版社の編集者を生業としているため、 出版に際して編集者がどのように関わるのかを知る機会が増えた。 それでこの頃ようやく、 良い本は編集者の尽力による事を知った次第です。) まず、表紙の絵が良くて、闘いを挑むべく立っている3人の女性と手前の猫、緑多めの色と黒の色彩と構図に惹かれた。 これは読んでみると、実に本書の内容をよく表していると感心した。読み終わってから眺めると、全てこの通り!この表紙に惹かれた人はこの話も気に入るはず!と思った。 この功績はイラストレーターと編集者にあると勝手に思っている。 私はこ10年くらいは最近の物理に接して、宇宙の繋がりや、人や生き物全ての繋がりについて思いを馳せて来たので、物理を学んで来たハナの思考の時に飛び交う 物理的視点の考察や発想が凄く楽しくて、友を得たり!と思った。(笑)真っ直ぐな性格も好きだ。 でもハナの母親のジェニーについては自分の悪い所「流されやすい」が感じられる度にイライラしてしまった。やだこの人、またズルズルだよ。止めなよぉぉ。お酒に酔って勢いでやっちまうなんてさぁ。探偵って秘守義務があるんじゃないの?ダメじゃん、依頼主の秘密をバラしたら!!この人は探偵じゃなくて、ただの調査人だ!!とムカついたのだった。 スケルフ葬儀社の女主人になったドロシーはコツコツと情報を集め、相談すべき事は相談し、黙って動く時は黙っている芯の強い女性で、この人はとても好きだ。私は本当はかくありたい。(笑) そして読後に表紙をよく見てみると、3人の女性の性格が立ち位置・立ち方によく表されている。イラストレーター凄い。カバー画3rdeye カバーデザイン鈴木成一デザイン室となっている。素晴らしい仕事だと思っている。3人の無鉄砲さにはちょっと呆れた。祖父たるジョンが亡くなったばかりで抑制が取れないにしても、余りあるジェニーの情緒不安定。ハナが行方不明のメルの部屋を滅茶苦茶に引っ掻き回して証拠を探すシーンは、その後の大事な物とそうでない物の区別が付かなくなるだろうと思った。どうせ死んだんだからと片付けない所は何か嫌な気持ちになった。亡くなった人の部屋でも尊厳を保ちたいと思うのは日本人だからなのかな。でもハナの一本気な所は気持ちが良い。3人3様の事情を抱え、どんどん行動して行くので面白かった。心理描写も豊かで、分かり易かった。エディンバラの歴史的な風景の写真をネットで観ながら、格調高くて荘厳な建物が多いイギリスで、このポップなお話と言うのが面白かった。話の進め方が上手だった。このスケルフ社の話はシリーズ物になり、イギリスではその後3冊ほど出版されているらしいが、日本ではさてどうなるのか。この後の本書の評判によるかな。最近の私にしては早く読めた。――2024年10月10日頃読了――
October 18, 2024
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『自由研究には向かない殺人』ホリー・ジャクソン著服部京子=訳 創元推理文庫 2021年8月27日初版 同年11月5日4版■出版社内容情報イギリスの小さな町に住むピップは、大学受験の勉強と並行して“自由研究で得られる資格(EPQ)”に取り組んでいた。題材は5年前の少女失踪事件。交際相手の少年が遺体で発見され、警察は彼が少女を殺害して自殺したと発表した。少年と親交があったピップは彼の無実を証明するため、自由研究を隠れ蓑に真相を探る。調査と推理で次々に判明する新事実、二転三転する展開、そして驚きの結末。ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、イギリスで大ベストセラーとなった謎解き青春ミステリ!■著者等紹介ジャクソン・ホリー[Jackson Holly]イギリス、バッキンガムシャー出身の作家。子どものころから物語を書きはじめ、15歳で最初の小説を完成させた。ノッティンガム大学で言語学と文芸創作を学び、英語の文学修士号を取得。2019年に刊行したデビュー作の『自由研究には向かない殺人』は英米でベストセラーとなり、2020年のブリティッシュ・ブックアワードのチルドレンズ・ブック・オブ・ザ・イヤーを受賞したほか、カーネギー賞の候補作となった。現在はロンドンに住む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)【中古】自由研究には向かない殺人 /東京創元社/ホリー・ジャクソン(文庫)自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫) [ ホリー・ジャクソン ]■感想寝込んでばかりのこの冬~春で、やっと出掛けた先の本屋で見つけて買った本。