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一夏5413

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2026.06.21
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カテゴリ: スターツ出版文庫



2026年5月刊
スターツ出版文庫
著者:巻村蛍(敬称略)
異能を持たないあやめは、親友に許嫁を奪われ絶望の淵にいた。信じていた親友の優しさは嘘で、あやめを蔑み利用するためだった。すべてを失った彼女の元に、名家の次期当主・春市が現れる。彼は強大な神の力で傷を負っていた。しかし、あやめは彼の暴走する力を癒やせる唯一の存在だった。「お前以外考えられない」孤独な二人は惹かれ合い、春市はあやめに愛を注ぐ。偽りの親友や過酷な運命を圧倒的な愛で打ち砕く和風シンデレラストーリー。


登場人物
 伊佐奈あやめ=なんの能力も持たない只人だったが、春市の「うつわの乙女」だ
        とが判り生活が一変する。
  陽前院春市=七蓬国を守る二院四条家の一つ・陽前院家の次期当主。

   西園寺翠=あやめの親友。
     秋充=春市の側近。
    原川祥=あやめの許嫁。同じく只人。



大多数の者が何かしらの異能を持つ七蓬国の中で、ほんの一握り何の異能も持たない只人は、とある理由によって国から保護対象になっていた。
しかし、真の理由はあまり知られておらず、それ故に只人は「無能」の烙印を押されて差別の対象になることもままあった。
只人の少女・あやめもまたこの春入学した高校でクラスメイト達から無視されたり、聞こえよがしな悪口を言われ続け早くもグロッキー状態。異能を持つ者は皆その力に因んだ髪色のためカラフルな色味の髪をしている。その中で只人特有の黒髪黒瞳は悪目立ちしてしまうから。

そんな彼女に祥は苦笑いしていた。

只人にはこれ以上数を減らさないよう「許嫁」という制度がある。只人であれど異能持ちと結婚することはできる。産まれて来る子どもは異能者になるからだ。しかし、異能者の血が入るともうその夫婦から只人は産まれない。そこで只人には早いうちから同コミュニティの中で相手を決め、許嫁となり成人するとそのまま結婚させていた。只人は只人同士からしか生まれないと言う特性を生かした制度で、あやめの許嫁となったのが祥だった。
幼馴染でもあったのでどちらかと言えばまだ恋愛感情は湧かないけれど、優しい祥となら自分の両親のように仲の良い夫婦になれるはず。あやめはそう思っていた。

そんなある日、クラスの女王様・藤野志乃から嫌がらせでネクタイを燃やされ、我慢できずにあやめはその場を逃げ出した。どれだけ走ったのか気付けばどこかの屋敷の敷地に入り込んでいた。すぐ立ち去ったのだが、その時誰かの視線を感じた気がする。
見つけた、俺の「うつわの乙女」
あやめが庭から立ち去ると、蔵で寝かされていた青年が包帯だらけの顔で笑みを浮かべた。そして、控えていた側近に先程の少女を連れて来るよう命じていた。

翌日登校すると親友の西園寺翠が心配そうに声をかけて来た。
翠は水の異能者で、学校でトップの力を持つ。実は藤野よりその言動には影響力があるのだが、驕らず誰にでも優しい。そんな彼女が友達になろうと言ってくれてどんなに嬉しかったか。翠が居なかったら不登校になっていたかもしれない。
だが、放課後、あやめは信じられない光景を目にした。
なんと、祥と翠がキスしていたのだ。二人に裏切られたと気持ちはぐちゃぐちゃ。祥を問い詰めると翠を好きになってしまったと言う。しかも西園寺家に婿入りするするから許嫁を解消したいとも。
確かに私たちは親同士が決めた許嫁だけど、よりにもよってその許嫁の親友に手を出す!?どうやら祥は長く只人である自分にコンプレックスを持っていたようだ。異能者に見初められて舞い上がっていたのか、聞いていられなくてそっぽを向く。

秋充と名乗った青年はあやめを迎えに来たと言い、この場に居たくなかった彼女はその手を取った。あなた様は「うつわの乙女」なのです。道中言われた話にもあやめは上の空だった。

連れて行かれたのは昨日迷い込んだお屋敷。
陽前院家と知ってギョッとした。
あやめでも二院四条家くらいは知っている。この七蓬国を守護する六つの家の中で二院に当たる陽前家は鬼神を先祖に持つ家系と聞く。神の血を引く二院の当主は凄まじい力の持ち主だそうだが、蔵の中に寝かされている包帯だらけの青年がその次期当主と聞いて衝撃を受けた。
秋充の話では、当主の長男・春市は類まれな力の持ち主故にその力に苦しめられているそう。内側から身体を攻められ二十歳迄生きられないかもしれないとも。悲痛な秋充の表情と声にふらふらと立ち上がったあやめは春市のすぐそばで腰を下ろすと知らずその唇に口づけていた。

