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一夏5413

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2026.07.27
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カテゴリ: 蜜猫
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2026年6月刊
蜜猫文庫
著者:花菱ななみ(敬称略)
辺境伯長女で、血の繋がった両親や妹に冷遇されていたロクサンヌ。公爵エリアンに嫁いだ初夜に「君を愛することはない」と言われて失望するも妻の義務を果たせば好きに過ごしていいと言われ気を取り直す。御者の技術を覚え馬車を乗り回し楽しむ彼女にいつしかエリアンも興味を引かれるようになる。「君を愛さずにいることはできなかった」心と体を重ね幸せを覚えるが、ロクサンヌが冷遇されたのが呪いのせいだとわかり…!?


登場人物
 ロクサンヌ=辺境伯家の長女だが、家族から冷遇されていた。
  エリアン=国王の最側近の公爵家当主。ロクサンヌを妻に迎える。

レモウィケス辺境伯の長女・ロクサンヌは、理由も判らないまま家族から疎まれ冷遇されていた。使用人のようにこき使われながらこの理不尽な扱いについて考える。
もしかして私は実の子ではないのだろうか。
いっそ、本当にそうだったなら諦めもつくと言うのに、彼女は両親どころか兄と妹にもしっかり似ていた。ならどうして私はあの人達から愛されないんだろう。


そんなある日のこと。
オーベルティーブ公爵家当主・エリアンが屋敷を訪れた。
シュゼットによれば、彼はこの辺境伯家との姻戚関係を望んでいるらしい。
両親は大喜びでシュゼットの飾り立てに余念がない。辺境伯領の金山は近年採掘量が乏しい。裕福なオーベルティーブ公爵家からの援助を当てにしているのだろう。にしても随分と見栄を張ったものだ。
まぁでも、もう結婚自体は決まったようなものだし、浮かれるのも仕方ないのかもしれない。だが、まさかエリアンがロクサンヌを妻にしたいと言い出すとは。

応接間の空気が凍り付き、この子は当てつけがましくわざとこんなみすぼらしい恰好をしている聊か困った娘でして!苦しい言い訳をしている両親と、姉より私の方が相応しいですわ、とめげずに自分を売り込むシュゼット。やかましい彼らの言い分を涼しい顔で受け流したエリアンは茫然としているロクサンヌの手を取ると片膝をついてプロポーズ。私は彼女がいいのです。そう言って父に向って笑みを見せるとくれぐれも妹さんと交換なんて真似はなされぬように。有無を言わせぬ態度に背に腹は代えられぬと父は渋々承諾。文句が止まらぬ母と妹にもう決まったことだと言い含めた。
その日からロクサンヌには家庭教師が付けられ、食事も家族と同じものが提供されるように。そして数か月後、王都の教会で二人は式を挙げたのだった。

あの家から出られたことも嬉しいけれど、エリアンさまの妻になれたことが何より嬉しい。一目見て彼に心奪われた彼女は今最高に幸せだ。
この人に精一杯尽くそう、私に出来ることならなんでもして彼を支えるのだ。
そう決意したロクサンヌだったが、初夜の際、彼女は非情な宣告を受けた。
「君を愛することはない。とにかくこちらが望むのは男の子二人を産んでくれることのみ」冷たい表情で告げられて、まるで冷水を浴びせられた気分だ。

白い結婚を望まれるよりマシだと思わなければ。

あんなことを言いながらもエリアンはロクサンヌを尊重してくれていた。
不貞行為でなければ好きなことをしていいとも言われたので、今まで縁の無かった貴族らしい趣味に挑戦してみることにした。その中で唯一貴族らしからぬ趣味が馭者の真似事だった。
家令も驚いていたが、馬も可愛いし馬車の扱いは難しいながらも楽しく、上手くなるとなんとエリアンがロクサンヌが操る馬車に乗ってくれた。
意外に楽しいと思ってくれていたのか、以降も彼のリクエストを元にあちこち出掛けて、先日は川の上流で釣りを楽しんだ。その上、ロクサンヌは社交も手を抜かず、お茶会で仕入れた情報をエリアンに報告。使えるネタの場合は良く教えてくれたと褒められ彼女も上機嫌。


娯楽に全く興味を示さなかったエリアンがオペラに!?
その日、たまたま観に来ていた国王も心底驚き、これも奥方のおかげだなとロクサンヌをべた褒め。国王は彼女が馭者仕事に嵌っていると知るや、自分も乗りたいと言い出し、エリアンの胸は何故かざわついていた。女性の扱いが上手い国王は妻帯者だが、女癖が悪い。
彼女に興味を持ち、手を出されたらと思うと気が気でない。
結局、王は単に朴念仁なエリアンに発破をかけるだけのつもりだっただけらしく、それが判って彼は胸を撫で下ろした。そして、あんなことロクサンヌに言わなければ良かった・・・。と激しく公開
初夜の時に心無い言葉を告げた自分を殴ってやりたい。
当時の自分は厳しい父の教えに従い、誰も信じず生きて来た。結婚も国防を担う辺境伯家と繋がりを持ちたかっただけで誰でも良かった。ただ化粧と香水臭い次女は性に合わずで、何故召使扱いされていたのか不明だが、素朴なロクサンヌならとその手を取った。