集中力がなくて時間を掛けて読んだ。題名と表紙の緑がかった蒼い空と静かな住宅街に太陽が反射している眩しさに惹かれて買った。主人公の高校3年生のピップは、ピッパと名乗り、イギリス名前としてはとても珍しいと思いつつこの名前の軽妙さと明るさのイメージのままの少女でした。恐ろしい事があってもポジティブなのか若さゆえなのか軽いノリで乗り越えて行くんだけど、こちらは年長者ゆえに終始ハラハラして心配だった。イギリスのポジティブ少女は初めてだった。ただし、コツコツコツコツ証言を集め続け、少しずつ少しずつ糸をほどいて行く工程がポジティブだけではなく、核心の確信が硬いラップに出てくる文言みたいな芯の通った少女だった。賢くて利発で明敏なのに、迷うより行動。どこでどう繋がるのかはっきりする前に色んな事が少しずつ繋がって来て、最後はまあどんでん返しのどんでん返しだった。コツコツ型が好きなので面白かったけれどピッパの正義感が揺るがないのに、大事な人を守るために口を閉ざすとか、何かしら矛盾はあるので読後感は少し複雑だった。終始明るい口調で描かれているからアメリカのアダルトミステリ的な感じがして、イギリスのミステリなのに読後の深みが感じられなくて少しだけ残念だった。初出版としてはとても面白かったと思う。ー2024年4月中頃読了ー(本当に頭が回ってない感想だなー)
September 16, 2024
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「ストーンサークルの殺人」M・W・クレイヴン著―The Puppet Show― 東野さやか=訳 早川書房2020年9月15日発行【中古】【全品10倍!4/30限定】ストーンサークルの殺人 / CravenM.W.■著者紹介 M・W・クレイヴンイギリス・カンブリア州出身の作家。 軍隊、保護観察官の職を経て2015年に作家デビュー。 2018年に発表した本作で、英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールド・ダガーを受賞した。■訳者紹介 東野さやか上智大学卒、英米文学翻訳家訳書『川は静かに流れ』『ラスト・チャイルド』『アイアン・ハウス』『終わりなき道』ハート『逃亡のガルヴェストン』ピゾラット(以上早川書房刊)他多数■あらすじ英国カンブリア州に点在するストーンサークルで次々と焼死体が発見された。犯人は死体を損壊しており、三番目の被害者にはなぜか停職中の国家犯罪対策庁の警官ワシントン・ポーの名前と「5」と思しき字が刻みつけられていた。身に覚えのないポーは処分を解かれ、捜査に加わるとこに。しかし新たに発見された死体はさらなる謎を生み、事件は思いがけない展開へ……英国推理作家協会賞最優秀賞ゴールド・タガ―受賞作■感想主人公ワシントン・ポーには軍隊経験があり目的を果たすために突っ走り貫き通す頑固で一途な男だ。地元のカンブリア州警察で重大犯罪分析課(SCAS)の警部として大失態を犯し、停職中のポーはハードウィック・クロフトという天然石造りの農場でスプリンガースパニエル犬エドガーとひっそり暮らしていた。そこは湖水地方でも人里離れた所にあり、車を置かせてもらっているホテルから2マイル歩かなければ辿り着かない。(2マイルは3.21869キロ)ポーが生まれてすぐに母が家を出たので、父に育てられた。その父も元々放浪者なので、ポーが大人になってからは世界中を移動している。停職後は孤独で人を寄せ付けない生活をしていたが、国家犯罪対策庁の重大犯罪分析課(SCAS)で部下だったステファニー・フリンが現れて職務復帰を告げる。ストーンサークルでの残酷な殺人事件の3番目の被害者の胸にポーの名前と5と言う数字が見つかったからだ。焼きつくされた遺体から文字を見つけたのはSCASの分析官ティリー・ブラッドショーだった。ポーがブラッドショーに初めて会った時、ポーの情報をそらんじた時にポーの年齢を見落とした私は、ポーは40代後半から50代中盤の男性かと思っていた。だけどポーの十代からの友人イアン・ギャンブルが若い感じがして、30代と思われ混乱した。38歳だったのだけど、私の中では固定観念と諦めが強い頑固者中年として固定してしまっていた。