さすがは「うつわの乙女」だな。感心するような彼の言葉に大混乱。
これが私の力?
でも私は無能の只人で!!
そう言い募ると「うつわの乙女」は只人しかなれないんだぞ、無能だからこそこの荒ぶる神返りの力を吸い取れる。それが只人が保護対象になっている理由だ。
とはいえ、「うつわの乙女」に関しては国の上層部と二院四条家の者くらいしか知らされていないそうで、大抵の者はただ絶滅危惧種だから保護されているという認識らしい。

あやめが無意識に起こした行動は春市だけの「うつわの乙女」だからのようだが、確かに躊躇せず初対面の男性にキスするなんて自分でも信じられない行為だ。
未だ半信半疑な事もあるけれど、無能の私でも人助けができる。それが嬉しくて定期的に彼の力を吸い取って欲しいという依頼にあやめは力強く頷いた。
それにこの胸の高鳴りは・・・。
その後、秋充を伴い帰宅すると、彼から事情を告げられた両親は目を丸くしていた。でもお前がやりたいならと応援してくれて秋充が帰ると原川家から破談の申し込みがあったと気づかわし気に娘を見た。
まぁ、そうなるでしょうね。
予想は付いていたのと先程よりショックでないことに自分でも驚く。
翌日、翠からも謝罪されたが、彼女の物言いに違和感を覚えた。
いつものように気遣う雰囲気ながら言葉の端々に嫌味が混じる。いつもそんな感じだったのに、私はそれに気付かないふりをしてたんだ。ようやく納得がいってもういいよ、仲がいいふりしなくても大丈夫。そう告げると翠はやっと素を出して見下したような目線で見つめて来た。
いい引き立て役と思ってたんだけど、仕方ないわね。そう言って鼻を鳴らし立ち去る彼女を見送り、どっと疲れたあやめはやれやれと溜息を吐いた。

あれから秋充の頼みで、あやめは陽前院家で同居を始めた。
見る見る回復していく兄の様子に、自分こそが次期当主と思い込んでいた春市の弟・凪斗は焦っていた。そんな彼に当主を決める儀を早めさせれば良いのです、と近付いてきた者が。
老中の何人かを買収し、渋っていた当主に儀式を早めるよう進言した結果、一週間後と決まりほくそ笑む凪斗を見て翠は内心でせせら笑った。
春市の存在を知らない翠は凪斗に取り入り、当主になった暁には花嫁に迎えてくれるよう便宜を図っていたのだ。あやめを悔しがらせたくて祥に手を出したが、端から只人と結婚する気なんて無い。
凪斗に取り入った後、あっさり祥を捨ててやったから、今頃あやめに復縁を迫っるんじゃないかしら。翠の予想通り、祥はあやめにすがりやり直そうと懇願していた。
その頃には春市に心惹かれていたあやめはきっぱり拒否。しかし無理矢理押し倒され貞操の危機に陥った彼女を助けたのは春市だった。彼の異能で脅され這う這うの体で逃げていく祥を見送り、春市に抱きしめられた彼女は自らの想いを告げ、彼もまたお前を愛していると告白。
弟が焦ってバカなことをしているようだが、体調の不安も無くなった今当主の座を譲るつもりはない。春市は隠遁生活の終わりを宣言した。
結果、儀式は兄弟同士の力比べになり、あやめも出来る限りその手助けをした。だが、うつわの乙女の存在に気付いた凪斗から話を聞いた翠はあやめを攫い・・・。


異能、学園もの、恋愛という人気要素を詰め込んだ和風シンデレラストーリーです。無能は絶滅危惧種という設定が結構新しくなるほど、と。
ちょっと天然で猪突猛進なヒロインと、そのヒロインを溺愛するヒーロー。
何かとヒロインを目の敵にする自称親友の性悪女が色々邪魔をしてくるんですけど、あんな真似しでかしてヒーローの怒りを買わないわけがなく、最後はキツイお仕置きを食らい表舞台から姿を消します。
元許嫁もいつの間にかいなくなってたし、ヒロインに徒成す者は皆消えていくあたり、いい具合にザマァされててスッキリしました。元許嫁は本当に愚かでしたからね。
あいつにヒロインは勿体ない。
最後は怒涛のハッピーエンドでしたが、濃いキャラも何人かいたので、一応続編も視野に入れてるのかも。この手のジャンルでは珍しい性格のヒロインだったのもあり、面白かったです。


評価:★★★★☆





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最終更新日  2026.06.21 20:29:50
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