一度、二人で話そう。
そう決意した矢先のこと、ロクサンヌが体調不良で寝込んだ。
まさか懐妊ではと沸き立つ屋敷の者たちの期待に反して医師から告げられたのはただの胃腸炎。エリアンも期待していたのではと思うとロクサンヌもガッカリ。心配かけたこと含めてきちんと報告しよう。書斎の扉をノックしかけた彼女は漏れ聞こえて来る話し声とその内容が気になりいけないと思いつつ耳をそばだてた。
家令が報告していたのはレモウィケス家の実情とロクサンヌがなぜあんな扱いを受けていたのか、について。確かにずっと謎だった。一体どんな理由が。
家令がレモウィケス家に長く務めたという元侍従から直に聞いたと言う話は衝撃的なものだった。百年以上前、辺境伯家の領地近くの山に魔女の集落があり、そこで金が取れると知るや欲にくらんだ当時の領主が魔女たちを襲撃、山を奪ったのだそう。多くの犠牲を出て魔女は怒り狂い、その時指揮をしていた領主の娘・エレオノーラに呪いをかけた。それが長女の呪い。
レモウィケス家の長女に生まれた者は、子を成せぬというもので、実際に長女は不妊ないし出産にこぎつけないものばかり。政略結婚が主流の貴族社会でこれは由々しき事態。
子を生めぬ娘は嫁に出せない厄介者になり、いつしか長女を「いない者」扱いするようになったのだと。ということはつまり、ロクサンヌは子供を産めないということか?
エリアンの問いに家令は長女の呪いの通りならばと肯定。

エリアンは男の子を二人産んで欲しいと強く希望していた。
流行り病や事故死に備えてなのだろうが、それ以前に自分は不妊症と判ってロクサンヌは愕然。彼が家令に明日レモウィケス家当主に会うと言っているのに冷や汗が流れた。おそらく契約違反だと抗議しに行くのだろう。それも当然だ。妹はともかく、両親は呪いのことを知っていたはず。だから私を冷遇してたんだもの。
なのに、シュゼットをお気に召さなかった彼がロクサンヌを希望した際、不妊という瑕疵があることを言わなかったのも問題だ。
もしかしなくても離縁されるのよね、私。
愕然としながらも心にはフツフツと怒りが湧いた。
欲深い先祖のせいで呪いをかけられ、その弊害で私はいない者扱いを受けていた。そうよ、一言あの人達に恨み言言ってやるくらい!それと、あの人に迷惑がかかるから、私は死ぬの。とは言っても本当に死ぬわけじゃない。自殺に見せかけてどこか他の地でひっそり生活すれば、エリアンも再婚しやすくなるはず。決意した彼女は遺書に見せかけた手紙を置いて屋敷から姿を消して・・・。


ザマァ系です、が意外な理由でヒロインが虐げられていたのが判ってちょっとびっくり。先祖がクズだったおかげで愛する人の側にいられないのが確定してしまったロクサンヌはついにブチギレ。そもそも、そんな重要なこと、彼に前もって言わないのは我慢ならないと実家に乗り込みますが、久しぶりの屋敷は何故か半壊していて唖然。玄関前に居た女性に気付いて一体何が?と尋ねれば、女性は兄と瓜二つ???
あなたがロクサンヌ?問われて頷くと、彼女は父の庶子であると明かします。だから、この家の本当の長女は私なの、アレクサンドルの一つ上。
卑怯者の当主は長女の呪いを回避するため、下町の女に手を出して娘を産ませ自分はちゃっかり貴族の女と結婚したってわけ。なのに奥さんが怖いから他所にもう長女がいるのを言い出せず、結局あんたをいない者扱いしてたのよ。呪いが解けたのを機に復讐しに来たと言うい女性は屋敷を壊しながら高笑い。
クズ過ぎる父のやり口を知ってロクサンヌは異母姉・シモンに同調。この家潰すなら協力すると申し出ます。魔女に弟子入りして自力で解呪したという異母姉は頼もしく、そういえば、私は次女だから呪いにはかかってないのよね?とホッと胸を撫で下ろすのでした。
とはいえ、涙を飲んで公爵家を出て来たと言うのに段々アホらしくなり、そのうち父に対しての激しい怒りが。その後、シモンの魔法で両親はいいように操られ、爵位と財産はシモンに譲ると言う証書にサインさせることに成功。ロクサンヌは例え不妊でも妻は君がいいとエリアンに説得されて無事公爵家に戻るのでした。
エリアンもロクサンヌが不妊だと伝えなかった当主夫妻に怒ってたんですが、それ以前に呪いを理由に彼女を虐げたことに対しての怒りの方が強かったと言う。
もうすっかり奥さんにメロメロになっていた彼は、子など産まれずとも養子を取ればいいときっぱり。あの時の最低の言葉はどこへやら、今やすっかり愛妻家になった彼が妻への想いを噛み締めている所で物語は幕。

理不尽な扱いの理由があれで色々吹っ切れたヒロインの底力が凄かったお話でした。あと、終盤出て来た腹違いのお姉ちゃんとも仲良くやってけそうで何より。


評価:★★★★★





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最終更新日  2026.07.27 16:33:19
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