読んで行くうちに中年壮年ではないと思ったんだけど、同い年のキリアンにある若々しさが感じられなくて生き生きした活力やエネルギーが無くて老成した諦観的な、ゆっくり観察している感じがしちゃって年配の人かと思ってた。いや、やる事は規則を破ったり衝動的に動いたり命令の裏をかいてどんどん突き進んで行くんだけど。なんかなあ、若々しさがなくて、若くて世間知らずな天才ブラッドショーとの組み合わせはおじいちゃんと孫娘みたいだった。物語りは辛くて厳しいものだったけど、少しずつ事実を掘り起こして立体的にしていく作業はとても好みだった。なぜ悲惨な事件が起こされなければいけなかったのか。なぜポーの名前が刻まれたのか。なぜストーンサークルで行われたのか。なぜ接点の無い被害者達が選ばれたのか。謎解きは面白かったし、浮き彫りにされた事実もすさまじかった。もしかして私はラストを読み切れていないのかもしれない。犯人は途中で分かってしまったんだけどね。だって、これだけの事が出来る人なんて限られているからね。半分くらいで犯人が分かってしまって、こんなに沢山残っているのに大丈夫か?と思いながら読んだけど、後半の方が勢いがついて読みやすかった。犯人が分かってしまっても面白かった。『なぜ、どうやって探し』が登場人物達より先に始めたので視点が変わって面白い読み方が出来た。それで、犯人に同情してしまったからか切ない思いで読み終わった。始まりは恐ろしい殺人場面で、ある意味、人生の変換点まで追い詰められていたポーの窮地を救ったのがこの事件だったので、常に追い詰められたポーの切羽詰まった精神状態と共にあり、ワクワクはしなかった。時日の詰め方が好みだったので、2作目も読んでみようと思う。――2022年12月初め頃に読了――
April 30, 2023
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『運命の倒置法』バーバラ・ヴァイン(ルース・レンデル)著―A Fatal lnversion― 大村美根子=訳 角川文庫 平成3年5月10日発行(西暦1991年)【中古】 運命の倒置法 / バーバラ・ヴァイン, 大村 美根子 / 角川書店 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】 ■あらすじ静かな自然に囲まれたカントリー・ハウスで、チップステッド夫妻は愛犬の埋葬の最中に若い女と赤ん坊の白骨屍体を掘り出した。カントリー・ハウスの元所有者アダム・ヴァーン・スミスは父からその不吉な知らせを受けた。10年前のあの忌まわしい出来事が消しがたい記憶となって甦る。もし大叔父があの家を父に遺していたなら、誰も死ぬことはなかったのに……。過去と現在が交錯し、様々な記憶の旋律が複雑に絡まり響き合う。バーバラ・ヴァインが運命のモザイク模様を冷徹な眼差しで描いたCWAゴールド・ダガー賞受賞作。(1987年)■感想始まりは分かりやすくて読みやすかったのだが、現在と過去が細かい段落で次々に出て来て、それが過去なのか現在なのかその間なのか、誰が誰と何をしていたのか、どの人がどんな状況と性格だったのか、分からなくなってしまった。角川の担当者様のあらすじと思われる「モザイク模様」とは言い得て妙と思う。私はそのモザイクが読み取れなかった(´;ω;`)頭が働かないので疲れたのか、文体構成が苦手なのか、混乱して読む気力が失せたので途中を省いたり拾い読みしたりして最後に行き着いたけどあちこちが穴だらけな理解なわけで。人間考察的な物語なんだと思うけど、人間的興味が湧かなかった。題名の『運命の倒置法』についてはまあ思いもよらない経験をした人はみんな思うだろう事で、読み飛ばしたから断言出来ないんだけど、アダムの甘さに苛立ち、若い時に、ゾシーみたいな人との交流はよほど知恵を持っていないと危険に巻きこまれるよね。と言う自戒の思いを込めた感想。アマゾンレビューを読むと、ルース・レンデルの別名で書かれたこの本、楽しめている人が多い。今の私には無理じゃった。ルース・レンデル名での作品は評判が高いイギリス人女性作家。翻訳でも60~70冊以上の本が出ている。なのに1冊も読んでいない(;^ω^)原題の『A Fatal lnversion』のグーグル翻訳では『致命的な反転』と出た。『運命の倒置法』はより深い感じがする。角川の担当者様に拍手を送りたい。―2022年3月13日拾い読み感想―
March 23, 2023
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